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2005年の「Tejas」は4.4GHzで拡張版Hyper-Threadingを搭載




●Prescottをさらに拡張するTejas

 Intelの2005年の次世代CPU「Tejas(テハス)」は、Hyper-Threadingテクノロジを拡張、1,066MHzのFSB(フロントサイドバス)をサポート、新しい「LGA(Land Grid Array) 775」パッケージで登場する。クロックは4.4GHz〜5GHz、消費電力は最大で110W、製造プロセス技術は90nmプロセス。

 Intelが今年第4四半期に投入する「Prescott(プレスコット)」とTejasは、どちらもPentium 4アーキテクチャをベースにしており、同じ90nm世代。しかし、ある業界関係者によるとTejasの方がより大規模にアーキテクチャが拡張されているという。Prescottが“アップデート”版Pentium 4、次のTejasはそのPrescottのさらに拡張版という位置づけだと思われる。雰囲気としては、“Pentium Pro→Pentium II→Pentium III”のコースに近いだろう。

 IntelはPrescottでは次のようなアップデートを行なうことを2月のIDFで明らかにした。

  • Hyper-Threadingの改良
  • 13個のPrescott新命令(PNI:Prescott New Instructions)の追加
  • LaGrandeテクノロジサポート
  • L2キャッシュを1MBに倍増
  • L1データキャッシュを16KBに倍増
  • 〜5GHz(技術的な最高クロック)

 一方、次のTejasでは、今のところ業界情報で判明している拡張点は次のようなものだ。

  • 拡張版(Enhance) Hyper-Threading
  • 8個のTejas新命令(Tejas New Instructions)の追加
  • L1データキャッシュを24KBに増加
  • トレースキャッシュ(L1命令キャッシュ)をμOPs 16K個分に拡張
  • FSB 800/1,066MHz
  • LGA 775パッケージ
  • 4.4GHz以上でスタート

●キャッシュとHyper-Threadingを強化

 来年後半に出荷されるTejasでは、4.4GHzという動作周波数は当然だ。IntelはPrescottで来年前半には4GHzに達すると見られているからだ。また、IntelはIDFで、Prescottが技術的に5GHzまで行けると説明した。だとすると、Prescottを拡張したTejasも5GHz近辺に最終的に到達できると推測される。

 PrescottとTejasではL2キャッシュは1MBと同じだが、L1キャッシュは強化される。Intelは、CPUの高速化のためにL1キャッシュの量をぎりぎりまで抑える傾向がある。しかし、今回はデータ24KB、トレースキャッシュは内部命令(μOPs)で16,000個分(これまでは12,000個分)と、一気に増やす。もしuOPのサイズが32bit長だったらその物理サイズは「4B×16k=64KB」となる(実際は32bit長ではない可能性は高い)。ちなみにIntelは、トレースキャッシュはPrescottでも拡張すると言っているが、容量が増えるかどうかは明らかにしていない。L1の増量は、L1キャッシュミス率を減らすことになり、パイプラインが乱れると性能が大きく落ちるPentium 4アーキテクチャでは、性能にかなり影響するだろう。

 TejasのFSBは1,066MHzに対応する。ただし、これは見合うメモリ(デュアルチャネルDDR2-533)を使う必要がある。つまり、DDR2-533の立ち上がりにかかっていると言っていい。また、そこで性能が向上するのは、おもにメモリ帯域を圧迫するアプリケーションとなる。

 Tejasのアーキテクチャ面での拡張ポイントはHyper-Threadingにある。Intelは、PrescottでのHyper-Threadingの改良(improve)は、性能のボトムラインをアップする程度の改良だと説明していた。それに対して、TejasではHyper-Threadingの拡張(enhance)を行なうという。

 まだ現在のところ、この拡張版Hyper-Threadingの内容はわからない。現在のPentium 4では並列実行できるスレッドは2個までだが、Tejasではそれ以上のスレッドを並列化できる可能性がある。また、以前のレポート「Intel、次世代Hyper-Threadingテクノロジを公開」で紹介したように、IntelがIDFで説明したような「非対称型(Asymmetric)Hyper-Threading」のサポートなども考えられる。だとすれば、IntelはTejasからは、マルチタスクやマルチスレッド時以外に、シングルスレッドのアプリケーション性能もHyper-Threadingで向上させる方向へと向かうことになる。

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WillametteからTejasまでの進化(Tejasは推定)

●Tejasでダイサイズを拡張できるIntel

 IntelはTejasでは、かなり大規模なアーキテクチャ拡張をする余裕がある。それは、ダイサイズ(半導体本体の面積)を増やせるからだ。

 Intelは通常、一つのCPUアーキテクチャ世代で一度大きなアーキテクチャリフレッシュを行なう。Pentium→MMX Pentiumのような拡張だ。これは、Intel CPUのダイサイズの移行からすると、合理的な戦略となる。それは、Intelは一つのCPUアーキテクチャでプロセス技術の進展とともにダイサイズを縮小させているからだ。およそ3世代で、CPUはもうこれ以上小さくできないという制約サイズまで来てしまう。

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Intel CPUダイサイズの変遷(推定)

 そこで、Intelは、第3世代目をベースに大幅なアーキテクチャ拡張を加える。CPUのダイサイズを増やして、より多くのユニットを追加して性能や機能を拡張する。それによって、CPUアーキテクチャを延命している。

 これをPentium 4に当てはめると、論理的には次のようになる。

第1世代200平方mmWillamette(217平方mm)0.18μm
第2世代120〜140平方mmNorthwood(131平方mm)0.13μm
第3世代80〜100平方mmPrescott(109平方mm)90nm
リフレッシュ第1世代120〜140平方mmTejas90nm
リフレッシュ第2世代80〜100平方mmTejas Compaction65nm

 ただし、Tejasのトランジスタ数やダイサイズははまだ不明だ。今回の場合、消費電力の制約があるため、従来ほどはトランジスタを増やさない(=機能を強化しない)可能性がある。実際、OEMメーカー向けのマザーボードデザインガイドでは、Tejasのトップパワーは110Wで、100WのPrescottと10%程度しか変わらない。もっとも、Tejasでは省電力制御やリーク電流の低減でも改良されていて、トップパワーが抑えられている可能性がある。

●GrantsdaleとペアになるTejas

 TejasをサポートするIntelチップセットは2004年のデスクトップチップセット「Grantsdale(グランツデール)」だけとなる。Grantsdaleが、FAB 1,066MHzとLGA 775ソケットをサポートするためだ。GrantsdaleはPCI Expressチップセットであるため、Tejasは事実上PCI Expressとセットとなる。

 ちなみに、LGA 775プラットフォームへの移行措置のために、PrescottにもLGA 775版が来年前半には登場するという。これは、NorthwoodのためにWillametteがPGA 423からmPGA 478へと移行したのと同じパターンだ。Grantsdaleの登場とともに、まずPrescottがLGA 775化し、来年中盤までにはPrescottは完全にLGA 775化すると見られる。

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Intel CPUコアの移行予想図

 また、今わかっている限り、GrantsdaleはLGA 775しかサポートしないため、PCI Expressへと移行できるのはPrescottとTejasだけとなり、Northwoodは取り残される。もっとも、これはIntelの90nm版CPUの生産量次第で変わる可能性はある。

 このPGA型パッケージからLGA型パッケージへの移行も、Tejasの重要なポイントだ。Intel CPUにとってPentium IIIの時のカートリッジからPGAへの移行以来の、大きなパッケージ変更になるからだ。IntelはこれまでもLGA技術を使ってきたが、それはカートリッジの中などの話。今回のTejasのように、デスクトップCPUで、ユーザーが差し替えできるLGAソケットを使うのは初めてとなる。

 現在のところ、実際のTejasのパッケージの詳細はわからない。しかし、LGA型パッケージでは、従来のPGA/uPGA型パッケージにあったような“ピン”は見られなくなる。その代わりに、CPUパッケージのベースには、金属のLand(電極パッド)が並ぶ。一見するとBGA(Ball Grid Array)パッケージのようだが、BGAのようなハンダボールは持たない。基板やインタポーザに溶接するBGAと異なり、ソケットに挿入する。つまり、現在と同様に、ソケットにCPUを差し替えることができる。ただし、これまでと比べると、ちょっと扱いはやっかいになりそうだ。

●ヒートスプレッダをかぶせるLGA 775ソケット

 現在の一般的なLGAソケットは、ソケットにLGAチップを挿入、それを上からリテンションメカニズムで圧力をかけ押さえつけ、電極パッドをきちんとソケット側のコンタクトと接触させる形になっている。TejasのLGA 775ソケットも同様だが、一つ違う点があるらしい。それは、ダイ(半導体本体)の上に、ヒートスプレッダパーツを被せて押さえつける形になっていることだ。ヒートスプレッダパーツは、Pentium 4のようにダイの上に固定装着されているのではなく、CPUパッケージとソケットのリテンションメカニズムの間に挟み込まれるようだ。リテンションメカニズムの上面はヒートスプレッダの部分が空いていて、ソケットに装着した状態ではヒートスプレッダ部分がリテンションから露出するという。その上にヒートシンクを載せる。

 Tejasの場合、熱をより広い面積に分散するためにヒートスプレッダが必要となるため、こうした仕組みにしたと考えられる。ダイはできるだけ熱抵抗の少ないヒートスプレッダを介してヒートシンクに接触している必要がある。そのため、ヒートスプレッダをソケットと組み合わせてCPUを抑える形にしたと想像される。

 こうした工夫は、CPUにLGAソケットを使う場合には必須で、IBMのLGAソケットもヒートシンクを固定してCPUに圧力をかける仕組みになっている。だが、このことは、ソケットのメカニズムにちょっとした問題が生じただけで、熱の伝導や電極パッドの接触に問題が発生しかねないことを意味する。また、より重くなるヒートシンクについては、さらに強力な装着方法のガイドラインが提示されると思われる。

 IntelがPGAからLGAに変える理由は、パッド数の増大への対応だ。PGAよりもLGAの方がずっとパッド密度を稠密にできるため、パッド数を増やすことができる。Tejasは775ピンと現在のPentium 4の478ピンから1.6倍に増えるため、必要だったと見られる。これはバスが拡張されて信号線が増えるのではなく、高周波数動作を安定させるための電力線などが増えるためだと推測される。

 また、LGAではコンタクト長が短くなるため、インダクタンスとキャパシタンスも少なく、電気特性の面でもいい。熱によるボードとパッケージの間の膨張度の差も吸収しやすい。ソケットでも、多パッド時の信頼性などが向上したことで、CPUへの導入が可能になったと見られる。ちなみに、Intelは昨年春の「Intel Technology Journal(Volume 06 Issue 02)」の記事「Emerging Directions For Packaging Technologies」で、LGAソケットへの移行をすでに示唆している。

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【2月22日】【海外】Intel、次世代Hyper-Threadingテクノロジを公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0222/kaigai01.htm

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(2003年3月25日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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