●見えてきたDRAMの移行トレンド
1月27日から28日に米サンノゼで開催されたPlatform Conferenceでは、今後のDRAMの移行も見通しも見えてきた。 下がMicron Technologyが示したDRAMのトレンドの予測だが、このうちデスクトップとノートPCは、ほぼ公平に全体の流れを映していると思われる。
まず、デスクトップPCの流れは明確だ。パフォーマンスデスクトップでは、2003年はDDR1ベースのDDR333/400のデュアルチャネル、2004年はDDR2ベースのDDR2-400/533のデュアルチャネルへと流れが移ると見られる。一方、メインストリームデスクトップはDDR266からDDR333へ移るが、DDR1ベースのDDR400はハイエンドに留まりメインストリームまでは浸透せず、DDR2も2005年までは入ってこないと見られる。バリューデスクトップのDDR化は、今年後半から本格化すると推定される。 ハイエンドがDDR400、そしてDDR2へと向かう理由は、Intelのチップセット計画がそうなっているからだ。Intelは今年第2四半期にデュアルチャネルDDR333/400を導入、来年の中盤までにデュアルチャネルDDR2対応のチップセットも出すと見られている。その時点でIntelはDDR2をDDR2-400/533の両転送レート帯でスタートすると見られる。ある業界関係者は、Intelはそのために次々世代CPU「Tejas(テージャス)」で1,066MHz(1.06GHz)のFSB(フロントサイドバス)を準備しているという。つまり、デュアルチャネルDDR2-533にマッチするFSBを用意するわけだ。そして、Tejasの普及とともに、DDR2ベースのDDR2-400/533がメインストリームへと浸透してくるというシナリオだと推定される。 また、現在DRAMベンダーはDDRとSDRAMを同じダイ(半導体本体)から採れるように進めている。そうした同ダイ製品では、DDRとSDRAMはメタルマスクのオプションの違いで製造できる。Samsungによると、需給に応じて作り分けることが可能で、市場出荷まで4週間のタイムラグで製造比率を調整できるという。こうした対応が進んでいるため、ローエンドデスクトップも、2003年以降はDDR化が進むと見られる。Intelもバリュー向けのIntel 845GVチップセットに、DDR333サポートを加える方針で、DDRへの流れを推し進めるものと思われる。 ノートPCは今後DDR333を経て、来年後半にDDR2ベースのDDR2-533へと移行すると見られている。つまり、ノートではDDR1ベースのDDR400は飛ばされるわけだ。その理由としてDRAMベンダーはこぞってDDR400の消費電力が高いことを指摘する。DDR2アーキテクチャは、低電圧化などにより転送レート当たりの消費電力は現行のDDR1より少ない。そのため、モバイルへの適用は始まったら比較的迅速に進む可能性が高い。 サーバーのメモリトレンドはPCとは大きく異なる。これは安定性と大容量搭載が重要だからだ。そのため、ハイエンドサーバーはDDR200、ミッドレンジの4wayサーバークラスでもDDR266のままで、DDR333/400へは移行しないと推定されている。サーバーメモリの次の波はDDR2だが、いつ浸透するかについてはDRAMベンダーによって見方が異なる。 初期のDDR2サンプルをベースに、すでにDDR2の評価を始めているサーバーベンダーもあるが、サーバーの場合、評価から実際の採用システムの登場までタイムラグが大きい。そのため、サーバーではDDR2の適用は、しばらくは水面下で進行すると見られる。また、安定性と大容量搭載を重視するサーバーでのDDR2はDDR2-400で進展すると見られている。 ●DDR2への移行が400MHzから533MHzにスリップ
こうして全体を俯瞰すると、DDR2の遅れは明白だ。当初は2003年前半の採用がIntelにより予定されていたDDR2は、現在、2004年中盤からゆっくり浸透する方向へと変わっている。Platform Conferenceでは、JEDECのBill Gervasi氏(Chairman, JEDEC Memory Parametrics)がその背景をパネルディスカッションで説明した。 下の図はGervasi氏が2001年のPlatform Conferenceで説明したDRAMの移行図。この時点ではDDR1テクノロジからDDR2テクノロジへの移行はDDR2-400からになっていた。しかし、現在ではDDR1はDDR400まで延長され、DDR2はDDR2-400/533からスタートとなっている。つまり、ピュアにDDR2だけで提供されるのはDDR2-533からになってしまったわけだ。そのため、Gervasi氏はDDR2-400は“ほとんど死に体”だと指摘する。
DDR2が遅れた理由は多分に政治的なものだ。DDR2は2001年の秋にはほぼスペック策定が終了していた。しかし、そこで「突如としてDRAM戦争が終わってしまった」(Gervasi氏)という。ここで言うDRAM戦争というのは、RDRAM対DDRとその延長にあったADT(Advanced DRAM Technology)対DDR2の競争のことだ。 Intelは2001年秋までにRDRAM路線を放棄、さらに独自メモリ規格を目指したADTをJEDECでの標準化作業に融合させることにした。そのため、DDR2は次世代の主流メモリ規格としての位置を、突如確固としたものにしてしまった。だが、そのために、DDR2にはこれまで提案されていなかった新技術(オンダイターミネーションなど)が加えられることになった。その結果、DDR2の標準化作業やシミュレーション、サンプル制作などが全て遅れてしまった。 そのため、景気悪化の影響を受けていたDRAM業界は、カンフル剤となるつなぎの製品を求め、DDR1ベースのDDR400が急浮上してきた。そしてDDR400がJEDECの標準規格に昇格され、DDR2を押しやってしまったわけだ。 ●DDR2移行は512Mbitから1Gbitへとずれ込みか
Gervasi氏はさらにDRAMの容量帯のトランジションも関係すると言う。以前のシナリオでは、DDR1からDDR2への移行は、256Mbitから512Mbitへの移行で行なわれると見られていた。つまり、DRAMベンダーは512Mbit品ではDDR2に注力し、主流のDRAMの容量が512Mbitへと移るに連れてDDR2へと移行して行くというシナリオだったという。 しかし、DDR1ベースのDDR400が台頭してきたためにこのストーリは狂ったという。Gervasi氏によると、現在DRAMベンダーは512Mbit世代ではDDR1に注力するメーカーとDDR2に注力するメーカーに分かれているという。また、DDR1ベースのDDR400は256Mbit品ではある程度の歩留まりを達成できるものの、より容量の大きな512Mbit品で400MHzを達成するには幾分かのエンジニアリングが必要になるという。
そのため、全体として512Mbit世代でDDR2にかけるエンジニアリングリソースが減っているという。512Mbitがハーフ世代(フル世代である256Mbitと1Gbitに挟まれた半容量の世代)であり、DRAMベンダーが割く開発リソースが限られていることも影響しているという。 その結果、真にDDR2(だけに)移行するDRAM容量世代は1Gbitになると見られている。ところが、まずいことにDDR2では1Gbitからメモリバンク数を従来の4から8へと増やすことになっている。バンク数を増やすとダイサイズ(半導体本体の面積)が大きくなりコストが増す。そのため、従来より移行が遅れやすい。そうした事情から、DDR2への移行は、ハードルが高くなり、時期も遅れつつあるという。 もっとも、こうした悲観的な見解はGervasi氏のもので、DRAMベンダーの中にはDDR2の立ち上がりにもう少し楽観的な見方もある。その根拠は、DDR1ベースのDDR400に対して、DDR2ベースのDDR2-400がコスト上のアドバンテージを保てる点だ。 □関連記事【1月29日】【海外】DDR400がJEDEC標準へ、DRAMベンダー各社がこぞってサポートへ http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1128/kaigai01.htm (2003年1月30日) [Reported by 後藤 弘茂]
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