IDF2002 Fallレポート

これがBaniasプラットフォームだ
〜Banias搭載のThinkPad X31などが公開

BaniasのチップセットとなるOdem

会期:9月9日〜12日(現地時間)
会場:San Jose Convention Center



 「Baniasプラットフォームはユーザーに新しいMobilityをもたらす」(Intel モバイルプロダクトグループジェネラルマネージャ兼副社長 アナンド・チャンドラシーカ氏)。これは、最近のIntelの幹部が好んで利用するBaniasをアピールするときの宣伝文句だ。

 注目したいのは、Intelの幹部がBaniasを紹介するときに、“Baniasは……”とは言わず、“Baniasプラットフォームは……”と発言することだ。つまり、IntelはBaniasのマーケティングを、“Baniasプラットフォーム”という、チップセットなども含めたプラットフォーム単位で行なっていくことを明確にしているのだ。本レポートではそうしたBaniasプラットフォームに関する詳細、さらにはプレスカンファレンスで公開されたBanias搭載ノートPCなどについてお伝えしていく。

●Baniasプラットフォームを支える2つのチップセット

 Baniasには、Odem(オーデム)とMontara-GM(モンタラジーエム)の2つチップセットが用意される。前者が単体型のチップセットであるのに対して、後者はグラフィックス統合型のチップセットとなる。

Odemチップセット IDFで公開されたOdemのブロック図。Baniasプラットフォームには、CPU、チップセット、Calexicoが含まれる

 Odemは593ピンのμFCBGAパッケージを採用しており、サウスブリッジにはIntel 845Gなどで採用されているICH4のモバイル版となるICH4-Mが採用される。Odemのシステムバスは、Pentium 4システムバスをBanias用に低電圧版とした400MHz(100MHzのQDR)のバスで、バス帯域幅は3.2GB/Secに達する。メインメモリはDDR266/200が利用可能で、4バンク(つまり2SO-DIMMスロット)で最大1GBまでをサポートする。AGPは2X/4Xをサポートし、ATIやNVIDIAなどが提供する3Dビデオチップなどと組み合わせて利用することになる。

 サウスブリッジとなるICH4-M(FW82801DBM)とノースブリッジはハブリンクのバージョン1.5(8bit、266MHz、266MB/Sec)で接続されることになる。ICH4ーMは、モバイルPentium 4-M用Intel 845MPで採用されているICH3-Mの改良版となり、ICH3-Mとの大きな違いは標準でUSB 2.0(6ポート)に対応していることだ。これまでIntelのノートPC用チップセット(Intel 845Mファミリー、Intel 830Mファミリー)は、USB 2.0に対応しておらず、OEMベンダーがNECなどが販売しているUSB 2.0コントローラチップを搭載して対応している状況で、コストなどの問題からなかなかノートPCでは普及が進んでいない状況だった。

 このため、特にATAPI接続のドライブを内蔵していないサブノート、ミニノートでは、高速なインターフェイスがないため、転送速度の遅いUSB 1.1で外付けドライブを使わなければいけない状況となっていた。そこで、USB 1.1の40倍の転送速度を実現するUSB 2.0の登場が期待されていたのだが、ようやくそれが実現されることになる。実質、OEMメーカーは追加投資なしでUSB 2.0が実現できるようになるので、ノートPCにおけるUSB 2.0普及の弾みとなるだろう。このほか、ICH4-Mは、イーサネットのMACを内蔵しており、物理層を追加することで100BASE-TXのEthernetポートを安価に追加できるほか、AC'97 V2.3(最大6チャネル)、Ultra ATA/100、6 PCIマスターなどの仕様となっている。

 Montara-GMは732ピンのμFCBGAパッケージで、ノースブリッジとICH4-Mの組み合わせとなる。内蔵されているグラフィックスコアは、Intel 845Gなどに内蔵されているものと同等のコアになる。

Montara-GM。グラフィックスコアを内蔵しているため、ダイサイズはOdemより若干大きい Montara-GMのブロック図

 Montara-GMの特徴は、LVDSのトランスミッタをチップセットに内蔵していることだ。これにより、「外部にLVDSのトランスミッタを装着する場合に比べて225平方mmの実装面積を節約することができる」(Intel モバイルプラットフォームグループ モビリティイネーブリングオフィス マネージャ マイク・トレーナー氏)との通り、OEMメーカーは実装面積を有効に使うことができるようになる。なお、Montara-GMはDVOポートが2チャネル(24bit)分用意されているので、TMDSトランスミッタなどを装着して、DVI出力やTV出力の端子などを追加することも可能だ。

 なお、リリース時期は公式には明らかにされなかったが、OEMメーカー筋の情報によれば、OdemはBaniasのリリースと同時つまり2003年の第1四半期に、Montara-GMに関しては第2四半期のリリースが予定されている。さらに、Intelは第4四半期にはMontara-GMの後継となるMontara-GM+の計画も予定しているという(ただし、現時点では詳細は明らかにはなっていない)。

●デュアルバンド無線LANを実現するCalexico

 また、Baniasプラットフォームの範囲には、チップセットだけでなく無線LANのモジュールも含まれる。BaniasのチップセットであるOdem、Montara-GMのサウスであるICH4-Mには無線LANのMACなどは含まれていないが、別途mini PCIモジュールの形で無線LANの機能が提供される。それが、Calexico(キャラセコ)だ。

基調講演で公開されたCalexico Calexicoを利用したデモ。ダイバシティアンテナで、アンテナは2.4GHzと5GHzの両対応

 Calexicoに関しては、前回のIntel Developer Forumのレポート「Intel、802.11a/b両対応の無線LANチップを計画」の中で解説している。簡単に説明しておくと、Calexicoは、ArdonというIEEE 802.11a/b兼用MAC+ベースバンドチップ(OFDM)の統合チップに、5GHzに対応した無線チップ、IEEE 802.11bのベースバンド(CCK)、2.4GHzに対応した無線チップという4チップで実現されるIEEE 802.11aと11bのデュアルバンドに対応した無線LANモジュールだ。Intelからはmini PCIないしはCardBusのPCカードとして第4四半期に製造が開始されており、2003年第1四半期には搭載製品が続々とリリースされる予定となっている。

 また、付属ソフトウェアとして、11aと11bを切り替える設定ツールのIntel Wireless PROsetが標準で付属してくる。なお、Calexicoには11bのみに対応したバージョンも用意されており、OEMメーカーはそちらを選択することも可能だ。

 IntelはBaniasプラットフォームに、このCalexicoを含めており、OEMメーカーに対してCalexicoを含めて購入することを奨励している。というのも、Baniasのリリース時点で、Calexicoはデュアルバンドで70ドル弱、11bのみで45ドル強という価格設定がされているのだが、Baniasと一緒に購入することでデュアルバンドは35ドル、11bで20ドルと半分近くにディスカウントされるという。つまり、Intelとしてはデュアルバンドの機能をBaniasと組み合わせて安価に販売することで、デュアルバンドをBaniasプラットフォームの魅力の1つにしようと考えているということだ。

 さらに、Intelは同時に、Intel 82540EPというGigabit Ethernetのコントローラを発表している。これは、モバイル向けに省電力機能を追加したものとなる。2003年の第2四半期に発表予定のデスクトップPC向けチップセット「Springdale-G/P」は、Gigabit Ethernetをノースブリッジに接続しており、また、Gigabit関連の製品はものすごい勢いで価格の下落が続いている。2003年にはデスクトップPCでGigabit Ethernetがかなり普及している可能性が高い。そうした状況にモバイルも追いつこうという目的で投入された製品だといえる。

 なお、Bluetoothに関しては、チップセットレベルではサポートされないため、別途サードパーティのチップを利用する必要がある。Intelは、サードパーティなどと協力して、同じ2.4GHz帯を利用するIEEE 802.11bなどとの共存が可能なようなプログラムを展開していくことも併せて発表している。


●セキュリティチップを搭載することが奨励要件に

 Intelは、昨日の基調講演で、LaGrandeテクノロジーと呼ばれるCPUやチップセットにセキュリティ機能を搭載する計画を明らかにした。しかし、それは数年先の次世代マイクロアーキテクチャの話であって、来年リリースされる予定のBaniasにはそうした機能は搭載されていない。

 だが、すでに日本IBMのThinkPadシリーズのように、TPM(Trusted Platform Module)ベースのセキュリティチップを搭載するノートPCも増えつつあり、特に企業ユース向けのノートPCでは、来年あたり必須要件となっている可能性もある。そこで、Intelでは、Baniasプラットフォームの奨励要件として、セキュリティチップであるTPMをマザーボード上に搭載することを奨励している。また、IntelはセキュリティソフトウェアベンダのベリサインとノートPCのセキュリティに関する複数年契約を行なったことも併せて明らかにしている。この合意により、ベリサインはTPMのセキュリティチップを利用したデジタル認証機能のソフトウェアをBaniasプラットフォームに最適化するほか、モバイルPCをよりセキュアにするための取り組みを共同で行なっていくという。

●Baniasプラットフォームにもブランド名を冠し、プロモーションを行なっていく

 すでに、TECHXNY/PC EXPOのレポートでお伝えしたように、IntelはBaniasに関してはCPUそれ自体に加えて、Baniasプラットフォームに関してもブランド名をつけて、マーケティング活動やプロモーションを行なっていく計画だ。OEMメーカー筋の情報によれば、9月にもブランド名は決定され発表される予定であるということで、まもなく明らかになるだろう。なお、Intelの重要なマーケティングツールであるIntel Inside Programに関しては、Baniasプラットフォームに対して適用となる予定であり、そのあたりからもIntelがBaniasをプラットフォーム自体の普及に重きを置いていることがわかる。

 なお、モバイルPentium 4-Mとの棲み分けだが、実はこれが一番やっかいな問題だ。このあたりの事情に関しては後藤弘茂氏の記事「Pentium 4-Mの性能向上加速で危機に瀕するBaniasの離陸」に詳しいのでそちらを参照してほしい。

 そして、もう1つ大きな焦点として浮上してきたのが、デスクトップPC用Pentium 4のノートPCへの進出という問題だ。すでに多くのOEMメーカーが、デスクトップPC用Pentium 4を搭載したノートPCをリリースしている。Intelはこの問題に対処するため、新しいモバイルのカテゴリを用意する。それがトランスポータブルと呼ばれるセグメントだ。

 これまでIntelは、コンシューマ向けノートPCを、フルサイズ、シン&ライト、ミニノート(日本だとサブノート)、サブノート(日本だとミニノート)という4つのカテゴリに分けてきた。トランスポータブルというのは、フルサイズの上のカテゴリで、移動可能(ポータビリティ)なPCという意味だ。たとえば、東芝のDynaBook P5は、16インチ液晶とPentium 4 2.40GHzを搭載した製品だが、こうした部屋から部屋への移動なら可能というような製品をトランスポータブルと呼んでいくことになる。

 このトランスポータブルセグメントの製品は2003年後半に投入される予定で、“モバイルPentium 4”という“-M”のつかないブランドで展開されていくことになりそうだ。投入時には3GHz以上、3.06GHz、2.80GHzが追加される予定で、OEMメーカーに対してIntelからデザインガイドなどが提供される予定だ。

 実際、Intelは基調講演でも、「今後モバイルのセグメントはモビリティを重視するセグメントとポータビリティを重視するセグメントに分かれ、前者にはBaniasを後者にはモバイルPentium 4-Mを」(チャンドラシーカ氏)と語っており、今後はそうした方向で両者のセグメント分けを進めていきたいというのがIntelの戦略だ。

●IBMのThinkPad X31などOEMメーカーのマシンが展示される

 また、10日(現地時間)にはモバイルプラットフォームグループによるプレスカンファレンスが開催され、OEMメーカーが開発中のBanias搭載ノートPCなどが展示された。

 この中でもっとも注目を集めたのが、米IBMが先日発表したばかりのThinkPad X30の後継となるX31だ。X31はX30と外見は変わらないものの、CPUはBaniasとなっており、X30では無線LANが11bのみの対応となっていたが、Calexicoを内蔵しており11a/11bのデュアルバンド対応となっていた。デモでは、Intel Wireless PROsetという設定ユーティリティを利用して、802.11aによる56Mbpsによるアクセス、802.11bによる11Mbpsのアクセスを切り替えて利用することができていた。

IBMのThinkPad X31。Baniasを搭載し、Calexicoによるデュアルバンド対応無線LAN機能を持っている X31の背面。パラレル、外部ビデオ、USB、Ethernet(100BASE-TX)、モデムポートが用意されている

X31の左側面。USBポート、オーディオ、PCカード、CFスロット、IEEE1394ポートなどが用意されている X31の右側面、HDDなどがありポート類は特に用意されていない
付属のIntel Wireless PROsetを利用して無線LANのアクセスポイントを切り替えているところ、54Mbpsの速度がでていることがわかる

 このほかにも、東芝のDynaBook SS S4/2000の後継とみられる厚さ15mm弱の薄型ノートPC、松下電器の「CF-L2U8CAXS」の型番がついたオプティカルドライブの内蔵が可能なシン&ライトノートPC、NECのA4シン&ライトの試作マシン、サムスンのA4シン&ライトなどの製品が展示されていた。サムスンのマシンで確認したところ、利用されているCPUは、2003年の第1四半期に1.60GHzと同時にリリースが予定されている1.30GHzだった。

松下電器のCF-L2シリーズのBanias版。オプティカルドライブ用のスロットを備える 東芝のDynaBook SS S4と同じケースを利用したBanias搭載ノートPC。現在のシリーズには超低電圧版(ULV)のモバイルPentium III-Mが採用されており、超低電圧版のBaniasが採用されている可能性が高い
NECのBanias搭載A4ノートPC。製品名などは不明 ゲートウェイのBanias搭載ノートPC。製品名などは不明
サムスンのA4シン&ライトのBanias搭載ノートPC。製品名などは不明 サムスンのノートPCで開いたプロパティ。クロックは1.3GHzになっている。なぜ、利用者がDell Computerになっているのかは謎

 このように、すでにOEMメーカーレベルでもBaniasに対する準備は進んでおり、来年の第1四半期とみられるリリースにはたくさんのマシンが市場に出回ることになるだろう。だが、だからといって、今年の秋、冬モデルを敬遠する理由はないと筆者は思う。というのも、CPU編の記事でも述べたように、Baniasのサーマルエンベロープは、ほぼモバイルPentium IIIと同じになっている。つまり、誤解を恐れずに言うとすれば、OEMメーカーにとっては、同じ消費電力ながらより処理能力が高いPentium IIIだといっても過言ではない。このため、多くのメーカーは最初はモバイルPentium IIIを搭載しているマシンに、そのままBaniasを採用してくる可能性が高い(たとえば、モバイルPentium III 1.20GHz-Mを搭載しているX30が、Baniasを搭載するX31に進化するように)。買う時期が後ろになれば、処理能力が上がるというのは当たり前の話で、その時期になれば、あと半年待てば今度はDothanが…… という話になる。これではいつまでたっても買えないことになってしまう(筆者個人としてはPCというのはほしくなった時が買い時だと信じている)。

 そうした意味では、仮に秋冬モデルを検討しているのであれば、わざわざBaniasを待つ理由はデュアルバンドの無線LANぐらいだろう(それもPCカードを利用する面倒と半年間待つということのトレードオフになる)。今回展示された例をみるように、来年の前半に登場するBanias搭載製品の多くは、既存の製品の延長上にある製品だ。どうしても待つというのであれば、もう1年ぐらい待って、OEMメーカーがデザインも含めて大幅に新しいデザインを採用してからにしたほうがいいだろう。

□IDFのホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/fall2002/
□関連記事
【9月11日】これがBaniasプラットフォームだ
〜CPUマイクロアーキテクチャ編
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0911/idf03.htm
【9月10日】IDF Fall 2002 基調講演レポート
Banias、LaGrande、Madisonなど盛りだくさんの内容
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0910/idf02.htm
【7月29日】【海外】Intel、Banias後継の第2世代モバイルCPU「Dothan」を来年後半に投入
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0729/kaigai01.htm
【6月28日】【TECHXNY】IntelがBaniasに向けて2種類のブランドを検討中
〜Baniasはデュアルバンドの無線LANをサポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0628/tech10.htm
【3月5日】【IDF 2002 Spring】Intel、802.11a/b両対応の無線LANチップを計画
〜CPU/チップセットへも無線機能の搭載を目指すhttp://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0305/idf06.htm
【6月28日】【TECHXNY】IntelがBaniasに向けて2種類のブランドを検討中
〜Baniasはデュアルバンドの無線LANをサポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0628/tech10.htm
【7月30日】【海外】Pentium 4-Mの性能向上加速で危機に瀕するBaniasの離陸
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0730/kaigai01.htm
【8月23日】【HotHot】「東芝 DynaBook P5/S24PME」を試す
〜P4 2.40Hz、GeForce 4 Go、無線キーボードを搭載
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0823/hotrev176.htm
【8月28日】米IBM、B5ファイルサイズノートPC「ThinkPad X30」を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0828/ibm.htm

(2002年9月12日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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