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スタパ齋藤

インタビューにはコレ!!
東芝ボイスバー プロ DMR-SX1



■ 取材な俺

東芝 ボイスバー プロ DMR-SX1
標準価格33,000円。スマートメディアに記録できるところが受けて、発売以来品薄状態が続いている。専用ソフト「DMR-KIT1」は6月に発売された
 ここ数年、なんか俺は取材の機会が多い。とは言っても、俺は物欲に任せて物品を購入してソレをいじくり回し、その感触なり感想なりを思いのままに「この製品はこうだったヨ!!」みたいなコトを書けば仕事になるので、俺が取材をしに行くのではない。雑誌や新聞の編集部から取材されるのであった。

 スタパさんはどうして買いまくりなんですか? スタパってどういう意味ですか?ヒゲはいつから生やしてますか? ホントはロシア人とかですか? いつからマニアになったんですか? 調子はどうですか? 忙しいですか? 暇ですか? みたいな内容を取材しにいらっしゃる方々が、なぜか増えた。なんでだろう? なぜ俺を!? 俺を取材なさる編集部の方々に、俺は、なんで俺なんかを取材しますか? と聞いてみたいのだが、まあそれはそれとして、おもしろいのは、取材しにいらっしゃる方々の持ち物だ。

 ところで、“編集部”と言うと、タバコの煙とか頭部にタオル鉢巻き等が思い浮かべられる雑然としたオフィスに、目をギラつかせた若手編集者が飛び込んできて、大声で「編集長!! スクープです!!」と叫んだと思ったら編集長はさらにギラついた目で「よし!! そのネタをトップに持ってこい!! スッパ抜け!!」なんて言った途端カメラマン他数人の編集者がドドドッと走り出すような状況を思い浮かべるが、実は全然そうじゃなかったりする。
 俺が見たり聞いたりした現状から、多くの編集長は「編集長!!」なんて叫ばれると照れちゃってポッとかなる人が多いのであり、また、「編集長!!」なんて叫ぶ編集者も類い希であってフツーは「○○さぁ~ん」とか名前で呼んだりしているのであって、さらに、「スクープです!!」とか「スッパ抜け!!」なんてコトバはもはや死語っていうかそんなコトだれも叫んでねえよって感じなのである。

 すなわち上のような編集部風景は、テレビとかではよく出てくるけど、そう簡単には見られない絶滅保護対象的風景なのであるっていうか、13年もこーゆー仕事をしている俺だって一度もお目にかかったことはない。たぶんどっかにはそういう編集部もあるかと思うのだが……、いや、あるのだろうか、そういう編集部の風景って!?

 一方、“取材”のイメージは、わりと多くの人が抱くイメージに近いのではないだろうか。カメラマンや記者がフットワークも軽くネタに接近し、ストロボをたくわ質問を浴びせるわメモりまくるわ録音しまくるわという状況。記者群とカメラマン群がノムラのサッチーを取り巻くような状況は、まあワイドショーならではの光景ではあるが、記者とカメラマンがターゲットを囲んでいるような状況は、取材においてフツーの光景だと言えよう。で、俺が見たり受けたりした多くの取材者たちの装備は、比較的軽装で、カメラマンはカメラを1~2台、記者はペンとメモ帳、といった感じ。

 で、ココで本題なのだが、パソコン系雑誌編集部の人々は、取材における装備が、他の一般誌系編集部の人々のそれとかなり違う。まあ、カメラマンはカメラマンで、だいたい一様に似たような装備なのだが、記者の装備が違うのだ。

 例えば、一般誌や新聞の記者の多くは、フツーに紙(ノートやメモパッド)と筆記具(ペンや鉛筆)などを使う。また、時にはテープレコーダーで会話を録音しているが、そのテープレコーダーは普通のサイズのカセットテープが入る、ウォークマンのようなものがほとんどだ。
 一方、パソコン系雑誌等の記者は、中には紙と鉛筆派という人もいるが、キカイを使う人が多い。HP200LXやオアシスポケットやモバイルギアなどのPDA系装置とかサブノートパソコンとか。それも、話をしながらタッチタイピングで会話をマシンにメモっていたりするから、なんかこう、マニアとして楽しくなってくる。録音に関しては、カセットテープを使う人はあまり見かけず、多くは録再型のポータブルMDデッキだったりする。一時はDATというのもよく見かけたが、やはりMDが主流のようだ。ちなみに、その他の装備も多く、携帯電話はもちろん、デジカメ、デジタルカムコーダ、ノートパソコンなど、いろんなデジタルガジェットを持ってくるので、なんかこう、楽しい人々と言えよう。



■ 俺も昔は取材した

 かく言う俺も、昔は編集部側で働いており、つまり取材する側にいて、いろんなところへ取材に行った。現在のように小型のマシンはなかったのだが、それでもNECの98LTなどを頑張って持ち歩いたり、98Noteをカシャカシャ叩きながらメモを取ったりしたこともあった。のだが、やはり持ち歩けるコンピュータってのは当時(10年くらい前ですな)では奇妙な存在であり、また、コンピュータってもの自体が偏見の対象だったりしたので、そうそうマシンを使っての取材はできなかった。てなわけで、メインの取材装備は、紙とペンとテープレコーダー、それからカメラ(フィルム式ですな)だった。

 で、そんな俺が最近のパソコン系記者の装備を見ると、なんかある面、羨ましくなるところがある。まず、カメラだ。
 まあ、プロカメラマンが同行してくれる取材ならともかく、予算やスケジュールによっては、記者=カメラマンとなる場合も多い。そんなとき、デジカメがあると、取材する側としてすげー安心なのである。もちろん一眼レフで写真を撮るが、念のための押さえとしてデジカメでも撮影。今時の高ピクセルデジカメなら、雑誌の小さなカットくらいならまったく完全にイケるし、その場で画像を確認できるので、撮ったつもりが撮れてなかった、という最悪の事態は避けられる。

 それから、録音機材。パソコン系記者の多くはMDで取材中の会話を録音していくが、アレは非常に便利そうだ。というのは、テープ起こしが楽だというコト。

 普通、取材で録音したテープなりディスク上の会話は、編集部に戻ってから、文字として書き起こす。これをテープ起こしというのだが、カセットテープだとこの作業が非常に面倒なのである。不要な部分を早送りしたり、あるいは聞き取りにくい箇所を何度も再生するのには、テープよりもMDなどのデジタルでディスクなメディアの方がずっと楽なのである。シーケンシャルなメディアとランダムアクセスなメディアの決定的な違いだ。まあ、テープ起こしを専門に引き受けてくれる業者もあるが、それはそれでお金がかかるので、多くの記者はテープ起こしという作業をする。

 テープなりディスクなりを聞きながら原稿を書けばいいじゃないか、と思われるかもしれない。一見効率が良さそうだが、コレは実は、最終的には効率が悪い作業なのである。インタビュー記事などの基本は、取材対象が言ったコトを一字一句正しく再現するのが基本になる。また、インタビュー記事作成の主な作業は、会話の部分引用や、個々の会話内容(セリフ)の再構成だ。1時間なり2時間なりの会話の細部まで全て頭に入る記者ならいいが、そうでない記者は、インタビュー記事を作成する時に、いちいちテープやディスクを聞き直して、セリフの細部を確認しなおすハメになる。なので、インタビュー後にはほとんどの記者がテープ起こしをし、会話の原本としてのテキストを作り出すのである。まあ、そうじゃなくてもっとアットホームな感じでインタビュー記事が作成されることも多いが、でも基本的には、言った言わないのケンカが起きないように、誌面や紙面において正確な会話が再現されることが重要なのである。

 おおっ!! なんか本題に入る前にもの凄く話が逸れまくってしまった!! というわけで本題に入りたい。



■ インタビューにはコレ!!

スマートメディアは容量16MBまで対応(3.3Vの規格のもののみ)
 ちょっと前に東芝から出た録音装置に、コレはインタビュアー向けだという製品がある。ボイスバー プロ DMR-SX1という製品だ。

 コレはいわゆるボイスレコーダで、音をメモリに録音していくデジタル機器だ。他にもこのテのボイスレコーダはいくつもあるが、DMR-SX1は特にインタビュー取材の多い記者が喜ぶ仕様になっている。

 それはまず、録音メディアがスマートメディアだという点。多くのボイスレコーダは内蔵メモリに音声を録音するだけだが、DMR-SX1は、メモリがいっぱいになったら交換できるので、録音時間が限定されない。なお、使用可能なスマートメディアは、2MB、4MB、8MB、16MBで、3.3Vタイプのもの。ちなみに、本体にはあらかじめ8MBのスマートメディアが同梱されている。

 それから、録音時間がかなり長いこと。16MBのスマートメディアなら約265分(4時間25分)!! も録音できる。8MBのスマートメディアなら約132分(2時間12分)だ。これだけ長時間録音できれば、テープやMDの代替品としても現実的だ。

 録音メディアがスマートメディアということで、もちろん、録音した音声をパソコンに転送することもできる。例えば、取材した会話をパソコン上で再生しながらテープ起こしができたり、取材ごとに会話の原本をファイルとして保存しておくことができたりで、インタビュアーにとっては何かと便利な感じ。なお、録音フォーマットが独自のものなので、音声データを再生するためには別売のソフト(DMR-KIT1:Windows専用)が必要になる。

 さて、肝心の音質だが、俺が試してみた限りでは、かなりイイ感じである。ボソボソと喋る声も大声でまくし立てる声も、かなりキレイに録音される。また、ノイズキャンセラーのような機構も装備されており、これを使うと例えば冷暖房の音や換気扇の音など、周囲の雑音をかなり低減できる。また、パソコンに転送してから音を再生すると、スピーカーが(DMR-SX1内蔵のものより)デカいためか、よりはっきりと音を聞くことができた。

 あと、インタビュー録音時に必須の機能である、インデックスの付加もできる。つまり頭出しのための目印を、どこにでも自由につけられる(もちろん録音中にも再生中にもOK)。また、前述のDMR-KIT1というアプリケーションを使った場合は、付加したインデックスがパソコン上にも現われるし、インデックスをさらに付加したり削除したりすることもできる。ついでに、このDMR-KIT1を使うと、DMR-SX1が生成した独自フォーマットの音声ファイル(DMRファイル)をWAVファイルに変換することもできる。

 それと、本体の操作性については、ちょっとクセがあるものの、しばらくすると都合がいい操作性に感じられた。マイク部をせり出させると録音が始まり、マイク部をしまうと録音終了&電源が切れる。興味本位でいじっている時は、すぐに電源が切れてしまう点になんかイラついたが、よく考えてみると、インタビュー中は電源のオンオフなんか気にしていられないし、やることは録音のみ。そう考えると、電源のオンオフを気にせずによくて、マイク部の操作一発で録音が始まるスタイルは現実的に使いやすいと思われる。

 本体のサイズが非常に小さいのもいい。57×16.5×93.5mm(幅×奥行き×高さ)で102g(電池とスマートメディア含む)。テープよりMDより小さくて、より高度な使い方ができる製品としては、かなり魅力的だ。ちなみに、連続駆動時間は録音時で約14時間、再生時で約10時間、電源は単4アルカリ電池を2本使用する。

 その他、個人的に思ったのは、この程度小さな録音機材なら、インタビューの相手も“録音されている”ということに緊張せずに会話ができるような気がする。もちろん、会議の議事録というか録音にも使えるだろうし、打ち合わせを筆記具ナシで済ませることもできそうだ。まあ、地下駐車場に止めたクルマの車庫ナンバーを声でメモったり、アイデアをメモったりするのにも役立つが、そーゆーコトだけするのなら、ここまで高性能なボイスレコーダは不要かも。あと、音がかなり良く、リピート再生機能もあるので、「さぁ~いらっしゃい本日は産地直送の無農薬野菜がお安くなっております~」みたいな店頭の呼び込みにも使えるかも(ていうか最近の店頭の呼び込みのかけ声再生にサンプラーなどを使っている商店も増えているとか)。かなりいろいろな目的に使えそうな装置である。

 小型、高音質、そんでもってスマートメディアに録音できて、パソコン上で音声ファイルを再生・管理することもできる。インタビュー取材をしなくなった俺だが、なんか過去のトラウマからか、こういう融通利きまくりのボイスレコーダにはやたら魅力を感じてしまうのであった。

□ボイスバー プロ DMR-SX1プレスリリース(東芝)
http://www.toshiba.co.jp/about/press/1999_03/pr_j1701.htm

□週刊スタパトロニクス バックナンバー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/backno/wstapa.htm

[Text by スタパ齋藤]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp