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理想のノートPCを求めて「ARMADA M700」を試用



■理想のノートPCか? ARMADA M700を試用

 今年の初めに、このコラムで理想のノートPCのスペックを話題に取り上げた。そこで取り上げた理想(下表参照)は、今も基本的に変らない。ただ、半年経って分かったのは、価格の項目(理想的には20万円以下、奮発しても30万円以下)だけは、筆者が条件を緩めない限り、どうにもならないだろう、ということだ(ただし、ポータブルDVDプレーヤーを別に買うことを考えれば、もう少しは奮発しても良いような気分にはなってくる)。

 また、価格を別にしても、筆者の願いをすべて満たしてくれるような新製品はなかなか登場してこないということも分かってきた。今年の1月から現在に至るまで、DVD-ROMドライブを内蔵したノートPCの新機種がいくつか投入されたが、いずれも3kgクラスの、デスクトップPC置き換えタイプがほとんどである。

理想のノートPCのスペック

理想妥協点
サイズA4/厚さ40mm以下
キーボード英語101キー
ポインティングデバイスTrackPoint or アキュポイントトラックボール
CPUPentium II以上
メモリ64MB以上
HDD4GB以上
リムーバブルSuperDiskFDD
液晶サイズ14.1インチ13.3インチ
液晶解像度1,024×768ドット
内蔵モデム(非PC Card)56kbpsモデム内蔵モデム非内蔵
PCカードスロット×1(モデム非内蔵の場合 ×2)
バッテリ駆動時間3時間以上1時間
重量2.5kg以下3kg以下
価格20万円以下30万円以下
注)DVD-ROMドライブ内蔵 >非内蔵薄型 > CD-ROMドライブ内蔵

 そんな中にあって、唯一、筆者の理想に肉薄するスペックを持つノートPCの新製品が、Compaqの「ARMADA M700」だ。表を見れば分かる通り、国内販売されるのはPentium II 366MHzを搭載したCD-ROMドライブ内蔵モデルのみ(OSもWindows 95のみ)だが、米国には同じPentium II 366MHzモデルに加え、プロセッサをPentium II 400MHzに強化したDVD-ROMドライブ内蔵モデルが存在する(OSはWindows 95/98/NT 4.0の3種)。筆者の理想に近いのは、もちろん米国モデルの方だが、米国からM700用DVD-ROMドライブを個人輸入するなどすれば、かなり近いところまで行きそうだ。価格だけは、筆者が手も足も出ないレンジにあるが、年内にMobile Pentium III、そして来年Geyservilleテクノロジを用いたMobile Pentium IIIが登場し、Pentium II 400MHzモデルの位置付けが低下すれば、多少の値崩れも期待できるだろう。

 そう考えると、M700のことが気になりだした筆者は、お願いしてこのM700を短期間お借りした。今回借用したM700は残念ながら試作品のため、仕様的に明らかに製品と異なる部分がある(表参照)。どちらかといえば、米国で販売されるPentium II 400MHzモデルのキーボードを日本語にしたような仕様である(これはこれで好都合?だったりするのだが)。また、試作品である以上、細部が製品と異なっている可能性もある。それをふまえた上で、M700がどれくらい筆者の理想に肉薄したか、チェックしてみたい。

機種名国内モデル今回借用した試作モデル米国モデル
サイズ/厚さA4ファイル/28mmA4ファイル/28mm
キーボード日本語英語
ポインティングデバイスイージーポイントIVイージーポイントIV
CPUMobile Pentium II 366MHzMobile Pentium II 400MHzMobile Pentium II 400MHz
メモリ64MB(最大288MB)64MB(最大288MB)
HDD6.4GB10GB10GB
CD/DVD-ROMドライブ24倍速CD-ROMドライブ4倍速DVD-ROMドライブ4倍速DVD-ROMドライブ
リムーバブルSuperDiskオプションありSuperDiskオプションあり
液晶サイズ14.1インチ14.1インチ
液晶解像度1,024×768ドット1,024×768ドット
内蔵モデム(非PCカード)V.90/K56FlexV.90/K56Flex
PCカードスロット22
バッテリ駆動時間(公称)2~2.5時間2~2.5時間
重量
(ウエイトセーバー装着時)
2.2kg2.2kg
標準/実売価格オープン価格/不明なしオープン価格/3,900ドル前後

■28mm厚でDVDドライブ搭載

【ARMADA M700】
たまたまウチにあった3台のノートPC。下からARMADA M700、Dell Latitude CPi、ThinPad 560(この中で唯一の筆者の所有物)。とりあえずM700が薄いことだけはハッキリ分かる
 まず外観だが、厚さ28mmに偽りはない。おそらくDVD-ROMドライブを内蔵したノートPCとしては、世界で最も薄いのではないだろうか(返す返すも、国内でDVD-ROMドライブ搭載モデルの設定がないことが惜しまれる)。ただし、本体底面に排熱用のファンがあるためか、ゴム足の高さが若干高めで、机に置くと全高は30mmを超えてしまう。それでも、この薄さにDVD-ROMドライブと、パック式(ユーザーによる着脱可能な)ハードディスクが収まっているのだから、たいしたものである。  ただ、よく見ると、28mmという薄さを実現するのに大きく貢献しているのは、どうやら液晶パネル部のようだ。本体部分の厚さは、直接のライバルになるであろうThinkPad 600シリーズとそう変らない。液晶パネル部を薄くできた理由の1つは、カバーに今流行り(?)のマグネシウム合金を用いて、薄さと強度を両立させたことだろう。ただ、銀色のフィニッシュではなく、本体同様グレーの塗装が施されている点が、「大人のパソコン」っぽくって、かえって好感が持てる。

 もちろん、いくら薄くても、採用する液晶パネルが14.1インチである以上、本機の外寸は決して小さくない。いわゆるA4ファイルサイズだ。これだけの大きさがあれば、コネクタ等で無理をする必要がなく、本機はフルサイズのコネクタを備える。I/Oはごく標準的で、USBは1ポート、TV出力も用意されている。試作機ではモデムコネクタの隣にイーサネット用のコネクタも用意されていたが、これは製品では省略されるとのことだ(いつも、なぜイーサネットを標準装備しないのだろうと思うのだが)。

問題(?)のボタン部。大口顧客はパッドモデルも発注可能なようだ

 外寸が大きいということは、キーボードにも無理が少ない、ということでもある。今回試用した試作機は、筆者の嫌いな日本語キーボードだったが、主要なキーはすべてフルサイズであった(右[Ctrl]や[Esc]キー、ファンクションキー等の特殊キーは一回り小さい)。ポインティングデバイスであるイージーポイントIVは、筆者の好むスティックタイプで、これは良いのだが、問題はボタンだ。デザイン的に、ボタン部はパッドに交換できる(マニュアルを調べたところ、大口顧客向けにはパッド仕様のモデルも提供する用意があることがわかった)ように見受けられる。そのせいかどうか、どうもボタンのクリック感(ストローク)が不足気味で、なおかつベースがちょっとフワフワした感じがする。特に、イージーポイントIVのウリであるハズの、スクロールボタンの押しごこちが悪かった。ただ、これは試作機だけの問題かもしれない。

 本機は64MBのメモリを標準搭載し、モバイル向けのプロセッサとしては、現在最高速のPentium II 400MHzを備える。ビデオチップは、8MBのフレームバッファを内蔵するATI TechnologiesのRAGE Mobility-PをAGP 2Xモードで接続したもの(チップセットは440BX)。特にベンチマークテストは行なわなかったが、これで性能が悪いハズがない。

■2,000ドル台前半の出物があれば、飛びついてしまうかもしれない

 とはいえ、性能的に不満がないのは、一般的なビジネスアプリケーションの話。本機が内蔵するDVD-ROMドライブでDVD-Videoの再生を行なってみたのだが、やはりデスクトップPCのPentium II 400MHzとはワケが違う。パワーマネージメント等の関係で、どうしてもノートPCには余分な割込み等が入るせいか、DVD再生ではわずかだがコマ落ちが見られた。ただ、これはあくまでも筆者が市販されているソフトウェアDVDプレーヤー(RAGE Mobility-Pの機能に特に対応していない)をインストールした感想である。米国の市販製品では、ソフトウェアDVDプレーヤーがバンドルされることになっているが、そのプレイヤーがRAGE Mobility-PのMotion Compensation等に対応していれば、この問題も解消する可能性がある。

 というわけで、試作品では分からない部分もあるものの、M700はスペック的にはかなり魅力的だ。直接のライバルであろうThinkPad 600シリーズとの差は、液晶パネルのサイズ(ThinkPad 600の13.3インチに対し本機は14.1インチ)と、厚みということになる。約8mmの厚さの差をどうみるか、が難しいところであろう。薄い本機の方が、旅行カバンを小さくできるが、強度的にはThinkPad 600の方が上かもしれない。

 率直に、本機を買うかと言われると、ちょっと考えてしまうところだ。たとえば上述したように、ポインティングデバイスのボタンを含めた細部の作りについては、試作品では最終判断を下すことが難しい。だが、大企業向けのノートPCであるARMADAシリーズを、店頭で見かける機会は極めてマレである。したがって、製品に触れることで疑問点を解消しようにも、そのチャンスはなかなかないことになる。それが最大の問題なのだが、米国で2,000ドル台前半程度の価格で出物(修理品や次世代のプロセッサが出て型落ちした後など)があれば、飛びついてしまうかもしれない。

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【1月6日】元麻布春男の週刊PCホットライン「今年の目標:ノートPCの購入」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990106/hot021.htm

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[Text by 元麻布春男]


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