Click


後藤弘茂のWeekly海外ニュース

IntelはKatmaiを9月に133MHz FSBへ、Coppermineは10月にSocket 370で登場


●0.25ミクロン版Pentium IIIで133MHz FSBへシフト

 Intelは、0.18ミクロン版Pentium III(Coppermine:カッパーマイン)のつまづきの穴を埋めつつある。Coppermineのデスクトップ版は、当初、9月の頭に600MHzで登場すると、OEMメーカーにはアナウンスされていた。現在この予定は2ヶ月ほど遅れ、Coppermineは11月にずれ込んでいる。

 その代わり、Intelは0.25ミクロン版Pentium III(Katmai:カトマイ)でFSBが133MHzの600MHz版を、9月の終わりに出すつもりらしい。つまり、Coppermineの穴を、Katmaiの高速化で埋めようというわけだ。2月に開かれた半導体学会「ISSCC99」では、IntelはPentium IIIが650MHzでも安定して動作すると説明しているので、600MHzのKatmaiが十分な量が採れるという可能性は高い。ISSCCでは、Katmaiを133MHz FSBのバスタイミングに合わせて設計したことも説明しているので、この点も問題はないはずだ。

 この対応策は、Intelが当初の予定通り9月にDirect Rambus DRAM(RDRAM)を立ち上げることも意味している。Intelは、この時点でチップセット「Intel 820(Camino)」を出してくるようだが、Intel 820は133MHz FSBでなければDirect RDRAMの高速仕様であるPC800(800MHz)とPC700(711MHz)をサポートできない。また、9月には、このほかKatmaiの533MHz版(133MHz FSB)も出るが、こちらはクロックから考えるとあまり魅力はない。そのため、Pentium III 600MHz/133MHz FSB版の投入は、Direct RDRAM立ち上げに必須となっていた。


●CoppermineはSocket 370とモバイルで登場

 インテル日本法人では、Coppermineの遅れについて「ターゲットとしていた600MHz以上という周波数が十分採れなかったためステッピングチェンジを行ない、新しいマスクに変えるために遅れる。0.18ミクロンプロセス自体には問題がない」と説明する。つまり、プロセスには問題がないが、クリティカルパスをつぶしきれなかったので、600MHzが出せないという説明だ。マスクを変えて、ウエーハを製造ラインに投入して、製品として出てくるまでに2ヶ月のタイムラグができるというのは、理屈に合っている。一般に、クリティカルパスを見つけるのは難しいので、こうしたトラブルが発生することは十分考えられる。

 しかし、600MHzでつまずいたCoppermineも、500MHz程度のクロックなら、ある程度の量の出荷ができるらしい。というのは、Intelは、10月にSocket 370版のCoppermineを500MHzで出すと言われているからだ。Socket 370版Coppermineは「FC-PGA」とIntelが呼ぶ、PGAパッケージで提供される。100MHz FSBで、シングルプロセッサのみ、メインターゲットはFlexATXを使った新フォームファクタのパソコン向けというMPUだ。この製品は、当初550MHzで提供されるはずだったが、業界関係者によると、まず500MHzで登場することに変更されたという。これは、550MHzでは難しいが、500MHzだったらある程度の歩留まりが達成できるということを意味していると思われる。

 また、インテル日本法人によると、モバイルでもCoppermineが登場するという。「モバイルCoppermineはスケジュール通り。ただし、クロックは500MHzになる。Geyservilleテクノロジは、当初のCoppermineには乗らない」と説明する。

 業界情報によると、Mobile Pentium III(Coppermine)は、450MHzと500MHzで登場するという。Geyservilleを使えないのは、Geyservilleを使うとクロックが500MHz以上になるので、動作できないからだと思われる。


●年末までに元のロードマップに追いつく?

 Coppermineは、このように2ヶ月遅れで出発するが、Intelはすぐに元のロードマップに追いつかせるつもりでいるようだ。つまり、来年の第1四半期は650MHzと667MHz、第2四半期には733MHzを出荷するつもりでいるらしい。また、FC-PGA版も年内には550MHzと600MHzを投入、来年第1四半期には650MHzまで引き上げると言われている。この通りに進展すれば、Intelは来年頭には出だしの遅れを取り戻し、元通りのロードマップに修正できることになる。

 この計画の不安要素は、Katmaiの600MHz品が十分な数採れるかどうかという点と、600MHz以上のCoppermineが予定通り11月から出荷できるかどうかの2点だ。

 前者に関しては、はっきりしたことはまだわからない。しかし、IntelはKatmaiでは高速化に向けてかなりチューンを施している。しかも、600MHzは最初はボリュームがそんなに出ないハイエンド価格帯だから、何とかなるのではないだろうか。

 それよりも疑問が多いのは後者の方だ。Coppermine 600MHzの11月出荷は、Intelの現在の説明を信じるなら、それほど無理はない。プロセス技術自体には問題がないからだ。

 しかし、ある業界関係者は、クリティカルパスの問題だと説明するのは、こういう場合の常套手段だと指摘する。つまり、クリティカルパスだと言えば、OEMメーカーも、「それなら大した問題じゃあないね、新しいステップが出てくるのを待とう」という話になる。ところが、プロセス技術に問題があるとなったら、突然、大問題になってしまう。いつまでたってもモノが出てこないという事態に陥る可能性があるからだ。

 このあたりの本当の事情がどうなのかは、正直なところ、皆目見当がつかない。モバイルPentium IIでは0.18ミクロン製品をすでに提供しているが、こちらはオプティカルシュリンクという可能性もある。その場合は、Coppermineで使う技術は別ということになるので、参考にならない。

 ただし、モバイルとPGAで提供するCoppermineの500MHz版が順調に登場するようなら、Intelの説明通りという可能性が高くなる。Coppermineのサンプル出荷の状況を注意深く見守る必要がありそうだ。


バックナンバー

('99年7月1日)

[Reported by 後藤 弘茂]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp