●DDR400へと邁進するDRAM業界 メモリはDDR400へ向けて確実に動き始めている。1月27日から米サンノゼで開催されているPlatform Conferenceでは、DDR400へ向かうDRAMベンダー各社の路線が明瞭になった。 現在、もっともDDR400に対して積極的に見えるSamsung Electronicsは、全容量品でDDR400にフォーカスする。DDR400を軸に、DDRメモリ全体の高速化を進めるつもりだ。カンファレンスで示した同社のDDRメモリのスピード歩留まりでは、今年の後半から来年前半になれば主流はDDR400へ移っていくことになっている。また、同社の見積もりでは、今年第2四半期の時点でDDR333/400が市場の50%を超え、年末までには80%に達するという。 DDR400へのフォーカスをSamsungは次のように説明する。「最初は(DDR Iベースの)DDR400は予定していなかった。しかし、DDR333がスタートしたのは2002年で、DDR IIは2004年からと、その間に2年のギャップがあるため(DDR Iベースの)DDR400を置かなければならなかった」 つまり、DDR IIが立ち上がるまでの間、DDR333のままでは行けないので、DDR400を挟み込むことになったというわけだ。
Samsungだけでなく、Micron Technology、エルピーダメモリ、Infineonなど、Platform Conferenceに参加したDRAMベンダー各社は、いずれもDDR400に踏み込む。また、NanyaもDDR400をやると言われている。昨秋の段階では、DDR400に対してはDRAMベンダー各社の温度差が大きかったが、今はメモリ業界はこぞってDDR400を推進しているように見える。 もっとも、それはDRAMベンダーにとっては、そうせざるをえないからだ。DDR400は、DRAMベンダーがこぞってやりたいメモリではない。例えば、DDR IIで先行したエルピーダなどは、DDR IIへの移行を早くする方向を望んでいた。しかし、「結局流れには逆らえない」(あるDRAMベンダー)ために、気が進まないながらもDDR400へと向かうことになった。 Micronは「チップセットのサポートがマーケットを決める」と、DDR400の背景にチップセット側の変化が大きく影響したことを示唆する。実際、DDR400への潮流が決定的になったのは、昨年11月に、IntelがDDR400のサポートを決定、OEMベンダーやDRAMベンダーに通知したからだ。Intelは、今年第2四半期に投入する「Intel 875P(Canterwood:カンターウッド)」「Intel 865PE(Springdale-PE:スプリングデール)」「Intel 865G(Springdale-G:スプリングデール)」から、DDR400とFSB(フロントサイドバス) 800MHzをサポートする予定となっている。チップセット最大手のIntelがDDR400サポートに踏み切ったことで、DRAMベンダーは否応もなしにDDR400へと駆り立てられたというのが実情だ。
●DDR400がJEDECで標準化 DDR400は、最初にMicronがぶち上げ、対抗してSamsungも発表と、DRAM業界の両雄が立ち上げた。しかし、実際には安定性や互換性の問題からほとんど浸透しなかった。その最大の原因のひとつは、DDR400がJEDEC(米国の電子工業会EIAの下部組織で、半導体の標準化団体)の標準規格ではなかったことだ。標準が存在しないために、メーカーにより仕様に違いがあり、チップセット側が安定したサポートをしようにもできない状況だった。 そこで、業界では昨年の秋までにDDR400の標準化への気運が盛り上がっていた。そうした流れを受けて、秋にはJEDECではDDR400が討議され、VIA TechnologiesもJEDECにDDR400の標準化案を提出した。 一方、Intelは、昨年の中盤からDDR400の可能性をDRAMベンダーに打診し始めていたが、方針は明確ではなかった。しかし、DDR400の標準化の動きが出てきた秋の段階で、Intelも独自のスペックを堅め、サポートを明確にし始めた。しかし、11月の段階では、Intel案とVIA案とJEDECの予備案ではそれぞれスペックなどが異なり、そのため、11月から12月にかけては水面下ですりあわせの活動が続いていた。 特に大きな違いは電圧で、現行のDDRメモリの2.5V +/-0.2Vに対して、Intelは当初2.55V +/-0.15Vを示していたと言われる。それに対してVIA案は2.6V +/-0.1Vだったと言われる。電圧が問題になるのは、電圧の上限が高い方がDDR400チップの歩留まりが高くなるメーカーが多いからだ。 つまり、規格を高く設定すれば、よりDDR400を取りやすくなる。一方、DDR400をすでにある程度採れるメーカーにとってみれば、電圧をある程度抑えておいて、ハードルを高くした方が高マージンのDDR400に参入するベンダーを絞ることができることになる。 結局、JEDECではDDR400は2.6V +/-0.1Vというラインに落ち着いたと言われる。最終的な仕様の確定はまだだが、すでにDRAMベンダーはそのスペックで動いているという。そうすると、DDR400のハードルはそれなりに高い可能性がある。 ●DDR IIの立ち上げに影響するDDR400 実際、DRAMベンダーの多くは、いずれもDDR400が従来のDDRメモリのようにフルボリュームで採れるようにはならないと言う。つまり、DDRメモリの全量がDDR266以上になったのと同じように、DDRメモリが全てDDR400以上になることはないわけだ。その理由は、DDR400ではメモリコアの周波数を200MHzベースにまで引き上げなければならないことにある。そのため、「DDR IベースのDDR400はある程度ニッチに留まる。将来的にはDDR IIベースのDDR400の方が安くなる」(Micron)と多くのDRAMベンダーは主張する。 DDR IIの方が安くなるのは、DDR Iはプリフェッチ2、DDR IIはプリフェッチ4で動作するからだ。現在のDRAMアーキテクチャは、メモリセルを高速化しないで、インターフェイスを高速化している。DDRメモリではプリフェッチ2でメモリセルへの読み書きを2つ並列に行なうことで、メモリセルの性能は変えずにインターフェイスを倍速化した。そして、DDR IIではプリフェッチ4で今度はメモリセルに対してインターフェイスを4倍速化している。そのため、DDR IIベースのDDR400では、メモリセルは100MHz、つまり従来のDDR200と同じ周波数で動作することになる。そのため、スピード歩留まりが高くなり、コストが下がるというわけだ。 だが、DDR IベースのDDR400の台頭は、DDR IIに大きなインパクトを与えつつある。「DDR IIへの移行は当初の予定より12から18カ月遅れて、2004年から2005年にマスマーケットに来ることになるだろう」とJEDECのBill Gervasi氏(Chairman, JEDEC Memory Parametrics)は言う。また、IntelのDDR IIサポートは、当初予想されていたDDR400だけでなくDDR533でスタートすると見られる。 そうした状況で、DDR IIはグラフィックスが先行する形で動きつつある。グラフィックス向けDDR IIは、SamsungがGeForce FXに1GHz品を提供する形でスタートする。しかし、今年前半にはエルピーダもデスクトップ/モバイルグラフィックス向け製品を投入するなど、一気に拡大する見込みだ。また、ATI TechnologiesやS3 Graphics、SiS(Silicon Integrated Systems)など各社の次世代GPUも、DDR IIに対応する。実際、ATIのRADEON 9700はすでにDDR IIに対応している(Platform ConferenceではDDR IIメモリを載せたRADEON 9700ボードもSamsungブースに展示されていた)。
□関連記事 (2003年1月29日) [Reported by 後藤 弘茂]
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