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デジタルカメラレポート第一弾でお伝えしたとおり、年内最後の大型イベントであるCOMDEXでは、日本国内で入手できるモデルに関しては、あまり大きな動きはなかった。これで年末までは、まず目立った新製品が登場しないことが明らかになったため、現行製品のなかから安心して機種選びができるわけだ。
いっぽう、海外メーカーやアメリカ市場に特化した日本メーカーの製品は、猛烈な勢いで展開し始めている。なにしろ、アメリカではデジタルカメラが急速に普及し始めており、来年には台数ベースでアメリカが日本市場を追い越すことが明確になってきた。実際に普通のPCショップでも、デジタルカメラをおいている店が多くなっており、認知度も飛躍的に高まっている。そのため、ここにきて北米をターゲットにした製品が続々登場してきたわけだ。
そこで第二弾では、日本では見ることのできないモデルを中心にレポートしよう。
アメリカではいまでも、3.5インチFDを使ったソニーのマビカシリーズが40%近いトップシェアを獲得している。そこで登場したのが、フロッピー互換である120MBのSuperDiskを搭載した、そのライバル機となる「PalmCam PV-SD4090」といえる。
本機の最大の特徴はフロッピー互換のSuperDiskを搭載している点。この手のリムーバブルメディアとしては、アメリカでZipに次いで普及している、120MBのメディアだ。つまり、マビカの弱みである撮影枚数の少なさをSuperDiskでカバーしながら、必要に応じて3.5インチフロッピーでも撮影できるのが本機のウリというわけだ。
また、カメラ自体にコピー機能を備えており、カメラ内のメモリーを使い、最大1.44MBまでのデータをディスク間で移動することができるので、SuperDiskで撮影し、外出先で必要なデータをだけをFDに落とすこともできるわけだ。
さらに、本機はUSB接続でPCの外部ドライブとして利用できるため、SuperDiskを持っていない人でも気軽に利用できる上、120Mのパソコン用外部ストレージ(Win、Mac両対応)としても活用できるなど、実によく考えられている。
本機のベースは、日本でも発売されている130万画素3倍ズームの「PalmCam PV-DC2590(日本名LK-RQ130Z)」で、CCDやレンズ系をそのまま流用している。もちろん、SuperDiskを搭載しているため、ボディーサイズは大きいが、それでもマビカと同レベル。CCDは1/2.7インチの132万画素タイプ。レンズは光学3倍ズームで、デジタルカメラ専用に設計されたレンズのため、画質面では有利という。また、2倍のデジタルズーム機能も搭載されている。
撮影モードは、1,280×960ピクセルのスチルモードのほか、最大10秒までのQuickTimeムービー撮影と、5秒間のサウンド記録もできる。このほか、0.5秒間隔で最大16枚までの連写も可能だ。
撮影枚数はSuperDisk1枚あたり、VGAモードで約1,500ショット、XGAモードでは900枚の撮影が可能という。
ブースで手にした感じでは、サイズの割に軽量で、ホールド感も良好。シャッターの感触もシャープで、記録時間も約5秒程度と実用十分なものだった。接写は20cmまでとやや物足りないが、マクロ時にストロボ撮影をしても露出が正確な点は高く評価できる。実写データを見てもわかるように、画質も十分に良好だ。
価格は899ドル(USBキット、充電器込み)。これは北米でのソニーの「MVC-FD88」(130万画素・8倍ズーム)と同じ価格であり、ズーム比の違いこそあるものの、コストパフォーマンスは十分に高いモデルといえる。
サイズはこそ大きいが、FDD互換のSuperDiskのメリットを最大限に生かした、なかなか魅力的な北米向けビジネスモデルといえる。なお、日本国内で正式発表されていないが、来年には日本でも発売する予定という。
●iomega
Zip採用の2.1Mピクセル光学4倍ズーム機「ZipCam」を参考出品
アメリカで高い普及率を誇るiomegaのZip。今回は、プロトタイプながらも、このZipを使ったデジタルカメラを参考出品していた。
【動画】 |
このモデルは、2.1Mピクセル(アメリカではこのような画素数表記が一般的)の光学4倍ズーム(+デジタルズーム2倍)搭載機だ。説明員によると、100MBのZipディスク1枚で標準モードの場合、200枚の撮影ができるという。また、記録時間は1コマあたり1秒と高速で、サウンドの記録もできる。
サイズはかなり大柄だが、Zipディスク自体のサイズからすると、むしろギリギリまで小型化されている感じだ。また、ボディー本体は結構薄型で、液晶モニターなどの厚みを考えると、本当にこの薄さで収まるのか若干の疑問に感じるほどのサイズといえる。
試作機とうたわれているが、細部の作り込みもしっかりしており、具体的な記録時間まで説明していることを考えると、実際に撮影できるモデルである可能性が高く、本格的な製品化を考えているようだ。操作部もよく考えられており、ジョグダイアルによるモード操作も斬新だ。
本機の横には、Zipを使ったデジタルオーディオデッキなどの試作機も展示されており、iomegaが従来のPC機器の世界だけではなく、デジタル家電系への展開を本気で考えていることを感じさせた。
もちろん、最大の特徴は、40MBのClik!を記録媒体として採用している点で、60枚の撮影を可能にしている。もっとも、現物を見ると、CL30の設計後にClik!ドライブを追加した感じで、ドライブを内蔵するために想像以上に厚みのあるボディーになってしまっているのが残念だ。
最近は大容量のメモリーカードが安価になってしまったせいか、Clik!発表当初ほどコストパフォーマンスな感じが薄れているが、それでも今後広がるnon PCユーザーにとっては魅力的なもの。Clik!本来の良さを生かすのであれば、専用設計の斬新なボディーを用意して欲しいところ。
もっとも、本家iomega自身がZipを使ってカメラを作ったことから考えると、Clik!の限界をiomega自身が感じているのかもしれない。
●EPSON AMERICA
シンプルでスタイリッシュな「PhotoPC650」
日本国内では「CP-800S」しかラインナップしていないEPSONだが、海外ではEPSON AMERICAを中心に「Photo PC」シリーズを展開している。今回のCOMDEXでは、EPSONがブースを構えていなかったが、メモリーカードメーカーのLEXAEブースで、日本国内未発表のモデル「Photo PC650」の姿を見ることができた。
このモデルは単焦点タイプでAF式のメガピクセル機。画像サイズは1,152×864ピクセルとなっている。記録媒体はLEXARブースにあることからもわかるように、CFカードを採用している。スタイリングは、センターにレンズがあることもあって、なかなかカメラっぽい雰囲気があり、好感が持てる。操作部もシンプルで使い勝手も良さそうなモデルだった。
●ヒューレットパッカード
JetSend搭載の光学3倍付き2Mピクセルモデル「C-500」を出品
HPは9月に発表した新製品である「C-500」を出品。といっても、こちらはHPブースではなく、同社が提唱する赤外線転送方式である「JetSend」パビリオンのなかで、JetSendによるプリントデモの一環として出展されていた。
本機は2Mピクセルで光学式3倍ズームを搭載した本格派モデル。スタイルも端正で、海外勢のモデルとしては、サイズも十分に小さくまとめられている。操作部には十字パッドが採用されており、ボタン配置もよく考えられている。強い個性はないが、バランスのいい実用機という印象だ。
また、赤外線転送のJetSendに対応しており、撮影したデータをJetSend対応のプリンターやPCなどに簡単に転送することができる。ブースでは同社のPC用インクジェットプリンターを使ったプリントデモが行われていたが、それ自体は数年前に初代Cyber-shotが実現した世界であり、さほど目新しいものではない。ただ、当時に比べてIrDAの速度も向上し、さほどストレスを感じないレベルになっていることが実感できた。今後、より高速なIrDA2.0をベースにJetSendが展開すれば、かなり軽快な世界になることだろう。特に、家電系を中心とした世界では、JetSendを中心とした赤外線転送が再評価されてもいいのではないだろうか。
●ERICSSON
カシオQVによるBluetooth搭載の転送デモを展開
ちょっと話はそれるが、転送方式で、ぜひ触れておきたいのが、次世代の無線転送規格である「Bluetooth」。どうも、思惑通りの展開にはなっていないようだが、今回はその中心となっているERICSSONブースで、カシオQVのIr-TranPを改造し、アダプターを装着してBluetoothに対応させたプロトタイプによるデモが行われていた。デモは、同社の携帯電話を使ったもので、Bluetoothによりカメラから電話にデータを転送し、ほかの携帯電話に接続されたノートPCに転送するというもの。
Bluetoothの描き出す世界が現実化すれば、当然、デジタルカメラの世界にもBluetooth対応製品が登場することは確実。今後、デジタルカメラがさまざまな機器への画像入力機器として発展して行くには、現在のようなカード経由での転送や、相互の位置関係が制限される赤外線転送よりも、Bluetoothのような規格のほうが断然有利になりそうだ。むしろ問題は、Bluetoothが予定通りに進んでいないことにあるのかもしれないが…。
●ixla
デジタルカメラ付きでわずか99ドルの画像系パッケージソフトを発表
アメリカではデジタルカメラの低価格化が急速な勢いで進んでいるが、ついに、わずか99ドルの、デジタルカメラ付きアプリケーションソフトが登場した!
これは以前からデジタルイメージング系ソフトを多数発売しているixlaのもので、Web作成用の「Web easy Deluxe」と、デジタルフォトを楽しむための「Photo easy Deluxe」の2種が今回発表された。
いずれも、優秀なアプリケーションで、前者はこのソフト単体でビジュアルをふんだんに使ったホームページ作成ができるもの。後者は画像統合ソフトで、画像の簡単な管理から補正、各種のバリエーションプリントまでをフルにカバーできるもの。
これらに付属するデジタルカメラは「SuperPro Digital Camera」と呼ばれる、CMOSセンサーを採用したVGAモデルで、内蔵メモリー専用機で30枚の撮影ができる。液晶モニターはないが、ストロボも内蔵しており、USB転送に対応。デジタルフォトを気軽に楽しむには必要十分な機能を備えたモデルといえる。
カメラ単体では発売されていないようだが、カメラ付きセットが99ドルで、各アプリケーションのカメラ無しパッケージが49ドルであることを考えると、カメラ本体はわずか50ドルという猛烈な低価格を実現していることになる。
最近では国産モデルも、高画素・高機能化だけでなく、比較的手頃な価格帯のものも登場し始めているが、ここまで安価で、しかも基本機能がシッカリしたモデルは見あたらない。だが、PCで気軽に写真を楽しむなら、このようなシンプルなモデルでも十分なケースが多いわけだ。
さらに、このモデルが単なる低価格デジタルカメラとして販売されるのではなく、きちんとした用途が明確なアプリケーションソフトとワンパックになって登場してきたあたりに、デジタルフォトに対する文化の違いが感じられ、なかなか興味深いものがあった。
●Sierra Imaging
Web作成と検索機能を搭載した「Image Expart2000」
また、今回のCOMDEXでは、画像系のアプリケーションも数多く出品されていたが、そのなかでも出色の仕上がりだったのが、開催初日に公開された新バージョンである、Sierra Imaging社の「Image Expart2000」。
このソフトの現行バージョンは、日本国内でパッケージソフトとして発売されていないが、東芝のAllegrettoの付属ソフトとして日本語版が採用されている。
もともと、画像の一覧表示と簡単操作の画像補正機能が大きな特徴だったが、今回の新バージョンでは、Web作成機能と検索機能を搭載し、さらに魅力的なものに仕上がっていた。
なかでも、Web作成機能は実に便利なもので、一覧表示から選んだ画像データを使って、画像の一覧表示や一枚毎に表示してゆくようなHTMLファイルが簡単にできるもの。また、テンプレートも豊富に用意されており、表示方法だけでなく、表示のバックグラウンドを変えたりといったカスタマイズ機能も充実している。もちろん、ここで作成したHTMLファイルをFTPすれば、自分のホームページ上で写真データを見栄えよく表示することができるわけだ。
価格は、アメリカでの画像系ソフトの標準である49.99ドル(Webからのダウンロード販売時)に抑えられており、現バージョンアップからのバージョンアップは29.95ドルという。なお、新バージョンは来月12月から、同社サイトで入手できるという。
●Pretec
スケルトンボディーもあるCMOS採用のVGAモデルを出品
多くの大手メーカーにOEM供給をしている台湾メーカーであるPretecは今回、そのベーシックモデルとして「DC-520」を出品した。このモデルは、液晶モニターなしのシンプルなVGA(640×480ピクセル)モデルで、低価格化のために、撮像素子にCMOSを採用している。コンパクトでデザイン的なまとまりもよく、価格的にも149ドルと安価な点が大きなポイント。さらに、USB接続によりNetMeetingなどのPCカメラとしても利用できる。
また、オプションとして赤とグリーンのスケルトンボディーも参考出品するなど、なかなか魅力的なモデルに仕上がっていた。
同社はこのほかにも、縦型の85万画素モデル「DC-800」、150万画素の横型モデル「DC-1500」なども出品していた。
●Relisys
1.5Mピクセルの単焦点モデル「Dimera 150P」を出品
同じく台湾のRelisysは今回、1.5Mピクセルの単焦点タイプとして「Dimera 150P」を出品。CFカード採用で、液晶モニターは1.8インチタイプでUSB対応という標準的なスペックで、ボディサイズも大きく、これといった特徴がない点が残念だ。また、同じボディーで130万画素の「Dimera 130P」もある。価格については未定という。
●SAMPO
199ドルの85万画素モデル「DC-400」を発表
SAMPO(台湾)は、85万画素CCDで単焦点タイプの「DC-400」を発表。このモデルは、オートフォーカス式で、1.8インチLCDも搭載されており、記録媒体もCFカードを採用しながらも、199ドルと手頃な価格帯を実現したもの。また、2倍のデジタルズーム機能、USB転送、10秒のボイスメモ、9コマまでの連写機能なども備えた、なかなかの多機能モデルだ。デザイン的にも、レンズをセンターに配置するなど、アメリカ人好みのものに仕上がっていた。
●TATUNG
150万画素単焦点タイプ「TDC-150」を参考出品
PC周辺機器を広く手がけるTATUNGは今回新たに、150万画素で単焦点タイプのデジタルカメラ「TDC-150」を参考出品した。デザインも個性的で、サイズもなかなかコンパクトなモデルだったが、あくまでも参考出品レベルで、価格や発売時期は未定という。
●Kodak
149ドルのメモリーカード対応インクジェットプリンターをデモ
コダックは、デジタルカメラからPCなしで気軽にプリントできる、CFカードとスマートメディア対応のインクジェットプリンターを出品した。このモデルは「Kodak Personal Picture Maker MP100 by LEXMARK」と呼ばれるもので、LEXMARKの同種のプリンターを、コダックブランドで発売したもの。
しかも、その価格は、わずか149ドル!(199ドルで50ドルのキャッシュバック付き)。もちろん、通常のPC用カラープリンターとしても利用できることを考えると、これは破格といえる。
基本的には、「エプソン・プリントン」と同じ考え方で、デジタルカメラで撮影したカードを、直接、本機のメモリーカードスロットにセットするだけでOK。さらに、別売のZipドライブをパラレル経由で接続することで、パソコンなしに撮影データをZipに保存することができる点も大きな特徴といえる。
残念ながら、印刷品質はプリントンと比べるべくもなく、画質も荒いが、コダックブランドのモデルらしく、肌色などの再現性には十分気を使ったチューニングがなされている。また、使用感は軽快とはいえず、印刷速度も遅いうえ、プリントサイズの指定方法も分かりにくいなど、欠点も多い。
それでも、149ドルという価格は大いに魅力的なレベルであり、エントリー向けのデジタルカメラと組み合わせて、低価格でホームプリントを楽しみたいユーザーに持ってこいのプリンターといえる。
National Semiconductorブースでは、なぜかスタジオ用の超本格派デジタルカメラの撮影デモが行われていた。このモデルは、FOVEN社の「FOVEN Studio System」と呼ばれるもので、実効1,200万画素(400万画素CCD×3)のレンズ交換式ワンショットタイプだ。
このモデルの最大の特徴は、なんといっても、ファインダーと制御部に、ごく普通のノートPCをそのまま採用している点。撮影風景を見ていると、ノートPCのモニターがそのまま巨大な液晶ファインダーになっているため、実に見やすいが、ちょっと異様な感じだ。もちろん、撮影されたデータはノートPCのHDDに記録することができる。また、キーボード部分には、カメラの制御に関係するキーだけにシールが貼られており、いかにも実用本位なモデルという印象だ(考えようによっては、VAIOのC1を巨大化したようなものともいえそうだが…)。
価格は50,000ドルときわめて高価だが、CCDのスペックを考えると、まずまず納得できる範囲。これもノートPCをほぼ無改造で利用しているからこそ実現できる価格といえそうだ。
□製品情報
http://www.foveon.net/prodframe.html
□COMDEX/Fall '99のホームページ(英文)
http://www.zdevents.com/comdex/fall99/
□関連記事
【11月19日】
プロカメラマン山田久美夫のCOMDEX/Fall '99 会場レポート デジカメ編その1
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991119/comdex21.htm
('99年11月22日)
[Text by 山田久美夫]