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堅木 昌宏の「NOMAD」使用レポート

~ MP3入門にも最適な物欲刺激系アイテム ~



■思わず物欲を刺激されるデザイン

 「NOMAD」は、クリエイティブから発売されたMP3対応のポータブルオーディオプレーヤーだ。MP3とはご存知のようにMPEG(Moving Picture Experts Group) Layer3の略だが、CD並みの音質を保ちつつデジタルなサウンドファイルをおよそ1/12に圧縮保存することができる技術。この高音質、小容量というMP3の特徴を活かすことで、インターネットによる配信、オーディオプレーヤーの小型化を可能としている。しかしながら、インターネットでの音楽配信に関してはまだまだグレーな部分も多いため、CDからMP3へエンコードした音楽ファイルを楽しむといった利用形態が多いようだ。

 この最新のオーディオプレーヤー「Creative NOMAD」をゲットしたので、早速その使い心地含めレポートしよう。


大きさは、FDより二回りほど小さい。外装にマグネシウムを使用しているので質感はかなりよく、強度も保っている。

 NOMAD――遊牧民と名づけられたこのMP3プレーヤーは、今まで発売されている他の製品と比べて思わず物欲を刺激されるいくつかの特徴を持っている。まずはそのカッコ良い外観。いまいちなデザインの多いPC周辺機器の中で、最近流行りのマグネシウムをさりげなく使ったケースなどは、ちょっと近未来をイメージさせる。筆者の知る限り、NOMADをはじめて見た人は“これ何??”という反応が一番多い。新しモノ好きにとっては、これだけでも買う価値ありって気がしなくもない(笑)。

 マグネシウムを使うことで軽量かつ強度をもたせたボディは、シャツやパンツのポケットに入れても気にならない。夏に向かうこれからの季節、85×58×17mm(縦×横×厚さ)、64gのコンパクトさが魅力だ。また、テープやCD、MDといったメディアではなく、半導体に記録されたデジタル情報を再生するため、機構的な部品が少なく衝撃や振動による音飛びなどは発生しにくい。つまり、スポーツ中などでも今まで以上に音楽を楽しむことができる。これで耐水性があればアウトドアなオーディオプレーヤーとしては理想的だ。


 細かな点でも、再生ボタンなどのロック機構が装備されたりと工夫されている。しかし、1つ気になったのは、付属のイヤフォンの質が良くないことだ。筆者は現在、他のメーカー製に交換している。おまけと言われればそれまでだが、もうちょっと良いものを付属してほしかった。その他には、LCD表示(曲タイトル、時間、再生モードなどの表示)、64MBメモリ(本体内蔵32MB+32MBスマートメディア)、FMラジオ、ボイスレコーディング機能などを備えている。

本体右側面には再生、録音など基本的な操作ボタンが配置されている。 本体左側面には音量やイコライザモード切り替えなどのほか、ホールドボタンなどがある。 付属するイヤフォンの音質はあまりよくない。できれば別途買い求めた方がいいだろう。


■CD丸々1枚分のメモリ容量

本体には32MBのメモリを内蔵しており、付属の32MBスマートメディアを装着するとメモリ容量は64MBとなる。

 64MBのメモリには、CDクオリティに近い条件(128Kbps)のMP3データでも1時間強のオーディオデータを保存することができる。最近は60分を超えるアルバムタイトルが増えてはいるが、気に入った曲だけ聴くのであればほとんど不満を感じることはないだろう。また、MP3へのエンコードビットレートを落とすことで収録時間を延ばすこともできる。実際、外で聞くときなどは外部のノイズ(車や電車の騒音など)も多いわけで、128Kbpsでエンコードする必要は無いように思う。筆者も長めのアルバムなどをCDから落とすときは、ビットレートを下げてMP3へエンコードしているが、気軽に聞くぶんには特に不満は感じない。

 NOMADでは普通に再生する以外に1曲リピート、全曲リピート、シャッフルの再生モード切り替えと、標準、クラシック、ジャズ、ロックと曲調にあわせたイコライザが内蔵されている。ただし細かな点ではあるが、最近のMDプレーヤーなどにある曲途中で再生をストップした際のレジューム機能(停止位置からの再生)などはもっていない(ポーズ機能は有り)。

 気になる連続再生時間は、付属の単4型の充電池(ニッケル水素電池)2本で5時間程度、アルカリ乾電池を利用した場合で8~9時間程度である。電池の充電は、データのダウンロードをするドッキングステーションに接続して行なう。このドッキングステーションは、PCとの接続にパラレルポート(ECPモード)を利用。充電器を兼ねているため、サイズ的には92×50×132mm(縦×横×厚さ)、165gとかなり大きくなってしまっている点は残念だ。しかし、デザイン的にはNOMADとマッチして悪くない。

 とはいえ、オプションでも良いので充電機能を省いた携帯向けドッキングケーブルなどが発売されれば、出張中や出先でも、ノートPCからNOMADへデータをダウンロードできてポータブルな本体が活きると思う。また、パラレルではなくUSB接続になればさらに使い勝手も向上するのではないだろうか?

パッケージには単4のニッケル水素電池2本が含まれている。これを使用すると約5時間の再生が可能だ。 ドッキングステーションは充電機能を備えていることもあり、本体に比べるとかなり大きい。 ドッキングステーションの大きさには不満が残るが、デザインは本体とマッチしていて悪くない。


■FMラジオに、ボイスレコーダも搭載

 メモリに入れた音楽に飽きたら、FMラジオを聞く事もできる。FMラジオの音質もそこそこで、周波数も日本向けに変更されているため普通のポータブルラジオのように扱える。チャンネルのプリセットも10局まで可能なので、日本のFM局数から考えれば不満はないだろう。

 ボイスレコーディング機能は、独自フォーマットによる4時間の録音が可能。ちょっとメモというときには結構便利である。今までのMP3プレーヤーには無い新機能といえる。当然、MP3と同じ記録エリアを利用するのでメモリに空きが必要だ。使っているところはちょっと恥ずかしいが、ペンも紙もない身軽なときにこそ活かせるだろう。ただし、外部からのオーディオ入力はできないため、会議などの録音には向かない。


■付属アプリケーションの完成度は高い

 NOMADは必要なハード、ソフトともに全て付属しているため、買ってすぐに楽しむことができ、MP3入門にも最適なプレーヤーとも言える。

パッケージ内容
  • NOMAD本体(32MB内蔵)
  • ドッキングステーション
  • 単4ニッケル水素電池×2
  • イヤフォン
  • 32MBスマートメディア
  • パラレル接続ケーブル
  • ACアダプタ
  • 専用ポーチ
  • ソフトウエア一式(MP3エンコーディングソフトなど)
 付属のソフトウェアにはNOMADマネージャ、Creativeデジタルオーディオセンターの2つ。これらを利用することでNOMAD本体とMP3をPCで扱うことができる。

 NOMADマネージャは、本体・PC間でのデータの管理、ファイルのアップ・ダウンロード、メモリの初期化などを行なうアプリケーションだ。機能的には、Windows付属のエクスプローラのようなものでNOMAD本体のメモリ内、PC内のデータを判りやすく表示・管理できるようにデザインされている。マニュアルを読まなくても、基本的な機能はすぐに利用できるユーザーインターフェイスとなっている。

 Creativeデジタルオーディオセンターは、オーディオCDからMP3へのデータエンコードやMP3ファイルの再生など、MP3そのものを扱うためのアプリケーションだ。オーディオCDから気に入った曲だけをエンコードしたり、タイトルを付けたりといったPC上のMP3オーディオ機器といった機能をもっている。

 この2つのアプリケーションを活用することで、ポータブルMP3プレーヤーとしてNOMADが活きてくる。いずれもおまけレベルではなく、買ってすぐに楽しめる完成度の高いアプリケーション。ただしアプリケーションのインストールに際して、1つ注意しなければならない。パラレルポートの設定だ。対応しているポートのモードがECP、ECP/EPPのためインストールするPCによってはBIOSの設定を変更する必要がある。また、NOMADマネージャを起動する際はNOMAD本体の電源が入っていることも必要となる。NOMADは省電力設計のため、一定時間キー入力がないとスリープモードに入ってしまうため、そのままではNOMADマネージャが本体を認識できないのだ。この辺り、NOMADマネージャからの接続要求で本体の電源が入るようになっているとさらに使いやすかったと思う。

 また、NOMADのサポート情報はクリエイティブのWebで公開されているので、そちらの方も参照される事をお勧めする。

NOMADマネージャの動作画面。本体・PC間でのデータの管理などを行なう。 Creativeデジタルオーディオセンターの動作画面。MP3のエンコードなどを行なう。


■MP3にこれからも注目!

 Creative NOMADは、はじめてMP3を楽しもうという方にもお勧めな、物欲刺激系なアイテムといえる。デザイン、付属アプリケーションの使い勝手などから、数社からすでに発売されているポータブルMP3プレーヤーの中でも注目の1台だ。また、CreativeはインターネットとリンクしたかたちでNOMADのプロモーションを行なっており、今後はコンテンツ配信などへの積極的な参加も期待できる。NOMADは初期出荷が極めて少なかったため、店頭でみかける事はまだ無いようであるが7月中旬には出荷予定とのことだ。

 CD、MDに対抗する新たな音楽メディアとしてMP3は今年~来年と注目となりそうな気配。年末のクリスマス商戦に向け、クリエイティブのようなPC機器メーカーだけでなく家電系メーカーからも、よりコンシューマ向けとなった製品の登場が期待される。

□「NOMAD」のページ
http://www.creaf.co.jp/nomadworld/
□関連記事
【6月9日】クリエイティブ、MP3プレーヤー「NOMAD」を国内発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990609/nomad.htm

[Text by 堅木 昌宏]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp