元麻布春男の週刊PCホットライン

PocketGearのために買ったCaplio RR30



●PocketGearの使い道

NEC PocketGear

 しばらく前のこのコラムにも書いたように、筆者はPocket PCベースのPDA(NECのPocketGear)を編集部から借りて試験運用中だ。この種のPDAを長期に渡って使い続けることになるかどうか(あるいは使い続けることができるかどうか)の結論はまだ出ていないのだが、とりあえず使い続けるにはどうしたらよいか、というポジティブ(?)な方向性で努力をしようとは思っている。使い続けるために必要なことは、使い道を確立することにある。そして、使い道は多ければ多いほどよい。

 というわけでもないが、まず何とかしようと着目したのが拡張スロットである。Pocket Gearには、拡張スロットとしてCF Type2対応のものとSDメモリーカード対応のものの計2スロットが備わっている。CF Type2スロットは、通信用のカードで占有されることが多いと考えると、メモリの拡張に使いやすいのはSDメモリーカードスロットということになる。

 Pocket Gearの内蔵メモリは32MBで、現時点のPocket PC 2002機としては、決して多いとはいえない。内蔵メモリをプログラム等の保存(インストール)とプログラム実行の両方に使わねばならないことを考えると、極力プログラムの保存は外部のメモリカードを利用して、できるだけ内蔵メモリをプログラム実行用に確保したいところだ。

 そこで早速SDメモリーカードを購入したのだが、すぐにあることに気づいた。せっかくSDメモリーカードがあるのだから、デジタルカメラと共有したい、できればPDAをデジタルカメラで撮影した写真のビューワにもしたい、と。ところが、今筆者の手元にあるのはスマートメディアを用いたカメラばかり。

 市場を見回しても、現在4強と言われている、富士写真フィルム、オリンパス、ソニー、キヤノンの4社は、いずれもSDメモリーカードを採用していない。SDメモリーカードを採用している主要なメーカーは、リコー、東芝、松下電器、コニカ、ミノルタ、京セラといったところだ。これらのメーカー製のカメラを1つ購入する必要がある。


●「Caplio RR30」を購入

 数ある候補の中から筆者が選んだのはリコーの「Caplio RR30」だ。なぜCaplio RR30を選んだのか。その理由はさまざまだが、一言で表せば、今年秋のニューモデルでコストパフォーマンスが良さそうだったから、ということになる。Caplio RR30は、300万画素級の光学3倍ズーム機。標準価格は54,800円だが、現在東京の量販店では39,800円の実売価格がつけられている。

本体前面 本体背面 本体上面

 しかも、カメラ量販店では、クーポンによる値引き(1,500円)と、ポイントの還元(20%)があったため、実際の価格はさらに安い。筆者が購入したヨドバシカメラの場合、支払い金額は(39,800円-1,500円)×1.05で40,215円。この消費税込み価格の20%(8,043円)がポイントとして還元されるため、実質的な価格は32,172円ということになる。スペックの割りに安い気がするのは筆者だけだろうか。

Caplio RR30(上)とFinePix 401(下)。使い勝手は悪くないのだが、見た目のカッコ良さという点では……

 また、カタログやWebページによると、RR30は、レスポンスがよい上、長時間駆動が可能なほどバッテリの持ちが良いという。他にも1cmまで接近可能なマクロ、WIAに対応(Windows XPのみ)などの特徴がある。なかなか良さそうだ。

 逆に、購入前に感じた難点の1つは、筆者にはどうもデザインがイマイチに感じられる。しかし、RR30は2002年度グッドデザイン賞受賞の製品。それにイチャモンをつけるのか、と言われると、個人の主観だからとしかいいようがない。

 色がシルバー、白、黒の3種類用意されているが、黒が一番無難に感じられる。手に持った時の質感も、前面が金属製なのに対し、後面パネルと後面に用意された操作ボタンが樹脂製のためか、もうひとつ高級感に欠ける気がするのだが、実売価格を考えれば、止むを得ないところかもしれない。ただ、見た目をのぞけば、レンズバリア付きで角のないデザインは、ポケットに突っ込んでおくのに最適で、携帯性は悪くなさそうだ。樹脂を使ったことも、軽量という点では貢献しているだろう。

【お詫びと訂正】記事初出時に、「Windows 98/Me/2000はUSBマスストレージクラス対応」と表記しておりましたが、「Caplio RR30」はUSBマスストレージクラスには対応しておりません。お詫びして訂正させていただきます。


●「Caplio RR30」の使い勝手

 さて、実際に購入し使ってみてだが、それほどレスポンスが早い、という印象は受けなかった。確かに、シャッターを半押ししなくても、ピントを合わせるべく努力してくれるから、シャッターチャンスに強いことは確かだ(レリーズラグが小さい)。だが、動作そのものがバリバリに速いという感じではない。

Caplio RR30のバッテリホルダ。単3乾電池(アルカリおよびリチウム)、単3型のニッケル水素電池に加え、専用のリチウムイオン充電池が利用できる

 特にストロボのチャージにはかなり時間がかかる上、チャージ中は一切の操作ができなくなる。ストロボの設定をオートや強制発光等にしておくと、起動時にストロボチャージが生じるため(1回ストロボをチャージしておけばしばらくは大丈夫だが)、起動が早いという印象は消え去ってしまう。また、製品にはアルカリ単3乾電池2本が付属しているが、アッという間に使い切ってしまった。

 ひょっとすると、カタログに謳ってあるレスポンスの良さや、バッテリ寿命の長さは、専用のリチウムイオンバッテリを前提にしたものなのかもしれない(筆者は付属のアルカリ単3乾電池を使いきった後は、単3型のニッケル水素充電池を使ったが、やはりストロボチャージには結構な時間がかかる)。

 ただ、バッテリ(DB-43)の標準価格は5,000円、バッテリチャージャー(BJ-2)が5,000円する上、バッテリチャージャーはACアダプタを兼用しないから、人によってはACアダプタ(AC-4a、3,500円)が欲しいということもあるだろう。定価ということはないだろうが、バッテリとチャージャーで、7,000円程度の追加出費は避けられない。RR30が安価というメリットは、かなり後退する。

 画質については、筆者の感覚はどうしてもこれまで使ってきたFinePixシリーズの絵作りによるバイアスを受けているので、必ずしも公平ではないと思う。それを前提にいえば、露出はややアンダー気味で、調子が硬い印象を受ける。ただし、露出補正はできるし、シャープネスもソフトに設定可能だから、いずれも深刻な問題ではない。

 どちらかといえば問題は、オートホワイトバランス設定において、「当り」を引く確率が若干低いことで、緑がかった絵になる傾向があるように思える。筆者はこのクラスのデジタルカメラは、フルオートの設定で、どれだけパッと見がいい写真がとれるかがポイントだと思っているので、その点で若干不満が残る。

 その意味で「FinePix F401」は満足度が高く、バランスが良い。その前に使っていた「FinePix 6800Z」と比べても、低コントラストおよび暗いところでのオートフォーカス精度以外のほぼすべてで上回っているように思う(ただし、USBコネクタは、以前書いたような標準のミニBコネクタではなく、富士写真フィルムの独自のミニチュアコネクタであった。ここに訂正し、お詫びさせていただく)。


●Caplio RR30はWIAに対応

Caplio RR30はWindows 2000上ではUSBシリアルポートとして認識される

 では、RR30に気に入った点がないのかというと、そんなことはない。一番気に入ったのは、Windows XPで可能なWIA(Windows Image Acquisition)による画像取り込みだ。WIA自身はWindows Meから導入された機能で、デジタルカメラやスキャナといったイメージングデバイスからPCに画像を取り込む機能のこと。

 Windows MeやWindows XPのリリース前には、マイクロソフトからキヤノン製のデジタルカメラの試作機を用いたデモをさんざん見せられたものだが、筆者にとってRR30は初めてのSDメモリーカード対応のカメラであると同時に、初めてのWIA対応デジタルカメラでもある。

 画面1はRR30をUSBケーブルでPCと接続すると起動するウィザードの開始画面。画面2でコピーする画像を選び、画面3でコピー先と、画像のグループ名等を指定する。コピーされた画像は、グループ名で始まるファイル名を持つファイルとして、指定したフォルダに保存される。画面3の場合だと、D:\Images\WPC2002フォルダに、WPC2002 001.jpg、WPC2002 002.jpgという連番でファイル名が割り振られていく。コピーした後に、カメラ側に画像を残すか削除するかを指定できるのも良い。

 強いて難点をあげれば、コピーや削除の際、現在コピー中、あるいは削除中の画像をいちいちサムネイル表示すること(画面4)。見えたからといってキャンセルするのは間に合わないからほとんど無意味に近いのだが、サムネイル表示による転送速度の低下は筆者にとっては気になるほどではない。

【画面1】スキャナとカメラウィザードの開始画面。USBマスストレージクラスデバイスと同じことがしたければ、「上級者向き」の文字をクリックすればよい 【画面2】コピーする画像の選択画面。デフォルトではすべての画像が選択されている
【画面3】画像の名前とコピー先を指定するダイアログ。画像のグループ名+通し番号でファイル名をつけてコピーされるため、標準的なDSCFxxxx.jpgというファイル名より分かりやすい 【画面4】画像をデバイス(カメラ)から削除しているところ。キャンセルで削除を中止できるが、気づいた時には手遅れになっていると思う


●PocketGearをビューワにしてみたが……

 さて、早速Pocket GearをビューワにしてSDメモリーカードに記録した画像を見てみたが、すぐにこのアイデアが失敗だったと気づいた。Pocket Gearの液晶ディスプレイは3.8型反射型TFTで、カメラ内蔵のもの(1.6型透過型TFT)よりはるかに大きいのだが、輝度が低い上、コントラストが低く、画像ビューワーとしては全く不向きである(色数的には65,536色表示可能なのだが)。

 おそらく、こうした目的を前提に液晶デバイスを選んでいないのだろう。また、同じPocket PC 2002ベースのPDAでも、他社製品の中には、こうした用途にも使えそうなものがありそうだ(低温ポリシリコン液晶を使った東芝の「GENIO e」などはどうだろうか)。というわけで、デジタルカメラの画像ビューワという目的は、とりあえず諦めた筆者であった。

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【10月3日】【元麻布】渡米がきっかけでPDAに再挑戦
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1003/hot223.htm
【7月5日】【元麻布】フジフイルム「FinePix F401」を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0705/hot208.htm

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(2002年10月25日)

[Text by 元麻布春男]


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