プロカメラマン山田久美夫のPhotokina2002レポート

動き始めた4/3型新規格と次世代センサー搭載一眼レフ

オリンパスのFour Thirds Systemプロトタイプ

開催期間:9月25日~30日(現地時間)



 35mmフルサイズCMOSによる、超弩級モデルが登場する一方、よりコンシューマーに近い世界でも、新しい動きが見られた。

 初日の朝には、オリンパス光学工業が提唱した4/3インチ撮像素子をベースとした共通マウントの一眼レフシステム「Four Thirds System」(フォー・サーズ・システム)が正式発表され、コダックと富士フイルムという東西最大手のフィルムメーカーが賛同。同規格一眼レフのためのフォーラムを設立するという、新たな展開を迎えた。

 さらに、Photokina直前には、話題のFoveon X3を搭載したデジタル一眼レフ「シグマ SD9」が、20万円という驚くべき価格で正式発表されるなど、パーソナル向けデジタル一眼レフの世界でも、話題に事欠かないイベントとなった。


●オリンパス光学工業、4/3インチ一眼レフ「Four Thirds System」システムでコダック・富士フイルムとフォーラムを設立

 オリンパス光学工業は昨年より予告していた、4/3インチ撮像素子で共通レンズマウントを採用するデジタル一眼レフシステムを、ようやく正式発表した。

 今回は製品発表ではなく、オリンパス光学工業とコダックが提携して、新規格のための「ユニバーサル・インターチェンジブル・レンズ・システム・フォーラム」を設立することを表明したもの。そして、その規格には、コダックはもちろん、富士フイルムも賛同。世界ナンバー1、2のフィルムメーカーの賛同が得られたわけだ。

 現時点では、オリンパス光学工業以外のカメラメーカーで賛同を表明したところはないが、自社で35mm一眼レフ用レンズシステムを持っていないが、デジタルカメラに熱心で、しかも自社で撮像素子までカバーできる、コダックと富士フイルムが賛同していることを考えると、想像以上に広がりのあるシステムになる可能性が高い。

 このシステムで規定されている、撮像素子のサイズは約18×13.5mm(対角長22.5mm)。縦横比3:4で、画角は35mmフィルム換算で約2倍になる。もちろん、撮像素子はCCDと規定しているわけではなく、CMOSなど他の素子でも可能だ。レンズマウントは各社の互換性を保つため、厳密に規定され、マウント形状はもちろん、フォーカスバック(レンズから撮像素子までの距離)やイメージサークル(レンズが画像を結ぶ広さ)も規格化される。

 今回はフォーラム設立がメインだが、オリンパス光学工業はプロトタイプモデルを公開。コダックは同サイズのCCDを正式に発表するなど、具体的な動きも始まっている。

 オリンパス光学工業のプロトタイプは、現行の「E-20」にバッテリーパックを装着したくらいのサイズがあり、意外に大柄。小型化をひとつのウリにする4/3インチ一眼レフとしては、ややインパクトに欠けるという声も多かったのも事実だ。

 もちろん、このプロトタイプについては、画素数もレンズの焦点距離やズーム倍率も表示されていない。さらに、このモデルが同システムのハイエンド機なのか、中核モデルなのかも、定かではないので、まずは製品を見てから……ということになりそうだ。

 具体的な製品化の時期については明言していていないが、当初の予定からほぼ半年遅れで進んでいるようなので、今回のPhotokinaでフォーラム設立、来年春のPMAで製品発表というところが順当なところだろう。

 既存の35mm一眼レフ用レンズの流用ではなく、デジタルカメラに最適化したレンズやシステム設計が可能な規格であり、より大型のCCDを搭載したモデルに匹敵するか、それを越える画質が期待できそう。

 さらに、CCDが比較的小型のため、コスト的にも、十分にパーソナルレベルで購入できる価格帯になる可能性があり、カメラシステム全体もコンパクトにまとめることもできるなど、あらゆる可能性も秘めたシステムといえる。

 それだけに、できるだけ多くのメーカーが賛同し、夢のあるデジタル一眼レフシステムに育つことを大いに期待したい。

□関連記事
【9月25日】オリンパスとコダック、デジタル一眼レフカメラの新規格を提唱
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0925/fts.htm


●シグマ、1画素でRGB撮影ができる次世代センサー「Foveon X3」機を20万円で発売に

 今年春のPMAで話題になった、次世代撮像素子である「Foveon X3」。この撮像素子を搭載した初めてのデジタルカメラである「シグマ SD9」が、価格や発売時期を含め、ようやく正式となった。

 このCMOSセンサーは、これまでの常識を覆す構造を備えたもので、従来型センサーの欠点を解消できる新技術として注目を浴びた。

 通常の撮像素子は、1画素だけでは明暗情報しか得られない。そのため、画素ごとにカラーフィルターを配置して、数画素から得られた情報をもとに、カラー画像を生成している。たとえば、300万画素の素子を使っても、RGB各色で300万画素分の解像度が得られているわけではないうえ、画像の細部では偽色と呼ばれる単色の光点が発生するという欠点がある。

 だが、このFoveon X3では、1画素ごとに、深さ方向で色を分離して出力することができるため、画素ごとにRGB各色の情報が得られるのが、実に画期的な点といえる。そのため、300万画素タイプであれば、そのまま300万画素の解像度を利用することができるため、同じ画素数でも、理論上、2倍前後の実解像度が得られる。さらに、原理的に偽色も発生しないなど、数多くのメリットを備えている。

 一方、かなり斬新な技術のため、「本当にいい絵が出るの?」という声が多かったのも事実で、その実写画像を見るまでは納得できないという人もいたほどだ。

 そして今回のPhotokinaではSD9が、実写画像を含めてほぼ完全な形でリリースされた。

 なかでも、衝撃的なのは、その価格設定。なにしろ、ボディに専用ソフトまで同梱したセットで、20万円という格安なプライスで登場。さすがに値引きは少なそうだが、それでも「ニコン D100」クラスの市場価格は25万円前後であり、「キヤノン EOS D60」が30万円前後であることを考えると、かなりリーズナブルな設定といえる。

 今回、本機のベータ版で実写してみたが、Foveon X3の実力は予想以上のもの。まだ、絵づくりは最終ではないというが、ローパスフィルターがないこともあって、その切れ味は300万画素級モデルとは思えないほど。とくに斜め線の描写が素直で、偽色が出やすそうなシーンでも全く安心して撮影できる点に感心する。

 また、本機はRAWデータ専用機だが、付属する展開ソフトの出来がよく、サムネール一覧やピントの確認も実に容易。展開時間もそれほどかからないため、RAWデータであることをさほど意識することなく扱える点がうれしい。

 ボディは、本機のために新設計されたものだが、結構大柄で、質感はまずまずといった印象。もちろん、基本機能は十分なので、実用機として割り切ればいいだろう。

 もちろん、ブースでの人気は上々。サンプルプリントを目を皿のようにして見たり、腕時計を見ながらカメラの作動時間をチェックするといった姿も見られるなど、かなりの注目を浴びていた。

 国内での発売は10月21日となっており、あと数週間で店頭に並ぶことになるわけだが、現行機種とはひと味違った個性を備えた、手頃な価格のモデルとして注目を浴びそうだ。

□関連記事
【9月25日】シグマ、20万円の一眼レフデジタルカメラ「SD9」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0925/sigma.htm
【9月27日】プロカメラマン山田久美夫のPhotokina2002レポート
200万画素Cyber-shot Uなど国内未発表モデルを展示
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0927/p_kina01.htm

(2002年9月30日)

[Reported by 山田久美夫]



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