第198回
CentrinoノートPCに込められた哲学
~最終回 インタビューを終えて



 2週4回に渡ってPentium M(あるいはそれに準ずるプロセッサ)搭載ノートPCの開発者インタビューを行なった。今回、このような企画を行なってみたのは、Pentium Mが素晴らしい性能を持っていたからということもあるが、それが一番の理由ではない。IntelがPentium Mをリリースするに当たって、PCベンダー各社がその機会を狙って力の入った新製品を送り出したからだ。

 インタビューでは紹介しなかった製品も含め、Pentium Mをターゲットに、より良い製品を作ろうという意気込みが、どの製品からも伝わってくる。このあとIntel 855GMが発表され、夏のボーナス商戦を伺う製品が登場するようになれば、さらに多くの注目製品が登場するようになるだろう。

 今回は後日談として、本連載担当のT氏とともにCentrinoノートPCのインタビューを振り返ってみた。

●頼りなさの消えたdynabook SS S7

東芝 dynabook SS S7

[本田] 今回、色々取材して一番、気になった機種はどれ? 取材できなかったThinkPad X31を含めてもいいのですが。取材時の様子を見ると、Dynabook SS S7がお気に入りかな?

[T] そうですね。軽量で頑丈なのがよいです。個人的には、S7があそこまで薄さにこだわるのがよく理解できないのですが、頑丈なら薄くてもいいかなと思いまして。

[本田] 薄いノートPCが欲しくないのにS7を選ぶの?

[T] 本田さんと同じですよ。薄さが欲しいというよりは、仕事に耐える操作性と性能を、なるべく軽い重量で欲しいから。今はThinkPad X24を使っていますが、最近ニコンのD100(一眼レフデジタルカメラ)を買って取材に持ち歩くようになり、PCの重さが辛くなってきたところでした。触ってみると、S7はX24と比肩するぐらい頑丈ですし、さらに軽い。あと、液晶の品質も魅力ですね。

[本田] S7は東芝製の低温ポリシリコンだけど、今のところ100ppi程度のピッチでは通常のアモルファスシリコンの液晶と変わらないというのが定説だよね。IBMもX30ぐらいの世代からノングレア処理が変わって見やすくなったと思うけど、ハッキリと差は感じる?

[T] X30はわからないんですが、普段からX24を使ってる身としては、東芝の液晶パネルは“きれいだなー”と正直思います。しかし、思い込みもあるかもしれないですね。“液晶は東芝のほうがイイ”と。

[本田] S7は見た目やシリーズ構成からすればマイナーチェンジなんだけど、中身や手にした時の雰囲気は本当に全然違う。僕はS5を持っているし、今回は14.1型クラスに注目していたから見送ることになると思うけど、そうじゃなければX31とS7の間でかなり迷っただろうね。超低電圧版というと、パフォーマンスが問題だったけれどPentium M 900MHzならその点はあまり気にならない。ハードディスクのパフォーマンスアップも、体感速度を上げるのに役立ってるね。

●デザインよりも価格の安さを強く感じたバイオノートZ

ソニー バイオノートZ

[本田] 実はインタビューのあと、開発の藤田さんに“Zのデザイン、正直に言ってどう思いますか?”と訊かれたんですが、Tさん、Zはカッコいいと思う?

[T] CMとか、カタログをみてると、オォ! なかなかカッコいい! とは思うんですが、実物はちょっとデカすぎるなぁ、と思います

[本田] なるほど。でも大きさとカッコの良さは違うからなぁ。それに、14.1型の液晶パネルを使う限り、あれ以上は小さくできないですしね。それとも、実際の数字以上に大きく見えるってことかな

[T] ええ、キーボードの横の空間とかが。あと、CMなどの写真を見ると、薄型に感じるんですが、実物は想像していたのよりも厚ぼったく感じました。

[本田] Zはクサビ型のデザインを採用していますからね。安価でバッテリ持続時間の長い薄型ノートPCを開発する上で、もっともオーソドックスな作り。丸形セルの18650型は安くて容量が大きいけれど、薄型化には適していない。だから、おしりが大きいんだよね。鞄に入れて持ち歩くよりも、スタイリッシュで軽量なトランスポータブルとして考えるととても良いのでは? と思うなぁ。

[T] う~ん、僕はZを見ると、なぜかワープロ専用機を思い出すんです(笑)。お尻が大きいせいかな。

[本田] それに、個人的にはWORKSモデルの32万って、すんごくお買い得だと思いますよ。絶対的な金額として考えると高いと思うかもしれませんが、プロセッサの価格や標準実装メモリ、SXGA+の液晶パネルなど、直販系ベンダーと比べても安価な印象がある。

[T] たしかにスペックと価格のバランスから言えば魅力的ですけど、視覚的にも、実際にも重いのが難点かと。それにクサビ型ってモバイルっぽくないというか、14.1型クラスともなるとクサビ型だと鞄に収まりが悪いじゃないですか。でも、14.1型SXGA+が持ち歩けるぐらいの携帯性を持つようになるのが、個人的な理想です。あと300gくらい、なんとかならんですかねぇ?

●14.1型シングルスピンドルは商品として成り立つ?

[本田] 14.1型って、液晶パネルだけで420~450グラム以上あるから、あれ以上は軽くならないでしょうね。少なくとも「デカイ」っていうのは、14.1型ではどうにもなりません。当然だけど。逆に、軽くてフラットなデザインなら14.1型クラスのフットプリントでも持ち歩きたいのかな?

[T] 出張用や自宅用など、用途ごとにノートPCを買えるほどお金持ちではないので、持ち歩ける重さなら欲しいですよ。複数PCを持つとデータ整合性の管理も大変だし。

[本田] なるべく1台でやりくりしようってわけだね。ならPentium M搭載の12.1型が、パフォーマンス的にもメインマシンに十分なパワーがあるし、携帯性もあるしで、現時点ではバランスが良さそうだね。その上で、将来的に軽くなれば14.1型のSXGA+がいいなぁってところかな?

[T] ですね。僕の中で12.1型でいいやって思っていたのは、重さと画面の広さの間で妥協した結果なんだなぁと、今気が付きました

[本田] 東芝にインタビューに行った時、的場さんが“14.1型シングルスピンドルってどうかな?”なんて話をしていましたよね。シングルスピンドルにした結果、重さは1.9kgになりました、では魅力がないけれど、1.6~1.7kgぐらいになるなら欲しいよね。たとえばうちのS5をThinkPad T40の上に置いても、実は思ったほどフットプリントの違いがない。

[T] 14.1型シングルスピンドルでSXGA+なら、それは欲しいですよ。バイオノートVXって機種がありましたけど、あれはそんなに軽くなくて、解像度もXGAだったんですよね。シングルスピンドルらしい軽さと、14.1型ならではの高解像度が実現されれば欲しい。

[本田] その話が出た時、的場さんにも話したんですが、市場性があるかどうかが問題だよね。僕らのような職業の人が、仕事だけに使うのであれば、14.1型シングルスピンドルって受けると思うんですよ。Zを開発した藤田さんも、個人的には14.1型シングルスピンドルは好みのフォームファクタだって話していましたね。でも、自宅用のパソコンを買う人には受け入れられる製品じゃない。鍵となるのは企業向けのモバイルノートPCとして受け入れてもらえるかどうかじゃないかな? ビジネス用途だけを考えれば、光学ドライブの内蔵必須ではないし、用途によっては製品ライフの中で光学ドライブを利用する時間はごく僅かなハズ。いや、僕自身が光学ドライブをAV用途以外では使わないからそう思うんだけどね。いずれにしろ、14.1型シングルスピンドルというフォームファクタに市場性を持たせるためには、バッテリ駆動時間を確保しつつ重量を軽くできるかどうかにかかっていると思う。

●10.4型XGAの今後

[本田] ところで、Tさんは僕と同い年な訳ですが、10.4型XGAとほぼ同じドットピッチの14.1型SXGA+は問題なし? 目が辛いとかは無いのかな。

[T] OKですね。Zのインタビューでもその話題が出てきましたが、パネルの絶対サイズが大きければ、あまり気にならないような。本田さんは気になりますか?

日本IBM ThinkPad T40

[本田] いや、僕自身が選ぶなら14.1型だとSXGA+を選びますよ。ただ、色々なユーザーがいるわけだから選択肢は必要だと思う。14.1型だとSXGA+がベストか、XGAがベストかは、ユーザー側の感じ方によって違ってくる。中にはXGAの方がいいという人もいるでしょう。そういう意味では微妙なサイズなんだよね。バイオノートZはSXGA+しか選べないし、T40は最上位モデルしかSXGA+が選べない。できれば直販専用モデルでいいから、CTOで選んで出荷時に組み付けられるようにして欲しい。Zの場合はヒンジが特殊だから、CTOが難しいのかもしれないけど。

 ところで、10.4型XGAの機種は今後、どうなるかな? 今のところPentium M搭載機は登場していないし、より小さなノートPCが欲しい人はミニノートPCクラスに移行した人も多くて機種はずいぶん減っちゃった。バイオノートSRとLet'sNOTE R1、それにMURAMASA MM1ぐらいかな? たぶん、Intel 855GMが出れば、製品も登場するんだろうけどね。

[T] 10.4型ぐらいのサイズになると、個人的には欲しいと思いませんね。でも、根強いファンがいることは間違いないクラス。バイオノートSRやThinkPad s30のようなフォームファクタのPentium M搭載機を待望している人は、編集部とその周辺にも結構いますよ。

[本田] PCベンダーとしては、12.1型薄型系である程度は軽量化できてきた。ラインナップの整理という意味でも、10.4型クラスを継続するのが難しいのかもしれないね。MM1のように10.4型の方が好調というベンダーもあるにはありますが。今の流れだと10.4型なら1kg切らないと“軽い”と言ってもらえないですし。先日のアンケート結果でも、1.6kg以下で6時間以上バッテリ持続時間があれば、キーボードや画面サイズが大きい方が望ましいというという30代以上のユーザーが多かったですね。学生や20代前半になると、小さいサイズじゃないとイヤという人が増えてくるみたいですが。

[T] 10.4型のマシンの方が、通勤電車の中や公共の場で開くときに12型より目立たなくていいという人も編集部にはいますね。ある程度、車内が混んでても開いて迷惑になりにくい。そういえば、国際線のエコノミー席だと12.1型の場合、きちんとパネルを開けないことがある。

[本田] そういえば、エコノミーで原稿書くために、バイオC1をThinkPadと併用しているライターさんがいましたね。ユーゼージによって適切なフォームファクタが変わってくる好例かもしれないね。個人的にも10.4型XGAには、まだまだ可能性があると思ってます。ただ、今のところ日本にしか市場が存在しないから、日本のPC市場がもう少し元気さを取り戻さないと、10.4型クラスが得意な一部ベンダー以外は参入するのが難しいかもしれないね。

●ThinkPadがプレスの間で人気な理由は?

[本田] Watch編集部はThinkPadが多いねぇ。これは何もインプレスに限った話じゃなくて、他社もThinkPad好きは多い。

[T] 相談して買っているわけじゃないんですけど、本当にそうですねぇ。その次がバイオかな? 本田さんが使っているDynabookは、編集部にはいませんねぇ。

[本田] ThinkPadは頑丈だからとか、キーボードのタッチがいいとか、品質がいいとか色々な理由を挙げる人が多い。もちろん、それもそうなんだけど、個人的には部品を個人でも簡単に手配できる上、ハードウェア保守マニュアルがPDFで公開されているから、簡単なトラブルなら修理送りにしなくても手元で直せるのがいいなと思うな。仕事で毎日使っているPCの中身をバックアップして1週間修理に出す手間を想像すると、忙しい時には気が遠くなるほど面倒だからマイナーなメカトラブルや接触不良は自分で何とかしたい。もちろん、システムボードごと交換となると、病院送りにしなきゃいけませんが。パーツ入手が可能なベンダーは他にもあるみたいだけど、保守マニュアルが簡単に手に入らないことが多い。

[T] そうですね。僕も今使っているX24を、明日修理に出すなんてことになったら気が遠くなります。あと、バッテリーなどの周辺機器が、わりと世代を超えて共通だったりするところも。

[本田] そうなってくると、IBMばかりしか買えなくなるから(笑) T40のバッテリも、大容量の9セルバッテリは新型(マルチプルバッテリチャージャーII)じゃなきゃダメですが、6セルバッテリとベイバッテリは従来の充電器も使えますね。ThinkPad 570に付いてきたフロッピードライブも、ポートリプリケータがあれば接続できるし、ACアダプタもワット数さえ問題なければずっと同じものが使える。

[T] ところで、注文したT40はもう届いたんですか?

[本田] 昨日、届いたばかりだから、まだきちんとは使ってないけど、試作機よりもキータッチが僅かに軽くなって打ちやすくなったように思います。もしかするとロットによる違いかもしれませんが。その代わり、Enterキーは初期のX20系に近いパシャパシャと少し音がするタイプになってます。試作機の時よりも、打鍵時の疲れは少し軽減されているかも。

[T] 元々、本田さんはBaniasが出たらX31かS7を買うかもなんて言ってましたよね。なんでT40になったんですか?

[本田] 12.1型クラスはいくつか持っているし、今回はワールドワイドでのIntelのプロモーションもあって、14.1型クラスに力が入ったベンダーが多かったから。日本ではデルコンピュータも含めて3社ぐらいだけどね。どれも気合いが入ってる。それに海外出張も多いから、ホテルで快適に仕事できる環境が欲しかった。

[T] T40は持ち歩くんですか? 結構重いっすよね。

[本田] ウェイトセーバを付けて2kgってのは、ギリギリ持ち歩ける範囲内かな。個人的に。昔は2.1kgのバタフライを持ち歩いていたわけだし。続けるかどうかはわからないけど、最初のうちは携帯してみて、14.1型のフォームファクタについて、もう少しユーゼージモデルを研究してみたいとは思ってる。実はバイオノートZにするか、それともT40にするかは、かなり迷ったところなんですよ。僕はまだバイオノートを1台も買ったことがないから。

[T] あれだけイロイロ使っていて?

[本田] イロイロと言っても、テクノロジの変わり目に無理矢理買い換える時もあるから。今までだと、Z505やSR、SRXなんかは買いそうだったんだけどね。VXもSXGA+モデルが出ていたら買っていたかもしれない。しかし、なぜかタイミングが悪い。バイオノートの場合、添付ソフトウェアにソニーなりのアイディアが込められている、という面もあるので、1台は買ってみようと思っているんだけど。今回、Zはお買い得度が高かったから、注文しようと思ってソニースタイルの購入エントリーまで登録したんだけどね。光学ドライブやハードディスクがリムーバブルってことと、鞄への出し入れがやりやすいこと、以前に使っていたThinkPadオプションが使えることを考えてT40にした。Tさんは、T40にはあまり興味がないかな?

[T] お金があったら買いたいっす。モノがいいのは、実物を見ればわかるので。でもSXGA+モデルが高すぎます。1.3GHzモデルにもSXGA+があればなぁ。

●編集部で3人が購入決定? のバイオU

ソニー バイオU

[本田] そういえば、PC Watch編集部周りだけで、3人以上もバイオUの購入宣言が出たと聞いたんだけど、Tさん自身はどう?

[T] 元HP200LXユーザーの僕としては、とっても、とっても物欲を刺激される製品です。でもバイオU、欲しいんだけど具体的にどう役に立つのかが、いまいち想像しにくい。

[本田] 何に使うかを真剣に考え始めると買えない製品かもしれないね。

[T] でも実用性なんか考えずに、楽しむための道具と割り切れば、遊び甲斐はありそうですね。ギャンブルで買ってみても、なんだかんだいって楽しめそうな気がします。いまどきこういう、割り切りのいい製品はめずらしいと思います。

[本田] ハードウェアの中身やしっかりした作りを考えると、実は16万円ってそんなに高くはない。あとは実際に使うユーザーが直接的に感じる価値を、どう演出していくかだろうね。使い方の幅を広げることが、今後のUの課題かも。

[T] その「幅」ってのがなんだか想像がつかなくて。まあ、想像できないところに可能性があるから、Uは楽しそうに見えるんでしょうけど

[本田] 自分で楽しみを見つけたり、小さいパソコンをいじくり回すだけで楽しい人もいるわけだけど、安形さんの目指す既存ユーザーではない新しい層のユーザーを獲得するには、専用ソフトウェアを駆使して、Uの操作スタイルでイロイロな事ができるように工夫していく必要があるんだと思うな。ユーザー自身が使い方の“幅”を自分で広げていくだけじゃなくて、いくつか面白そうなユーゼージがあれば、それをソニー側でサポートしてあげるソフトウェアを提供することでユーザーの幅が広がっていくんだと思う。小さいデバイスを使ってもらうためには、目的の処理を可能な限りシンプルに実行させるためのソリューションが必要でしょう。でもたぶん、僕が学生の時代だったら、ホットスポットでネットゲームできるだけで、すごく欲しくなっただろうなぁ。16万円という値段を学生時代に用意できたかどうかはともかくとして。

[T] 逆に言うと、ホットスポットがないと出先では高級ゲームボーイ、高級PDAになりかねない。ケータイメールの代替をめざすなら、通信機能を内蔵していない、というか、無線LANしかないというのは不便じゃないですか?

[本田] 僕はバイオUってケータイ卒業した人のデバイスじゃないと思うし、ケータイの代わりにもならないでしょ。Uを持っている人は、ケータイも別に持っているわけだから、ケータイでできる範囲のことをカバーしてもしょうがないんじゃないかな。もう少しワイヤレスWANの環境が整備されて、さらには価格もこなれてからなら可能性は少しぐらいはあるかもしれないけれど。

[T] うん、インフラの問題は大きいと思います。

[本田] 安形さんと話していても、ケータイユーザーの取り込みをしたいって話は無かったな。パソコンをもっと手軽なコミュニケーションツールとして認知して欲しい、という気持ちはすごく感じたけどね。PCはPCだし、ケータイはケータイ。PCとケータイが将来的に統合されるとして、本当にベストな製品としてのカタチは別のところにあると思うよ。そうした中で、一番小さいPCという範疇で考えると、Uは今のところ模範的解答にはなっている。で、Tさんは買うの?

[T] S7とUでまだ迷ってます。Uは買って実際に使い始めないと、自分でもどういう使い方をするのかわからないというところが面白いので、S7よりもUを買ってしまうかも。

[本田] 仕事よりも物欲ということかな? ある意味健全かも。でも、インプレス社内じゃ買う人が多そうだから、あんまり自慢ができないのが寂しいね。

[T] えっ、いや、仕事で原稿書くのはX24でもできるから……新しいコンピューティングの可能性をUで体験してやろーではないか、と(汗) もし買ったら社外で自慢しまくりでしょう。合コンとかでは強そうですぞ。合コンなんか行かないけど

[本田] ほほう、妻子を置いて合コンですか。でもオタク扱いされるのがオチのような。

[T] いまどきのコたちは、PCひとつでオタク扱いはしないでしょう。それにWatch内よりも、そういう席のほうが、面白い使い方を発見できそうな。

●バッテリ利用時のパワーアップは家庭での利用スタイルを変えるか

[本田] どの製品にも共通するんだけど、同じバッテリ持続時間のスペックでも、Baniasマシンの方が実駆動時間が長くなるんだよね。これは実際に使ってみると実感する。Pentium III比でもそう感じるよ。もちろん、CPUだけじゃなくて、色々な要素が組み合わさってのことだけど。僕がふだんS5で使ってるのと同じ、へたったバッテリをS7に取り付けて動かしたけど、全然、減り方のペースが違う。ユーティリティの設定は全く同じにしているのに。

[T] 今回、インタビューしていないX31も、かなりバッテリが伸びてるって本田さん、言ってましたよね。

[本田] そうですね。X22あたりを使っている人は、なんで同程度のバッテリパックで、こんなに違うのかって思うハズですよ。あと、今回は紹介できなかった製品の中では、Dynabook V7も個人的には興味深かった。15型液晶だし、デザイン的にも持ち歩きは目指していないトランスポータブルノートPC。それなのに大容量のバッテリを搭載したCentrinoマシンにしている。本当はV7のような製品がもっと出て、認知されてほしいね。

[T] モバイルマシンでもトランスポータブルな使い方をする人が多いけど、屋内でもバッテリで運用する人が増えたりするのかな? たしかに、電源ケーブルがなくなるのは魅力だけど。

[本田] うちのカミさんは、すでにそうした使い方をしていますよ。たぶん、彼女は今使っているパソコンを、AC駆動で使ったことがないんじゃないかな。アプリのセットアップは、全部僕がやったしね。その後は、充電しておいて使うときだけACアダプタを取り外して、自分の好きな場所で使ってる。コードレスホンみたいな使い方。

[T] 充放電を繰り返すと、バッテリ自体の寿命が気になりません? 1年くらいもてばいいって程度でしょ。

[本田] まぁ、それはしょうがないでしょう。必要なランニングコストだと思って使わせています。それに完全ワイヤレスで使うようになってから、彼女はパソコンを使っている時間が確実に長くなりましたね。もちろん、バッテリ持続時間の長いパソコンじゃないとダメなわけだけど。

[T] そこらへんの感覚が、V7みたいに“家庭向け”製品を買う人たちに理解してもらえるかどうか。うちのカミさんなんか、IXY Digitalのへたったバッテリを買い換えるのも躊躇してるくらいで。そういうのが、ふつうの主婦感覚なんじゃないかな。

[本田] うーん。そうですか。そういや、うちのカミさんには、バッテリが1年でへたるとは言ってないし、バッテリの値段も話してないな。主婦にとっては、実用化されたとしても燃料電池なんて、もっての他かも。カートリッジを買わないと使えないパソコンなんていらない! って。

[T] 家の中で日用品のように使おうと思ったら、そうでしょうね。

[本田] バッテリの流通量がもっと増えるとか、同じカタチのバッテリパックが標準化されるとかになれば、もっと安くなるだろうけど。でも、バッテリパックの標準化は、過去にやろうとして失敗しているから難しいだろうな。デザインとの兼ね合いもある。でも、せめて18650の6セルパックが9,800円ぐらいならいいのに。

[T] フツーの人なら5,000円くらいじゃないと納得してもらえないのでは。

[本田] 月に800円も払ってくれないかな?

[T] 電源ケーブルが消えることに、月800円払おうという人がどの程度いるでしょうね。

■    ■    ■

 後からうちのカミさんに、月800円で完全ワイヤレスになるか、ならないか、ならどちらを選ぶ? と訊いてみたら、やっぱりNo!のお答え。ランニングコストはその半分以下じゃないと、やっぱりACで使う方がいいとか。

 主婦たちにも完全ワイヤレスを実践してもらうためには、バッテリ持続時間だけじゃなくて、彼女たちが電気代や水道代の削減にかける意気込みと同じぐらい、いやそれ以上に、バッテリの運用コストを下げる必要がありそうだ。

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(2003年4月3日)

[Text by 本田雅一]


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