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OpenGLユーザー待望のビデオカード
Permedia3 Create!



 OpenGLなどプロフェッショナルユースに最適化されたグラフィックスチップをリリースすることで知られている3Dlabsが昨年夏に発表したPermedia3搭載カードがやっと3Dlabsから発売された。Permedia3が発表されたのは'98年7月13日で、当初は'98年度中に製品が投入される予定だった。しかし、先週のAKIBA PC Hotline!でお伝えしたように、実際に製品が秋葉原などのマーケットに投入されたのが先週と、登場までに実に1年近くかかったという異例の製品だ。Permedia3もこれまでの3Dlabs製品に違わず、OpenGLを利用した3DCGアプリケーションやCADなど、ハイエンドアプリケーションをターゲットにした製品だ。


●3Dlabsも自社ブランドカードを発売

 内容物は非常に簡易で、簡単な紙のマニュアルとCD-ROMが一枚ついているだけ。PowerDVDなどいくつかのソフトウェアがバンドルされている
 Permedia3からの最も大きな変化は、3Dlabsが自社ブランドでビデオカードを発売するようになった点だろう。従来のPermedia2では3DlabsのリファレンスカードがOEM供給されて台湾ベンダーなどから市場に流れた例はあったが、3Dlabsブランドのカードというのは特に発売されておらず、すべてOEM先のビデオカードベンダーから発売されていた。しかし、今回は自社ブランドからの発売ということになっており、リテールチャネルに流されているほか、同社のホームページのオンラインストアでも販売されている。ただ、3dfxのように自社ブランドのみにしてしまったかといえばそうではなくて、いくつかのビデオカードベンダはPermedia3を搭載したビデオカードの発売を計画している。例えば、COMPUTEX TAIPEIではLeadtekやCARDEXなどがPermedia3搭載カードを展示しており、それらのベンダから発売される予定になっている(日本での発売は不明)。

 本的なハードウェアの外形はOxygen VX1とほとんど同じ
 このように、3Dlabsまでが自社ブランドカードを発売したことで、自社ブランドを発売していないメジャーなビデオチップベンダーはNVIDIAぐらいになってしまった。先週サンノゼで開催されたPlatform 99のキーノートスピーチに立った3DlabsのNeil Treveltマーケティング担当副社長は「今後はほとんどすべてのビデオチップベンダーがビデオカードベンダーを兼ねるようになる」と発言し、今後はそうしたビデオチップベンダが自社でボードを生産することがトレンドになるという見通しを披露していた。今回の3Dlabsや、S3がDiamond Multimedia Systemsを買収したことなどを考えていくと、今後もそうした傾向に拍車がかかりそうな情勢だと考えるのが自然だろう。


●ビデオチップをCPUに見立てるVirtual Textures機能を搭載

 今回、3Dlabsは新世代のビデオカードとして3製品を発売している。それが以下の3 製品だ(価格はいずれも3Dlabsのオンラインストアの価格)。

 Oxygen GVX1      999ドル
 Oxygen VX1       299ドル
 Permedia3 Create!   229ドル

 搭載されているビデオチップはOxygen GVX1とOxygen VX1がGLINT R3、Permedia3Create!がPermedia3となっているが、GLINT R3とPermedia3の仕様はほとんど同じで基本的には同じチップと考えていいだろう。違いは、Oxygen GVX1がハードウェアジオメトリプロセッサを搭載していることで、ほかのビデオカードではCPUが行なっているジオメトリ演算(座標計算や光源計算)などをビデオカードに搭載されているジオメトリプロセッサ(GLINT Gamma)で行なうことが可能になっているため、CPUだけでジオメトリ演算を処理する場合よりも3D処理を高速に行なえるようになっている。

 Oxygen VX1とPermedia3 Create!の違いは、OpenGLのドライバーがマルチスレッドに対応しているかどうかだろう。Oxygen VX1のOpenGLドライバは複数の処理をさせることが可能になっているマルチスレッドに対応しているため、マルチプロセッサ環境などでCPUの処理能力を最大限発揮させることができる。これに対して、Permedia3 Create!ではそうした機能はなく、基本的にシングルスレッドのみの対応となっており、シングルCPUで利用しているユーザー向けの製品と言える。

 Permedia3 Create!に搭載されているビデオチップのPermedia3は以下のような特徴を持っている。

 1.128bitインターフェイス
 2.Virtual Textures
 3.300MHzのRAMDAC内蔵

 従来のPermedia2ではビデオメモリとビデオチップを結ぶローカルバスのバス幅が64bit幅だったが、Permedia3では128bit幅に拡張された。このため、2Dや3Dの処理がより高速になった。なお、ビデオメモリは標準で32MBが搭載されている。

 また、今回から3Dlabs独自のVirtual Texturesというテクノロジが導入された。これは、メインメモリ(最大256MBまで)にテクスチャデータを展開して、ローカルのビデオメモリの容量以上のテクスチャデータを扱えるようにする技術だ。単にメインメモリにテクスチャデータを展開するだけであれば、AGPに対応したほとんどビデオチップは対応している。ただ、メインメモリ上にテクスチャをおいた場合、メインメモリはローカルにあるビデオメモリに比べると圧倒的に遅いので、テクスチャの処理に時間がかかってしまうという問題があった。そこで、Permedia3のVirtual Texturesでは、ローカルのビデオメモリをキャッシュとして利用するという手法をとっている。よく利用するテクスチャデータなどは読み書きが高速なビデオメモリに格納しておき、ビデオチップはそこからテクスチャデータを読み出すことで処理を高速にする訳だ。つまり、

 CPU     ←→L2キャッシュ←→メインメモリ
       高速      低速
 ビデオチップ←→ビデオメモリ←→メインメモリ
       高速      低速

という風にビデオチップをCPU、ビデオメモリをL2キャッシュと見立てることでテクスチャデータの読みとりを高速にするわけだ。

 なお、Permedia3のドライバはインテルのPentium IIIで採用されているマルチメディア系の命令セット、インターネット・ストリーミングSIMD拡張命令(SSE)とAMDやIDTのCPUなどで採用されている同様の命令セット3DNow!に対応しているほか、ソフトウェアでDVDを再生するときにCPUの負荷率を下げてよりなめらかに再生することができるようになるMotion Compensation(動き補償)機能にも対応しており、Permedia3Create!のパッケージにはDVD再生ソフトのPowerDVDもバンドルされている。


●OpenGLの結果では他製品を引き離す

 通常であれば、ベンチマークテストとしてWindows 98における2D描画性能と3Dゲームで利用されるAPI(Direct 3D、Glide)における描画性能を計測するベンチマークを実行するが、今回は本製品の性格を考えてOpenGLに対応したベンチマークを併せて実行することにした。今回OpenGLのテストに利用したのはOpenGL用ベンチマークテストの標準化団体OPC(OpenGL Perfomance Characterization Project)が開発したViewperf 6.1だ。これには5つのOpenGLのテストが用意されており、それぞれでパフォーマンスを計測することにした。

 2D描画性能を計測するのに利用したのは、Ziff-Davis,Inc.WinBench 99 Version 1.1に含まれるGraphics WinMarkテストだ。Graphics WinMarkテストにはビジネスアプリケーションにおける描画能力を計測するBusiness Graphics WinMarkとCADやCGなどのハイエンドアプリケーションにおけるHigh-End Graphics WinMarkの2種類があるが、このうちPermedia3 Create!はHigh-End Graphics WinMarkでトップクラスのスコアを叩き出した。16bitカラー、32bitカラーともに若干Millenium G400にはかなわないものの、いずれもほぼ同等の数値を叩き出している。これに対して、Business Graphics WinMarkでは16bitカラーでこそ他のカード並の数値だったが、32bitカラーではRIVA TNT2 UltraやVoodoo3などに比べてやや劣る数値となっている。このあたりは本製品の特徴(ハイエンドアプリケーションを使うユーザー向け)を考えると致し方ないかもしれない。

 3DゲームにおけるパフォーマンスはRIVA TNT2やG400など最新のビデオチップを搭載しているカードに比べるとやや寂しいものがある。Direct3Dゲームにおける描画性能を計測する3DMark99 MaxやTurok2では、G400、RIVA TNT2 Ultra、RIVA TNT2、Voodoo3などを搭載したビデオカードに比べると、一段落ちる結果となっている。ただ、Savage4は上回っており、決して3Dゲームができないほど描画能力が低いという訳ではない。

 しかし、Windows NTにおいてOpenGLベンチマークを行なってみると、この分野では明らかにほかのカードを上回る3D描画性能を発揮する。今回はWindows NT 4.0英語版+ServicePack4にViewperf 6.1をインストールし、用意されている5つのテストを実行してみた。今回比較に利用したのはRIVA TNT2 Ultraを搭載したカノープスのSPECTRA 5400 Premium EditionとMatrox G400を搭載したMatrox GraphicsのMillenium G400の2製品だ。結論から言えば、どのテストでもPermedia3 Create!がSPECTRA 5400 Premium EditionとMillenium G400の2製品を上回った。前評判通り、OpenGLで優秀な結果を残しているといっていいだろう。テストによっては、SPECTRA 5400 Premium EditionとMillenium G400を大きく引き離しており、OpenGL利用環境においては大きなアドバンテージを持っていると結論づけていいだろう。

【WinBench 99 Version 1.1 Graphics WinMark】
Voodoo3 3000Viper V770 UltraSPECTRA 5400PE3D Blaster RIVA TNT23D Blaster Savage4Millennium G400Permedia3 Create!
Business Graphics WinMark 99/16182186182185156192186
High-End Graphics WinMark 99/16528522524526489556557
Business Graphics WinMark 99/32179182176181104189163
High-End Graphics WinMark 99/32517518517518417548545

【3DMark99 Max】
Voodoo3 3000Viper V770 UltraSPECTRA 54003D Blaster RIVA TNT23D Blaster Savage4Millennium G400Permedia3 Create!
800x600/165,0024,9304,8934,8892,8245,0623,926
800x600/32d/s4,8564,4544,7972,7594,9713,702
1024x768/164,6314,5674,1254,4712,3164,8203,234
1024x768/32d/s3,8813,3023,8861,6584,1072,752
1280x1024/163,3143,0092,5683,0851,4083,5042,149
1280x1024/32d/s2,0891,5892,2561,0752,5821,550

【Turok2】
Voodoo3 3000Viper V770 UltraSPECTRA 5400 3D Blaster RIVA TNT23D Blaster Savage4Millennium G400Permedia3 Create!
800x600/1660.260.658.959.746.357.852.1
800x600/16/Glide73.7d/sd/sd/sd/sd/sd/s
800x600/32d/s57.756.457.432.95751.3
1024x768/1657.957.85757.234.15643.9
1024x768/16/Glide65.5d/sd/sd/sd/sd/sd/s
1024x768/32d/s5246.553.323.253.838.7
1280x1024/1645.653.14852.719.75128.2
1280x1024/16/Glide45.9d/sd/sd/sd/sd/sd/s
1280x1024/32d/s35.328.534.413.642.222.8

【Viewperf 6.1】
Permedia3 Create!SPECTRA 5400
Premium Edition
Millenium G400
Awadvs-0217.9411.075.208
DRV-056.9536.8582.887
DX-041211.163.637
Light-021.5861.3340.7253
ProCDRS-018.1134.715n/a

【テスト環境】
CPU:Pentium III 500MHz
マザーボード:ASUSTeK Computer P2B
メモリ:128MB(PC-100 SDRAM)
HDD:Quantum Fireball EX6.4A


●Windows 98とWindows NTを切り替えて利用しているユーザーにお奨め

 以上のように、Permedia3 Create!はハイエンドアプリケーションにおける2D描画性能はトップクラスで、ハイエンドの3Dアプリケーションにおいて重要視されるWindows NTのOpenGL環境では他のビデオカードを引き離す高い描画能力を持っていると言っていいだろう。確かに、3Dゲームにおける描画能力は、RIVA TNT2 Ultra、Matrox G400やVoodoo3などに比べるとやや劣っているのは事実だ。しかし、決してゲームにならないほど遅いという訳ではなく、現在あるような3Dゲームのほとんどでは問題ないと言える。

 そう考えると、普段はWindows NTでOpenGLを利用するようなアプリケーションを利用していて、たまにはWindows 98を起動して3Dゲームをやるという環境を1台のPCで実現したいユーザーには最適ということができるだろう。Permedia3 Create!は、そうした環境を必要としていて、高いOpenGL用カードを購入することができないようなユーザーにお奨めしたい。

□AKIBA PC Hotline! 関連記事
【7月24日号】ようやくPERMEDIA 3搭載ビデオカードが発売に
32MBメモリ搭載の「PERMEDIA3 Create!」英語版
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/990724/permedia3c.html


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[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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