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2.5インチHDD搭載ポータブルMP3プレーヤー
Personal JukeBox使用レポート



■秋葉原でPersonal JukeBoxをGet!

4.86GBのHDDを搭載し、81時間のMP3データを格納できるポータブルMP3プレーヤー「Personal JukeBox」
 2.5インチHDDを搭載した韓国HanGo ElectronicsのポータブルMP3プレーヤー「Personal JukeBox(以下、PJBox)」(以下、PJBox)が秋葉原でも入手できる、とのAKIBA PC Hotline!の記事「4.8GB 2.5インチHDDを内蔵したMP3プレイヤー発売 」を読んで早速購入した。

 秋葉原での価格は79,800円(税別)と、ポータブルMP3プレーヤーとしては高価だが、アメリカのニュースサイトの記事ではストリート価格800ドルとのことなので納得できる範囲である。店頭で見ると、販売されているのは白箱で本体も無塗装だったためちょっと躊躇したが、内容は思った以上によかった。


■なぜPersonal JukeBoxを選択したか

 常々ポータブルMP3プレーヤーには興味があったのだが、格納できる曲が1時間程度の内蔵メモリ方式のものには魅力を感じなかった。メモリカードのものにしても同じだが、飽きたら別の曲に変える、という使い方が難しいのだ。

 1時間程度でいいんなら、MDでいいと思う。最近の携帯MDプレーヤーは小さく軽い。衝撃にだって、そんなに弱いわけじゃない。80分タイプのメディアも発売されているので、収まらないCDはない。

 だから、本命はKENWOODカーコンポMANBO-XのようなCDタイプのプレーヤーだと思っていた。MP3は、データ量が小さいのがウリ。たくさんの曲をメディア交換なしに楽しめてこそMP3のメリットが活きる、というのが私の意見である。

 そういう意味で、PJBoxは魅力的な製品だ。さらにいうと、MP3は当然ながらCDに比べれば音質は落ちるわけだが、大容量のHDDなら、容量を時間ではなく音質に振り分ける余裕も生まれる。


■Personal JukeBoxの概要

 PJBoxはIBMの9.5ミリ厚・2.5インチの4.86GB HDD、モトローラのXC56309PV80(DSP56309)という24bit DSP(33MHz駆動。約20MIPS)を搭載し、リチウムイオンバッテリで動作するポータブルMP3プレーヤーだ。128×64ドットのモノクロ液晶を持ち、パソコンとの接続はUSBで行なわれる。

 サイズは、152.6×80.0×23.9mm(幅×奥行き×高さ)、10.5オンス。厚めの文庫本の左右を2cmほど短くしたくらいで、重さは1オンス=28.35gというから、300g弱というところ。

 専用のキャリングケースやヘッドフォン、ACアダプタ、ケーブル類、Windows 98用のソフト「Jukebox Manager」などが付属しており、MP3ファイルの転送やCDのリッピング・エンコードなどはすべてこのJukebox Managerで行なう。

 MP3のエンコード・デコードエンジンはMP3の開発元として知られ、高品質との評判の高い独Fraunhofer IISのものを採用している。デコードは本体のファームウェアで、エンコードはJukebox Managerで行なわれる。さらにマニュアルには、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、すべてCOMPAQのライセンスを受けている、と明記されている。

 エンコードはCDからのリッピングと同時に行なわれ、ビットレートは64~320kbpsが選択できる。また、CDからデータを転送する際は、曲名の入力にCDDBを利用することもできる。再生(デコード)は、特に制限は見つからず、56kbps(22.05kHz)といった低ビットレートのデータも、またVBR(Variable Bit Rate:可変ビットレート)のデータも問題なく再生できた。

 なお、ライブCDのように、音はつながっているがトラックとしては分かれているような場合でも、PJBoxはCDで再生したのと同じように継ぎ目なく聞こえることを保証している。実際試してみたが、ノイズなどまったく発生せず、きれいにつながって再生された。この点はほかのMP3プレーヤなどで、ずっと不満に思っていたことなので、かなりうれしい。

 なお、USBからPJBoxへのデータ転送、CDからリッピング・エンコードしながらの転送時間は、実測で次の表のとおりであった。CDからビットレート128kbpsでエンコードしながらでも、曲の演奏時間の5分の1程度の時間で転送が完了している計算だ(CPU:Celeron 333MHz / CD-ROM : Plextor 32倍速SCSIを使用)。

●データ転送時間(実測)
曲の長さmp3ファイルの転送CDからの転送
128K320K128K320K
1分約9秒約12秒約23秒約28秒
10分約35秒約1分20秒約2分5秒約2分55秒

付属のヘッドフォンと専用ポーチ。KOSS製品は日本ではTEACから発売されている

 付属のヘッドフォンは、業務用の製品で知られるKOSSの高品質なもの。正確には分からないが、外見からするとTEACが販売している「PORTA PRO」と同じものではないかと思われる。専用のポーチも付いており、小さく折りたためるのもいい。一般にポータブルプレーヤーでは、付属ヘッドフォンの品質は落とされがちだが(価格を抑えるためだろう)、このKOSS製のヘッドフォンは高品質でMP3のクオリティを十分に引き出すことができる。実際に使ってみたところ、特に低音がよく鳴るのに驚いた。

バッテリー駆動時間は12時間(実測)とバツグン。予備の入手も容易(左はSHARP、右は本体付属のもの)
 もう1つ、付属のリチウムイオンバッテリだが、マニュアルによるとフル充電で10時間持つとのことだが、実測ではなんと連続再生で12時間を記録した。また、これはどうやら汎用品のようで、同様のものが、SHARPのMDプレーヤー用として入手可能。AD-MS10BTの型番で販売されているもの(5,000円)が、実際に動作した。


■Personal JukeBoxの基本操作

本体のサイドパネル。左がジョグダイヤル方式のホイールスイッチ。センター下はキーロックスイッチ
 PJBoxの操作はシンプル。電源オンはいずれかのスイッチを押せばよく、電源のオフはストップ、またはポーズ時にストップボタンを押すか、そのまま20秒間なにも操作しなければ自動的に行なわれる。曲の選択やプレイ方法(順番どおりかシャッフルかなど)の変更を行なうにはフロントパネルにある上下キーで項目を選択し、左右キーで値を変更する。

 電源オン時には、ノートパソコンのようなHDDのアクセス音がするし、電源のオフ時には液晶に「Shutting down...」の文字が表示されるのはまるでPCのよう。ただし、起動や終了に必要な時間は数秒なので安心してほしい。

 通常は、本体横に付いている押し込みスイッチ付きのボリュームホイール(ソニーでいうところのジョグダイヤルと同様のもの)だけで操作可能だろう。スイッチがプレイ・ポーズで、ホイールがボリューム調整になっている。


■Jukebox Managerの機能

Jukebox Managerは操作も画面もシンプルだが、PJBoxに対する操作は、すべてこのソフトで行なう
 Jukebox Managerは付属CDに収められているPJBox専用ソフトで、Windows 98上で動作する。本体へのファイル転送やCDのリッピング、エンコードなどはすべてこのソフト上から行なうため、PJBoxはWindows 98がないと事実上使えない。HDDを搭載しているものの、USBで接続したときにドライブとして見えたりはしない。

 Jukebox Managerの操作も、かなりシンプルだ。PJBoxでは、曲をSet、Disc、Trackという階層で管理するが、Jukebox Managerを使ってデータの転送だけでなく、これらの階層間のデータの移動や順序の変更を行なうことができる。また、Jukebox Manager上でCopy、Pasteの操作を行なうと、実データはコピーされず、データのエントリー情報のみが作成され(Windowsのショートカットのようなもの)、これを用いることでプレイリストみたいなものが実現できるのはユニーク。おかげで、たくさんの曲を自在に管理することができる。

 著作権への配慮だと思われるが、PCのMP3データをPJBoxに転送することはできるが、PJBoxから逆にデータを吸い出したり、あるいはCDからリッピングしたデータをPCのHDDに保存することはできない。また、Jukebox Managerを使ってWAVEファイルからMP3ファイルへの変換にも対応しない。

 私が入手したPJBoxのファームウェアバージョンは2.1.5だが、これはアップデート可能のようで、そのためのメニューもこのソフトに用意されている。汎用DSPによるデコードなので、もしかしたら再生できる圧縮フォーマットが増えたり、といったことも期待されるが、いまのところアナウンスはないようだ。


■使い勝手も音質もGood

 PJBoxは、大型液晶ディスプレイを採用したおかげで、シンプルな操作性を実現しているのがよい。そして肝心の音質も十分に満足のいくものである。

 PJBoxに限った話ではないが、MP3は128kbps程度のビットレートでは、曲によってはノイズが入ったりすることがある。これは、JPEG画像でブロックノイズが目立つことがあるのと同様、データ圧縮を行なう以上避けられないことである。繰り返しになるが、その点、PJBoxならば、ビットレートを上げて対応するストレージ的な余裕がある。

 ここで、音質的な評価として、データを提示しておくので参考にしてほしい。
 次のグラフは、どれも同じ曲をSyntrillium SoftwareのCool Edit Pro LEのAnalyzeで分析したものだが、左がオリジナルの曲をWAVEファイルにしたもの、中央が128kbpsでエンコードしPJBoxで再生したもの、右が320kbpsでエンコードし同じくPJBoxで再生したものである。

 エンコードはどちらもPJBox付属のJukebox Managerで行なった。また、PJBoxの出力は、RolandのUA-30からアナログで取り込んでWAVEファイルにした。

オリジナル 128kbps 320kbps
左からオリジナル、PJBoxが出力した128kbpsの音、同じくPJBoxが出力した320kbpsの音をそれぞれ分析したもの

 あまり厳密なデータとはいえないが、傾向は出ていると思う。つまり、ビットレート128kbpsの場合は16kHzから上の音がほとんどカットされてしまっているのに対して、ビットレート320kbpsの場合はオリジナルほどではないが20kHz付近まで十分に高音が伸びている。

 このデータから言えるのは、MP3で圧縮する場合、ビットレート128kbpsと320kbpsではデータ量に見合った音質の差があるということ、もう1つ、PJBoxは320kbpsのクオリティに見合うアナログ出力が可能だということである。


■HDD換装にチャレンジ

 さて、長くなってしまったが、最後に内蔵HDDの換装を行ない、成功したので、それについて報告しておこう。PJBoxに内蔵されているのは、9.5mm厚2.5インチのIBM Travelstar DBCA-204860というドライブである。これを12GBのTravelstar DARA-212000に交換した。

 手順はいたって簡単。まず、4本のネジを外しウラぶたを開ける。

ウラぶたを外したところ。この基板は、特にネジで固定されているわけではない
 そして、2本のケーブル(写真下中央と右上)を外す。ケーブルは茶色いプラスチックのピンで押さえられているだけなので、先にピンを外せば簡単に抜ける。

 そうすると基板が外れ、反対側にHDDが確認できる。ネジを外し、スライドさせるようにしてコネクタから抜けばいい。新しいHDDを取り付けるのは、単純に逆に手順をたどるだけ。

 作業しながら、HDDのフォーマットをする必要があるのではないか、と気になったが、結果的には必要なかった。HDDを交換したあと、PCとUSBで接続し最初にJukebox Managerを立ち上げたときに、自動的に判断して初期化のダイアログが表示されるからだ。

 ここで「OK」ボタンを押せば、HDDが使用可能な状態になる。作業時間も数秒だ。終わると、ステータスバーで容量が増えたことが確認できる。

HDD換装後、PCと接続しJukubox Managerを立ち上げると、このようなダイアログが出る Jukubox Managerのステータスバー右側に「11509MByte Free」と読める表示が現われた

 まだショップ店頭では見かけないが、2.5インチ9.5mmのHDDでは、やはりIBMからTravelstar 20GNという20GBの製品がアナウンスされている。機会があったらぜひチャレンジしてみたいところである。

□Personal JukeBoxのホームページ(英文)
http://www.pjbox.com/

(2000年5月1日)

[Reported by 宮澤 祥(Shou Miyazawa)]


■■ 注意(編集部)■■

・HDDの換装は、メーカーの保証対象外の行為となります。換装による不具合については、筆者およびPC Watch 編集部、またメーカー、購入したショップもその責を負いません。HDDの換装は自己の責任において行なってください。

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