買い物山脈

メモリーカードスロット付きインクジェットプリンタ
「キヤノン BJ 895PD」


品名キヤノン BJ 895PD
購入価格45,600円(オプション込み、税、送料別)
購入日2002年7月8日
試用期間約2カ月

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。

■プリンタ買い換えの理由

ミシン目つき専用紙(左)とフチなし印刷(右)の例

 自宅で使っていたインクジェットプリンタ「HP deskjet 930c」の買い換えを考え始めたのは、デジタルカメラの画像の印刷を始めたときだった。930cは2000年に発売された機種で4色インク。モノクロでA4の書類を印刷している分には、とくに不満はないのだが、L判サイズの光沢紙にフチなし印刷したいと思うと、なかなか難しい。

 結局、Lサイズ4枚がミシン目で切り取れるようになっているA4の専用紙を用意し、それに対応したデジカメ用印刷ソフトを使うしか方法を思いつかなかった。何度か試してみたのだが、用紙を逆に入れてしまったり、書類用のモノクロモードのまま印刷してしまったり、多少調整しても思ったような色がでなかったりで、苦労の割には報われない。結構、操作も面倒なので、妻に教える気にもなれない。

 結局、もっと簡単に、もっと良い色で写真を印刷したいので、買い換えを考えることにした。


■購入候補はエプソン対キヤノン

 想定している使い方は、その日の散歩から帰ってくると、デジタルカメラからメモリーを抜き、プリンタにセットして、Lサイズの用紙にまとめて全部印刷するのが主力。あとは、持ち帰った仕事やFAXの送信用にA4のモノクロ印刷をするぐらいだろう。画像をレタッチして大きなサイズで印刷することはほとんどない見込みだ。

 したがって、機種選定の条件は、「デジタルカメラの画像が、簡単できれいに、L版カット紙にフチなし印刷できること」だった。

 妻は、ヨドバシカメラ店頭のデジタルプリントサービス端末は、使いこなしている。ということは、メモリーカードスロットを備え、Lサイズの用紙が簡単にセットできるプリンタならば、十分に使いこなせるだろう。

 メモリースロット付きのプリンタは、エプソン、キヤノン、日本HPなどから出ているが、条件に合致するのは、エプソン PM-850PTと、キヤノン BJ 895PDだった。

 ここ何年か、メーカー提供の印字見本を見ているが、現状では、エプソンとキヤノンの6色フォトインク使用の製品であれば、ともに十分すぎるほどの品質に達していることはわかっている。

 製品の発表は、エプソンが3月、キヤノンが5月で、いずれも出荷から間もない。余談だが、メモリースロット付きのプリンタは年末の年賀状商戦ではなく、年があけた春に発表されることが多い。購入時点のPC Watchの実売価格調査では、PM-850PTが29,800円、BJ 895PDが34,800円だった。8月末の時点でも変わっていない。

 PM-850PTは、メモリーカードスロットが単純なPCカードスロットではなく、CF/スマートメディア/メモリースティックのスロットが用意されアダプタなしで使える点に惹かれた。気になるのは、カット紙よりもロール紙での印刷に力点が入っていることだ。

 ロール紙は、A4用紙を使うときには巻き戻しが必要で、用紙を使い分けるときに面倒くさそうなので使う気がしない。エプソンのWebではカット紙で2分2秒かかる印刷が、オートカッター併用のロール紙では1分21秒ですむとされているが、ロール紙が速いというよりは、カット紙使うと遅いんだぁと感じてしまう。

 BJ 895PDは、カット紙のみの対応で、そのあたりはすっきりしているが、スロットは単なるPCカードスロットでCFのアダプタだけ付属している。印刷速度については「E社PM-850PT」が1分56秒9のところ、1分05秒7と直接比較している。PM-850PTへのライバル心むきだしだ。ついでに、いくつかの雑誌のバックナンバーもチェックしてみたが、こと印刷速度については、BJ 895PDの方が速そうだ。

 結局、用紙のハンドリングの簡単さと、印刷速度の速さを優先してBJ 895PDを買うことにした。印刷速度にこだわったのは、デジカメは銀塩よりも撮影枚数が増えることが多く、1日の散歩で50枚近く撮ることも珍しくないからだ。1枚あたりの差は少なくても、枚数が増えると格段に効いてくる。

 購入したのは、ヨドバシカメラ錦糸町店で34,800円。オプションのTFTイメージビューワーも在庫があったのでいっしょに購入した。こちらは10,800円。あとでわかるが、これは良い判断だった。


■部屋に置いてみると大きい本体

プリンタ全景。幅43cm×奥行き30cmの棚板にちょうど載った イメージビューワーの取付はとても簡単 ワゴンからはみ出したトレイ。受け側は机の下に張り出している

 持ち帰って、机の脇のワゴンに設置してみると、想像していたよりも大きい。店頭でも見ているのだが、自分の部屋に置くとかなり大きく感じる。特に印刷した紙を受けるトレイが大きく、設置したワゴンからはみだしている。

 インクカートリッジは各色独立しており、1つずつキャップをはずしてセットしなければならないので、手間がかかる。各色独立していると交換時にインクがムダにならずにすむのだが、キャップの構造などはもうすこし簡単にしてほしい。オプションのTFTイメージビューワーは、位置を固定して、コネクタを差すだけで簡単にセットできる。

 手持ちのノートPC、ThinkPad X20には、普段CD-ROMドライブをつないでいないので、ドライバ類はすべてキヤノンのサイトからダウンロードした。BJ 895PDのPCカードスロットを、PC側からカードリーダーとして使うユーティリティもあるのだが、今回はノートPCなのでインストールしなかった。

 BJ 895PDのPCとのインターフェイスはUSB 1.1のみだ。USBケーブルは2mにした。電源ケーブルとUSBケーブルをつないで接続終了。最後に、テストプリントをもとに、印字ヘッドの位置調整をして設置作業は終了だ。


■意外に簡単な操作

カードスロット部。CFアダプタは標準装備 ビューワーと操作パネルは近く、操作しやすい

パネル部のアップ。メモリーカードをセットした直後のデフォルト時の設定 イメージビューワーのアップ。1.5インチのTFT液晶で、何が写っているかは充分にわかる

 プリンタの電源を入れ、CFカードを差すと、なにも操作しなくてもイメージビューワーの液晶に最初の画像が表示される。カーソルキーの左右で前の画像と次の画像が表示される。Lサイズの用紙を上向きにセットし、印刷開始ボタンを押せば、表示されている画像の印刷がはじまる。わかりやすいインターフェイスだ。

 ここでイメージビューワーがないと、マニュアルにあるように最初に一覧を印刷し、画像番号を打ち込まなければならない。使いやすさと安心感が格段に違うので、ダイレクト印刷機能を使うためにはイメージビューワーは必須の装備といえるだろう。

 デフォルトの印刷設定はLサイズ用紙、印字品質は☆2つ(3つが最上)、画質補正はExif Print対応のオートになっている。もちろん、メモリーカード内の全画像の印刷、30個までの個別印刷、DPOFによる指定もできるが、カーソルキーで指定の画像を選び、印刷開始ボタンを押すというのが一番簡単な使い方だ。

 とりあえず純正用紙(キヤノン プロフォトペーパーL判)を10枚セットし、印刷してみたが、ずれたりすることもなく、まったく問題なく印刷される。画質は家庭内で話の種にするぐらいには十分すぎる。もちろん、前のプリンタとは比較にならない画質で、ここ数年のプリンタの進歩の大きさを感じた。

 ダイレクト印刷の際でも、濃淡の調整や、画像補整などの機能は用意されているが、普通に撮影できていれば、デフォルト設定のままで十分な感じだ。また、調整が必要な場合は、小さなイメージビューワーでしか確認できないので、PCがあればPCで行なった方がいいだろう。

 Lサイズの用紙は各社から出ているので、キヤノンの純正用紙以外にもいくつか試してみたが、かなり仕上がりには差がでる。キヤノンの純正紙は、速乾性にすぐれているらしく、他の用紙を使うと、用紙によってはインクが多すぎる感じになってしまう。また、純正紙は光沢感が強い。BJ 895PDのデフォルトの設定は、純正紙に最適化されているらしく、この設定で使う限り、純正紙を越える用紙を見つけていない。

 また、異なる社の用紙を重ねて使用していると、紙質の違いからか2枚同時に送られてしまうことが2度ほどあった。そういうこともあって、価格的にはやや割高だが、現状では純正紙に統一して使っている。

 印刷速度は、1,600×1,200ピクセルのデータ20枚を、デフォルトの状態で連続印刷して27分かかった。一度にセットできる用紙は純正紙で40枚弱(マニュアルの推奨値は20枚)なので、とりあえず1時間前後でケリがつく計算になる。もちろん、これは画像の内容などの条件によって異なるが、一つの目安として使えるだろう。

Lサイズ用紙使用時。これで20枚セットした状態で、まだ余裕がある A4用紙使用時。用紙ガイドをずらすだけで、すぐに使い分けられる

 モノクロのA4印刷は、原稿の校正などで思っていたよりも使用頻度が高く、用紙の交換が簡単なカット紙中心にしておいて良かったと感じる。できれば両方セットしておき、レバーなどで切り替えられれば最高だが、いまのままでも苦になるほどではない。モノクロの印字品質も特に不満はないし、印字速度も十分に速い。


■意外にうるさい紙送り

 今回の買い物には満足しているが、それでもいくつか気になる点はある。

 まず、給紙の際の音が意外に大きなこと。とくに、次の用紙を送る際の「ベーッ」というモーター音とパネル同士が当たる「パタッ」という音がうるさい。通常の使用では問題ないが、夜間の印刷時はいつも部屋の扉を閉めるようにしている。同じ部屋にだれかが寝ていたら使えないぐらいの音だ。

 なお、BJ 895PDには静音モードがあって、これを指定すると印字時にとくに有効なのだが、指定できるのはPCから印刷するときに限られている。メモリーカードからのダイレクト印刷では指定できないのだ。

 また、BJ 895PDには、キヤノン製デジタルカメラと直接接続して印刷する機能があるのだが、手元にあるPowerShot A20は対象外となっていて使えない。この機能は、追加機能が多いらしく、同時期に発売された製品同士でしか使えないことが多い。自社製品同士をつなぐ独自規格なのだから、最初にきちんと規格を決めて互換性を維持してほしかった。


■デジタルカメラの周辺機器としてお勧め

 メモリーカードスロット付きのインクジェットプリンタというと、初心者向けの機器というイメージがあり、販売店でもプリンタコーナーの中心からははずれた位置に置かれている。しかし、使ってみれば、思っていた以上に簡単に、よい画質の写真が得られる製品に仕上がっていた。

 また、単に仕上がった写真を受けとるのと違って、自分で操作して写真が出てくる喜びは、銀塩写真ではじめて暗室に入ったときのそれに近いものさえある。

 自分以外の家族もデジタルカメラを持っているのであれば、その家族に、写真を撮って印刷する楽しさを教えてあげるためだけにでも購入する甲斐はあると思う。その際は、操作を簡単にするために、ぜひオプションの液晶イメージビューワーも一緒に購入することを強くお勧めする。

□キヤノンのホームページ
http://canon.jp/
□BJ 895PD製品情報
http://www.canon-sales.co.jp/bj/lineup/895pd/index-j.html
□関連記事
【5月15日】キヤノン、Exif 2.2対応のA4インクジェットプリンタ5機種
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0515/canon.htm
【3月5日】エプソン、3つのメモリカードスロットを搭載したインクジェットプリンタなど
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0305/epson.htm

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(2002年9月2日)

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