会場:Las Vegas Convention Center
Sands Expo and Convention Center
Las Vegas Hilton
毎年11月に開催されるCOMDEX/FALLは、年末商戦にとっては遅すぎるイベントだけに、すでに市場に出回っている製品の出展が中心だ。
ただし、デジタルカメラを中心としたデジタルイメージング関係は、年々需要が高まっていることもあって、各社とも元気で注目度も高い。ほんの2年ほど前まではデジタルカメラ自体が目新しい製品だったが、今年はCOMDEXというイベントのなかで、完全に一つの分野を確立したという印象だ。主要メーカーのブースをみていこう。
●富士フイルム
COMDEX/FALLにおいて、米国で初めて一般に公開されたものがある。それが、富士フイルム(富士フイルムマイクロデバイス)の「スーパーCCD ハニカム」だ。まだ、デバイス単体での技術発表の段階だが、カメラに搭載され製品化されるのが来年といわれるだけに、会場で業界関係者に会うたびに、「富士の新CCD、どうですかね?」という会話から始まるほど、その注目度は高い。
ブースでは、CCDの実物と実写比較プリントが出品されている。実写サンプルは、同条件で従来型の230万画素CCDと、スーパーCCDハニカムの216万画素タイプでの比較プリントになっているが、その差は歴然。他社の関係者が半信半疑になるのも仕方がないほどの実力といえる。
プリントにある説明文では新CCDの230万画素タイプで、従来型の400万画素相当の解像度が得られるとあるが、それも十分に納得がゆくレベルといえる。
カメラに搭載され、市場投入されるのは来年。そう遠くない話だけに、来春の台風の目になることは確実だ。もっとも、展示がブースの前面にあるわけではないうえ、搭載されるカメラのクラスもハッキリしないため、一般来場者の反応は今ひとつだった。
また、日本でもすでに発売になっている「FinePix1200」の米国版「MX-1200」を出品。米国では、PC接続キット込み(Adobe Photo Deluxe付、Mac用ケーブルなし)でわずか299ドルと、本格的な130万画素モデルでもっとも手頃な価格を実現した。米国の低価格コンパクトカメラと同じように、店頭で吊り下げて販売できるよう、ブリスターパックになっている点も画期的で、この製品のポジショニングを象徴したものになっている。
実際に米国でのデジタルカメラ市場は、低価格モデルへの要求が高く、市場が猛烈な勢いで広がっているものの、その中心は299ドルを中心とした低価格帯へ移行しつつある。高機能化を売りにしている日本メーカーが苦手とする価格帯だが、この分野にいち早く対応したモデルとして注目される。
●オリンパス
米国でも高いシェアを誇るオリンパス。今回は「C-2500L」、「C-2020Z」、「DL-450(C-920Z)」といったメイン機種がすべて新製品になったうえ、同会場での「ベストショー&ベストアトラクション」を受賞しただけあって、ブースの雰囲気も明るく、活気に満ちていた。
目新しいものとしては、C-920とC-830Lをベースにし、専用開発の魚眼レンズを使ったQuickTime VRによる全方向パノラマが撮影できるシステムを出品していた。もちろん、ベースはこの手のソフトで定評のあるIPIXを採用している。アメリカでは不動産やネット通販などを中心に、この手のデータが広く利用されはじめており、今回の展開は従来は難しかったこの世界を、比較的手頃なモデルを中心に幅広く利用できるようにするのが狙いという。
もっとも、IPIXは最終データを生成するためには、かなり高価なライセンスキーが必要な点が気になる。これでは、一般ユーザーは気軽に楽しめない。QuickTime VRはデジタルならではの魅力的な世界なだけに、より手軽に楽しめる環境を構築して欲しいものだ。
●キヤノン
キヤノンは「Are you digital yet?」(まだ、デジタルじゃないの?)をスローガンに積極的に展開。出品されているのは、211万画素2倍ズームの「S10」を中心に「A50ZOOM」、「Pro70」といった現行製品。なかでも、今回の「S10」の人気が高く、独自開発のパノラマ対応の昇華型プリンターも好評だった。
とはいえ、ブースのメインはカラーコピアやプリンターなどの事務機。カメラもDV関係がメインなのは従来通り。だが、デジタルカメラに関しては静観気味だったキヤノンも、積極的な方向へ展開しはじめた印象だ。
●三洋電機
三洋電機は今回、150万画素の“動画デジカメ”「DSC-SX150」をメインに、デジタルカメラを積極的にアピールしていた。なかでも、同機の巨大なディスプレイは目を引く存在だった。例年オリンパスがこの手の巨大なカメラディスプレイを得意としていたが、今年はそのお株を隣のブースである三洋が受け継いだ感じだ。
また、ステージ上では、「DSC-150SX」とCD-Rをベースにした電子アルバムである「DMA-100」をハワイアンダンスとともに紹介し、来場者の注目を集めていた。
このほか、先のエレショーでも出品された「iDフォーマット」の小型MOディスクも、組込型内蔵ドライブ装置とともに出品されていたが、具体的な製品展開については、なんの提案もなされていなかった。
●ミノルタ
ミノルタは、簡単に立体データが作成できるDimageEXベースの「3D 1500」を中心とした展開。このモデルは、今春のPMAで発表されたもので、メタクリエーションと共同開発した3Dカメラだ。会場でのデモでは、商品パッケージを撮影したデータ2枚を使い、パッケージの3Dデータを作成していた。
このカメラを使えば、PC上のマウス操作で自由に回転でき、360度全方向からそれを見ることができるため、インターネット通販などで今後かなりの需要が見込まれると見ているわけだ。しかも、これまでの3D作成用カメラに比べると破格な点も特徴といえる。もちろん、撮影方法もやや特殊で、コマーシャルユースがメインになるわけだが、デジタルカメラの新しい試みとして注目される展開といえる。
●東芝
東芝は今回、米国で先行発表された「Allegretto M5」と「M4」を出展。日本で発売された「Allegretto M40」の出展はなく、米国ではこの2機種での展開となるようだ。
以前のPCカード型Allegrettoシリーズに比べ、カメラ寄りの展開になったせいか、ブースの中ではちょっと浮いた存在になっていたが、PCとのUSB接続による親和性や動画対応、価格の安さといった点をアピールしていたのが印象的だった。
●カシオ
カシオは「QV-2000UX」、「QV-8000SX」の両個性派モデルでの展開。といっても、ブースはWindows CEマシンなどのモバイルがメインであり、東芝同様、ラインナップのなかでやや異質な存在になっていた。もっとも、同社の場合、日本国内と同じく、カメラ付きのPalmPCが発売されており、PCユーザー向けのデジタルカメラは、このタイプにシフトしている感じだ。
カシオには、往年のQV-10のような、PCユーザーが気軽に使えるデジタルカメラの再登場を大いに期待したいところ。とくに、北米市場では低価格モデルへの需要が高まっており、同社の得意とする分野での展開に引き込めるチャンスだと思っているのだが……。
●リコー
リコーは、新製品である「RDC-5300」を出品。といっても、デジタルカメラ単体でのアピールではなく、同機で来場者を撮影し、同社のカラーレーザーでプリント。それを使って、オリジナルのTシャツを作るといったデモを繰り広げており、デモ中は長蛇の列になっていた。
□COMDEX/Fall '99のホームページ(英文)
http://www.zdevents.com/comdex/fall99/
('99年11月20日)
[Text by 山田久美夫]