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世代を越えたアップグレードを可能にする
AcceleraPCIの実力とは?



AcceleraPCIの表面。CPU(Celeron 433MHz)やチップセット(Intel 440BXチップセットのノースブリッジ)などが実装されている
 Pentium III 600MHzだ、Athlon 600/650MHzだと、CPUの性能向上競争は著しいが、誰もが最新マシンを購入できるわけではない。現在でも、PentiumやMMX Pentiumを搭載したマシンを使っているユーザーも多いことだろう。通常、CPUのアップグレードをおこなう際は、同じSocketを採用したCPUに交換するわけだが(例えば、Pentium→MMX PentiumやAMD-K6-IIIなど)、Evergreen TechnologiesのAcceleraPCIは、そうした常識をうち破るCPUアップグレードカードである。AcceleraPCIは、今年4月に発表され、海外でも大きな話題となった製品だ。そのAcceleraPCIを手に入れたので、早速その実力を検証してみたい。


●PCIカードにマザーボードの機能を集積

 Evergreen Technologiesは、2000年問題解決ボードやCPUアップグレード製品(CPUアクセラレータ)などを製造しているメーカーである。そのEvergreen Technologiesの最新製品が、PentiumやMMX Pentium搭載マシンをCeleron搭載マシンにアップグレードできるAcceleraPCIである。通常のCPUアクセラレータは、もともと装着されているCPUを外して代わりに装着する製品が多いが、AcceleraPCIは、PCIスロットに装着するPCIカード型の製品になっていることが特徴だ。CPUソケットに装着する製品では、通常同じ形状や同じバスインターフェースのCPUしか利用できないが、AcceleraPCIは、PCIスロットに装着することで、その制約をうち破った画期的な製品である。

 AcceleraPCIを利用すれば、Socket 7対応のPentiumおよびMMX Pentium(AMD-K5やAMD-K6、Cyrix 6x86なども含む)を搭載したマシンを、一世代新しいCeleron搭載マシンへとアップグレードすることができる。Celeronは、Pentium IIファミリの一員であり、128KBのL2キャッシュをCPUコアに集積することで、高いパフォーマンスを実現したCPUだ。Socket 7系CPUのPentiumやMMX PentiumとSlot 1/Socket 370系CPUであるCeleronは、ピンアサインだけでなくバスの設計も大きく異なるので、本来なら交換することはできない。AcceleraPCIでは、カード上にCPUだけでなく、Intel 440BXチップセットのノースブリッジ(Webサイトなどの製品紹介では、Intel 440ZXチップセットという表記になっているが、実際の製品ではIntel 440BXチップセットが載っていた)が実装されている。サウスブリッジは載っていないため、HDDコントローラやFDDコントローラなどは、本来のマザーボード上に実装されているものを利用するが、AcceleraPCI自体が一つのマザーボードになっているといってもよいだろう。AcceleraPCIには、BIOSも載っており、起動時に本体のCPUやメモリを乗っ取って、動作する仕組みになっている。

 CPUは、PPGA(Socket 370)のCeleron 433MHzが搭載されている。CPUソケットは、ZIFソケットではないが、適切なCPU取り外し工具を使えば、より高速なCPUに交換することも可能だ。SO-DIMMソケットは、基板の裏表に1基ずつ装着されており、標準で64MB SO-DIMMが1枚装着されている。ノートPCで使われるSO-DIMM(SDRAM)を装着することで、最大256MB(128MB×2)までメモリを増設できる。

裏面はSO-DIMMソケットくらいで、他には特にたいしたパーツは実装されていない CPUクーラーを外した様子。ソケットはZIFソケットではないので、CPUの交換はやや面倒 Intel 440BXチップセットのノースブリッジが搭載されている


●ターゲットマシンで動作するかをチェックプログラムで確認

PreQual Softwareによる動作チェック。Your system is compatible.と表示されれば、AcceleraPCIを利用することができる
 AcceleraPCIは、旧機種ユーザーにはまさに救世主ともいえる製品だが、システムによっては利用できないこともある。そのため、AcceleraPCIがそのシステムで利用できるかをチェックするプログラム「PreQual Software」が同社のホームページで公開されている。AcceleraPCIに興味があるユーザーは、まずPreQual Softwareを使って、自分のシステムでAcceleraPCIが動作するかをチェックするとよいだろう。今回は、ターゲットマシンとして、FMV-DESKPOWER SE(FMV-5133DPS:'96年夏モデル)を利用することにした。FMV-DESKPOWER SEは、CPUにPentium 133MHzを搭載したマシンで、チップセットには、ALiのM1511が採用されている。ビデオチップは、ATIのMach64が採用されているなど、現在の主流のマシンに比べると、かなり仕様的には見劣りする。AcceleraPCIを装着する前に、PreQual Softwareでチェックしてみたところ、「Your system is compatible.」と表示され、互換性に関して問題ないことがわかった。


●導入は簡単

 AcceleraPCIの導入は簡単だ。空いているPCIスロットにAcceleraPCIを装着し、電源を入れるだけで、起動シーケンスの途中を乗っ取る形で、AcceleraPCIが動作する。電源投入後の起動は、もともとのマザーボード上からおこなわれるが、そのBIOS起動シーケンスの途中で、AcceleraPCI上のBIOSに制御が移るようだ。したがって、メモリチェックも、マザーボード上のメモリチェック→AcceleraPCI上のメモリチェックという2段階を経ておこなわれることになる。一旦、WindowsなどのOSが起動してしまえば、CPU、メモリともにAcceleraPCI上のものが使われることになる。AcceleraPCIを装着してから最初にマシンを起動すると、Plug&Playによって、AcceleraPCIが「PCI Pentium CPU」として自動認識される。そこで、付属のディスクを使ってINFファイルなどをインストールするだけで、セットアップは完了する。


●増設メモリを装着すると起動しないというトラブルが

現在市場で入手できるSO-DIMMとしては、ほぼ唯一のPC/100対応メモリである「メルコ VN100-128M」
 前述したように、AcceleraPCIは、SO-DIMMソケットを基板の裏表に1基ずつ合計2基装備している。表側(CPU実装側)には、64MB SO-DIMMが装着されている。AcceleraPCIでは、本体のマザーボードのメモリは一切使わず、AcceleraPCI上のメモリのみが主記憶として使われる。そこで、メモリを増設しようと、メルコPC-100対応SO-DIMM「VN100-128M」と、ノーブランド品の128MB SO-DIMM1枚、アイ・オー・データ機器の64MB SO-DIMMを用意して、AcceleraPCIに装着したのだが、合計メモリが64MBを超える組み合わせ(64MB+64MBや、64MB+128MB、128MB、128MB+128MB)にすると、AcceleraPCIのBIOS起動画面が表示されたまま、起動しなくなってしまう。F1キーを押せば、BIOSセットアップ画面は表示されるのだが、そこで終了を押してもそれ以上進まない。もともと装着されていた64MB SO-DIMMを外して、別の64MB SO-DIMMを装着した場合は、問題なく動作するのだが、64MB+64MBという組み合わせでは、起動しない。マニュアルには、PC-66やPC-100対応SO-DIMMなら、128MB×2まで使えると書いてあるのだが、動作しない原因は不明だ。ただし、今回入手した製品は、限りなくファーストロットに近い製品だと推測されるので、何らかの不具合が存在しているのかもしれない。


●FSBクロックの変更やコア電圧変更も可能

FSBクロックやコア電圧を変更できるなど、マニア好みの仕様になっている
 設定可能なFSBクロックは、66.8/68.5/75/83/100/103/112/133.3MHzの8種類だが、66.8MHzと100MHz以外の設定にするとPCIクロックも同期して上がってしまうので、他のPCIカードが正常に動作しなくなる可能性もある。コア電圧は、1.90/1.95/2.00/2.05/2.10/2.20/2.30Vの6段階から選択できるので、クロックアップマニアにも魅力的だ。試しに、FSBクロックを75MHz(動作クロック75×6.5=487.5MHz)に設定したところ、特に問題なく動作した。ただし、FSBクロックを83MHz(動作クロック83×6.5=539.5MHz)にすると、Windows 95の起動途中でハングしてしまった。コア電圧を2.2Vに上げてみたが、結果は同じであった。付属のCPUクーラーはそれほど大型ではないので、より強力なクーラーに交換すれば、さらなるクロックアップが狙える可能性も高い。なお、FSBクロック75MHzでも、ベンチマークテストをおこなってみた。FSBクロック66MHzの時に比べると、多少パフォーマンスが向上していることがわかる。


●大幅なパフォーマンス向上を確認

 AcceleraPCIの装着当初は、FDDをうまく認識しないといった不具合も発生したが、そのあとは特に問題なく動作した。ただし、OSがWindows 95 OSR2のせいか、Windowsの終了を選んでも、「コンピュータの電源を切る準備ができました」という画面のまま固まってしまうという不具合はあった。

AcceleraPCIを装着することで、Dhrystonesの値は5倍、Mediastonesの値は7.6倍に向上M

 AcceleraPCIを装着したことで、どれだけパフォーマンスが向上したかを、ベンチマークプログラムによって測定してみた。用意したシステムの都合上、OSがWindows 95 OSR2であったので、最新のWinBench 99ではなくWinBench 97を用いて計測した。また、Accelera PCIに付属しているベンチマークプログラム(DhrystonesとMediastones)もあわせて用いた。結果は、グラフの通りだが、純粋にCPUの演算能力を測るCPUmark32の値は、約5.4倍にも向上している。また、MMX命令に対応したベンチマークであるMediastonesの値は、約7.6倍になっている。ビデオチップは変わっていないため、アプリケーション上での描画能力を測定するBusiness Graphics WinMark 97やHigh-End Graphics WinMark 97の値は、CPU系ベンチマークに比べると向上幅は小さいが、それでも1.6倍~2倍程度には向上している。ベンチマークとは別に、Word 2000やExcel 2000をインストールして、体感的な速度がどれだけ向上したかも検証してみたが、やはり、機能の切り替えやスクロールなど全体的に動作が軽くなったという印象を受ける。

【WinBench 97】
CPUmark32Business Graphics
WinMark 97
High-End Graphics
WinMark 97
ノーマル状態
 Pentium 133MHz/48MB
141 21.3 11.5
AcceleraPCI装着時
 Celeron 433MHz/64MB
760 34.1 23.9
AcceleraPCI装着時
 Celeron 487.5MHz/64MB
846 35.6 25.5

DhrystonesMediastones
ノーマル状態
 Pentium 133MHz/48MB
70,422 112,625
AcceleraPCI装着時
 Celeron 433MHz/64MB
353,535 859,795
AcceleraPCI装着時
 Celeron 487.5MHz/64MB
397,727 927,674


●デスクトップ型マシンのユーザーには特にお薦め

 AcceleraPCIは、古いマシンのアップグレードパスとしては、魅力的な製品だ。ビデオカードなども同時に変更すれば、かなりの性能向上が見込める。増設メモリを認識しないというトラブルも、BIOSアップデートなどによって改善される可能性は高い。49,800円という価格は微妙なところだが、タワー型マシンならともかく、今回利用したDESKPOWER SEのようなデスクトップ型マシンでは、マザーボードを換えようとすると、ケースも購入する必要がある(アイデクソンRescueシリーズのように、そのまま交換できるマザーボードを使うという手もあるが)。そうしたマシンを利用しているユーザーなら、価格的にも決して高くはないだろう。

□AKIBA PC Hotline! 関連記事
【8月7日号】 PCIに挿すだけのPentium用Celeronアップグレードカード登場
ドライバ不要で2000年問題にも対応
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/990807/accelera.html
□AcceleraPCI(Evergreen Technologies)
http://www.evertech.com/AcceleraPCI/AcceleraPCI.asp


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[Text by 石井英男@ユービック・コンピューティング]


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