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NTTドコモ PocketBoard Plus |
今回のビジネスショウで筆者が真っ先に足を運んだのがNTTドコモのブースだ。それは携帯電話を見るためではなく、ポケットボードの新製品を見るためだ。一昨年に発売された初代ポケットボードは、すでに20万台を超える売り上げを記録し、今年4月1日に発表された新モデル「ポケットボード ピュア」の売れ行きも好調だという。
そんな時期に、「ビジネスショウで新製品が参考出品されるらしい」という噂を聞きつけ、早速、足を運んだというわけだ。今回参考出品されている製品は「PocketBoard Plus」というロゴが書かれている。係員に質問したところ、「ポケットボードのバリエーションですが、詳細はまったく未定です。お話しすることはありません」とピシャリ。そこで、今回は筆者が見た限りの情報をお伝えしよう。
まず、ボディはシャープが販売するPW-6000という電子辞書と似たデザインを採用している。ポケットボード ピュアよりも少し頑丈そうだ。ボディサイズはPW-6000と同じと仮定すると、「140(幅)×79(奥行)×20.5(厚さ)mm」ということになるが、実際に見た目もポケットボード ピュアよりもひと回りコンパクトだ。重量はボディの材質が異なることから見ても、250g程度はありそうだ。液晶ディスプレイはおそらくモノクロと思われるが、ポケットボード ピュアよりは少し画面が広そうだ。右側にコントラストの調整スイッチらしきものが見える。
PocketBoard Plusのキーボード |
外見で特徴的なのは、携帯電話との接続ケーブルだ。初代モデルとポケットボード ピュアではキーボードの奥に接続ケーブルを格納していたが、PocketBoard Plusではキーボードの手前に配置している。しかもケーブル部分がキーボード下に格納される形となっている。
真正面からの写真を見ていただくとわかるが、本体前面には妙なスライドスイッチもついている。ザウルスやWindows CE機などのPCカードスロットのイジェクトボタンに似ているが、おそらくこれでケーブルの取り出しや収納をするのではないだろうか。掃除機みたいにスルスルっと収納されたら、それはそれでインパクトもある……(笑)。
キーボードは初代モデルと同じゴムタイプのもののようで、中央上部に「作る」、「送る」、「設定」というキーが見える。おそらく、メールの機能をダイレクトに呼び出せるようにしているのだろう。キーピッチはそれなりに広そうだが、実行/改行キーが小さいことが少々気になるところだ。機能的には10円メールとインターネットメールなどが読み書きできるのだろうが、Webブラウズについてはペンなどがないことから見ても、おそらくサポートしていないと予想される。
さて、実際の発売時期だが、過去の製品の参考出品から発売までのスケジュールから考えると、おそらく6月中旬から下旬のボーナス商戦を狙うことになりそうだ。価格的にはポケットボード ピュアが1万円前後、シャープのコミュニケーションパルが3万円弱で購入できることを考慮すると、2万円前後を狙うのではないだろうか。ちなみに、このPocketBoard Plusはシャープが開発したモノのようだが、筆者はコミュニケーションパルとは別物と見ている。いずれにせよ、発売が楽しみな製品だ。
エプソン ロカティオ |
シャープ コミュニケーションパル新色 |
ポケットボードの話題が出たところで、他のPDAにも目を向けてみよう。最近のPDAはポケットボードの成功を受け、メール機能や通信機能が充実してきている。今回のビジネスショウでは、GPSとの通信というキーワードも加わり、さらに機能競争が激しくなっている。
筆者がまず注目したのは、昨日発表されたばかりのエプソンの「ロカティオ」だ。GPS機能を搭載していることも売りのひとつだが、DDIポケット電話のPHSユニットがドッキングできるのも注目に値する。PHSをPDA向けに特化させ、内蔵、もしくは着脱式にするという手法はこれからのトレンドになりそうだ。PDAとしての機能はまだまだ未知数だが、なかなか面白いコンセプトの製品だ。
ちなみに、余談だが、GPSユニットはカシオの腕時計「サテライトナビ」にも搭載され、間もなく出荷される予定だが、実はGPSの測位はかなりバッテリを消耗する。そのため、このロカティオも連続駆動時間が約7時間と短く、GPS測位を頻繁に繰り返すと、あっと言う間に電池がなくなるという。これをPHSの位置情報サービスで補うことができれば、かなり強力なナビゲーションツールができるのではないだろうか。
一方、ポケットボードを卒業したユーザーに高い人気を得ているシャープのコミュニケーションパルには、新しいカラーリングが追加された。フタの部分が紫色になり、ツートンカラーっぽいデザインになった。ハードウェア的な違いはないが、実はMOREソフトにSharp Space Townへのオンラインサインアップツールが追加されている。Sharp Space Townはシャープ製品向けのポータルサイト(という言い方が適切かどうかは微妙だが……)として提供されているもので、さまざまな情報サービスが行なわれているが、コミュニケーションパルなどのPDAではサインアップが面倒だったため、MOREソフトが提供されたようだ。ただし、このMOREソフトを既存ユーザー向けに公開する予定は今のところないそうだ。
京セラ ビジュアルホン |
京セラブースの様子 |
今回のビジネスショウで話題をさらったものと言えば、やはり京セラのビジュアルホン VP-210をおいて他にないだろう。発表翌日の新聞にはデカデカと掲載され、ビジネスショウ開幕を伝えるテレビのニュースもビジュアルホンがメイン。ビジネスショウを狙っての発表だったわけだが、その狙いは見事に当たっている。
ビジネスショウでは京セラのブースとDDIポケット電話のブースでデモ機が公開されているのだが、京セラのブースでは実際にコンパニオンの女性とビジュアルホンで通話(?)が楽しめるようになっており、かなり人気を呼んでいた。ビジュアルホンはPHSの32kbpsの帯域のうち、24kbpsを画像転送で利用しているため、音声は8kbpsに圧縮符号化してやり取りしている。そのため、通常のPHSよりもやや音質が悪いと言われているが、携帯電話に比べれば、はるかに快適だ。
ちなみに、この製品については、今後さまざまな展開ができると筆者は見ている。たとえば、『オフィス内や工場内、留守宅の監視』、『工事現場や道路などの定点観測』、『画像を使った情報発信』など、いろいろな応用ができるであろうし、画像付きで通話ができるのは今までにない新しいビジネスやコミュニケーションスタイルを生み出すだろう。できることなら、基本的な仕様を公開し、ISDN TAとパソコンを組み合わせた環境との通話なども実現してもらいたいところだ。
NTTドコモ ドッチーモ |
NTTドコモ プロトタイプSH-1 |
携帯電話やPHSなどの通信事業者も今回はしっかりとブースを構えている。特に、日本移動通信(IDO)とDDI(セルラー)のcdmaOne陣営、NTTドコモの対決姿勢はなかなか面白い。cdmaOne陣営が昨年に引き続き、cdmaOne端末の体験通話コーナーを用意し、新たにWAPサービスの説明コーナーを設けたのに対し、NTTドコモは携帯電話とPHSを一体化したドッチーモとiモード端末をずらりと並べ、W-CDMA端末のデモ機やプロトタイプモデルも展示しているといった具合いだ。
NTTドコモ W-CDMAデモ |
まず、NTTドコモの携帯電話ではドッチーモの発売予定モデルのP811とN811に関心が集まっている。いずれ機会があれば、詳しいレポートをお送りするが、筆者自身は今のところ、SH811以外の選択肢はないと見ている。その理由のひとつは携帯電話とPHSの同時待ち受け、もうひとつは事業所コードレスシステムや家庭用コードレスホンへの子機登録のサポートだ。この2つの要件を満たしているのがSH811しかないのだ。一方、iモードでは5月20日から出荷が開始されるP501iの注目度が高い。全般的に見て、男性はドッチーモ、女性はiモードという分布になっているのも興味深いところだ。
W-CDMA端末のデモ機やプロトタイプモデルの展示などもなかなか面白いのだが、個人的には今ひとつ興味を持てなかったのも事実だ。確かに、2001年春のサービス開始を目指し、NTTドコモがW-CDMAに熱心に取り組んでいることは理解できるが、冷静になって考えてみると、それまでにまだ2年近くある。EricssonとQualcommの特許問題は、解決の見通しが立ち、IMT-2000へ向けて動き出したとは言うものの、標準化はこれからであり、今後どんなことが起きるかが予測できないからだ。
個人的には技術的にスゴいことよりも、数カ月以内に手にすることができる機器をじっくり見たいというのが本音だ。ちなみに、2年前にはポケットボードはまだ発売されておらず、現在ほどの携帯電話メールの文化もなかった。このことから考えても、通信業界における2年がどれほど長い期間であるかがご理解いただけるはずだ。
NTT Phoenix mini type-s |
NTT ICカード型公衆電話 |
携帯電話やPHSの話が中心になってしまったが、最後にISDNについて触れておきたい。今回のビジネスショウではNTTグループのブースで新しい機器を見つけることができた。
まず、「2台でイチキュッパ」のテレビCMで話題となったPhoenix miniシリーズのバリエーションとして、「Phoenix mini Type-S」という製品が展示されていた。従来のPhoenix miniシリーズをさらに小型化したものだが、やはり気になるのは価格だ。従来モデルが1台12万円だったことを考慮すると、8~9万円あたりになるのだろうか。ビジュアルホンがあの価格(1台4万円前後と推測される)で販売する予定となっていることを考慮すると、そろそろ個人でも気軽に購入できる価格帯の製品が出て欲しいところだ。また、今年からお目見えしたICカード型公衆電話も展示されている。デザイン的にもなかなかインパクトがあるが、まだそれほど設置台数も多くないようなので、これを機に実機を体験してみるのも面白いだろう。
NTT W-1000P |
この2つの展示に対し、製品の発表以来、非常に疑問に感じているのが「W-1000P」及び「W-1000K」だ。この2台は家庭向けのISDNコードレスホンとして開発されたもので、本体にはDSUが内蔵されている。つまり、屋内配線の引き込み口からケーブルを1本接続するだけで通話ができるようになるわけだが、これが驚いたことに「S/T点端子を備えていない」、「DSUの切り離しができない」という仕様になっている。つまり、これを購入してしまうと、これ以外のISDN機器をまったく増設できず、将来的にも使い回しが効かないというわけだ。
この件について、係員に説明を求めてみたが、結論としては「これ1台で利用するなら十分」という答えだった。ISDN機器を知らないメーカーがこういう仕様の製品を作ってしまったのなら、まだ理解できる(もちろん、あってほしくないことだが)。また、過去にもS/T点端子のないDSU内蔵ISDN機器が発売され、筆者も「こんなものは買う価値がない」と評したこともある。しかし、今回はISDNを提供するNTT自身が販売する製品である。当然のことながら、PCや通信機器に詳しくないユーザーが購入してしまう可能性が高い。これはハッキリ言って「発売を取りやめるべき」と言いたいくらいだ。PC Watchの読者なら大丈夫だろうが、間違って選んでしまうユーザーが出ないことを祈るばかりだ。
NTTはいよいよ7月1日に持株会社と3つの事業会社に分割される。今後、どういった製品やサービスが企画され、どのような効果をもたらすのかが興味深いところだが、それ以前に、こうした仕様ミスとも言える製品がこれ以上、市場に出ないことを願いたい。
[Text by 法林岳之]