元麻布春男の週刊PCホットライン

フジフイルム「FinePix F401」を試す


FinePix F401
 サッカーのワールドカップ特需で、一部AV機器は好調だったようだが、一般的には個人消費の低迷が叫ばれて久しい。そんな中にあって、デジタルカメラはかなり健闘しているようだ。

 量販店のデジタルカメラコーナーは、結構お客さんの姿が目立つ。ただ、売れ筋は高スペックなハイエンドモデルより、お手ごろ価格の普及機、200万画素級の3倍ズーム機といったあたりのようだ。

 メーカー側もそれは意識しているようで、フルラインナップ揃えたメーカーでは、200万画素級の3倍ズーム機だけで、上位モデルと下位モデルの2種類をラインナップしていることが多い。下位モデルがベーシックな機能に限定されているのに対し、上位機は外装を含めた外観が洗練されていたり、レンズやCCDが強化されていたり、電源に単三電池タイプではなく専用リチウムイオン電池が使われていたりといった点で、差別化が図られている。


●FinePix F401の主な特徴

FinePix 6800Z(右)と並べたFinePix F401(左)。FinePix 6800Zに比べれば厚みも減っている
 今回、試用する機会を得たのは、富士写真フイルム株式会社(以下フジフイルム)のFinePix F401。同社にはすでにベーシックな200万画素級の3倍ズーム機としてFinePix 2600Zがあり、FinePix F401は上位機という位置づけになる(ほかに200万画素級のデジタルカメラとして光学6倍ズームレンズを搭載したFinePix 2800Zもある)。FinePix F401の差別化のポイントは、2600Zに比べコンパクトな外観、それを可能にした専用リチウムイオン充電池、2600Zより高位のレンズ、そして第3世代のスーパーCCDハニカムの採用といった点が挙げられる。

 これまでもフジフイルムは、コンパクトなMDサイズのデジタルカメラをラインナップしてきたが、いずれも単焦点レンズを搭載したもののみだった。このサイズで3倍ズームレンズを搭載したのは、同社ではこのFinePix F401が初めてということになる。ただ、他社を含めて考えると、すでにミノルタが、同ジャンル(200万画素級3倍ズーム機)で、ほぼ同じ大きさでより薄くて軽い「DiMAGE X」を発表しているため、インパクトに欠けることは否めない(ただ、重くて厚いFinePix F401の方がバッテリ寿命は長いようだ)。

 デザイン上の特徴は、右手でグリップする部分がスライド式の電源スイッチになっている点と、グリップ部にある3つの青色LEDだ。このLEDは、電源投入時に数秒間点灯するほか、USB接続時のアクセスランプとして、あるいはセルフタイマー撮影時に点滅してシャッタータイミングを知らせてくれる。


●多彩なISO感度設定で撮影失敗を低減

 第3世代スーパーCCDハニカムの特徴は、高解像度とローノイズの両立にある。これにより、FinePix F401ではベースとなる感度がISO 200相当に高められており、それと釣り合いをとるため、シャッタースピードの上限が1/2,000秒に設定されている。

 ベース感度をISO 200にすることで、手ブレの可能性を減らすことができるわけで、このカメラがターゲットにしているであろう一般ユーザー向けとしては好ましいのではないかと思われる。さらに感度は、ISO 400相当にアップさせることもできるが、撮影画素数を100万画素級(解像度1,280×960ピクセル)に抑えれば、ISO 800相当、ISO 1600相当に増感することも可能だ。これは夜間撮影、あるいはストロボが使用できない屋内での撮影に効果を発揮するものと思われる。

 これを確認するために、先日開催されたRambusデベロッパフォーラムでスピーチを行なった、Rambus CEO Geoff Tate氏を撮影してみた。会場はホテルの宴会場で、全体照明は落とされているが、話し手にはスポットライトが当たっているという、この種のイベントではよくある条件だ(ホワイトバランスはマニュアルで白熱灯に設定、ストロボ発光禁止)。

 ISO 200では、絞りは開放(F2.8)、シャッタースピード1/8秒となり、いかに手ブレを防いだとしても、スピーカーのちょっとした動きでブレのある写真になってしまう。作例1では、マイクスタンドがブレていないのに、顔や左腕がブレているのがわかってもらえるハズだ。

【作例1】ISO 200で撮影 【作例2】ISO 400で撮影
【作例3】ISO 800で撮影 【作例4】ISO 1600で撮影

 ISO 感度を400に上げた作例2では、シャッタースピードが1/20秒に上がったことで(絞りは開放のまま)、被写体が止まりやすくなった。感度が上がることでノイズが増えているが、それほど気にならない。ISO 感度800の作例3では、さすがにノイズが目立ってくるが、実用には耐えるレベルではないだろうか。シャッタースピードは1/42秒になっており、ストロボ撮影時と大差なくなっている。

 最後の作例4では、ISO 1600相当ということで、さすがにノイズが厳しい。しかし、スピーカーが左手を挙げるという動きのある被写体であるにもかかわらず、その点はほとんど気にならない。感度を上げることで、シャッタースピードが1/80秒まで上がったことのおかげだ。

 こうした条件では、基本的にシャッタースピードが上がれば上がるほど、失敗のコマを減らせる。これは、バッテリ寿命の限られたデジタルカメラでは、意外と重要なポイントかもしれない。


●普及機ならではの残念な点

【作例5】近所のノラ猫を撮影
 さてFinePix F401では、撮影画素数を400万画素(2,304×1,728ピクセル)、200万画素(1,600×1,200ピクセル)、100万画素(1,280×960ピクセル)、30万画素(640×480ピクセル)の4種類から選べる。

 残念なのは、各撮影画素数モード時に、圧縮率(Fine/Normal)を選べないことだ。圧縮率を選べるのは400万画素時のみで、200万画素時以下では、Normal相当に固定されてしまう。作例5は、200万画素モードで近所のノラ猫(それも被写体として難しい黒猫)を撮ったものだが、胸のあたりなどつぶれてしまっている。このあたり、低圧縮率のFineが選べればもう少し何とかなったのではないか、と後ろ髪をひかれる思いだ。FinePix 6800Zでは、VGAサイズ以外ではすべてFineとNormalを選べたのだが、カメラの性格からか、メニューが簡素化されているのだろう。

 そのあおりなのか、個人的に残念なのは、ファイル名の連番設定ができなくなったことだ。つまり、一度メディアをフォーマットしてしまうと、ファイル名の連番が0001に戻ってしまう。FinePix 6800Zではメディアをフォーマットしても、連番を維持する設定ができたのだが。「とりあえずハードディスクのテンポラリディレクトリに、撮影したデータを吸い上げておく」といった使い方がしづらくなったように思う。


●改善されたマクロ撮影機能と液晶モニタの視野率

 この種のカメラではあまり重要視されないポイントだが、筆者が利用する上で必要な機能であるマクロ撮影についても触れておこう。筆者はFinePix 6800Zを比較的気に入って使っているのだが、一番不満を感じているのがマクロ撮影である。FinePix 6800Zのマクロ撮影で気に入らなかったのは、撮影距離によってはシャッター半押しで、画面の中心がずれてしまうことと、液晶モニタの視野率が低いため、写って欲しくないものが写ってしまうことがあることだった(この種のカメラにおける光学式ファインダーの視野率はすでにあきらめている)。

 FinePix F401では、少なくとも画面の中心がずれることはなくなった。また、ファインダーの視野率についても改善が見られ、少なくとも天地方向に関してはかなり正確になった印象だ。カタログの液晶モニタの項にも、FinePix F401の視野率は90%と明記されているが、2002年6月付の同社カタログで、液晶モニタの視野率が明記されているのは、全15台のカメラ中、本機を除けばS2 ProとS602の一眼レフタイプ2台しかない。これも改善の証ではないかと思われる。


●総括

 というわけで、個人的にはFinePix F401を結構気に入っている。高感度モードの追加やマクロモードでも液晶モニタの表示が結構アテになることなど、FinePix 6800Zからの改善点も多い。すでにFinePix 6800Zを使っているものとしては、ACアダプタやケーブル類を流用できる(本体を直接PCのUSB端子に接続するケーブルは、カメラ側のコネクタがフジフイルム独自のコネクタから、標準のミニチュアBコネクタに変わったため流用できないが、この変更は受け入れねばならない。オプションのクレードルを接続するケーブルはそのまま流用可能)のもありがたいところだ。

 フジフイルム製デジタルカメラの特徴は、あまり難しいことを考えずに、オートでポンと撮って、パッと見てきれいな写真が撮れるところだと思っているのだが、その特徴は本機にも受け継がれている。反面、マニア受けするような尖った機能には欠けているのだが、それも一般向けのカメラと考えればむしろ長所なのかもしれない。

□関連記事
【5月30日】富士フイルム、光学3倍200万画素「FinePix F401」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0530/fuji1.htm

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(2002年7月5日)

[Text by 元麻布春男]


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