●Grantsdale-GはIntel Extreme Graphics 3を搭載
Intelは来年第2四半期にリリースするグラフィックス統合チップセット「Grantsdale-G(グランツデールG)」で、DirectX 9をハードウェアでサポートする。複数の業界関係者によると、IntelはGrantsdale-Gのグラフィックスコアで、Pixel Shader 2.0互換のプログラム性をサポートすると説明しているという。ただし、Vertex Shader 2.0はCPUのエミュレーションになるようだ。これは、ピクセル処理を担当するPixel ShaderはCPUエミュレーションができないが、ジオメトリ処理を担当するVertex Shader側はまだCPUエミュレーションが可能だからだと思われる。 GrantsdaleはPCI ExpressとデュアルチャネルDDR2メモリ、LGA775ソケット(Socket-T)をサポート、グラフィックスコアは新世代の「Intel Extreme Graphics 3」を搭載する。Extreme Graphics 3でのDirectX 9サポートは、次世代Windows「Longhorn(ロングホーン)」の新UI(User Interface)のフル機能(Tier 2)を使うにはDirectX 9が必須となるためだと思われる。 実際、昨秋、ある関係者は「Intelもグラフィックスにプログラム性を加える方向で行く。Intelは、プログラム性はCPUにという設計思想だったが、GPUのトレンドに従うためにはプログラム性を加えなければならない」と説明していた。 ただし、Grantsdaleのサポートする“Pixel Shader 2.0”が、フルスペックなのかどうかはまだわからない。例えば、トランジスタを食う浮動小数点ピクセルをサポートするかどうか。浮動小数点ピクセルサポートは言ってみればグレーゾーンだ。本来ならサポートしなければならないが、Longhorn UIだけなら必須かどうかはまだわからない。MicrosoftはLonghorn Tier 2 UIの必須要項にPixel Shader 2.0と記しているが、浮動小数点ピクセルとは明記していない。ましてや、パフォーマンスがいわゆる“DirectX 9”世代GPUに匹敵するかどうかは疑問だ。 だが、それでもIntelのグラフィックス統合チップセットがDirectX 9へ向かう意味は大きい。それは、統合チップセットのグラフィックスアーキテクチャの下限がDirectX 9になることを意味しているからだ。おそらく、2004年後半に登場するモバイル向けチップセット「Alviso(アルビソ)」のグラフィックスコアも、DirectX 9対応である可能性が高い。つまり、“DirectX 9”自体は2004年には、ごく当たり前のものになってしまうのだ。
●Intel 865系の廉価版チップセットも投入
Grantsdaleまでの間も、Intelは手を休めない。Intelは、今秋も、新チップセット2種類を投入する予定だ。これは、グラフィックス統合チップセット「Morgan Hill(モーガンヒル)」と、ディスクリートチップセット「Breeds Hill(ブリードヒル)」で、いずれもIntel 865(Springdale:スプリングデール)系列の派生品だと見られる。従来、Intelは派生チップセットには新コードネームはつけなかったが、今回は、きちんとしたコードネームがついている。 Morgan Hillは一言で言うとIntel 865G(Springdale-G)からAGPポートを取った、内蔵グラフィックスだけの廉価バージョン。FSB 800MHz、デュアルチャネルDDR400、「Intel Extreme Graphics 2」グラフィックスコア、ICH5/ICH5R、Hyper-Threadingサポートなどの仕様はIntel 865Gと共通だ。 一方、Breeds Hillは、Intel 865PE(Springdale-PE)をシングルチャネルメモリ専用にした廉価バージョン。FSB 800MHz、DDR400、ICH5/ICH5R、Hyper-ThreadingサポートなどはIntel 865PEと共通だ。 Morgan HillとBreeds Hillのどちらも、FSB 400/533やDDR266/333にも対応する。また、ICH5Rでは、RAID 0に加えてRAID 1のサポートも加わる。ただし、これは実際にはソフトウェアバージョンアップだ。両Hillは、いずれも第3四半期中盤に量産予定だという。 Intelのここ数年のパターンでは、その年の夏商戦に間に合うように新チップセットを投入、そして、その年の後半に派生バージョンをいくつか加えている。今回も、同じパターンを踏襲、Intel 865系列を下へ伸ばす。メッセージは明確で、IntelはメインストリームPCは完全に845系から865系へと移行させようとしている。おそらく、845系列は価格をさらに下げ、Celeron系向け的な位置づけになると思われる。また、Morgan HillとBreeds Hillの投入で、OEMへのFSB 800の浸透も加速されることになる。 ●PrescottベースのCeleronも
また、Intelは、やや遅れていた次世代CPU「Prescott(プレスコット)」のサンプル出荷も始めているらしい。Prescottは、Pentium 4を拡張し、次世代の90nmプロセスに移行させたCPUで、今年第4四半期に投入されえる。顧客に対する広範なサンプルは6月で、第3四半期に量産版に近いサンプルが提供される予定だという。今のところ、スケジュールに変更はない。 ちなみに、Prescottは3.4GHzと3.2GHzで登場、2004年頭には3.6GHz、2004年第2四半期にはおそらく3.8GHzが加わる。IntelのハイエンドCPUは、最近600ドル台からスタートしているが、Prescottもそうなると見られる。 Intelは、Prescottのバリュー版の計画も明らかにし始めたようだ。バリュー版PrescottのFSBは533MHzでL2キャッシュ容量は256KBになると言われている。基本的には、パフォーマンスPC版Prescott(FSB 800MHz/1MB L2)と同じダイ(半導体本体)で、機能を制限したバージョンだと思われる。Hyper-Threadingがバリュー版でも“オン”にされるかどうかは、まだわからない。パフォーマンス(Pentium)系に付加価値をつけるために、バリュー系CPUではHyper-Threadingのような新フィーチャを提供しないという例は多い。
Intelの新プロセスCPUは、バリュー市場に浸透するまで1年前後かかる。そのため、このCeleron版Prescottが登場するのは2004年後半になると見られる。同時期には、同じ90nmプロセスながら、さらに機能を拡張した次々世代CPU「Tejas(テハス)」が登場する。 Intelは、Prescottと同時期に、Prescottコアのデュアルプロセッサ版CPU「Nocona(ノコーナ)」も投入する。Noconaは当初FSB 533MHzで登場、2004年第1四半期にFSB 667MHzに移行する予定だった。しかし、IntelはNoconaのFSBも、2004年第1四半期に800MHzに引き上げることにした。 シングルプロセッサ版のFSBが800MHzで、デュアルプロセッサ版のFSBが667MHzだったのには、動作検証ができていなかったためだ。しかし、IntelはFSB 800MHzで、デュアルプロセッサが可能という確証を得たようだ。これによって、デュアルプロセッサ版Xeon系は、動作周波数もFSB帯域も、完全にシングルCPU版と同等で行くことになった。
(2003年6月24日) [Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]
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