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プロカメラマン山田久美夫の

三洋電機 DSC-SX150 製品版レポート


「DSC-SX150」  三洋電機から人気のマルチーズシリーズ初の150万画素モデル「DSC-SX150」が発売された。本機は、常時持ち歩けるコンパクトな動画対応150万画素モデルだ。

 さすがに最近は、続々登場する200万画素級モデルに目を奪われがちだが、150万画素級モデルの実力は最新の200万画素級モデルに迫るものがある。しかも、無理に高画素化していない分、画質や処理速度、携帯性などの点では200万画素級モデルを上回る実力を備えたモデルも多い。今回はその新世代150万画素機のひとつである「三洋電機 DSC-SX150」についてレポートしよう。

 詳細なスペックや機能は製品情報を参照していただくとして、ここでは使用感と画質を中心に、その実力をレポートする。なお、撮影した本体は製品版である。特に指定のない画像は1,360×1,024ピクセルで撮影している。



●常時携帯できるコンパクトモデル

 ボディーサイズは「X110」とほぼ同じで、「富士写真フイルム FinePix1500」よりもさらにコンパクトだ。さすがに厚みはX110より増しているが、それでも150万画素クラスのモデルとしては十分薄型に仕上がっている。このサイズであれば、常時カバンの中に入れておいたり、付属のソフトケースをズボンのベルトに装着して持ち歩いても、なんら苦にならない。

 外装はX110などと同じくアルミ素材を採用している。パッと見た感じは、なかなか高級感があるが、ボディー底部のカードや電池の蓋の部分などプラスチック然としており、細部の質感はもう一息。

 また、デザインや色合いについては、もう一工夫欲しい感じもする。とくに本機のようなモデルは、もう少しスタイリッシュなデザインになるだけで、大きく印象が変わる、この点はちょっと残念だ。



●起動2秒、記録1秒の超軽快150万画素機

ストロボ撮影
 使用感はきわめて軽快。動作の速さはまさに「X110」譲りで、起動時間は約2秒、記録待ち時間は1秒弱ときわめて高速。まさに瞬きをするような感覚で次々撮影できる点は軽快そのものだ。もちろん、このスピードは150万画素クラスのモデルのなかでもダントツであり、高画素パーソナル機でも比較できるのは20万円超の「ソニー Cyber-shot Pro」ぐらいだ。とにかく、一度使うと他のモデルには戻れないほどの魅力といえる。

 オートフォーカスの測距速度も高速でストレスを感じない。さらに、ストロボの充電時間も約2秒と短く、ストロボ撮影時でも軽快な撮影が楽しめる。

 これだけ軽快になると、実に気軽に次から次へとスナップできる。とくに、最良のシャッターチャンスが掴みにくい人物撮影や、旅先での気軽なスナップ撮影などに威力を発揮するモデルといえる。

 もっとも、本機は高速レスポンスを追求するため、撮影された画像のプレビュー表示は、撮影後にシャッターボタンを押し続けている間だけ表示される仕様になっている。この点は他のモデルと大きく異なるところで、最初は多少の慣れが必要だろう。



●意外に便利な秒間7.5コマの超高速連写

 また、本機の大きな特徴として、150万画素のフル画像で、秒間7.5コマの超高速連写ができる。一枚一枚が十分プリントに耐える画質を備えており、スペックだけではなく、“実用になる”高速連写機能に仕上がっている。

 実際に今回も、動きの激しいシーンを中心に高速連写撮影をしてみたが、最良のシャッターチャンスをかなり確実に捕らえることができた。もちろん、普通のモデルの1コマ撮りでも撮れないことはないが、よほどそのカメラに慣れた人でなければ捕らえることが難しいシーンを、ごく簡単に撮れる点は大きな魅力だ。必要のないコマは消してしまえばいいので、いつでも気軽に撮れる。

高速連写

 さらに本機には、この高速連写機能を生かして、自動的に露出を変化させながら7コマの連続撮影(標準的な露出を中心にプラスマイナス各3段階)ができる、自動段階露出機能も備えている。この機能は高級一眼レフなどに装備されているものだが、これを使えば、明暗比の高いシーンでも、簡単に適正露出のカットを得ることができるわけだ。

 この機能は以前のモデルにも搭載されていたが、高画素化され連写速度も高速になったことで、ようやく気軽に使える機能に成長した。

自動段階露出:屋内


自動段階露出:屋外



●640×480ピクセルの本格動画撮影

 “動画デジカメ”の愛称通り、本機はかなり本格的な動画撮影機能を備えている。なかでも注目されるのは、パーソナル機で初めて640×480ピクセルのVGA動画をサポートした点といえる。

 これまでの320×240ピクセルモードの場合、PCのモニター上で再生するにはまずまずのサイズだったが、テレビ画面で見るには画質的に不満があった。しかし、640×480ピクセルあれば、テレビ画面の解像度を満足できる。そのため、この動画デジカメを簡易ビデオ的に家庭内で使うこともできるわけだ。

 記録形式は画質や今後の動画環境を重視し、今回からQuickTime形式を採用している。そのため、ファイルサイズはかなり大きなものになるが、画質はとても良好だ。もっとも、フレームレートは秒間15コマとビデオの半分になっているが、よほど動きの激しいシーンでなければ、気になることはない。

 実際に使ってみると、640×480ピクセルの動画はかなりヘビー。付属の8MBカードではたった9秒しか記録できない。また、バッファーにためながら、適時カードに書き込むため、書き込み速度の遅いCFカードでは最大15秒までしか記録できない。

 そのため本機では、大容量で書き込み速度の速いCF Type2サイズのHDD「microdrive」が使えることが、大きなポイントになっている。340MBの「microdrive」であれば、録画時間は最長7.5分、最長連続記録も5分を実現できるという。また、標準的な320×240ピクセルモードではMormalモードで約35分もの記録ができる。

 ちなみに、再生はカメラ本体では専用開発のLSIを搭載しているのでなんら問題ないが、PCではPentium II 400Mhzクラスでもギリギリという感じだ。

 正直なところ、現時点での周辺環境を考えると、画質や編集の問題が多少あってもファイルサイズの点で有利なMPEG1をベースにしたほうが使い勝手のいいものに仕上がると思う。通信で送ることを考えればなおさらだ。もちろん、メーカーとして、動画の画質へのこだわりがあるのは理解できるが、使い勝手を考えると、カメラ内でMPEG形式で記録できるモードも搭載して欲しいところだ。

動画(QuickTime)

320×240
【2.7MB】
320×240
【582KB】
640×480
【2.2MB】
640×480
【1.7MB】


●充実した基本機能

 機能はかなり充実している。まず、CCDは1/2インチで150万画素の原色系プログレッシブスキャンタイプを採用。レンズは単焦点タイプで、35mmカメラ換算では約38mm相当。最近の単焦点モデルは35mmレンズ相当のモデルが増えたこともあって、実際にスナップ的に使ってみると、やや写る範囲が狭く感じるケースがあった。

 ピントはオートフォーカスになっており、通常モードでも50cmまでの接写がカバーできる。さらに、マクロモードでは50cmから最短10cmまでのマクロ撮影ができる。とくに、先代のX110が接写に弱いモデルだっただけに、この改良は大いに歓迎できる。また、AFの測距速度が意外に素早い点にも感心した。

接写


 ファインダーは光学式と液晶ファインダーの両用タイプ。最近はコスト面から軽視されがちな光学式ファインダーだが、本機のものは、明るくクリアで、見やすく好感が持てる。

 また、液晶モニターは同社が得意とする低温ポリシリコンTFTを採用している。サイズは1.8インチとやや小さめだが、液晶モニターの解像度が高いこともあって、なかなかシャープ。もちろん、色調もなかなかキレイだ。

 本機のLCDは、明るさよりも消費電力を重視し、バックライトに白色LCDを採用している。さすがに真夏の日中炎天下では若干、見にくさを感じることもあったが、日常的な撮影ではなんら問題のない視認性を確保している。

 このほか、本機では新たに、やや凝った撮影が楽しめるマニュアルモードが新設された。このモードには、ホワイトバランス切り替え、ISO感度設定(AUTOのほか、100、200、400に設定可能)、最長4秒までのスローシャッターなどがある。しかも、これらの設定内容はメインスイッチを切ってもきちんと保持され、モードをAUTOからマニュアルに切り替えるだけで、即座に反映される点も好ましい。

日中屋外撮影



●魅力のmicrodrive

 記録媒体は前記の通り、CFおよびCF Type IIカードを採用。

 今回は、「microdrive」とCFメモリーカードの両方で撮影してみたが、さすがにmicrodriveの340MBは圧巻! これだけの容量があると150万画素モデルでも、Fineモードで約840枚、Mormalモードでは約1,360枚もの撮影ができる。

 そのため、通常はその日に撮影した分をPCに転送し、カードを消すのが日課なのだが、microdriveなら何日分ものデータを楽々記録しておける点が頼もしい。また、気に入ったカットをアルバム代わりにカードに残しておくこともできるので、いままでとは違った楽しみ方もできる。

 しかし、やはりHDDだけに電池の消耗はそれなりに激しい。撮影のたびにHDDが起動するのだから仕方のないところだが、感覚的には付属のニッケル水素電池で、液晶ファインダーメインで使うと、100枚程度が限度だ。むしろ、単三2本でHDDを駆動していることを考えると、これでも立派というべきだろう。

 その点、CFメモリーカードを使えば、電池の消耗についてはかなり軽減できる。とくにニッケル水素電池が1,600mAhの大容量タイプということもあって、メモ的に使うなら電池をいつ充電したのか忘れるほど保つ感じだ。推奨はされていないが、バッテリー形状が単三型なので、普通のアルカリ電池を緊急用として使うこともできる。



●わかりやすい操作感

 もともと、X110系は操作性のよさでは定評があった。そのため、今回の「SX150」も基本的な操作性はそのまま踏襲されている。

 基本操作は実に簡単で、レンズカバー兼用のメインスイッチを開くだけでOK。使用頻度の高い機能はカメラ上部に集中しており、記録・再生系はスライドスイッチ。1コマ撮り、連写、動画といった撮影モードはレバー式と、なかなかわかりやすい。

 詳細設定は従来通り、モニター画面を見ながらの操作となる。こちらはアイコン表示中心のため、最初は若干とまどうかもしれないが、すぐに慣れるだろう。

 唯一気になったのは、比較的使用頻度の高いストロボモードの切り替えが、詳細メニューに入っているところ。もちろん、普通にスナップを楽しむなら、自動発光モードにしておけば事足りるかもしれないが、普段はストロボをOFFにしておいて、とっさのときにストロボを使いたいときなどは面倒だ。これはV100の時代からこのような仕様なのだが、そろそろ改良して欲しい。

 また、凝った撮影をする人なら、AUTOモードとマニュアルモードを瞬時に切り替えたいときも多いだろう。現時点ではあまり意味を持たなくなっているカメラ背面上部のインフォメーションボタンを、これらの機能に割り当てられるようなカスタマイズ機能が欲しいところだ。

屋内撮影


人物



●クラストップレベルの見栄えのする写り

 画質はクラストップレベル。バランスのよさという点では、最新の200万画素機に匹敵するほどの写りを実現している。

 解像度は想像以上に高く、平均的な200万画素級モデルと比較しても、さほど見劣りがしない。もちろん、細部を見れば多少の違いはあるが、実用上、これだけ写れば十分な実力といえるだろう。

 感心するのは、色再現性のよさ。本機は原色系CCDを採用していることもあって、色調は全体にやや派手めで、見栄えのする絵作りといえる。とくに、緑や青空などの再現性は、200万画素級の補色系モデルよりも明らかに勝っている。また、肌色の再現性がきれいな点にも感心する。全体に現物に忠実な色味ではないが、“印象に近い”色調という点では、なかなか好ましい仕上がりといえる。

 また、AUTOモードでは、暗いシーンで自動的にゲインアップすることで、従来のX110に比べ、カメラブレが少なくなっている点も好ましい。もちろん、その分、ノイズは多少増えているわけだが、それが気になる場合はマニュアルモードで実効感度を固定して撮影することもできるので、問題はないだろう。

 なお、従来のX100系では、オートホワイトバランス専用で、見た目とは明らかに違った不自然な色調になるケースもあった。本機ではオートホワイトバランスの性能が向上したせいか、意外に不自然な仕上がりになるケースが少なかった。また、必要であればホワイトバランスのマニュアル設定もできるようになった。

 画質面で唯一気になったのは、スミア。これは連写性能を重視すると、機械式シャッターが追いつかなくなるため、電子シャッターに頼らざるを得なくなるために起きる、弊害といえる。このあたりは、どの点を最優先させるかという判断の問題だが、全体に画質が高いこともあって、今回はとくにこの点が気になった。通常の1コマ撮りモードの時だけでも、なんとか改善して欲しいポイントだ。

スミア



●コンパクトで楽しめる新感覚モデル!

 今年前半は各社から200万画素モデルが続々登場し、130~150万画素モデルはやや影が薄い感じもあった。しかし、ここにきて「FinePix1500」をはじめ、「DSC-D770」や「QV-8000SX」といった実力派モデルが続々登場し、各機種ともかなり完成度の高いモデルに仕上がっている。

 なかでも「DSC-SX150」は、コンパクトなボディーの中に、クラストップレベルの軽快さと高画質、本格的な動画対応など魅力的な要素をふんだんに盛り込んだ、バランスのいい新世代モデルとして注目される。

 これほどの機能を満載した結果、価格は150万画素単焦点モデルとしてはやや高めの設定になっている。だが、これはある意味で致し方ない部分であり、使ってみると、さほど割高な感じはない。本機は、高画素よりも軽快さやバランスのいい写りを重視する人に、安心してオススメできる常用向きの実力派モデルといえる。

定点撮影

【Normal】
【Fine】

感度設定(Fine)
【ISO100】
【ISO200】
【ISO400】
【AUTO】


□三洋電機のホームページ
http://www.sanyo.co.jp/
□製品情報
http://www.sanyo.co.jp/AV/DSC/LINEUP/E1.html
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【6月25日】三洋、VGAサイズの動画が撮れる150万画素デジカメ「DSC-SX150」
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■注意■

('99年8月20日/23日テキスト追加)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp