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nano tech 2003レポート
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燃料電池でノートPC(LaVie J LJ700/5)を動作させているデモ。ノートPCのバッテリが外れていることに注目してほしい |
会期:2月26日~28日開催
会場:幕張メッセ
会場となる幕張メッセでは、ナノテクノロジーを利用した最新デバイスや材料から、ナノレベルの加工を実現するための超微細加工技術、評価用の機器にいたるまで、さまざまな展示が行なわれていた。
すぐに実用化に結びつく展示ばかりではなく、基礎的な研究成果や要素技術に関する展示が多かったが、ここでは、本誌読者の関心が高いと思われるPC関連の話題を中心に取り上げる。
●NECは燃料電池でのノートPC駆動デモや次世代トランジスタの展示
ノートPC用に試作された燃料電池。上部の青色の部分に、燃料となるメタノールが入っている。その下の白い部分が燃料電池本体である。NECの燃料電池は、カーボンナノホーンを白金触媒の支持体として利用することで、高い効率を実現していることが特徴だ |
燃料電池による携帯電話の動作デモは以前にも公開されているが、燃料電池で動作するノートPCを一般に公開したのは、今回が初めてとなる。
今回展示されていたものはあくまで試作品であり、燃料電池のサイズはかなり大きいが、製品化される際にはノートPCにすっきり内蔵できる形状になる。
今回ノートPC用に試作した燃料電池の出力は、ピーク時18W、常用時12Wというスペックであり、ノートPC(デモに使われていたのは超低電圧版モバイルPentium III-M 933MHz搭載のLaVie J LJ700/5)を約3時間動作させることができるという。
ただし、これはあくまで現状のスペックであり、実用化にあたっては20時間の連続駆動を実現することが目標となっている。現状の試作品では燃料となるメタノール濃度が低いが、メタノール濃度を上げることで、取り出せるエネルギー量を増やすことができる。
また、燃料電池を内蔵したノートPCのモックアップも展示されていた。このモックアップは、あくまで将来の製品イメージであり、このままの形で製品化されるというわけではないが、メタノールの入った燃料タンクが取り外せる構造になっていたり、タンクに燃料の残量確認用の窓が設けられているなど、製品化に向けて着々と開発が進んでいるという印象を受けた。
燃料電池で携帯電話を動作させるデモも行なわれていた。現状でも、リチウムイオン電池の約1.5倍の連続通話時間を実現している | 携帯電話用に試作された燃料電池のサイズは、ほぼ名刺大である。反応によって生じた水は、水蒸気として空気中に放出される |
そのほか、カーボンナノチューブをチャネルとして用いたカーボンナノチューブ・トランジスタや世界最小クラスのゲート長8nmのSiトランジスタ、フォトニック結晶を用いた微小光学素子、DNA解析やタンパク質解析などに利用可能なナノバイオチップなどの展示が行なわれていた。
●片面1層で100GB超を実現可能な高密度DVD用ナノガラス薄膜を展示していた日立
集光機能を備えたナノガラス薄膜の説明パネル。ナノガラス薄膜はスパッタ法によって生成され、厚さは50~70nmである。レーザービーム径を1/2に縮小することが可能だ |
このナノガラス薄膜は、青紫色レーザーが照射されることによって、可逆的に屈折率が変化するという特徴を持っている。青紫色レーザーが照射された部分は、ナノ秒オーダーというごく短時間で屈折率が上がり、レンズとしての役割を果たす。そのため、ナノガラス薄膜を通過したレーザービーム径は1/2に絞られ、より高密度での記録が可能になる(トラックピッチも同様に縮まると仮定すれば、記録密度は4倍になる)。
Blu-rayディスクなどの次世代DVDでは、片面1層で20~27GB程度の容量を実現するが、この技術を応用することで片面1層で100GBを超える大容量記録が可能になる。ただし、現時点では、ナノガラス薄膜を利用した記録メディアを試作した段階であり、実際にBlu-rayディスクの4倍の記録密度での記録・再生に成功したわけではない。ナノガラス薄膜を利用した記録メディアの実用化時期は2006年あたりを想定しているという。
ナノガラス薄膜を利用した記録メディアの試作品(NEDOブース内に展示されていたもの) | 青いケースに入っているガラス円盤は、新開発の2.5インチHDD用ガラス基板である。希土類酸化物をナノレベルサイズの超微粒子ガラス組成に含有させることで、高い強度を実現している |
PDAや携帯電話用として開発されている小型燃料電池のモックアップも展示されていた |
そのほか、単一モード光ファイバーのコアの周りに空孔を設けることで、曲げ損失特性を大幅に改善したホーリーファイバーやフォトニック結晶を利用した波長選択フィルタなどの展示も行なわれていた。
従来の光ファイバーは、小さい半径で曲げると損失が大きくなるという弱点があったが、ホーリーファイバーなら、曲げても損失が小さいため、FTTHの工事の手間を大きく軽減することが可能である。
(2003年2月26日)
[Reported by 石井英男]
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