買い物山脈

iPod for Windows購入記


品名iPod for Windows
購入価格59,800円
購入日2002年9月
試用期間約1カ月

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。

■HDD搭載MP3プレーヤーで最強!?

 昨年、Appleから発売され、俄然注目されたHDD搭載MP3プレーヤー「iPod」。HDDを搭載したMP3プレーヤーはそれまでもいくつかあったが、その斬新なデザインと操作性のため、これほど認知度の高い製品は無かっただろう。

 正直これまであったHDD MP3プレーヤーは、カッコよさという点では、あまり一般受けするようなものではなかった。その点、iPodはダントツにカッコイイと言えるデバイスだったのだ。

Personal JukeBoxとiPod for Windows。外見はともかく、使い勝手は悪くなかったPersonal JukeBoxですが、もはや起動すらしなくなってしまいました。合掌

 もともとHDD MP3プレーヤーが好きだったこともあり、PC Watchでもレビューされたことのある「Personal JukeBox」を使っていたが故障してしまい、代替機を探していたところ初代iPodが発売されたので購入した。

 しかし、唯一問題だったのは、Windowsに対応していないこと。もちろん、Apple自身が自社製品のために用意したデバイスであり、不満を言うのは筋違いだが、使ってみたいと思っていたWindowsユーザーも多かったのではないだろうか。後述するようにXPlayを併用することでWindowsで使用していたが正式対応されるにこしたことはない。

 そして、今年7月に「iPod for Windows」が発表。しかも最大容量は20GBとなりリモコンまで付属する。これは買うしかないということで、迷わず20GBモデルを購入した。より薄く、スマートになった10GBにも惹かれたが、やはりHDDの容量が多いほうがありがたい。

 購入価格は、初代の5GBモデルが47,800円(税別:秋葉原のソフマップにて購入)、iPod for Windows 20GBモデルが59,800円(税別:AppleStoreにて購入)で、実際に商品が到着したのは9月下旬になってからだ。

写真左が20GBモデル。右側は初期型の5GBモデル。一見して違いはわかりにくいです 本体背面。艱難辛苦を乗り越えてきた歴戦の5GBモデルは生々しいキズが数多く刻まれております。といいますか、落としたり蹴飛ばしたり、無茶な仕打ちをさんざんしてきました

今回の新モデルではIEEE 1394コネクタにフタが付きました。ただし開けるにはちょっとコツがいります。正直、開けにくいです 5GBモデル(右)との厚みを比べたところ


■お世話になった「XPlay」

 Mac本体を所有していないため、最初に5GBのiPodを購入した時点では、MediaFourから公開されたばかりのWindows用iPodユーティリティ「XPlay Technology Preview版」を使っていた。当初はiPodに転送したファイルを削除できないなど、実用的には辛い面があったが、バージョンが上がるたびになんとか実用レベルに近づいていった。

 そうは言っても、大量のデータを一気に転送すると途中でハングアップして、iPod内の全データが消去されるなど、クリティカルな症状も抱えていた。データを少しずつ転送すれば、問題は起きにくかったが、失敗すれば数GBのデータが一気に消えてしまう。これほどスリリングなファイル転送もなかなかない。

 6月になってようやく製品版のXPlayが発売されたが、これまでさんざんお世話になっていたこともあり、購入することにした。もちろん、製品版では上記のような不具合はない。当初はフォーマットが異なることからWindows版には対応していなかったが、最近のアップデートによってWindows版のiPodも読み込み可能になっている。また、詳しくは後述するが、一部の機能ではiPod for Windowsの純正ユーティリティである「MUSICMATCH Jukebox」より優れた面もある。


■20GBモデルの使い道

 容量が20GBになったiPodだが、極めて良好な使い心地だ。もともと5GBという容量には不満を感じていたので、大容量モデルの登場はありがたい。

 そもそも、なぜHDD MP3プレーヤーにこだわるのかというと、SDメモリーカードやFlashメモリなどを利用したシリコンオーディオプレーヤーでは、筆者の利用形態に合わないからだ。

 原因は、そのあまりに少ない記憶容量にある。以前、ポータブルMDプレーヤーを使っていたころは、MDメディアを常時4、5枚は持ち歩いていたし、旅行に出かける時などは10枚以上携帯するのが普通だった。これでは、128MBや256MB程度の容量のシリコンオーディオプレーヤーでは力不足だし、収録するアルバムを変更するのも、出先ではなかなか面倒なうえ、転送に要する時間も馬鹿にならない。高価なメモリカードを何枚も持ち歩くのはナンセンスだし、ビットレートを下げて収録するなどというのは論外だ。それならポータブルMDプレーヤーを持ち歩いたほうが使い勝手がいい。

 その点、HDDプレーヤーならメディアを大量に持ち歩く必要もないし、どのアルバムを持っていくか、と悩む必要もない。実に単純だ。

 現在の筆者の基本的な利用スタイルは、通勤時間に利用するのはもちろんだが、自宅のオーディオに繋いでジュークボックス替わりに使うことも多い。CDを購入すると片っ端からリッピングし、CDで音楽を聴くことはほとんどなくなったくらいだ。

 手持ちのCDを手当たり次第にリッピングしたので、今のところMP3ファイルは10GB前後の容量がある。とりあえず、20GBモデルを選んだのは正解だったようだ。

 iPodは、基本となるユーザーインターフェイスもよくできている。このあたりは、筆者がこれまで使ってきたHDD MP3プレーヤーの中でもトップクラスだろう。特に数千曲ものファイルを収録している場合には非常に重要だ。

 たとえば、他機種では、ジョグダイアルを使って曲を選択するものもあるが、大量にMP3ファイルが収録してある状態では、目的の曲を探すのにかなり手間取る。ジョグダイアルを速く回せば、当然曲名リストも速く流れるのだが、ジョグダイアルでは速く回すにも限度がある。

 この点、円形のインターフェイスを採用しているiPodでは、指先でクルクルと簡単に「廻し続ける」ことができるうえ、速度調節も柔軟にできる。使い比べてみるとその差はよくわかるが、大容量HDDを搭載し、膨大なファイル数を扱うからこそ、外見以上にこれらの操作性は重要になる。

今回のiPodでは付属のIEEE 1394ケーブルのデザインも変更されています。左側が新しくなって小型化されたケーブル ケーブルはこんな感じで収納できます。ちょっとカッコイイです

新しくなったケーブル(写真左)はカッコイイんですが、実用的にはちょっと問題ありかもです。小さいのでiPodから抜くのが大変。従来品はコネクタ部分が長くて持ちやすく、簡単に引き抜けます


■ダイアル廃止は是か非か?

 7月に発表されたモデルは、容量以外にも従来モデルから変更された点がいくつかある。その中で特に大きな変更点は、従来モデルの特徴だったダイヤル式の操作を止めたことと、リモコンが付属することだろう。

 特にタッチセンサー式に変更された操作系は、一見コストダウンと見られがちだが、個人的には大賛成な変更だった。

 なぜなら、従来のダイヤル式だと、使ってるうちにダイヤルの軸が歪んでしまうことがあるからだ。実際10カ月近く使っていた5GBのiPodも、すでに軸はグラグラとしており、頼りない印象を受けていた。

 また、軽い力で快適に操作できる反面、簡単に回転してしまうので、ポケットに入れとておくと勝手にダイヤルが回ってしまい、突然大ボリュームで音が鳴ってしまう、などということもある。もちろん、ホールドスイッチをセットしておけばいいわけだが、リモコンが無い初期モデルでは、ポケットから出してすぐに操作できるようにしたかったのだ。

 タッチセンサー式になったおかげで、これらの不満は解消された。ホールドしないでポケットに入れても、まず誤動作することはほとんど無い。なによりグラつく軸がないので安心感がある。確かに細かい操作を素早く行なう場合などは、ダイヤル式のほうが優れるのだが、タッチセンサー式になったことによるメリットのほうが大きい。

 リモコンが付属することも大きな変更点のひとつ。従来モデルのヘッドフォンジャックには、すでにリモコン用の接点が存在していたが、発売1年でようやく登場したわけだ。その機能は、再生・早送り・巻き戻し・停止、ボリューム操作、ホールドなど、基本操作のみに対応したシンプルなもの。アルバムの切り換えなどの操作はできない。


■バッテリ持続時間に不満あり

 さて、もちろんiPodを使っていて不満な点もいくつかある。まずはそのバッテリ持続時間だ。以前使っていたPersonal Jukeboxでは、最低でも10時間前後は余裕で駆動するものだった。クリエイティブの「NOMAD Jukebox 3」でも同様に10時間程度は使えた記憶がある。

 それに対してiPodである。これは正直、期待はずれな感じだ。なにしろ、再生時間云々以前に、無充電で全く使用せず3日も放置すると、ほぼ放電し、使用できなくなってしまうのだ。どうも待機電力が高すぎるようなのだが、これは頂けない。1日や2日経っただけでバッテリの半分くらいは消費されてしまう。

 そのうえ、再生時間はフル充電した状態から再生を始めても、6~7時間程度がせいぜいで、とてもスペック通りの10時間とはいかなかった(もちろん、利用形態によって多少は前後はすると思う)。

 前述したPersonal JukeBoxなどのプレーヤーでは、当然ながらここまで極端ではなく、一週間程度無充電で放置しても、余裕で数時間は再生できる。iPodを使い始めたころは、ほんの1時間くらいの再生でバッテリが無くなることもあり、疑問に思っていたものだ。勝手に放電してしまうのだから、無充電で3日もバッグの中に入れていれば、バッテリ切れになるのも当然なのだろう。

 フル充電で7時間前後、充電無しだと3日前後で放電してしまうことを考えると、持ち歩く場合は毎日カバンから取り出して充電し、外出時にカバンに入れる、という作業が必須だ。

 結局、毎日充電するのなら、バッテリ持続時間が10時間だろうと2時間だろうと、同じことではないだろうか?

 この点は次のモデルで真っ先に改善してほしいところだ。欲を言えば、バッテリは交換式にして、複数持ち歩けるようになればいいのだが、さすがにこれはムリだろうか。

 また、付属するリモコンだが、結局のところほとんど出番がない。ボリューム操作ができるのはとても便利なのだが、やはり、アルバム選択などができないため、iPod本体を直接操作するシーンが多くなってしまった。リモコンを付けることによってケーブルが長くなり、電車の中などでは取り回しが面倒になるというのもある。

 また、20GBモデルでは専用ケースが付属するが、装着すると液晶画面を含むほぼ全面が覆われてしまうため、本体の操作ができなくなる。これを考えると、多少リモコンのサイズが大きくなっても構わないので、液晶画面を搭載し、アルバムの変更などができるリモコンが欲しい。

20GBモデル付属のケースを装着したところ。参考までに、上はPersonal JukeBox付属のケースです 付属のケースは両サイドがむき出しになるのが難点。むき出し部分には、キッチリとキズが付いてしまいました

 もうひとつ、以前から気になっていたのが、リピート機能を直接操作するボタンが無いことだ。1曲ごとの繰り返し、アルバムごとの繰り返し再生などの機能を使うには、わざわざ設定メニューを操作して切り換える必要がある。これは面倒だ。リピート機能を解除するためにも、わざわざ設定メニューを操作する必要がある。

 CDやMDなどのポータブルプレーヤーなら、独立したボタンを搭載するのが普通だ。筆者としては、リピート機能は割と使用頻度の高い、基本操作の一部だと考えているので、わざわざメニューの階層をたどって操作するのはとてもまどろっこしい。

 今さらiPod本体にボタンを追加するのは難しいだろうが、せめてリモコンにでもリピートボタンを付けて欲しいところだ。

付属のリモコン。これまたカッコイイですが、残念ながら今のところあまり使ってません。


■MUSICMATCHとXPlay、どちらを使う?

 iPod for Windowsには標準でMUSICMATCH Jukebox Ver7.1が付属する。このソフトを使い、リッピングやiPodへのデータ転送を行なうことができる。しかし、現時点ではXPlayに及ばない点もあるようだ。

 iPodは、PCに接続するとPC側のMP3ライブラリと自動的に同期するという機能がある。ところが、MUSICMATCHではこれがとにかく遅いのだ。実際に約10GBのMP3ファイルを同期すると、所要時間はおよそ40分。スペックどおりの20GB近くまでファイルを入れたらどうなるのか、考えただけでもいやになる。

 もちろん、大量のファイルをコピーするのだからそれなりの時間がかかるのは当然だろう。最初の一回だけなら1時間程度の我慢はできる。しかし、問題なのは、PC側のライブラリと差分がなくても、同期に掛かる時間は同じというところだ。つまり、iPodにPC側と同一のものが入っていようと、カラッポだろうと、接続するたびに同じ時間が掛かってしまうのだ。PCに接続するたびにこれだけの時間がとられてしまうのは無駄なので、基本的に自動同期はオフにしている。

 なお、自動同期機能を使わず、手動でPCのライブラリからiPodにドラッグすると、この時間は半分程度にまで縮まる。手動で差分のファイルをコピーするほうがはるかに効率がいい。

 ところで、XPlayでも自動同期機能は使える。しかも自動同期機能に関してはこちらの方が性能はいいようだ。なぜならばXPlayでは自動同期時に、きちんと差分を検出し、差分が有る場合は、対象となるファイルのみを転送する。差分が無い場合は直ぐに同期が終了するのだ。これは当たり前といえば当たり前だと思うのだが、なぜか純正のMUSICMATCHでは今のところ実現されていない。

 ただし、XPlay本体にはMP3のリッピング機能はない。単独ですべての作業ができるMUSICMATCHに比べて、その機能は限られた物だし、なにより別途購入する必要がある。自動同期さえ使わなければ、MUSICMATCHで十分だろう。どうしても自動同期機能が使いたいというのであれば、XPlayをオススメする。

 さて、さんざん文句も書いてしまったが、これらの不満を踏まえても十分気に入っているMP3プレーヤーだと断言できる。そもそも気に入っていないなら20GBモデルなど買うはずもない。

 もし、来年以降、さらに大容量化されたものや、液晶付きリモコンモデルなどが発売されれば、おそらく買うことになるだろう。そのときには多少なりとも問題点が克服されていることを願いたい。

【お詫びと補足】
 記事掲載後、MUSICMATCHについて、旧バージョンのMUSICMATCHがインストールされている環境に、Ver7.1を上書きすると、上記のように転送が遅くなるケースがあるというご指摘をいただいた。編集部でも実際にいくつかの環境でMUSICMATCHの再インストールを行ない、試してみたところ、確かにスムーズな、差分のみの同期が実行できるものもあった。したがって、文中の「PC側のライブラリと差分がなくても、同期に掛かる時間は同じ」という箇所については間違いであることが確認された。ご指摘に感謝するとともに、お詫びさせていただきたい。

 ただし、再インストールをしたのにもかかわらず、依然として同期に時間がかかるものも存在した。これについての原因は不明だが、環境によっては正しく動作しないケースもあった。同期に時間がかかる方はダメモトのつもりで一度お試しになることをお勧めしておく。


■オマケ:キズが気になるなら別売のケースが必須かもしれず

 最後に余談だが、iPodを使っていく上で、本体につくキズをどうやって防ぐか、というのも重要だろう。20GBモデルでは専用ケースが付属することは前述したが、一部鏡面部分が露出するため、そこだけキズが付いたりしてしまううえ、操作時にはいちいちケースから取り出さなければならない。

 キズが付くのを気にしないというのがもっとも単純だが、筆者は5GBモデル使用中に、車のシートからアスファルト上へカラカラと転がすこと1回、自宅の廊下に直撃1回(普通壊れる……)などを経験しており、キズを防ぐという意味以上に、本体の保護を考えて、株式会社パワーサポートのシリコンケースを愛用していた。今回も20GBモデル発売にあわせ、専用ケースが発売されたので購入してみた。価格は3,600円(税込み)。

パワーサポートの通販で購入したシリコンケース。写真はブルーのシリコンケースを装着したところ。ボタン類は露出しているためケースを装着したまま操作できます 裏から見るとこんな感じでiPodのロゴが透けて見えます。使い始めは綺麗なものの、シリコンは経年劣化で黄ばんでくるのが欠点です

本体上部のインターフェイス部分も露出しています。液晶画面も露出してしまうので、ここには何らかの保護対策が欲しいところです。意外とキズが付くんですよ シリコンケースは厚みがあり、弾力性に富むためある程度の衝撃は吸収してくれます。が、その厚みのため若干ボタンが操作しにくくなってしまうのが難点

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【2000年5月1日】2.5インチHDD搭載ポータブルMP3プレーヤー
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000501/pjbox.htm

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(2002年11月5日)

[Reported by kiyomiya@impress.co.jp]


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