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NVIDIAが次世代GPU「NV35」のデモを初公開
〜新製品「GeForce FX 5600/5200」を発表




●ドーン(妖精)が4人姉妹で登場

NVIDIA社長兼CEOのJen-Hsun Huang氏
 「GeForce FX 5800(NV30)を発表したときには、いろんな質問を受けた。よく聞かれた質問のひとつは、ドーン(GeForce FXのデモに登場する妖精の名前)には姉妹はいないのか、だった」。

 NVIDIAのJen-Hsun Huang NVIDIA社長兼CEOが、3月6日(現地時間)に米サンノゼで開催された発表会でこう切り出した瞬間、聴衆が静かになった。次の展開が、おぼろげに予想できたからだ。ドーンの姉妹、つまり、次世代GeForce FXが初公開されることが。

今回の発表会では、次世代のハイエンドGPU(NV35)のデモも公開
 Huang氏はその期待を裏切らなかった。次の瞬間、スクリーンには4体のドーンが踊るグラフィックスが映し出された。GeForce FX 5800 Ultraでは1体を描画するだけで精一杯だったドーンが、4体同時に画面に描画される。まさしく、ドーンの姉妹の登場だった。

 Huang氏は、この次世代GPUについて「GeForce FX 5800の2倍の性能で、近いうちに発表される。すでに製品版シリコンが動いている」と説明した。NVIDIAの開発コードネームは、アーキテクチャが拡張されると5つずつ数字が上がって行く。現行のNV30の次は「NV35」になる計算だ。

 以前、NVIDIAのDavid B. Kirk(デビッド・B・カーク)氏(Chief Scientist)は、将来のGPUについて「今は画面に1体のドーンだけを出すことができる。しかし、将来はドーンの大群を飛ばしてみたい」と語っていた。その通りの方向へと進んでいることになる。

 また、NVIDIAはモバイル向けのDirectX 9世代GPUが「来週開催される、大規模な展示会で発表される」ことも明らかにした。来週は、ドイツでCeBITが開催される予定だ。

4人の妖精が踊るNV35のデモ
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●79ドルのDirectX 9世代カード

DirectX 9を79ドルで、が今回のNVIDIAのメッセージ
 もっとも、今回の発表会自体は、NV35のためのものではない。GeForce FXのアーキテクチャを、より廉価なメインストリーム市場やバリュー市場へと展開する、新GPU「GeForce FX 5600(NV31)」と「GeForce FX 5200(NV34)」の発表会だ。そして、発表会のメッセージ自体はシンプルで強烈だった。

 「DirectX 9を79ドル。79ドル、ここが重要だ」とHuang社長は強調する。つまり、日本円にして1万円のボード価格で、DirectX 9世代のGPUを提供しようというわけだ。

 もっとも、それには背景がある。新世代のハイエンドGPU「RADEON 9800」を前日に発表したATI Technologiesに対して、この日NVIDIAが発表したのはメインストリームとバリューを主なターゲットにしたGPU群。しかも、GeForce FX 5800 Ultraは「ロー(生)パフォーマンスが低い」ことで叩かれている最中。そのため、NVIDIAはATIのラインナップの狭間である、ボード価格で79ドルレンジに向けたDirectX 9チップGeForce FX 5200にフォーカスしてきた。

GeForce FXファミリの量産展開に自信を見せるNVIDIA パフォーマンスからバリューまで一気に広がるGeForce FXファミリ

 GPUの世界ではボード価格で99から149または199ドルまでが一般的にメインストリーム。79ドル帯から下がバリュー、逆に200ドル台から上がパフォーマンスと呼ばれている。今回のラインナップでは、GeForce FX 5600がGeForce4 Ti4600/4200後継で、199〜200ドル台前半のメインストリームからパフォーマンス帯をカバー、GeForce FX 5200がGeForce4 MX後継で、79〜149ドルのバリューとメインストリームのレンジをカバーする。つまり、対ATIでは、およそ次のような図式となる。

・GeForce FX 5800(NV30) vs RADEON 9800(R350)
・GeForce FX 5600(NV31) vs RADEON 9600(RV350)
・GeForce FX 5200(NV34) vs RADEON 9200(RV280)

壇上に並ぶNVIDIAの幹部たち
 3桁台の数字でみると、対立するGPU同士が両社で揃っているのでわかりやすい。そして、GeForce FX 5200に対抗するRADEON 9200はDirectX 8.1サポートのGPU。だから、NVIDIAはアーキテクチャ上の優位があるGeForce FX 5200を強調するわけだ。

 もっとも、NVIDIAは実際には、ゲーマーにとって手が出やすい価格帯で比較的高パフォーマンスを実現するGeForce FX 5600にも、力を入れている。ちなみに、以前、このコラムではNV31(GeForce FX 5600)はNV30(GeForce FX 5800)と同ダイ(半導体本体)の派生品ではないかという推測を書いたが、それは完全に間違えていた。GeForce FX 5600は別ダイの、新規設計のチップとなっている。「A1シリコンの段階で非常に良好なので、すぐに量産に入ることができる」とNVIDIAのP. Todd Reddick氏(Sr. Product Manager - Desktop GPU's)は説明する。

4月にはGeForce FXファミリがOEMから相次いで出荷される予定 GeForce FX 5600 UltraのNVIDIAリファレンスボード GeForce FX 5200 UltraのNVIDIAリファレンスボード


●フィーチャは同じだがユニット構成は異なる各GPU

GeForce FX 5600はGeForce FX 5800と完全にフィーチャは同じ
 GeForce FX 5600とGeForce FX 5200は、いずれもGeForce FX 5800と同じフィーチャを備える。つまり、DirectX 9をNVIDIAが独自拡張したCineFXアーキテクチャをサポートし、原理的には同じシェーダプログラムを走らせることができる。ただし、GPU内の各ユニットは、GeForce FX 5800より削られている。

 例えば、数字の上で見ると、GeForce FX 5800が8ピクセルパイプに対して、GeForce FX 5600とGeForce FX 5200はいずれも4ピクセルパイプと説明されている。パイプ数は半分ということになる。しかし、実際にはもっと複雑だ。

 例えば、GeForce FX 5800のピクセル処理部は「浮動小数点演算Pixel Shaderが4個、整数演算Pixel Shaderが4個の合計8個の構成になっている」(NVIDIA、Geoff Ballew氏、Product Line Manager)という。NVIDIAはGeForce FXを“8ピクセルパイプ”または8ピクセル/クロックと呼んでいるが、実際にはデータタイプの異なる2種類の演算ユニット4基ずつに分かれているわけだ。

 それに対してGeForce FX 5600は「4ピクセルパイプだが、6個のPixel Shaderを備える。シェーダのパフォーマンスを重視したためだ」とNVIDIAのKirk氏は説明する。つまり、ピクセルパイプよりも、Shaderの方が数が多い構成になる。だから、GeForce FX 5600は原理的には、ピクセル処理の生パフォーマンス以上に、Shaderパフォーマンスが高くなる。

 もっとも、これも詳しく見ると話はもっと複雑になる。Ballew氏によると、GeForce FX 5600のピクセル処理は4ピクセル/クロックのスループットだが、「ケースによっては6ピクセルシェーディングオペレーションを同時にできる。ただし、実際にPixel Shaderが6個あるとは言えない」と説明する。演算ユニットもGeForce FX 5800同様に、データタイプの異なるものに完全に分かれている可能性がある。

GeForce FX 5800のデモをGeForce FX 5600でも動作 GeForce FX 5600ではアンチエイリアシング機能を向上 GeForce FX 5600では256MBのコンフィギュレーションも提供
GeForce FX 5600のメッセージ GeForce FX 5600とGeForce4 Tiシリーズの性能比較 NVIDIAは今回ドライバの品質を強調

バリュー市場を狙うGeForce FX 5200
 DirectX 9世代のGPU、特にNVIDIAのように伝統的なパイプを分解して演算ユニット(Shader)中心に組み替えたアーキテクチャの場合、このようにパイプ数やテクスチャユニットの数で、GPUの機能や性能を判断することはできない。「従来のような何パイプといった数え方自体が、今では適切ではない」(Ballew氏)という。

 こうした複雑な構造であるため、NVIDIAはチップの詳細な実行ユニットの構造を明らかにしたがらない。そのため現状では、GeForce FX 5600とGeForce FX 5200については、各ユニット(Vertex Shader、カラー演算ユニット、テクセル演算ユニット、テクスチャアドレスユニットなど)の構成はわからない。しかし、GeForce FX 5800の1億2,500万トランジスタに対して、GeForce FX 5600は8,000万トランジスタ、GeForce FX 5200は4,500万トランジスタと、チップの複雑度はかなり違うため、実行ユニットの数は大きく異なると推測される。つまり、Shaderの性能なども大きく異なるわけだ。

バリュー向けでありながらフィーチャはGeForce FX 5800と同じ 同じバリュー向けのGeForce4 MXとの性能比較 GeForce FX 5800での妖精のデモをGeForce FX 5200上でも実演

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(2003年3月7日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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