会場:Las Vegas Convention Center、Las Vegas Hilton、Alexis Park 2003 International CESは、CES(Consumer Electronics Show、一般消費者向け電気製品展示会)の言葉通り、主役は家電だが基調講演にIT関係企業がずらりと並んだことからもわかるように、多くのIT関連企業も出展している。本レポートでは、そういたIT関連企業の出展の中から、主にPCに関連した展示に関するレポートをお伝えしていきたい。 ●Microsoftブースの一番人気はSPOT、将来モデルのモックアップも展示 Microsoftのブースではゲイツ氏の基調講演で紹介されたSPOTやSmartDisplayなどの様々な製品が展示されていた。その中でも最も注目を集めていたのがSPOTで、1時間に1回程度行なわれるデモには黒山の人だかりができ、終わった後も説明員に熱心に質問する姿が印象的だった。 展示されていたのは、ゲイツ氏の基調講演で利用されたシチズン、Suunto、Fossilの3社のSPOTで、展示員は動作するSPOTを持っていて、実際に動作する様子をデモして見せた。展示員によればSPOTのバッテリーによる駆動時間は数日とのことで、各メーカーで若干駆動時間は異なるようだ。展示員にサービスエリアを聞いてみたところ、北米(米国とカナダ)だけであるという答えが返ってきた。北米以外での展開はと聞いてみたところ「検討中だが、全く未定」とのことなので、日本など他の地域でサービスが提供されるかどうかはかなり微妙なところであるようだ。 展示されていたのはシチズンのCGX-1(Cougar)、TGX-1(Tiger)の2製品、Suuntoのn6、さらにFossil(名称未定)の合計4製品。いずれも120×96ドットのSTN液晶と、National SemiconductorのARM7ベースの組み込みプロセッサ(28MHz)が採用されている。ROM/RAMともに512KBとなっており、FM放送のサブ帯域の電波を受信して動作する。 どのデータを受信するかのカスタマイズは、PCからWebサービスに接続して行なう仕様になっている。つまり、本体からはカスタマイズすることはできず、あくまでPCのコンパニオンとしての位置づけが貫かれていることがわかる。各デバイスは固有のIDを持っており、パーソナルデータなどは専用データはID付きで電波に乗せられ、解読はIDを持つSPOT端末でのみ解読することが可能になる。どのような暗号化がされているかなどは、セキュリティ上の問題で公開することはできないという展示員の説明だった。
□SPOTのホームページ ●IntelはSamsung ElectronicsとGatewayのCentrino技術採用のノートPCを展示 初日の夕方に行なわれたクレイグ・バレット社長兼CEOの基調講演でCentrino(セントリーノ、開発コードネーム:Baniasプラットフォーム)をアピールしたIntelは、同社のブースにおいてCentrino搭載ノートPCを展示した。展示されたCentrinoノートは、韓国Samsung Electronicsの製品と、米国Gatewayの製品で、両製品ともに製品名などは未定であるという。前者がやや薄型のシン&ライトA4ノートであるのに対して、後者はフルサイズのノートPCで、現在モバイルPentium 4-Mが搭載されている製品とあまり大きな差がないように見受けられた。 Centrino採用が最も期待される、B5サイズやA5サイズのノートPCの展示は、前日夜の“Digital Experience”で展示されたThinkPad X30の後継と思われる製品のみ。ぜひ製品のデビューまでには、こうしたモバイルらしいクラスの製品が出そろうことを期待したいところだ。
□Centrinoのホームページ ●ハイエンドデジタルカメラユーザー期待のMicrodrive 4GBデビュー 昨年、日立製作所はIBMからHDD事業を買い取り、日立70%、IBM30%の合弁でHDD専業の企業“日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立)”を設立するということを明らかにした。今年の1月1日に日立グローバルストレージテクノロジーズが実際に設立され、事業が移管された。その関係で、CESの案内には“IBM”と書かれたブースで日立が展示していた。 その中で最も注目を集めていたのは、容量を4GBに拡張したMicrodriveだ。読み書きのヘッドが従来の半分の大きさとなる“FEMTOヘッド”を採用し、ヘッドの浮上高も従来の半分に抑えている他、ピクシー・ダスト(Pixie Dust)と呼ばれる磁気コーティング技術を利用して線記録密度を上げるなどして、大容量化を実現したという。 なお、今回は実際に動作する製品はなく、展示されたのはモックアックのみだった。もちろん研究室などでは問題なく動作しているそうで、予定通り秋にリリースされるという。なお、現在のデジタルカメラの多くは、ファイルフォーマットとしてFAT16を利用しており、そのままでは最大で2GBまでしか利用できないものがほとんどであるという。このため、2GB版も出荷予定である他、デジタルカメラメーカーなどと協力してファームウェアのアップグレードなどを行なってもらえるように働きかけていくという。 4GB Microdriveの登場で、デジタルカメラのさらなる高画素化も可能になる。また、キヤノンのEOS 1Dsなど1,000万画素を超えるデジタルカメラを利用するプロカメラマンなどには期待の製品でもある。デジタルカメラメーカー側の対応を期待したいところだ。
【お詫びと訂正】記事初出時、Microdriveと1.8インチHDD、iDVRの写真が入れ替わっておりました。お詫びして訂正させていただきます。 □日立グローバルストレージテクノロジーズのホームページ ●モバイルPCの小型化を加速する1.8インチHDD 日立は、1.8インチサイズのHDDを展示した。1.8インチHDDは、すでに東芝がリリースしており、今回の日立の製品は2製品目ということになる。東芝のMK2003GAHがコネクタが、PCカードのコネクタに近いものを採用しているのに対して、日立のTravelstar C4K40シリーズは、2.5インチHDDと同じインターフェイスを採用しており、コネクタなどは従来の2.5インチドライブのものが応用できる。サイズ的には、2.5インチHDDを半分程度にしたものになっており、そこにヘッドや駆動部、メディアなどを小型化して納めている。 Travelstar C4K40は、20GB、40GBの2製品が用意されており、それぞれのディスク厚は前者がプラッタ1枚で7mm、後者がプラッタ2枚で9.5mmとなっている。つまり、厚さでも従来の2.5インチドライブと共通になっている。回転数は4,200rpmで、流体軸受けを採用し、インターフェイスはUltra ATA/100となっている。こうした製品により、これまで2.5インチHDDでは不可能だったほど小型のノートPCも可能になるかもしれず、期待したい。 なお、1月よりPCメーカーなどにエンジニアリングサンプルの提供が開始され、3月頃には大量出荷が開始される予定という。これにより、5月ないしは6月頃にリリースされる“夏商戦”のノートPCには採用が可能で、期待したいところだ。
また、日立にはiVDRと呼ばれる、PCおよび家電向けのカートリッジ式リムーバブルHDDが展示されていた。iVDRは三洋電機などが中心となって推進している規格で、例えばHDD内蔵ビデオレコーダのHDDをリムーバブルにして交換して利用することが可能になる。このiVDRに関しては、すでに日本のショーでも何度も展示されていたが、今回新たに、2.5インチのシリアルATA対応HDDを内蔵したカートリッジを展示した。 デスクトップPCでは、Intelが第2四半期中に導入するICH5でシリアルATAがサポートされるため、3.5インチHDDもシリアルATAへの移行が開始される。2.5インチHDDに関しても来年にはシリアルATAへの移行が予想されるため、iVDRも先の短いパラレルATAだけでなく、先の長いシリアルATAの規格を作り、エンドユーザーに長く使ったもらえるように、と配慮したという。HDDレコーダなどは特に容量で不満が出ることが少なくないが、こうしたiVDRのようなリムーバブルHDDを利用すれば、解消できる。そういう意味では、シリアルATA化により長く使えるということは歓迎してよく、期待したい。
●ペンデバイスやプレゼンテーション専用機などユニークなデジタルガジェットが展示される このほかにも、いくつかの注目製品が展示されていた。例えば、ペンによる入力機器はLogitech(日本ではLogicool)が“io”と呼ばれるデジタルペンを展示したほか、数社が展示を行なっていた。 また、韓国のNexdioは“DioView 100”という携帯用のプレゼンテーション専用機を展示していた。これまでプレゼンテーションには重いPCを持っていく必要があったが、このDioView 100ではわずか100g(単3電池2本込み)で、プロジェクタなどに接続してプレゼンテーションを行なうことができる。ファイル形式は製品独自のものだが、PCにクレードルを介して接続し、PowerPoint、Word、Excel、Acrobat形式のファイルを変換して転送できる。内蔵のメモリは32MBで、プレゼンテーションでは1,000ページ程度のストアが可能という。なお、録音機能も用意されており、ボイスレコーダとして利用することも可能だ。これまで、プレゼンのためだけにPCを持って歩いていたビジネスマンなどには要注目の製品だ。なお、現時点では韓国語版と英語版のみだが、日本語にも対応することは不可能ではないそうだ。価格は米国ドルで200ドル以下(日本円で約24,000円以下)。
□2003 International CESのホームページ(英文) (2003年1月13日) [Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]
【PC Watchホームページ】
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