第208回
いまや希少種となったシングルスピンドル機
「Interlink XP」



 A5サイズと言えばいいのだろうか? ビクターのInterLink MP-XP7310は希少種と言って差し支えないだろう。シングルスピンドルの小型ノートPCが次々に消えていく中、ましてやそれよりも小さいサイズのノートPCは貴重な存在になりつつある。XP7310と同クラスに属する製品の代表といえば富士通のLOOX Sシリーズだが、残念ながらLOOX Sには後継機種が登場していない。

 パフォーマンスの高い超低電圧版Pentium M 1GHzを搭載し、8.9型の低温ポリシリコンTFTカラー液晶パネル(1,024×600ピクセル)を搭載。ハードディスクにもサイズや重量面で有利な1.8インチではなく、2.5インチ9.5mm厚の一般的な製品を搭載。16mmピッチのキーボードを備えるXP7310は、パフォーマンスと小型・軽量のバランスの取り方という面で興味深い製品だ。また、Centrinoを名乗る最小のPCでもある。

●従来機とほぼ同じサイズにPentium Mを搭載

 元々はWindows CEを搭載するHandheld PCのひとつであったInterLinkシリーズが、Windowsが動くPCとなったInterLink XPシリーズになったのは2002年初夏のことである。900gを切る小型軽量なボディに、超低電圧版モバイルPentium III-M、2.5インチハードディスク搭載のスペックは、無線LANを内蔵していなかったこと、内蔵バッテリの容量が小さいことなどを考慮しても図抜けたものだった。

 その後は無線LAN内蔵も果たし、徐々にスペックを上昇させていったInterLink XPシリーズが、今度は超低電圧版Pentium Mを搭載。バッテリ部以外の部分が僅かに厚くなったこと、SDカードスロットが省略されたことを除けば、サイズは前シリーズと同じ。液晶パネル、ポインティングデバイス、キーボードなども同一で、外装がツヤありブラックになっていなければ、前シリーズとの区別が付きにくいほど。重量面でも、初代機よりは若干数字の上で重くなっているものの、直近のモデルとの比較では全く同じ数字を達成している。

 ただし、個人的には食指が伸びないシリーズでもあった。

 InterLink XPシリーズの初代機が登場した当初、実機を試用する機会があったのだが、自分のユーセージに合わなかったこと、細かな操作感が趣味に合わなかったこと、そしてちょっとした負荷でもスグに熱くなる筐体が好きになれなかったこと、などがあって購入には至らなかった。

 当時書いた記事を読み返すと、各ジャンルにおいて高い点数は与えていた。実際、スペックだけを見れば、InterLink XPシリーズはモバイルツールとして非常に魅力的なプロフィールを持っており、高い点数を与えざるを得なかった。しかしトータルのユーザー体験として優れた製品だったかと言うと、そうではないというのが僕の結論だったのである。

 中でも発熱に関しては、その後、実際にInterLink XPシリーズのオーナーになった知人に話を聞いても、あまり良い評判を聞かない。そこで今回は、そうした熱の問題に対して、どのような解答が込められているのかを中心に評価してみた。

●熱問題はほぼ克服

 実際に使ってみると、使い始めてスグに熱問題をほぼクリアしていると感じた。従来機では、単にデフォルト設定のAC駆動でインターネットへのアクセスやオフィスアプリケーションを動かしているだけで本体が明らかに熱くなっていたが、本機ではそのようなことはない。主にコミュニケーションツールとして動かし、Webアクセスや電子メールなどに用い、たまにビジネスアプリケーションを動作させるといった目的で使うならば、発熱に関して全く気にする必要はないだろう。

 多画素のデジタルカメラ画像を大量に取り込み、サムネイルを作成する時などは、さすがにプロセッサの冷却ファンが動き始める。また、一度発熱すると冷めるまで(冷却ファンが停止するまで)に必要な時間が長めだとも思うが、パームレストや底面の熱はさほど感じない。AC駆動時でこの状態なので、バッテリ駆動時はさらに“涼しい”マシンとなる。

 では全負荷状態ではどうか? ということで、HD品質(720pフォーマット)の動画を連続で1時間再生(プロセッサ利用率は100%ととなり、コマ落ちも発生する)させてみたところ、確かに左手前の排気口部分が熱くなり、パームレストやキーボードも暖かくはなるものの、致命的なほどの熱を抱え込むことは無かった。

 室温24度の環境において、キーボード上の温度は約33度、パームレストは31〜34度、筐体底面は最も熱くなる排気口下のコーナーが38度となるものの、その1cm内側は34度、中央部が31度、排気口と反対側の温度が低い部分は27度しかない。

 色々な部分に手をかざしてみると、全体的には筐体下部への熱の逃げが少なく、キーボードの隙間から熱が発散している傾向が強い。個人的には、これだけ底面の温度が低いなら、敏感な手に近い部分の熱を底面に振り分けてもいいのでは? と思う。しかし、前シリーズからの改善は大きい。発熱の多さでInterLink XPシリーズを避けていた人は、再検討する価値があるだろう。

 ただ、おそらく試用機固有の問題だとは思われるが、冷却ファンが最も低速に回転するとき、比較的大きめのノイズ(おそらくモーターから発せられる音)がカラカラと聞こえるのが多少気になった(あまり大きな音ではない)。ファンの回転数が高くなると音は気にならなくなる。

●InterLink XP、良いところ、気になるところ

 XP7310の良い部分は明快。小さく、軽く、そこそこに使えるキーボードサイズといったところだろうか。2.5インチハードディスクにCentrinoの構成で、これだけの軽量コンパクトな筐体は本当に魅力だ。1台目のPCとしては、液晶パネルやキーボードなどに不満を感じる人も少なくないだろうが、2台目以降のPCとして他のフォームファクタのPCと使い分けることを前提に考えるならば、コミュニケーションツールとして魅力的な製品である。

 僕らのように、文字を一日中タイプし続けるような職業でなければ、あるいはこの製品だけでもいいという人もいるだろう。16mmピッチのキーボードは、キーとキーの隙間が狭いため、タイプ時に隣のキーに指が干渉しやすい点が個人的には気になるが、かといって本機のコンパクトさを否定するほどに酷いわけではない。

 評判の悪いスティック型のポインティングデバイスも、不評の原因は狭ピッチキーボードに合わせてスティックを細くしているためだと思われる。しかし逆に標準的な太さにしてしまえば、今度はスティック周辺のキータイプが極端にやりにくくなっただろう。たとえば、キャップのデザインをトラックポイントが新たに採用したソフトドームなどを模したものにすれば、もう少し操作しやすいのでは? と思う。しかし、この話にしてもサイズや軽さを重視するユーザーにとっては些細なことかもしれない。

 いずれにしろ、同じクラスにライバルが存在しないため、比較しての善し悪しは判断ができない。そうしたワンアンドオンリーな製品であることが、本機最大のアドバンテージと言えるのかもしれない。しかし、その反面でフォームファクタ以外に本機でなければならない理由というのも、感じられないというのが正直な感想だ。

 たとえば本体の底面積の事を考えなければ、松下電器のLet'snote R2はかなり強力なライバルとなるだろう。本機に標準バッテリを装着すれば、重量面ではほぼ同等。バッテリセルは1本分InterLink XPの方が多くなるが、消費電力が異なるため駆動時間はInterLinkの方がおおむね短くなる。Let'snote R2が非常に低消費電力な設計となっているのに対して、本機の省電力性能はそれほど高くないためだ。底面積にしても、標準バッテリを取り付けた状態であれば、さほどLet'snote R2と変わらなくなってしまう。

 スペック的には素晴らしいXP7310だが、もっとも気になったのは消費電力の多さである。XP7310はバックライトの明るさが16段階もあり、しかも輝度が高く中間輝度程度で十分な明るさがあるため、かなり低めの輝度で使ってみたものの、それでもまだ消費電力が多めだ。丸形バッテリセルの18650で2セルの内蔵バッテリでおおむね1時間ちょっと、3セルの標準バッテリを足しても3時間を少し切る程度の実働時間だ。1セルあたり0.6時間程度が目安となりそうだ。

 スペックを見るとJEITA測定法1.0の値が、こうした実働時間よりもかなり長めに見える。これはJEITA測定法の中に低消費電力状態(輝度は最低に設定される)の項目があり、その数値が非常に良くなるためである。というのも、本機の最低輝度は、真っ暗な場所でなければ内容を把握しにくいほど輝度が低い(=消費電力が低い)ためだ。もっとも、JEITA測定法対策なのか、それとも暗所での利用を想定した設定なのかはわからない。

 ただ、いずれにしろ他の超低電圧版Pentium Mを採用する機種では、本機よりも大きな液晶パネルを採用しながら、実用的なバックライト輝度の設定で1セルあたり1時間前後の駆動時間を実現しているものもあることを考えると、少々不満の残るところではある。

●ツメの甘さが解決されれば……

 InterLink XPシリーズはCentrinoマシンとなり、従来機の最大の問題だった熱処理の問題をほぼ解決している。トータルのユーザー体験という意味では、大きく向上した製品だ。小型ノートPCが減っていく中で、その存在はより際だつものにもなっている。フォームファクタとして、このクラスの製品が欲しいというのであれば、決して悪い選択ではないと思う。

 しかしいくつかツメの甘い部分もある。消費電力が他の同等機種よりも明らかに多く感じるのは、おそらく省電力に対する取り組みが甘いためではないだろうか。18650を5本で、3時間を切ってしまうバッテリ駆動時間というのはあまりにも短い。

 ツヤありのブラック塗装にしても、液晶裏のパネル自身に微妙な凹凸があり、それがそのまま塗装面に現れている。このため、ツヤがあるとは言え、鏡のように滑らかな表面とはなっていない(こちらの方が落ち着いていて良いという人もいるだろうが)。

 付属するACアダプタ用コードも、240V対応か? と見間違ったほど太めのものが採用されている。実際には125V耐圧のコードなのだが、必要以上に長く太いため、せっかくのコンパクトで軽量なボディが持つアドバンテージをスポイルしている。

 そうしたツメの甘さが解決されさえすれば、より広く勧められる製品になるだろう。

□InterLink XPの製品情報
http://www.victor.co.jp/interlink/xp/index.html
□関連記事
【6月3日】ビクター、Centrino対応になったInterLink XP
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0603/victor.htm
【2002年5月1日】【本田】「選べる」ようになった小型ノートPC
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0501/mobile151.htm

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(2003年7月10日)

[Text by 本田雅一]


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