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Cray副社長が来日、Opteron搭載スーパーコンピュータを解説
~1万機のOpteronで40TFLOPSを実現

7月15日発表



米Crayのブライアン・コブレンツ副社長

 日本AMD株式会社は15日、都内で報道関係者向けに、同社製64bit CPU「Opteron」を搭載したスーパーコンピュータ「Red Storm」の説明会を開催した。Red Stormについては、同機の開発・製造元である米Crayのブライアン・コブレンツ副社長が解説した。

●10,368機のOpteronで構成

 Red Stomは10,368機のOpteronを搭載したスーパーコンピュータ。使用されたOpteronのモデルナンバーは未発表の「148」とされている。1xxシリーズのOpteronはマルチプロセッシングに対応していないが、Crayが開発したインターコネクトチップにより、10,368機のマルチプロセッシングが実現されている。

10,368機のOpteronを3Dメッシュ状に接続

 10,368機のOpteronは、インターコネクトチップを介して27×16×24機の3Dメッシュ状に接続されている。インターコネクトチップは7つのポートを持っており、うち1つがOpteronに接続され、残りの6つが他のインターコネクトチップに接続される。Opteron-インターコネクトチップ間は6.4GB/secのHyperTransportで接続され、インターコネクトチップ同士は4GB/secで接続される。Crayでは、隣り合ったインターコネクトチップ間のレイテンシは2μsec、もっとも遠いインターコネクトチップ同士では5μsecとしている。

 コブレンツ副社長はCPUにOpteronを採用した理由を、「HyperTransoprtによる広帯域接続、メモリに広帯域で直接接続でき、レイテンシも低いこと、64bitと32bitのアプリケーションを両方サポートし、既存のソフトウェアの移行が容易なことなどをあげている。

●機密データのためのパーティションを用意

Red Stormのキャビネット構成。赤いキャビネットにOpteronが格納される

 Red Stomは156基のキャビネットで構成されるが、Opteronが入っているのはそのうちの108基。1つのキャビネットには96機のOpteronが収められている。残りのキャビネットのうち、16基にはI/Oプロセッサなどが収められ、別な16基には合計240TBのディスクストレージが収められる。さらに、残りの16基には後述するパーティション切り替え機能が格納される。I/Oプロセッサは512機搭載される。インターコネクトチップで結ばれたOpteronとは、PCI-Xで接続される。メモリはDDRを10TB搭載する。

 Red Stormの冷却方式はすべて空冷。大型のブロアーにより、床下からキャビネットを通って上へ吹き上げるようになっているという。冷却機構を含めたRed Storm全体の消費電力は2MW。

 OSは、I/OプロセッサなどにLinuxを、CPUノードにはLWK(Catamount)が採用されている。また、ファイルシステムには、オープンソースの「Lustre」が採用されている。

Red Stormの使命は核実験のシミュレーション

 Red Stormは、米エネルギー省のスーパーコンピュータ計画「ASCI(Accelerated Strategic Computing Initiative)プログラム」に基づいたスーパーコンピュータで、Crayは9千万ドルでエネルギー省から開発・製造を請け負った。

 Red Stormサンディア国立研究所に設置され、地下核実験の代替となる核爆発シミュレーションなどに利用される。核実験のような機密研究を扱うため、Red Stormは機密データと、機密でないデータの間にパーティションを設け、両方を同時に処理できるようになっている。通常は機密用に75%、非機密用に25%のリソースが振り分けられるが、パーティションの区切りは柔軟に変更できるようになっている。ただし、ストレージは機密用も非機密用も120TBずつ割り当てられる。

●地球シミュレータを上回る部分も

 サンディア研究所には、やはりASCIプログラムにより'96年に設置された設置されたスーパーコンピュータ「ASCI Red」がすでにあり、Red StormはRedを代替する目的で計画された(したがって、Redで動作していたプログラムは、コンパイルすることでRed Stormでも動作するようになっている)。Redは9,632機のPentium II Xeonを搭載し、3.2TFLOPSのピーク時性能を実現しているが、Red StormはRedの7倍の40TFLOPSが要求されている。

 40TFLOPSは、現在世界最速となっている日本のスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」とほぼ同等か、やや上回る。地球シミュレータはベクトル型、Red Stormはスカラー型と呼ばれるアーキテクチャを採用しており、単純に性能を比較することはできない。が、コブレンツ副社長は地球シミュレータとの比較として「地球シミュレータはいいマシンだが、ある分野ではRed Stormが上回り、ある分野では地球シミュレータが上回る」と述べている。

ASCIプログラムで誕生したスーパーコンピュータたち

 なお、ASCIプログラムでは、IBM Power PC 604eを5,808機搭載して3.9TFLOPSを実現した「ASCI Blue Pacific」、MIPS R10000sを6,144機搭載して3.1TFLOPSを実現した「ASCI Blue Mountain」、IBM POWER 3を8,192機搭載して12.3TFLOPSを実現した「ASCI White」、Alpha EV68を8,160機搭載して20.5TFLOPSを実現した「ASCI Q」などのスーパーコンピュータが誕生している。

□日本AMDのホームページ
http://www.amd.co.jp/
□Red StormにOpteron採用のニュースリリース
http://www.amd.com/jp-ja/Corporate/VirtualPressRoom/0,,51_104_543_8001~56284,00.html
□Crayのホームページ(英文)
http://www.cray.com/
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【6月30日】AMD、最大8CPU対応の「Opteron 800」を正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0630/amd.htm
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0423/amd.htm
【2002年3月15日】【やじうま】どうやっても静音化はできなさそうな世界最速スパコン「地球シミュレータ」見学記
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/yajiuma/2002_01.htm#es

(2003年7月15日)

[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]


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