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AMDがデュアルチャネルメモリ版「Athlon 64」を計画




●メモリインターフェイスの異なるAthlon 64

 AMDは3種類の「Athlon 64」を準備しているらしい。(1)1MB L2キャッシュ&シングルチャネルメモリ版、(2)256KB L2&シングルチャネルメモリ版、(3)1MB L2&デュアルチャネルメモリ版の3つだ。

 業界関係者によると、9月に登場するAthlon 64は(1)の1MB L2&シングルチャネルメモリ版(ClawHammer:クローハマー)で、2004年頭に(2)の256KB L2&シングルチャネルメモリ版(Paris:パリス)が続き、さらに2004年中盤には1MB L2&デュアルチャネルメモリ版(コードネーム不明)が出てくるという。Parisは以前から知られていたが、今回、明らかになったのは、Athlon 64でデュアルチャネルメモリ版を投入する計画があるということだ。

AMD DESKTOP CPUコア ロードマップ
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 Intelプラットフォームがデュアルチャネルメモリに移行しつつある今、Athlon 64をデュアルチャネルメモリにするというのは、自然な流れに見える。メモリ帯域を2倍にすることは、特にマルチメディア系処理でのピーク性能を引き上げる効果がある。

 しかし、AMDのHammer(Athlon 64/Opteron系)アーキテクチャでは、メインメモリDRAMインターフェイスをCPU側に搭載している。そのため、Intelプラットフォームのように、チップセットの変更でメモリをデュアルチャネルにすることができない。Athlon 64をデュアルチャネルにするには、CPU自体とCPUパッケージを変更する必要がある。

 そもそも、Hammerファミリでも、サーバー&ワークステーション向けのOpteron(SledgeHammer:スレッジハマー)とAthlon 64(ClawHammer/Paris)で、メモリ周りに違いがある。Opteron系は144bitデュアルチャネルメモリインターフェイス(128bit+16bit ECC)でDDR200/266/333。Registered DIMMをサポートし、メモリバス幅が広いためにパッケージピン数も940ピンと多い。一方、Athlon 64系は72bitシングルチャネルメモリ(64bit+8bit ECC)で、DDR200/266/333/400までサポート。おそらくUnbuffered DIMMだけで、メモリバス幅が狭いためにピン数は754ピンと少ない。

 Opteron系Athlon 64系
メモリインターフェイス144bitデュアルチャネル72bitシングルチャネル
対応DRAMDDR200/266/333DDR200/266/333/400
DIMMRegistered DIMMUnbuffered DIMM
パッケージ940ピンmPGA754ピンmPGA

●デュアルチャネルメモリ版Athlon 64はパッケージが変わる

 Athlon 64の1MB L2キャッシュ版(ClawHammer)は、実際にはOpteronと同じCPUコアを使うと見られる。そうすると、ダイ(半導体本体)には実際には、デュアルチャネルメモリインターフェイスが実装されているはずだ。そのため、Athlon 64をデュアルチャネルメモリに対応させても、CPUの設計自体は変更する必要がないと思われる。

 しかし、デュアルチャネルメモリ版Athlon 64は、754ピンでは提供できないため、パッケージは確実に変わる。逆に言えば、デュアルチャネルメモリ版Athlon 64は、パッケージが異なるだけの製品とも言える。パッケージがOpteronと同じものになるのか、それともIntelのようにLGA(Land Grid Array)を導入するのか、そのあたりは分からないが、ソケットが変わるのは間違いない。もっとも、この時期にはチップセットもPCI Expressへと大転換する。そのため、ソケットの継続性はそれほど問題にならないかもしれない。

 ちなみに、AMDはデュアルチャネルメモリ版Athlon 64はメインストリームデスクトップの高価格帯に留め、ミッドレンジから下はシングルチャネルメモリ版Athlon 64とするつもりらしい。これは、デュアルチャネルのシステムコストを考えれば当然だ。しかし、その場合は、同じAthlon 64でも、高価格版と廉価版でソケットが異なることになる。

 AMDはもともと1MB L2版Athlon 64(ClawHammer)をハイエンド向け、256KB L2版Athlon 64(Paris)をミッドレンジから下向けに提供するつもりでいる。とすると、1MB L2&シングルチャネルメモリ版が、デュアルチャネルに移行し、256KB L2キャッシュ&シングルチャネルメモリ版はそのまま留まるのだと推測される。

 これに、AMDのプロセス移行が絡む。AMDは来年第2四半期に、90nm版の1MB L2版Athlon 64(San Diego:サンディエゴ)を投入するつもりでいる。とすると、このSan Diegoからデュアルチャネルメモリパッケージに移行するとも考えられる。ただし、このあたりのスケジュールは、まだ一切明らかになっていない。

●Athlon 64のDDR2対応はどうなる

 Athlon 64がデュアルチャネルDDR400になるとすると、メモリ帯域は最大6.4GB/secになる。Intel 865/875(Canterwood/Springdale)系と同等だ。少なくともメモリ帯域がボトルネックになることはなくなるだろう。しかし、Athlon 64にとってもっと大きな意味は、メモリ容量の方かもしれない。

 DRAM業界関係者によると、AMDは、シングルチャネルメモリのAthlon 64を3DIMMサポートで立ち上げるつもりだという。ただし、帯域と容量はトレードオフの関係にあり、3DIMMを挿せるのはDDR333までで、ダブルサイドモジュールを3枚挿せるのもDDR200だけという制約があるようだ。デュアルチャネルメモリへと向かうのは、より大メモリ容量を望むニーズに答えるという意味もありそうだ。

 ちなみに、Intelは来春のチップセット「Grantsdale:グランツデール」でDDR2メモリをサポートする。しかし、AMDは、同時期のデュアルチャネルメモリ版Athlon 64でDDR2をサポートするとは言っていないらしい。AMDはDDR2メモリの採用時期については、まだDRAM業界にも明確にしていないようだ。

 もっとも、AMDがDDR2を急ぐ理由は薄そうだ。というのは、DDR2の立ち上がりもスムーズではなさそうだからだ。DDR2のJEDECでの標準化作業は当初の予定より大幅に遅れた。メモリモジュールのスペックも変更が入って、スケジュールが大きく遅れている。また、チップも、今の時点でフルスペックで安定動作するDDR2のサンプルを出せているDRAMベンダーはエルピーダだけだという。

 また、DDR2メモリはDDRに対してダイオーバーヘッドがある。つまり、ダイサイズ(半導体本体の面積)が大きく、コストが高い(DRAMベンダーによって異なる)。そのため、DDR2のビット当たりのコストがDDRと同等かそれ以下になるには、512Mbitの大容量世代品へと移行しなければ難しい。そのタイミングがいつになるかを予測するのは難しいが、DDR2が浸透するにはやや時間がかかることだけは確かだ。

●Opteronのメモリサポート

 DDR2サポートは、おそらくAthlon 64より先にOpteronの方の問題になる。サーバーでは、最大のメモリ容量が重要になるからだ。DDR400ではメモリ帯域は拡大できるが、チャネル当たりに搭載できるメモリ容量が減ってしまう。例えば、昨年のJEDEXカンファレンスでは、IntelはDDR2をサーバーに採用する理由として、高メモリ帯域と比較的高いメモリ容量を実現できることだと説明していた。その時のIntelのプレゼンテーションでは、1チャネル3DIMMで4チャネルのデザインをサーバー用として示していた。IntelはサーバーではDDR400をサポートせず、DDR333からDDR2-400へと移行する。また、そもそも、JEDECの共通ガーバーデザインにDDR400のRegistered DIMMがない。

 そのため、OpteronがDDR333の次にどうするかが、注目される。現状でもDDR333の場合はデュアルチャネルで4DIMMまでしかサポートしていない(DDR266までは8DIMM)。もっとも、Opteronの場合は、CPU数を増やせばそれだけメモリチャネル数も増えるデザインであるためDDR400という選択肢もある。1チャネル2DIMMでも、2CPUなら4チャネル8DIMM、4CPUなら8チャネル16DIMMの構成にできるからだ。

●Athlon 64のステッピングは良好

 AMDのAthlon 64は、ステッピングチェンジは良好に進んでいて、スケジュール通りに行きそうだという。Bステップでは1.8GHz止まりだったと言われるが、Cステップでは2GHz以上が見込まれている。2GHzのサンプル出荷の予定が早まったという情報もある。もっとも、このAthlon 64はいずれも1MB L2版で、256KB L2のParisのサンプルはまだ先のようだ。

 Athlon 64(ClawHammer)の2GHzは、当初の予想通り3400+のモデルナンバーで登場することになりそうだという。逆算すると、おそらく、1.8GHzが3100+、2.2GHzが3700+になると推測される。来年には3700+に達していると推測される。また、来年中盤にはAthlon 64は90nmのSan Diegoにマイグレートするが、この周波数は2.4GHz以上で、4000+クラスと推測される。この時点で、デュアルチャネルメモリに移行するなら、さらに性能が上がりモデルナンバーも上がると見られる。

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【4月24日】【海外】AMDがOpteronでサーバー市場を狙う理由
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0424/kaigai01.htm

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(2003年6月19日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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