期日:11月15日~11月19日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center
Sands Expo and Convention Center
Las Vegas Hilton
今回のCOMDEXではマザーボード関係の大きな目玉はIntel 820搭載マザーボードだったが、それ以外にもAthlon用マザーボードなどで魅力的な製品が出展されていた。今回はそうしたIntel以外のチップセットを採用したマザーボードのレポートをお伝えしていく。
●Apollo KX133を搭載したマザーボードがデビュー
VIA Technologiesは9月に日本で開催されたWorld PC Expoで同社のAthlon用チップセットであるApollo KX133を公開していたが、今回は数社のマザーボードメーカーからApollo KX133を搭載した製品が公開された。
PC133 SDRAMに対応した、VIA TechnologiesのAthlon用チップセット、Apollo KX133 |
Apollo KX133はPC133 SDRAM、AGP 4X、Ultra ATA/66などをサポートしたAthlon用のチップセットで、プロセッサバスとしてAthlonのEV6バスをサポートしている点を除けば、同社のP6バス用チップセットであるApollo Pro133Aとほぼ同等のチップセットと言える。
Apollo KX133がAthlonのプラットフォームにもたらすメリットは2つある。1つはIntelのプラットフォームには既に提供されている最新の機能(最新のメモリ技術やAGP 4Xなど)が提供されることで、もう1つはApollo KX133により初めてAthlonマザーボードを4層基板(層を4枚重ね合わせて作る基板のこと)で作れるようになる点だ。
現在発売されているAMDのAMD-750チップセットを利用したマザーボードは6層基板になっている。これはAMDから6層基板を作るためのデータしか提供されていないためなのだが、何よりも6層基板は4層基板よりもコストがかかってしまう(実際に秋葉原などで販売されているAthlon用マザーボードは標準的な440BX搭載製品に比べて5千円~1万円ほど高い)。これに対してApollo KX133ではVIAからマザーボードメーカーに対して4層基板で作るためのデータが提供されており、マザーボードメーカーは容易に4層基板のマザーボードを作ることができる。このため、AMD-750を搭載したマザーボードよりも低コストで作ることが可能となる。
今回Apollo KX133を搭載したマザーボードを公開したマザーボードメーカーは、FIC、BIOSTAR、EPoXの3社で、VIA Technologiesによると、AOpenも既に設計を完了しサンプルを生産しているという。実際の製品の出荷時期に関してはVIAは2000年の第1四半期と述べており、遅くとも来年の3月までにはこうしたマザーボードが市場に登場することになるだろう。こうしたApollo KX133の登場によりAthlonのプラットフォームがさらに充実していくことは間違いなく、これまでIntelのPentium IIIに比べてプラットフォームの脆弱さが指摘されてきたAthlonも、肩を並べることができるようになるだろう。
FICのApollo KX133搭載マザーボードSK11 | BIOSTARのApollo KX133搭載マザーボードM7MK8 | EPoXのApollo KX133搭載マザーボードEP-K7VA |
●4層基板のAMD-750搭載マザーボードも登場
AMD-750チップセットながら4層基板で作られているSD13 |
Apollo KX133を搭載したSK11を公開していたFICは、同時にAMD-750チップセットを搭載したSD11の後継としてSD13を公開した。SD11はAMD-750のノースブリッジ(AMD-751)にVIAのサウスブリッジを組み合わせた構成になっていたが、SD13のサウスブリッジはAMD-750の本来のサウスブリッジであるAMD-756(Viper)に変更されている。
注目すべきはSD13は4層基板で作られていることだろう。既に述べたように、AMDからマザーボードメーカーに対して提供されているAMD-750の設計データは6層基板だけで、そのデータに基づいて作っている限りは4層基板のボードを作ることはできない。そこで、FICは自社で研究したデータを利用して4層基板を設計したいうことだ。
ただ、意外とコストダウンにはならなかったようで、SD11との価格差は思ったより大きくならないという。その理由としては「AMD-750を搭載したマザーボードでは電源周りの部分(CPUとI/Oパネルの間にある大きな放熱板など)のコストが高い」(FIC)とのことで、残念ながら4層になったからといって、440BXなみにコストが下がるというわけではなさそうだ。
なお、出荷時期はSK11とほぼ同じ時期になるということで、「ユーザーの好みによってVIAを選ぶか、AMDを選ぶか選択できるようにしたい」(FIC)ということだ。
●SiS630を搭載した製品も続々展示
Procomp(新興のマザーボードメーカー)のBST1B。AGPのように見えるスロットがADIMMないしはSiS301を増設するためのスロット |
あるマザーボードベンダの関係者によれば、SiS630の出荷が遅れた理由はドライバのフィックスが遅れているためであり、まもなく終了し出荷される見通しだという。ただ、あるマザーボードベンダ関係者によると「SiSはPC Chipsと密接な関係にあり、最初のロットのほとんどはPC Chips(とそのグループ企業であるECS)に渡されており、他のメーカーに渡るまでには時間がかかる」ということで、PC ChipsないしはECSあたりから最初にリリースされそうだ(なお、今回両社はCOMDEXに参加していない)。
SiS630を搭載したマザーボードの多くはオプション増設用の専用スロットを用意している。この専用スロットはAGPと同じコネクタを利用しているが、ピン配置とスロットの位置は異なっている(なお、筆者のWorld PC ExpoのレポートではこれのことをAGPスロットと書いたが、それは誤りで正しくはオプション増設用のスロットだ。お詫びして訂正させていただく)。
この専用スロットには2種類のカードを挿すことができるようになっている。1つは「ADIMM Riser Card」と呼ばれるビデオメモリが搭載されたカードだ。SiS630はメインメモリをビデオメモリとして利用するUMA(Unified Memory Architecture)方式を採用している。メインメモリは64ビット幅なので、当然SiS630に内蔵されているグラフィックスコアはビデオメモリには64ビットアクセスになる。しかし、本来SiS630に内蔵されているグラフィックスコア(SiS300がベースになっている)は、ビデオメモリへのインターフェイスは128ビットをサポートしている。そこで、ADIMMの専用スロットに挿すと64ビット(メインメモリ)+64ビット(ADIMM)=128ビットとなり、SiS630のビデオメモリインターフェイスは128ビットになる。128ビットでアクセスできればグラフィックス処理は高速化することが可能になり、特に3D描画性能が向上する。また、最初は64ビットで利用し、性能に不満を感じたらADIMMを挿入して3Dの描画性能を上げるという使い方もできる。また、もう1つのカードはSiS301というオプションチップが搭載された拡張カードだ。SiS301を追加することで、テレビ出力/デジタル液晶ディスプレイ(DFP)/セカンダリのCRTを接続することが可能になる。
GIGA-BYTEのブースに展示されていたADIMM。AGPと同じ形状のスロットに挿して利用する | 同じくGIGA-BYTEのブースに展示されていたSiS301を搭載したカード。DFPのデジタルインターフェイス、CRT、TVアウトなどが用意されている |
SiS630はイーサネットやサウンドなどPCのほとんどの機能を統合した統合性の高いチップセットとして注目を集めているが、このようにアップグレーダビリティにも配慮されている点は統合型チップセットとしてはユニークで面白いアプローチと言えるだろう。
□COMDEX/Fall '99のホームページ(英文)
http://www.zdevents.com/comdex/fall99/
□関連記事
【11月17日】COMDEX/Fall '99 会場レポート マザーボード(Intelチップセット)編
ついに登場したIntel 820チップセット搭載マザーボード
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991117/comdex11.htm
('99年11月18日)
[Text by 笠原 一輝@ユービック・コンピューティング]