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■元麻布春男の週刊PCホットライン■
RADEON 9700でDirectX 9 RC0を試す
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●DirectX対応度でNVIDIAに差をつけたATI
もう間もなくやってくる12月は、わが国ではボーナス商戦、海外ではクリスマス商戦を控え、最もPCの売り上げが伸びる時期だ。このタイミングを逃すまいと、多くのベンダがリテール向けの新製品を投入してくる。さすがにOEM商戦(PCに組み込んで出荷される周辺機器を巡る商戦)には間に合わないものの、ショップの店頭にはまだ十分間に合う。したがって投入される新製品は、おのずとコンシューマ向けのものが中心となる。その代表格がビデオカードで、SiSとATIがこのタイミングに合わせて新しいチップを投入してきた。いずれも、既存の製品をベースにしたもので、全く新しいアーキテクチャではないのが共通点だ。
SiSが発表したXabre 600は、基本的にはすでに販売されているXabre 400を0.13μmプロセスにシュリンクし、動作クロックを若干引き上げたもの。Xabre 400の250MHz(コア、メモリバスとも)が、Xabre 600では300MHzに引き上げられている。新機軸としては、Vertex処理をハードウェアでアシストする機能(Vertexlizer)を備えているようだが、NVIDIAやATIのような完全なハードウェアによるVertex Shaderエンジンではないハズだ。クラスとしては、RADEON 9000あるいはGeForce4 MX440あたりと競合する製品ということになる。世代的には一応DirectX 8.1だが、一部ソフトウェアによるインプリメンテーションもあり、DirectX 7.xに限りなく近い? 気がする(Xabre 400ではPixel Shaderの性能も「アリバイ」に近いものだった)。
一方、ATIがリリースしたのは、RADEON 9500 Pro。こちらはRADEON 9700 Proの廉価版という位置づけになる。これまでハイエンドであるRADEON 9700 Pro(実売価格45,000円~50,000円)と、その下のRADEON 9000 Pro(同15,000円~20,000円)との間には大きな価格ギャップ(約3万円)があり、それを埋める存在となる。実際には、ATIのグラフィックスチップにはOEM専用に「Pro」がつかないバージョンがあるため、同社のラインナップは、チップだけを考えると、上からRADEON 9700 Pro、RADEON 9700、RADEON 9500 Pro、RADEON 9500、RADEON 9000 Pro、RADEON 9000となるわけだ。
RADEON 9500 ProとRADEON 9700 Proの最大の違いはメモリバス幅で、RADEON 9700 Proの256bitに対し、RADEON 9500 Proは128bitとなっている。しかし、逆に言えばメモリ帯域以外はRADEON 9700 Proと変わらないわけで、性能は落ちても、機能は落ちない。つまり、RADEON 9500 Proも、DirectX 9世代のグラフィックスチップということになる。RADEON 9500以上がDirectX 9、RADEON 9000以上がDirectX 8.1対応というATIのラインナップは、最大のライバルであるNVIDIAのメインストーリム向けチップであるGeForce4 MXシリーズがDirectX 7世代どまりであることに対し、大きな差をつけた格好だ。
●DirectX 9 RC0の実力は?
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【画面1】ATIが公開しているDirectX 9対応デモ4種のうちの1つ「Car」。ドライバパッケージが23MB、このデモが27.9MBで、合計50MBを超えるダウンロードとなる |
もちろん、現時点でDirectX 9対応をうたっても、それに対応するアプリケーション(ゲーム)はない。が、MicrosoftはついにDirectX 9のRC(リリース候補版)を公開、その気になれば一般のユーザーもこれを試してみることが可能になっている。また、ATIはこのDirectX 9 RCに対応したβ版のディスプレイドライバ(Windows 2000/XP用)を、対応のデモ(画面1)とともに開発者向けに公開しており( http://mirror.ati.com/products/pc/catalyst/dx9demos.html )、RADEON 9700シリーズのユーザーなら誰でも試してみることができる(上述の通り、理屈の上ではRADEON 9500 Proでも利用可能なハズだがINFファイルの対応などは確認していない)。これでDirectX 9がリアルになったわけではないが、少なくとも単なるヴェイパーウェアでなくなったことは間違いない。
このDirectX 9 RCに対応したディスプレイドライバの性能を、これまでにリリースされたディスプレイドライバと簡単に比較してみた。比較したのはドライババージョン(ビルド番号)6143のドライバ(筆者が購入したパッケージに添付のCD-ROMに収録されていたもの)、6200のドライバ(現在同社のWeb上で公開されている最新版の正規ドライバ)、そして6228(DirectX 9 RC0)である。残念ながら、DirectX 9に対応したゲームもベンチマークプログラムもないので、テストはDirectX 8.xベースになってしまうが、ドライバやDirectXのバージョンで何か変わるのか、確かめることはできるかもしれない。また、Hyper-Threadingの有効/無効による違いも、合わせて確認してみた。
【表1:ベンチマーク測定結果】
Hyper-Threading ※OSインストール時 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
Hyper-Threading ※テスト実行時 |
○ |
× |
○ |
× |
○ |
× |
○ |
× |
ドライババージョン |
6143 |
6143 |
6200 |
6200 |
6200 |
6200 |
6228 |
6228 |
DirectXバージョン |
8.1 |
8.1 |
8.1 |
8.1 |
9 RC0 |
9 RC0 |
9 RC0 |
9 RC0 |
3DMark 2001 SE |
Pure Hardware T&L |
15,407 |
15,213 |
15,391 |
15,313 |
15,461 |
15,384 |
15,089 |
15,092 |
Software T&L |
7,016 |
7,040 |
7,170 |
7,113 |
6,977 |
6,977 |
6,974 |
6,996 |
Comanche 4 Bench |
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59.60fps |
59.43fps |
60.10fps |
60.34fps |
60.34fps |
60.08fps |
58.24fps |
59.42fps |
Final Fantasy XI Official BenchMark Ver 1.1 |
640×480ピクセル |
6,199 |
6,137 |
6,277 |
6,255 |
6,295 |
6,277 |
6,308 |
6,271 |
【表2:ベンチマーク測定環境】
CPU | Pentium 4 3.06GHz |
マザーボード | D850EMVR |
メモリ | 512MB PC1066 RDRAM |
ビデオカード | RADEON 9700 Pro |
解像度 | 1024x768ドット(32bit) |
リフレッシュレート | 85Hz |
OS | Windows XP SP1日本語版 |
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【画面2】今話題? のFinal Fantasy XI Official BenchMark Ver 1.1の画面。実際のゲームはともかく、このベンチマークを動かす分には、RADEON 9700 Proでも特におかしな描画は見られなかった。 (C)2002 SQUARE CO.,LTD All Rights Reserved. |
その結果をまとめたのが表1だ。一言で結論を言ってしまえば、今回のテストの結果を見る限り、DirectXのバージョンの違い、ドライバの違い、Hyper-Threadingの有効/無効による、大きなスコアの違いは見られなかった、ということになる。Hyper-Threadinを有効にしたほうが、若干スコアが良くなる傾向はあるように思うが、大きなものではない。Hyper-Threadingがあろうとなかろうと、プロセッサの動作クロックが3GHzを超えるというのはたいしたもので、3DMark 2001 SEのスコアが15,000を超え、Final Fantasy XI Official Benchのスコアが6,000を軽く上回る。
もちろん、だからといってRADEON 9700 Proが必ずしもFinal Fantasy XIのゲームプレイに最適だとは限らない。何せこのゲームはNVIDIAのGeForce3/GeForce4に最適化されたタイトルだ。すでにリリースから半年以上が経ち、スペック的には見劣りしつつあるGeForce4 Tiシリーズだが、Final Fantasy XIの動作保証がされているという点で、手堅い存在であることは間違いない(この点でもGeForce4 MXシリーズの価値や魅力は大きく損なわれたと言えるかもしれない)。ATIには、自社製ハードウェア/ドライバでのFinal Fantasy XIの動作検証を望みたいところだ。
□関連記事
【11月26日】SiS、バーテックスシェーダーを強化した「Xabre600」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1126/sis.htm
【8月1日】ATI、DirectX 9対応のVPU「RADEON 9700」を国内発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0801/ati.htm
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(2002年11月29日)
[Text by 元麻布春男]
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