槻ノ木隆のPC実験室

Pentium 4用キューブ型組立キット「M.J」レポート
【組立編】

直販価格:49,800円(ブラック/シルバー)
      51,800円(ホワイトパールマイカ)

 星野金属工業の「Polo」「Pandora」やエムシージェイの「CUBE-24」に代表される、いわゆるキューブ型の自作キットを使った自作が、1つのトレンドになっている。この3月、これらのキューブ型ベアボーンキットに、新製品が登場した。それが今回紹介する星野金属工業の「M.J」である。

【写真1】 星野金属工業の「JAZZ」風キューブ型ベアボーン「M.J」。アクリルのフロントパネルはツヤがあり美しい 【写真2】 横から見てもスタイリッシュなイメージを醸し出している 【写真3】 背面はミラーフィニッシュという程ではないが、綺麗に磨かれたアルミパネルだ

■Pandora+JAZZ=M.J?

【写真4】 お同梱物。必要なものは一通り揃っており、ごく一般的といえる構成

 M.Jはケース、電源、マザーボードから構成されるSocket 478 Pentium 4対応のベアボーンキットだ。これまで発売されていたPandoraやPoloはSocket 370対応であり、「小さなPentium 4マシンが欲しい」と思っていた人にはうれしい製品だろう。

 ケースの外観でまず目に付くのが、傾斜しているフロントパネルで、ちょうど同社の「JAZZ」シリーズのような印象を持つ。ちなみに初代JAZZではケース上面も傾斜していたが、M.Jは水平である。ケース表面は星野金属工業らしい光沢を持ち、ケースを撮影していても反射して大変なほど。ちなみに今回は黒モデル(M.J M130 B)を試用したが、このほかにホワイトパールマイカ(M.J M100 WPM)、シルバー(M.J M140 S)のモデルも発売されている。

 キューブ型ケースで一番気になるサイズだが、260×212×310mm(幅×奥行き×高さ)と、Pandora(225×225×225mm)より一回り大きくなっている。そのぶん内部には余裕があると思われ、このあたりは大きめのCPUクーラーが必要なPentium 4対応への配慮かも知れない。

 パッケージ内容は一般的なものだが(写真4)、特筆するとすれば、4ピン電源コネクタの分岐ケーブルが同梱されていることである。詳しくは後述するが、M.Jで使用されている電源には4ピンコネクタが3つしかないうえ、搭載されているマザーボードに1つ使用しなければならない。つまり、残りは2つしかなく、そのままではFDD、HDD、CD-ROMを同時に接続することすらできないのである。こうした状況だからこそ、分岐ケーブルが同梱されているのはうれしい配慮といえる。

■M.Jの内部

 M.Jのケースは、両側面と上面のカバーが外れるようになっている。もちろんローレットスクリューが使用されているので、カバーを開けるときにはドライバーは不要だ。ケース内はやはり広いとは言えず、3面すべてのカバーをはずさないと作業はしにくいだろう。ちなみに用意されているドライブベイは、5インチベイ×2、3.5インチベイ×1、3.5インチシャドウベイ×1となっている(写真5)。

 ケース内部で目に付くのが、背面に用意されたケースファンだ。同社の8cm低音ファン「Windy 80 TypeII」が使用されているが(写真6)、その位置に注目したい。メーカー製の省スペースPentium 4マシンに見られる工夫だが、ちょうどPentium 4のCPUクーラーの上部にケースファンが設置され、CPUの熱を効率よく逃がす仕組みになっている。

【写真5】 側面パネルを開いて中を見た様子。背面のケースファンとマザーボードの水平置きが特徴 【写真6】 ケースの背面ファンに使われている星野金属工業の「Windy 80 TypeII」。非常に静かなファンだ 【写真7】 背面のファンとCPUファンの位置関係に注目。CPUファンから排出される熱を即座に外へ排出する位置に設けられている。当然ながらこれと組み合わせるCPUクーラーは吸出しタイプの方が望ましい

 用意されているマザーボードはShuttleの「FV50」というFlexATXマザーで(写真8)、これが本体の底面に水平に取り付けられている。このFV50は、チップセットにビデオ統合型のSiS650を搭載しており、DDR SDRAMソケットが2基用意されている。オンボードでVGA、サウンド(C-MediaのCMI8738をオンボード搭載)、LAN(RealtekのRTL100BAをオンボード搭載)、IEEE 1394(Agere SystemsのFW323 05をオンボード搭載)を備え、これだけで必要な機能はそろっているといっていい。

 マザーボード上にはSiS300/315のビデオカードなどでおなじみのコンパニオンチップ「SiS301」も搭載しているので、ビデオ出力も可能だ。本体にS-Video出力端子を備えるほか、S-Video-コンポジット端子の変換ケーブルも同梱されており、これを使ってVGA出力&テレビ出力によるデュアルディスプレイ環境も可能となっている。これだけの機能をオンボードで搭載しながらPCIスロットを2基備えている、非常に充実したマザーボードである(写真9、10)。

【写真8】 台湾Shuttle Computer Group Inc.のFV50。SiS650を使ったDDR SDRAM対応マザーだが、同社のWebページにはこの製品は未掲載である。スペック的に一番近いのはMicroATXのMS51N( http://www.shuttleonline.com/spec.php3?model=ms51 )だが、AGPバスを持つ代わりにSiS301は搭載されていないしIEEE 1394コントローラも無い。OEM向け専用モデルと言うことだろう 【写真9】 背面パネル拡大図。パラレルポートは省かれているが、シリアル/USB/IEEE 1394が各2ポートとVGA/S-Video、PS/2キーボード&マウス、サウンド端子と盛り沢山だ 【写真10】 前面にもUSB×2、マイク端子、ヘッドホン端子、IEEE 1394が用意されている。マイク、ヘッドホン端子は背面と同時使用も可能となっているのが便利だ

 このマザーボードはPentium 4用ということもあり、通常のATX電源コネクタのほかに12Vの入力を必要とする。先にも少し触れたが、この12Vの供給にはCD-ROMなどで使われる4ピンの電源コネクタが使用されており、ATX12V規格で定まった12V供給専用コネクタは利用しない。電源ユニットはEnhance Electronics Co. Ltd.のSFXタイプの160W電源であるSFX-1216G( http://www.enhance.com.tw/images/sfx1216g.gif )が用意されている(写真11、12)。この電源にはATX12Vコネクタも用意されているが、今回はそういうわけで未使用となっている。

【写真11】 SFX-1216G。125mm×100mm×57mmとコンパクトだ 【写真12】 SFX-1216Gのスペック。まぁバランスの取れた出力だと思う

■M.Jを組み立ててみる

【写真13】 ちゃんとしたマザーボードマニュアルが別に用意されている訳ではないので、中級者クラスでないとちょっと困ってしまいそうだ

 まずは付属品のほか、下記のパーツを用意してM.Jを組み立ててみた。

・CPU:Pentium 4 2GHz(Willametteコア)
・CPUクーラー:インテル純正品
・メモリ:DDR SDRAM 128MB×2
・FDD:ミツミ D353M3D
・HDD:Seagate BarracudaATA IV 80GB(ST380021A)
・DVD-R:パイオニア DVR-103

 何でWillametteコアかというと、消費電力と発熱が圧倒的に大きいからで、これに耐えるなら最近のNorthwoodコアならまず問題ないと考えられるからだ。Barracuda ATAIVやDVD-Rの選択も、やはり消費電力の限界を知りたかったからという事がある。その意味で、多少過剰なパーツ選択ではある。

 組み立てにあたってはユーザーズマニュアルを参照する事になるが、ジャンパピンの詳細などは説明不足な部分が多い(写真13)。特に問題と思われるのはフロントコネクタ類の説明だろう。フロントコネクタはUSB、サウンド、IEEE 1394が用意され、それぞれをマザーボードのジャンパに接続することになるが、フロントから伸びているケーブルのうち、どれがUSBなのか、サウンドなのか、IEEE 1394なのかが非常に分かりにくいのである。マニュアルと睨めっこすること15分ほどで、やっと理解が出来た。USBとIEEE 1394あたりは、間違えて接続すると周辺機器を壊しかねないので、もうすこし分かりやすくしてほしいものである(写真14~16)。

【写真14】 オーディオケーブルはこれ。1番と2番ピンの両方に茶色いケーブルが接続されているものだ 【写真15】 USBはこちら。上下が逆なのでわかりにくいが、右下に赤いケーブルの1番ピンが来るように接続する 【写真16】 IEEE 1394のみ、黒い被覆がなされている。やはり赤いケーブルが1番ピンに接続

 実際の組み立てであるが、やはり内部は狭く、作業はしづらい。ユーザーズマニュアルには組み立て手順が書かれているが、この手順どおり作業を行なうことをお勧めする(写真17)。例えば今回の例でも、先に5インチベイにDVD-Rドライブなどを取り付けてしまうと、後からCPUやメモリなどを取り付けるのは非常に困難である。ちょっとしたパズルの気分だが、こうした省スペースケースではいたしかたないかも知れない。

 ところで、同じ斜面フロントパネルを用いたJAZZでは、取り付けたドライブ類が階段状になるという欠点があった。しかしM.Jでは、ドライブ類が斜めにスライドするので、フロント部も平らになる。ドライブの傾斜がきついと、縦置き可能なドライブしか使用できないと考える人もいるかも知れないが、それほど傾斜はきつくない。トレイに爪のないCD-ROMなどでも問題なく使用できるので安心してほしい(写真18)。

【写真17】 気分は凝ったプラモデルの組み立て。順序を間違えると狭いスペースに無理やり手を突っ込むことになり、非常に面倒である 【写真18】 JAZZとは違い、ベイに搭載したドライブ類はパネルに対してフラットに収まる

 さて、実際に組み立ててみると、フラットケーブルや電源ケーブルなどが入り乱れ、ケース内にケーブルを「押し込む」といった感じになってしまう(写真19)。その中でも特に気になるのが、5インチベイに取り付けたドライブだ。今回使用したDVR-103は奥行きが208mm程度だが、これがギリギリだ。しかも、取り付けたフラットケーブルが背面ファンを塞ぐ格好になってしまい、冷却性能は大きく落ちるだろう(写真20)。狭いケース内から効率よく熱を逃がすためにも、スマートケーブルやケーブルタイなどを用いて配線を整理すべきだといえる(写真21)。

【写真19】 付属のフラットケーブルを用いて、普通に組み立てたが、ケーブルが乱雑で見苦しい 【写真20】 かろうじて入りましたといったところで、美しく無いこと夥しい。しかもフラットケーブルが見事に背面ファンを塞ぐ格好になってしまうので、冷却に大きな影響が出そうだ 【写真21】 ケーブルを全てスマートケーブルに交換し、ついでにケーブルタイなどを用いて纏めてみた。まだちょっとウルサイが、これはロングタイプのスマートケーブルを使っているからで、ショートタイプにすればもう少し収まりがよくなるだろう

■OSのインストール

【写真22】 Pandoraなどと異なり電源ランプは緑色LEDが採用されている。ちなみにHDDアクセスランプは黄色LEDである

 組み立てが完了したら、いよいよ電源投入である。この手の製品で気になる動作中の駆動音であるが、非常に静かだ。電源ファンの駆動音がうなるような低めの音を出しているものの、気になるレベルではない。ケースファンの音にいたっては、電源ファンの音に隠れてしまって耳に入ってこない。またHDDやDVD-Rドライブを動作させても、ケースの作りがいいので振動音などは発生しない。これなら、24時間駆動サーバーやDVD-Video鑑賞用PCとしても十分実用的な範囲であると感じた。

 ちなみに同社のPandoraやPoloでは、電源ランプに青色LEDが使用されていたが、M.Jでは一般的な緑色LEDが使用されている(写真22)。これは好みの問題だろうと思うが、もし青色を期待していると裏切られることになるので注意してほしい*1

 さて、今回はWindows MeとWindows XP Professionalのインストールを試みたが、結果的に双方ともなんの問題もなくインストールが完了した。また、OSインストール後に付属のCD-ROMからチップセット、ビデオ、サウンド、LANのドライバをインストールしたが何の問題も起きなかった。SiS650という新しいチップセットではあるものの、まずは安心して使用できそうだ(写真23、24、25)。

*1:今回は黒モデル(M.J M130 B)での確認であるが、同社のホームページに掲載されているスペックを見る限り、ホワイトパールマイカ(M.J M100 WPM)、シルバー(M.J M140 S)の両モデルも同様の緑色LEDが使われているようだ。

【写真23】 SiS650のビデオドライバを組み込むとプロパティが拡張され、ビデオ機能に関する詳細な設定を行なえるようになる 【写真24】 ビデオ出力を利用したデュアルディスプレイ環境も構築可能で、ミラー、マルチモニタの指定が可能だ。残念ながら、GeForceのTwinView(nView)やMillenniumのDualHeadで可能な、ビデオ出力側にDVD-Videoを出力する機能は行なえない 【写真25】 CMI8378のドライバを組み込むと、サウンド再生用のアプリケーションもインストールされる。コンポをイメージしたインタフェースのアプリケーションだ

【拡張編】に続く

□星野金属工業のホームページ
http://www.hmi.co.jp/
□製品情報
http://www3.soldam.co.jp/barebone/mj/index.html

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(2002年4月5日)

[Reported by 槻ノ木隆]


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