「記憶喪失」、「駆動静か」、「キリー・ポッター」というキワ物(誉め言葉)で有名な、PC周辺機器関連製品を販売しているイーレッツ。このイーレッツが、満を持して(?)発売したのが超小型静音マシンである「Be Silent」。マジに手のひらに載ってしまう超小型ベアボーンである。今回はゴールデンウィークを挟んでこの「Be Silent」を色々弄ぶ(?)機会があったのでご紹介したい。 ●主なスペックと構造
まずは製品のスペックをご紹介しよう。搭載するのはVIA Eden ESP6000(667MHz駆動)で、これにVIAのVT8606(ApolloPro 133Z)とVT82C686Bを組み合わせてある。メモリはPC133のSO-DIMMスロットが1つあり、標準256MB、最大512MBを搭載できる。HDDは2.5インチの40GB HDDが搭載される。 本体サイズは170×110×60mm(幅×奥行き×高さ)。5インチベイドライブより一回り大きいが、奥行きは半分以下である。重量は約1.1Kgとなっており、軽々と手で持ち上げられる。電源は外部のACアダプタからの供給で、30Wのものが付属する。「たった30W?」と思うかもしれないが、Eden ESP6000の消費電力はたったの2.9W。マザーボード上のその他のチップの消費電力を全部合わせても10Wそこそこだろう。HDDやPS/2ポートへの供給電力まで合わせても20Wで収まるはずで、USBポート経由であれこれ駆動しても30Wあれば足りる計算になる。 外観はというと、とってもシンプル(写真1)。フロントパネルは電源スイッチと、Power/HDDアクセスのLEDのみである。上にちょっと見えているスリットは、本機の大きなウリである「静音」に欠かせない巨大ヒートシンク。側面から見ると、その構造が良く判る(写真2)。したがって、本機の上に物を置いたり、狭い場所に押し込めたりして放熱効率が落ちると、さすがに熱暴走の危険があるので注意してほしい。 コネクタ類は背面に集中している。シリアルポート、VGAポートが並び、その上にはサウンドポートやUSBポートが位置する(写真3)。その脇にはPS/2ポートと2つのEthernetが見える。リセットスイッチは完全に穴の奥に位置するので、押す場合は何か尖った細いものが必要だ。
HDDは底面に設置される形態だ(写真4)。SO-DIMMスロットは本体側にある。底面のネジを外すだけでアクセスできるので、かなり手軽ではある。ちなみに底面には、フラッシュメモリカードのインターフェイスと思しきものも見えるが、ケース側には一切取り付け穴が用意されていないので、現状ではこれを利用する事はできない(写真5)。 フロントパネルを外すとこんな具合(写真6)だ。CPU(左端)とノースブリッジ(中央)のヒートシンクは熱伝導ゴム経由で、上側のヒートシンクに熱を伝えるようになっている構造がわかる。ちなみに内部はこんな具合(写真7)だ。 さてこのBe Silent、ショップおよびイーレッツダイレクトでは、ベアボーンモデル(メモリ/HDDなし)が販売されている(イーレッツダイレクト価格で59,800円)ほか、PC133 256MBと40GB HDD、およびWindows XP Professionalがインストールされたモデルがイーレッツダイレクトのみで販売されている(99,800円)。今回試用したのは、このインストール済モデルの方だ。
●さてこれをどう使ったものか さて、届いたBe Silentをセットアップして電源を入れると、Windows XPが立ち上がる。確かに一応使えるは使える。普通にエクスプローラを使っている限り反応は悪くないし、一応AGP 4X相当のグラフィックコントローラ(S3 ProSavage4)が内蔵されているので、Direct3Dもまともに動作する。 が、ちょっと負荷を掛けた瞬間に動作が鈍くなるというのも事実。実は筆者も、居間にC3 800MHz搭載のEdenマザーを使ったベアボーンを置いて利用している。OSはWindows 2000で、メインの用途はメールやWebだが、デジカメで撮った猫の写真を取り込んで加工、ホームページにアップするなんて用途にも利用する関係で、多少はマルチメディアコンテンツの生成を行なったり、たまにはDVDの再生にも利用する。 こうした用途程度だとC3 800MHzならば十分に動いてくれるのだが、667MHz動作のBe Silentは体感的には半分程度の性能しかない印象だ。恐らくOSとチップセットとメモリの違いが大きいと思うのだが、結果としてメールチェックと(軽めの)Webアクセス以外にはちょっと使えない印象がある。 実際その実力はというと、1MbpsのWMP9動画を再生したところ ・音声は切れ目無く再生できる といった具合で、負荷が掛かった状態ではあまり無理が利かない。したがって、Windows XPのローカルPCとして使う際には、あまり無理な作業はさせないほうが良いという雰囲気だった。もっともここまで負荷を掛けても、ヒートシンクの温度は42.7度(待機状態で41.7度、室温は28度)にしかならず、低消費電力、低発熱の謳い文句が伊達ではないことは確認できた。 ちなみに、So-netのPostPetMarkを利用した際のスコアは501で、ここからも性能が読み取れるだろう。 ではローカルPCではなくルータとして使ったらどうか? Ethernetが2つあるあたり、こうした用途を前提にしているかのようにも見受けられる。そこでPPPoE接続で、Bフレッツの100Mbpsに接続してみた。 この状態で、フレッツスクエアで回線速度の測定を行なった結果はというと、5回測定の平均速度で23.77Mbpsという結果に終わった(写真8)。「Bフレッツで20Mbps出れば良いのでは?」という声も聞かれそうだが、マイクロ総合研究所の「NetGenesis SuperOpt90」では平均60Mbpsオーバーが出る事を考えると、「ルーターとしてもやや力不足では?」という印象を受けなくもない。 ただ、これはPPPoE接続とWebブラウザの両方を同一マシンで動かしているため、と考えられなくもない。そこでネットワークブリッジを設定し(写真9)、手元にあったAthlon MP 2600+デュアルのマシンを繋いでやはりフレッツスクエアの速度測定を行なうと、平均値は更に下がって19.93Mbpsになった(5回平均)(写真10)。
少なくともブロードバンドルータとして使うには、(ADSL回線には十分ともいえるが)もう少しパフォーマンスが欲しいところである。ちなみにPPPoEを利用しない、純粋なルーティング性能は30Mbps強(Be Slientを挟んで2台のマシンの間でFTPを行なっての数字)程度で、これもちょっと物足りないところだ。 もっとも、本来こうした小型マシンの場合、Windows XPを入れるケースはちょっと珍しい。普通ならLinux系だろう、ということでHDDを交換し、手持ちのRed Hat 8.0のCD-ROMからインストールを行なおうとした。Be Silentは拡張ポートがUSBのみなので、インストールはブート可能なUSB CD-ROMを接続して行なう事になる。 実際、これを使ってRedHat 8.0のブートローダーまでは動いたのだが、インストールの途中で敢え無くストップ。というのは、(これはLinux系一般にそのようだが)USBブートを掛けてしまうと、そこからHDDにインストールする事ができないためだ。一旦HDDにFAT領域を作り、そこにインストールイメージをコピーしておくか、FTPサーバもしくはNFSサーバをたて、そこからインストールするといったやり方が一般的である。 今回はちょっと面倒だったので、一旦Be Silentを分解し、IDEのフラットケーブルを通常の2デバイス用のものに付け替えた上で、CD-ROMドライブをスレーブに接続するという乱暴な方法でインストールした(この際、CD-ROMドライブ用の電源は別に用意する必要がある。筆者はこうした用途のために、AT電源を常備している)ところ、問題なくインストールできた。ただ、あまりスマートとはいえない方法であり、もう少しスマートな方法を模索したいところだ。 ちなみにここまで手間を掛けてルーターを構成したものの、性能は40Mbps弱でしかなかった。Windows XPそのままで使うよりはマシであるが、やはりこうした用途にはブロードバンドルータを用意したほうが、手軽で性能が高く、しかも安いという結論に終わってしまった。 ●という訳で いまいち筆者の環境では使い方に悩むBe Silent。とりあえず思いついたのはUSBカメラとDaddy's Homeで配布されているLiveCapture!をインストールし、ついでにUSBの無線LANカード(例えばコレ)を突っ込んで、24時間猫監視カメラを作るとかいったあたりだが、ちょっと勿体無い使い方な気もしなくはない。せめてCFカードスロットなりCardBusスロットなりが開放されていればもう少し応用も利くのだが……。珍しく“負けた”、つまり筆者には使いこなしきれない製品だった。 □イーレッツのホームページhttp://www.e-lets.co.jp/ □製品情報 http://www.e-lets.co.jp/news/r_be_silent.htm □関連記事 【4月7日】イーレッツ、ファンレス仕様のサーバー向け小型PC http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0407/elets.htm
(2003年5月16日) [Reported by 槻ノ木隆]
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