世界初の水冷デスクトップ「VALUESTAR FZ」速報レビュー!
〜ハイパフォーマンスと静音性を両立



NEC VALUESTAR FZ

 最近は、マシンの静音化がひとつのブームとなっているが、CPUの発熱は増大する一方であり、通常の空冷機構を利用している限り、ハイパフォーマンスと静音性を両立させることは困難である。そこで、パフォーマンスと静音性を両立させるための切り札として期待されているのが水冷システムだ。

 今回は、NECから発表されたばかりの世界初の水冷デスクトップPC「VALUESTAR FZ」を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であるため、実際に出荷される製品とは細部が異なる可能性があることをお断りしておく。



●デスクトップPCとして初の水冷システムを搭載

 水冷システムを搭載したPCとしては、昨年7月に発表された日立製作所のノートPC「FLORA 270Wサイレントモデル」が存在するが、デスクトップPCで水冷システムを搭載したのは、このVALUESTAR FZおよび同時に発表された「VALUESTAR TX」が初めてとなる。また、FLORA 270Wサイレントモデルは、企業向け製品であるのに対し、VALUESTAR FZ/TXは、コンシューマ向けに販売されることも特徴だ。

 現在、NECのコンシューマ向けPCは、ファミリー向け、パーソナル向け、ニュースタイル向けという3つのセグメントに分類されるが、VALUESTAR FZは、ファミリー向け製品の新シリーズとして位置づけられている。

 VALUESTAR FZは、1モデル(VZ700/6F)しか存在しないが、ニュースタイル向け製品として位置づけられるVALUESTAR TXでは、CPUや無線LAN機能、ビデオカードの違いによって、2モデルが用意されている。VALUESTAR FZとVALUESTAR TXでは、光学ドライブなども異なるが、基本的な筐体のデザインや水冷システムについては同一である。


●HTテクノロジ対応のPentium 4 2.40C GHzとRADEON 9100を搭載

 まず、VALUESTAR FZの基本スペックを見ていきたい。CPUとしては、FSB 800MHz版のPentium 4 2.40C GHzが搭載されている。Pentium 4 2.40C GHzは、まだIntelからは正式発表されていないが、Hyper-Threadingテクノロジ(以下HTテクノロジ)をサポートしていることが特徴だ。

 また、FSBが800MHzに向上したことで、FSB帯域幅が従来の1.5倍に広がり、同クロックでもより高いパフォーマンスが期待できる。FSB 800MHz版Pentium 4の中では一番下位に属するCPUであるが、通常の利用においては十分なパフォーマンスを持っているといえるだろう(ちなみに、VALUESTAR TXの上位モデルでは、Pentium 4 3GHzが搭載されている)。

 チップセットとしては、グラフィック統合型のIntel 865Gが採用されている。Intel 865Gは、デュアルチャネルDDR400をサポートしたチップセットであるが、標準で装着されているメモリは、PC2700 512MB DDR SDRAMが1枚のみであり、デュアルチャネル動作にはなっていない。このあたりは、コストダウンのためかもしれないが、やや残念なところだ。

 ただし、512MBなので、容量的にはとりあえず不満はない。なお、マザーボードは独自形状のコンパクトなもので、メモリスロットは2基しか用意されてない。サウスブリッジとしては、ICH5が採用されている。

 HDDの容量は160GBで、試用機ではMaxtorのDiamondMax Plus 9(2MBキャッシュバージョン)が採用されていた。DiamondMax Plus 9は7,200rpmの高速HDDだが、Quiet Drive Technologyと呼ばれる静音化技術が採用されており、静音性も高い。また、本体内にもう1台HDDを追加することも可能だ。

 Intel 865Gは統合チップセットであるが、ハードウェアT&Lを搭載していないなど、3D描画性能はお世辞にも高いとはいえない。そこで、VALUESTAR FZでは、AGPスロットにRADEON 9100搭載ビデオカード(ビデオメモリ64MB)が装着されている。

 RADEON 9100は、RADEON 8500とほぼ同じ機能を持つDirectX 8.1世代のビデオカードである。最新のRADEON 9800 PRO/9700 PROとは違って、Pixel Shader 2.0/Vertex Shader 2.0には対応していないが(Pixel Shader 1.4/Vertex Shader 1.1対応)、現時点の3Dゲームをプレイするには十分な性能を持つ。

本体内部の様子。マザーボードは独自形状で、PCIスロットはライザーカード上に実装されている AGPスロットとメモリスロットは、マザーボードの一番下に配置されている。メモリスロットは2基だが、標準では1枚しかメモリがささっていないので、デュアルチャネル動作にはなっていない HDDベイは1基空いているので、2台目のHDDを内蔵することが可能だ

ビデオカードとしては、RADEON 9100搭載ビデオカードが採用されている。試用機はファンレスだったが、製品版ではビデオチップにファンが装着される ビデオカードの裏側。ビデオメモリは64MBである。なお、このビデオカードの基板サイズはLowProfile仕様だが、通常のAGPカードを装着可能だ 光学ドライブとしては、DVDマルチドライブ(DVD-RAM/R/RWドライブ)を搭載する

 参考のために、FINAL FANTASY XI Official BenchMark Ver.1.1を走らせてみたところ、スコアは4,244となった。FINAL FANTASI XIをプレイする場合、スコアが4,000を超えれば、最も快適に動作するとされているので、VALUESTAR FZの3D描画性能が十分高いことがわかるだろう。

 光学ドライブとしては、DVDマルチドライブ(DVD-RAM/R/RWドライブ)が採用されている。ドライブのベゼルはフロントパネルと一体になっており、デザイン的にもすっきりしている。PCIスロットは4基装備しているが、標準でFAXモデムとTVチューナ/キャプチャカードが装着されているので、空きスロットは2スロットとなる。

 インターフェース類も充実しており、USB 2.0×5(背面3、前面2)をはじめ、シリアルやパラレル、IEEE 1394×2(背面1、前面1)、S映像入出力やS/PDIF出力(光角形)なども装備している。

 Gigabit Ethernet対応LAN機能を装備していることも特筆できる。このGigabit Ethernet機能は、IntelのCSA対応コントローラ「Intel 82547EI」を利用したものであり、ハブインターフェースやPCIバスの帯域を占有せずに、Gigabit Ethernetのパフォーマンスをフルに発揮できる。

 また、フロントパネルI/Oも豊富である。PCカードスロットに加えて、メモリースティック/SDメモリーカードスロットを装備しているので、デジカメで撮影した画像をPCに転送する場合などに便利だ。そのほか、USB 2.0×2、S映像入力端子、コンポジット入力端子、音声入力(L/R)端子、IEEE 1394(4ピン)もフロントパネルI/Oとして用意されている。

 本体左側のサイドカバーは、ダイヤル式のつまみ(ダイヤルオープナー)を手で回すことで、ロックが外れるようになっている。工具を使わずにサイドカバーを取り外すことができるので、メンテナンス性も高い。

背面パネルの様子。上部にあるのがラジエータである 背面に用意されているポート類。S/PDIF出力(光角形)やIEEE 1394ポートも装備。PCIスロットは2基空いている フロントパネル下部のフタを開けることで、ポート類にアクセスできる。PCカードスロットだけでなく、メモリースティック/SDメモリカードスロットも用意されている

本体左側のサイドパネル。水冷であることを示す「Water-cooled」という文字が書かれている。ラジエータ部分が出っ張っていることもわかる サイドパネルに用意されたダイヤルオープナー。手で90度回して、サイドカバーを上に持ち上げるだけで、カバーを取り外すことができる CSA対応のGigabit Ethernetコントローラ「Intel 82547EI」が利用されているので、ハブインターフェースやPCIバスの帯域を占有せずに、Gigabit Ethernetの性能を発揮できる


●ハードウェアエンコーダや3次元Y/C分離回路を装備したTVチューナ/キャプチャカードを搭載

 最近のPCでは、テレビ録画機能を装備することがトレンドとなっているが、VALUESTAR FZでは、ハードウェアMPEG-2エンコーダや3次元Y/C分離回路、ゴーストリデューサ、タイムベースコレクタを装備した高性能TVチューナ/キャプチャカードを搭載していることもポイントだ。

 ハードウェアエンコーダを搭載しているため、CPUに負荷をかけずに、高ビットレートでの録画が可能である。ビットレートは高画質(8Mbps)/標準画質(4Mbps)/長時間(2Mbps)の3段階から選べるほか、4〜15Mbpsの間(720×480ドット、MPEG-2 CBRの場合)で自由に選択することも可能だ。

 テレビ録画/再生ソフトの「SmartVision」も、最新のVersion 2.1となり、キーワードやジャンルを指定して、気になる番組を自動録画する「おまかせ録画機能」やMPEG-2ファイルのインポート機能が追加されている。

 また、SmartVision/SERVERを起動させておけば、他のクライアントPCからネットワーク経由で録画した映像の視聴やリアルタイムでの番組視聴、録画予約などが行なえる(クライアントPC側にはSmartVision/PLAYERをインストールしておく必要がある)。プリインストールアプリも充実しており、新たにユーザー切り替えソフトの「ファミリーリング」やネットワーク管理ツールの「ネットコーディネータ」が追加されている。

 VALUESTAR FZは、SXGA(1,280×1,024ドット)表示が可能な17型液晶ディスプレイとセットで販売される。液晶ディスプレイと本体とはDVI経由で接続され、表示品位も優秀だ。赤外線方式のリモコンも付属しているので(リモコンの受光部はUSBポートに接続)、離れた場所からSmartVisionなどの操作が行なえる。また、本体の電源を入れると、フロントパネル中央の円形ウィンドウが青色にライトアップされるのも、なかなか美しい。

テレビ録画/再生ソフトの「SmartVision」では、電子番組表の「ADAMS-EPG」に対応しており、録画予約も簡単に行なえる キーワードやジャンルを指定して、その条件に一致した番組を自動的に録画する「おまかせ録画機能」が追加された SmartVison/PLAYERをインストールしたクライアントPCから、ネットワーク経由で録画した番組の視聴やリアルタイムでの番組視聴が可能

従来のユーザー切り替えソフト「ファミリチャンネルスイッチ」に代わって、「ファミリーリング」がプリインストールされている 「ネットコーディネータ」では、ネットワーク上の各PCの状態をグラフィカルに監視することが可能で、ファイルの移動やコピーも簡単に行なえる

付属のキーボードと光学式マウス。キーボードは比較的コンパクトである 付属の赤外線式リモコン。テレビ機能やDVD-Videoの再生などの操作が可能なほか、ポインティング操作を行なうこともできる リモコン下側のフタを開けることで、DVD-Video再生時の細かな操作が可能になる

リモコンの受光部。USB経由で本体に接続する 17型液晶ディスプレイが付属する。デジタル入力対応で、表示品位も優秀だ

電源が入っていない状態では、中央の円形ウィンドウは黒いままである 電源を入れると、円形ウィンドウの下半分が青色にライトアップされる VALUESTAR FZ本体と付属の液晶ディスプレイ、キーボード、マウスを並べてみたところ


●電源が入っていることを感じさせない高い静音性を実現

 スペックや機能を一通り紹介し終わったので、VALUESTAR FZの最大のウリである水冷システムの評価に移りたい。PCの騒音源の中でも特に問題となるのが、CPUファンである。CPUファンは比較的直径が小さいため、十分な風量を確保するために回転数を高くする必要がある。そのため、騒音も大きくなりやすいのだ。そこで、VALUESTAR FZでは、水冷システムを利用することで、CPUファンをなくすことに成功している。

 水冷システムの具体的な仕組みは次のようになっている。CPUにはヒートシンクの代わりに水冷ジャケットが装着されているが、PCの電源が入ると、冷却液(グリコール系の不凍液)が入ったリザーブタンクからポンプで水冷ジャケットに冷却液が送り込まれる。

 水冷ジャケットを通る際に熱交換が行なわれ、冷却液の温度が上昇する。その冷却液は、本体背面上部に設けられたラジエータを通過する際に、外気によって冷やされ、再びリザーブタンクに入る。つまり、リザーブタンク→水冷ジャケット→ラジエータ→リザーブタンクというように、冷却液が循環しているわけだ。

 パイプの継ぎ目などからの冷却液の蒸発を極力抑えるように設計されているので、メンテナンスフリーで長期間にわたって使い続けることが可能だ。

 なお、ラジエターで液体を効率よく冷やすために、12cmの大口径低速タイプのファンが背面に装備されている。このファンは電源ユニットの冷却ファンも兼ねている。ファンの回転数は、本体内部の温度に応じて必要最小限にコントロールされているため、騒音は非常に小さい。本体背面のラジエータ部分に耳を近づけてみると、確かにファンの音が聞こえるが、1mも離れると、耳を澄ませてもほとんど聞こえないレベルである。普段、使っているデスクトップPCの騒音がいかに大きいかを、改めて実感させてくれた。

 資料によると、CPU高負荷時(HDDはアイドル状態)でも30dB以下の騒音レベルを実現しているそうだ。30dBというのは、ささやき声程度の静けさである。静音PCに凝っている人ならわかるだろうが、Pentium 4を搭載しながら、30dBという低騒音を実現するのはかなり困難だ。

 さらに、VALUESTAR FZでは、DVD-Video再生時にドライブの回転数を下げることで、メディアの回転音を削減する仕組みも備えている。PCをサーバーとして24時間稼働させる場合など、家人が寝静まった深夜は騒音が特に気になるものだが、VALUESTAR FZならそういう心配は無用だ。

ラジエータ部分を上からみたところ。ラジエータは、プラスチックで覆われているため、手で触っても熱いと感じるわけではない CPUにはヒートシンクの代わりに水冷ジャケットが装着されている。水冷ジャケットのCPUと接触する部分は熱伝導率の高い銅でできている 右側の銅でできた箱がリザーブタンクである。リザーブタンク内に冷却液が入っており、温度変化による冷却液の膨張/収縮をタンク内の空気層で吸収する仕組みだ

中央に見える黒いものがポンプである。CPU温度に応じて、冷却液の流量をコントロールすることで静音化を実現している ラジエータのカバーを外したところ。約800本もの剣山型ヒートシンクによって、効率よく冷却液を冷やすことが可能だ 電源ユニットとして、DELTA製の250W電源ユニットが採用されている。背面のラジエータ冷却用ファンが電源ユニット用ファンも兼ねているため、高い静音性を実現している


●静音性重視のユーザーなら購入する価値はある

 参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。なお、今回試用したのは試作機なので、製品版ではパフォーマンスが向上している可能性もある。メモリがPC2700のシングルチャネル動作であるため、メモリ帯域幅はそれほど広くないが、実際に触ってみた感じでは、十分なパフォーマンスを持っていると感じた。3DMark2001 SEのデフォルト設定でのスコアは7,411であり、現行の3Dゲームをプレイするには十分な性能であろう。

【VALUESTAR FZベンチマーク結果】
Sandra 2003 Standard
CPU Arithmetic Benchmark
Dhrystone ALU(MIPS)7,329
Whetstone FPU(MFLOPS)1,970
Whetstone iSSE2(MFLOPS)4,403
Memory Bandwidth Benchmark
RAM Bandwidth Int Buff iSSE2(MB/sec)2,369
RAM Bandwidth Float Buff iSSE2(MB/sec)2,374
3DMark2001 SE
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks)7,411
3DMark03
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks)1,017
CPU Tests(CPU Score)400
FINAL FANTASY XI Official BenchMark
 4,244

 VALUESTAR FZは、水冷システムの採用によって、性能と静音性を両立させていることが最大の魅力である。PCをホームサーバーとして使う場合など、騒音がうるさいマシンを部屋に置くのは気が引けてしまうが、VALUESTAR FZならリビングルームなどで常時稼働させていても、騒音が気になることはない。

 17型液晶ディスプレイ込みとはいえ、実売28〜29万円という価格はやや高めに思われるかもしれないが、信頼性の高い水冷システムを実現するには、それなりのコストがかかる。VALUESTAR FZの静かさを一度体感すれば、それだけの価値がある製品だということが理解できるだろう。

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【5月16日】NEC、水冷採用の静音デスクトップPC「VALUESTAR FZ」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0516/nec1.htm

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(2003年5月19日)

[Reported by 石井英男]


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