コダックからエントリークラスの109万画素2倍ズーム機「DC215 ZOOM」が発表された。本機は、昨年春に発売された「DC210A」の基本ユニットを利用し、大幅なコンパクト化を実現した低価格モデルだ。
今年は200万画素モデルが主流になり、130~150万画素モデルがベーシックな存在になっている。この動きは主にポストカード以上のサイズでプリント用途を考慮した高画質化といえる。それに対応するモデルとして同社は、230万画素2倍ズーム機の「DC280J」や130万画素の3倍ズーム機「DC240」をたてつづけに市場に導入している。
その一方、ホームページ用の画像データやサービス判程度のプリントであれば、より画素数の少ないモデルでも十分に実用になるケースが多い。今回登場した「DC215」は、このような用途を強く意識して開発された入門機といえる。
なお、記事中の画像は本体の画像を除き、β機で撮影しており製品版とは異なる場合がある。特に指定のない画像は1,152×864ピクセルで撮影している。 |
(編集部) |
●コンパクトで親しみやすいカメラ風デザイン
「おっ、なかなかカッコイイじゃない!」というのが、本機を手にしての第一印象。なにしろ従来のコダック製モデルはどこかアメリカンな雰囲気があり、機能はともかくデザイン的にはなじめない部分もあった。だが、本機は実にカメラっぽい雰囲気があり、違和感のないスタイリングを実現している。
サイズは、ほぼ同じ基本コンポーネンツを使っている「DC210A」に比べて、2周りくらいコンパクト。さすがに最新の薄型単焦点モデルに比べるとやや大きめで厚みもあるが、それでもズーム機としては十分にコンパクトな仕上がりだ。
ボディ素材はアルミ製。写真で見ると高級感があるが、実際に手にして細部を見るとちょっと荒削りな感じなのが残念。だが、実販で39,800円前後といわれる価格から考えれば、十分なレベルといえそうだ。
個人的に本機のようなモデルは中途半端な高級感をだすよりも、最近流行りのカラーバリエーションなどを追加し、ちょっとファッショナブルな雰囲気で楽しめる方向性も十分にアリだと思った。
●ピンぼけの少ないワイド系固定焦点式モデル
本機は基本的に、誰でも気軽に使えるという点を重視したモデル。基本操作もシンプルなもので、メインスイッチをONにし、シャッターボタンを押し切るだけで撮影できる気軽なモデルに仕上がっている。
レンズは、35mmカメラ換算で29~58mm相当というワイド系の光学2倍ズームを採用。そのため、狭い場所や建築物、屋内での撮影などに威力を発揮する。また、記念写真でも、ワイド側を使い被写体に近寄ることで、背景を広く取り入れたカットを撮影することができるといった特徴もあり、なかなか使い勝手がいい。
ポピュラーな3倍ズーム機に比べると望遠側は物足りないが、ワイドから標準域までの常用域を広くカバーできる点は2倍ズームならではのもの。本機はどちらかというと、ワイドが活きる旅行やスナップに適したモデルといえそうだ。
ピントはAF式ではなく、特定の距離にピントが設定してある固定焦点式を採用している。もともと、ワイド系ズームのため被写界深度(ピントの合う範囲)が広く、ワイド側で約50cm、テレ側で約1mまで実用レベルのピントが得られるので、固定焦点式でも実用十分という判断だろう。そのため、シャッターボタンを半押ししていちいちAFロックする必要もなく、カメラに不慣れな人でも測距ミスによるピンぼけの心配はない。製造コストの面でも断然有利だ。また、AF測距によるタイムラグ(シャッターを押してから、実際に写るまでの時間差)も短く、意外なほどシャッターチャンスが掴みやすいという意外なメリットもあった。
その反面、本来のレンズ性能をフルに発揮できないといった欠点もあるわけだが、入門機として気軽に撮影したり、使用サイズが小さなWeb用データとして考えれば、意外に実用的な割り切りといえる。
●のんびりとした記録時間とやや煩雑な操作系
ベースが「DC210A」なだけに、動作はやや遅め。まず、起動時間は約3秒とズーム機としては早い部類だが、記録待ち時間は約8秒(高画質モード)とのんびりとしたもの。このあたりはさすがに2世代前のレベルにとどまっている。とはいえ、このあたりも割り切って使えば、実用上、不都合を感じるケースは少ないだろう。
一方、再生表示はサムネイル表示でコマ選びをするタイプのため、動作は意外に軽快だ。
むしろ気になるのは、全体の操作感。というのも、メーカー自らがエントリーモデルという割には、ボタンやスライドスイッチの数が意外なほど多く、はじめてデジタルカメラに触れる人には、戸惑いや難しさを感じさせる部分もある。
とはいえ、操作部はベースモデルの「DC210A」と同じ数しかないのだが、ボディーをコンパクト化した分、操作部がゴチャゴチャした感じに見える。このあたりの印象はデザイン処理でもかなり緩和できる部分だけに、もうひと工夫欲しい。
機能的には、DC210Aと同じで実用十分なものを備えているが、ホワイトバランスがオート専用という点だけはちょっと残念。オートホワイトバランスの性能は悪くないが、それでも意図にそぐわない色調になるケースもあり、この点は今後の課題といえる。できれば、ファームウェアのバージョンアップなどで、ホワイトバランスの固定機能を追加して欲しい。
●鮮やかでコクのある見栄えのいい写り
画質は基本的に「DC210A」のものを踏襲している。なかでも目を引くのが、同シリーズ独特の鮮やかでコクのある色調といえる。この色調は実に独特で、青空の色調などはカリフォルニアの青空を連想させるようなアメリカンなもの。また、グリーンも色鮮やかだし、肌色の再現性もなかなか良好だ。このあたりはいかにも原色系CCDらしい絵作りであり、コダック独特の仕上がりといえる。
一方、解像度は最新の130万画素クラスよりもワンランク劣る。とくに本機は固定焦点式のためか、ピントの山が明確ではないこともあって、モニター上で等倍表示するとシャープ感に欠ける感じだ。
だが、モニター上でVGA程度に縮小表示したり、インターネット上でのE-MAIL添付やホームページ上で画像を利用する場合のように、320×240ピクセル程度に縮小すれば、ピントの甘さはまったくといっていいほど感じられない。むしろ本機は、見栄えのする色調のため、普通のデジタルカメラよりもきれいな印象を受けるほどだ。
また、実際にはがきサイズにプリントしてみると、実用十分な解像度を備えており、フォトポストカードを作ったり、ワープロソフトに画像を挿入して利用するといった目的には十分な実力だ。
画角比較 | |
【テレ端】 |
【ワイド端】 |
●気軽に使えるWeb向けお買い得モデル
200万画素モデル全盛のなかで登場した、109万画素2倍ズーム機「DC215 Zoom」。多くのニューモデルが高機能志向なのに対し、本機は2世代前の枯れたハードをうまく利用し低価格化を実現した異色の実用機といえる。高級感はないがコンパクトで親しみやすいスタイリングや、接続キット込みでも実販39,800円程度で購入できる点は大きな魅力。
特にプリント用途よりもWeb上での利用がメインのユーザーにとっては、十分にコストパフォーマンスなモデルといえそうだ。
定点撮影 | ||
最高画質(Best) | ||
高画質(Better) | ||
□コダックのホームページ
http://www.kodak.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.kodak.co.jp/news/990802a.shtml
□関連記事
【8月3日】コダック、小型で低価格な109万画素デジタルカメラ「DC215 Zoom」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990803/kodak.htm
■注意■
('98年8月11日)
[Reported by 山田久美夫]