元麻布春男の週刊PCホットライン

PC版Final Fantasy XIに四苦八苦



●NVIDAのブランド力

 現時点において、グラフィックスチップ市場でトップの存在がNVIDIAであることは誰しもが認めるところだろう。だが、前回も触れたように意欲的に製品をリリースしているATI Technologiesが、機能や性能面でのリーダーシップを奪いつつある。NVIDIAも次世代GPUであるGeForce FXを発表したものの、実際に製品が店頭に並ぶのは2003年の1月末から2月上旬あたりで、それまでRADEON 9700 PROやRADEON 9500 PROに匹敵するDirectX 9世代のGPUを持たないことになる。また、GeForce FXには低クロック版のようなバリエーション(GeForce4 Tiのような動作クロックの異なるバリエーション)は予定されていない、ということなので、ハイエンドはともかく、売れ筋のメインストリームがどうなるのか、気になるところだ。

 ただ、依然としてNVIDIAの強みとして挙げられるのは、高い市場シェアを背景にしたソフトウェアサポートの良さだ。それと明記していなくても、実際のゲームで動作検証や最適化の対象になっているのはNVIDIA製GPUであることが多い。本来、アプリケーションが特定のハードウェアに依存しないことが、DirectXやOpenGLといった標準APIの意義なのだが、実際にはわずかなインプリメントの差が大きな表現の差につながったり、標準APIにもベンダ依存の拡張の余地が残されていたりして、なかなか理想どおりにはいかない。高価なCADソフトやアニメーションソフトのような動作検証制度まではいかないまでも、ベンダによる動作確認が望まれるところではある。

 それがもっとも強い形となって現れたのが、Final Fantasy XIのWindows版(Final Fantasy XI for Windows)だろう。このゲームタイトルでは、必須の動作環境として32MB以上のビデオメモリを実装したNVIDIAのGeForceシリーズ搭載のAGPカードが指定されている。つまり、GeForceシリーズ以外のチップを使ったビデオカードでは、動作保証されない。さらに推奨環境では、GeForce3あるいはGeForce4 Tiシリーズのチップとまで指定されている。これまでにも、Windowsアプリケーションでありながら、動作環境として「Sound Blaster互換のサウンドカード」などという指定をするソフトウェア(いったい、Sound Blasterの何と互換性が欲しいのだろう)が存在していたが、本来、動作ハードウェアを指定するアプリケーションはWindowsの作法を外れているのではないかと思う(実際、Final Fantasy XIからは、Windows用に開発されたゲームというよりは、Windowsの中にバーチャルなゲーム機を作り、その中で動かしているという印象を受けるが)。

 それはともかく、こうした指定のおかげもあってか、Final Fantasy XIの発売直後、秋葉原からGeForce4 Tiシリーズのグラフィックスチップを搭載したビデオカードが一時的に極端な品薄になるという現象まで生じた。好ましいこととは思わない一方で、やっぱりFinal Fantasyというブランドは凄いのだなぁ、と再認識させられた次第だ。筆者が記憶する限り、PCゲームの発売で秋葉原から特定のハードウェアが消える、といった現象は、これまでなかったのではないかと思う。PCゲーム自体が完売したことはあったし、特定のPCゲームをやりたいがためにPCを購入した、という人がいたりはしたが、ここまで広範にハードウェアの売り上げに影響を及ぼしたPCゲームソフトはこれが初めてだろう。


●テストマシンにてFinal Fantasy XIを試してみるが

 となれば、筆者も試してみたくなる。本当は発売されてすぐに試してみるべきだったのだが、ズルズルと延ばし延ばしになり、ようやく11月末になって重い腰を上げることとなった。用いたのは、しばらく前に、Audigy2のテストに使ったマシン。実はこのマシンを久しぶりのゲーム機兼マルチメディア関連テストマシンにしようとたくらんでいたのである。スペックは、だいたい表1のようなもので、FF XI Bench 1.1のスコアは3,800くらいだ。前回の実験マシン(Pentium 4 3.06GHz、RADEON 9700 PROなど)の6,200に比べれば3分の2にも満たないスコアだが、Audigy2を除き、古い使いまわしのハードウェア(それでも仕事マシンに比べれば新し目のハードをフンパツしたつもりなのだが)で固めたマシンだからしょうがない。マザーボードのD845GBVは、USBの外付けSuperDiskドライブから起動できることがわかっているので、内蔵FDDは省略、代わりに3.5インチベイを利用してUSBポートを前面パネルに引き出すアダプタを取り付けた。

【表1】
CPUPentium 4 2.53GHz
マザーボードIntel D845GBV
メモリ512MB DDR266 SDRAM
HDDSeagate Barracuda ATA IV 40GB
ビデオカードGeForce3 64MB
サウンドカードAuidigy2
EthernetOnboard ICH2

 Final Fantasy XIのインストールは別に問題もなく順調に進んだのだが、困った問題が生じた。プレイオンラインビューワー(POL.EXE)が起動しないのである。ただし、インストーラから連続してPOL.EXEを呼び出した場合は問題ない。起動しないのは、単独で起動しようとした場合だ。インストーラがデスクトップに作成したショートカットをダブルクリックしても、Now Loadingのロゴのまま。いつまでたってもPOL.EXEが起動する様子はない。POL.EXEが起動できないと、Final Fantasy XIには進めないのである。

 何が悪くてPOL.EXEが起動できないのか。残念ながらPlayOnlineのホームページに、具体的な情報はみつからない。POL.EXEが起動しないということで、まずプレイオンラインビューワーの設定を見直し、あれこれ変更してみたが、効果なし(ちなみにサウンドを無効にもしてみた)。次にネットワークまわりをチェックし、ルータのファームウェアをアップデートしたり、設定を見直したりしたものの、やはり効果がみられない。いくらなんでもGeForce3は無罪だろうというわけで、手詰まりになってしまった。


●別のマシンを使ってテストしてみる

 そこで、全く違った環境をテストすることにした。早い話、前回の実験マシンにインストールしてみたのである。すると、何のこともなくPOL.EXEの起動に成功してしまった。前回の実験マシンとゲーム機兼マルチメディア実験マシンは、同じネットワークハブにぶら下がっているのだから、ネットワークが問題で起動できないのではないらしい。

 こうなれば原因となっていそうなハードウェアを1つ1つはずしていくしかないが、元々そんなに拡張カードの挿さったマシンではない。まず抜くとしたらAudigy2ということになる。早速、Audigy2を取り外すと、POL.EXEは何の問題もなく起動してしまった。POLの設定プログラムで音を出さない設定も試していたのだが、それだけではダメらしい。しかも、今まで動いていた実験マシンにAudigy2を挿すと、たちまちPOL.EXEはNow Loadingから先へ進めなくなってしまった。付属のアプリケーション類はインストールせず、Audigy2とそのドライバだけをインストールしても、やはりアウト。ずいぶんと嫌われたものである。

 困ったのは、Audigy2を外してしまうと、ゲーム機兼マルチメディア実験マシンは、その役割を失ってしまう、ということだ。かといって、この2つの機能を2台のマシンに分散させるのは設置スペースの点から厳しい。何か回避する方法はないかとPlayOnlineのWebページを探していたら、11月29日付で「プレイオンラインビューアー更新のお知らせ」なる情報が出ているのを発見した。これによると、12月3日にサーバ側だけでなくクライアントプログラムのバージョンアップが行なわれるとのこと。しかも、主な変更内容に、「プレイオンラインビューアー(Windows版)が起動できない不具合の修正」が含まれている。なぜ、あるいはどのような場合にPOL.EXEが起動できないのか書かれていないため、筆者の問題が解消するかどうかは不明だが、とりあえず3日のバージョンアップまで、マシン構成を変えないで待つことにした。

 面倒なのは、POL.EXEを起動できない筆者は、このままではクライアントプログラム(POL.EXE)の更新を受けられない、ということだ。プレイオンラインビューワー、Final Fantasy XIなどの更新は、すべてプレイオンラインに接続したプレイオンラインビューワーの中から行なう。プレイオンラインビューワーが起動できないと、自らの更新も行なえないのである。それでも、インストーラーから呼び出した場合はPOL.EXEが起動可能なことを思い出し、12月3日のメインテナンス後に、Final Fantasy XIを再インストールすることにした。

 結局、このメインテナンスによりバージョンアップされたPOL.EXEで、ようやく筆者の環境でもプレイオンラインビューワーやFinal Fantasy XIが動くようになったのだが、ヴァナ・ディールへの道は思った以上に遠かった、というのが率直な感想だ。ゲーム専用機と異なり、ほとんど無限に存在するPC用ハードウェアの場合、すべての組み合わせを事前にテストすることなどできない。こうした周辺機器などに関するトラブルも、ある意味では避けることができない性質のものだ。筆者も、トラブルが存在するのはやむをえないと思っている。

 問題は、こうしたトラブルに関する情報が、ほとんど提供されていないことにある。ゲームの内容に関するトラブルが比較的オープンにされているのに対し、PCのハードウェアやネットワーク機器に関する情報はほとんど公開されていないのが現状だ。上述した12月3日のアップデートにしても、あまりにも情報が少なすぎる。もし、11月29日付のお知らせで、「Audigy2を装着したシステムでPOL.EXEが起動できない問題の修正」と明記されていれば、どれだけ助かったことだろう。あるいは、11月29日の時点で修正を配布できることがわかっていたのだとすれば、問題はもっと早期に認識されていたハズだ。Webページなどで、こうした問題があること、次回の更新で修正される見通しであるといった情報が公開されていれば、筆者は貴重な時間を無駄にすることはなかっただろう。そうした部分の改善を期待したいところだ。

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【11月29日】【元麻布】RADEON 9700でDirectX 9 RC0を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1129/hot233.htm
【11月19日】NVIDIAが次世代GPUのNV30をGeForce FXとして正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1119/comdex04.htm

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(2002年12月11日)

[Text by 元麻布春男]


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