IntelがチップセットでPC133メモリをサポートするかどうかは、このところ業界の関心をあつめるポイントのひとつだった。Intelは、これまでPC-100からDirect Rambus DRAMへのジャンプに固執していたが、どうやらその姿勢に変化が見え始めたようだ。「Intel Not Ruling Out PC133 SRAM Support」(Computer Retail Week,'99/6/14)によると、Intelのクレイグ・バレット社長兼COOがPC133サポートを否定しない発言をしたという。バレット氏は、もしその新メモリインターフェイス(PC133)が市場で有力なテクノロジになるのなら、IntelとしてはPC133をサポートするという不測事態への対応計画を除外しないだろうと、述べたそうだ。Intelは、現在のところ公式にはPC133サポートのチップセットの計画は持っていないが、もしPC133が好ましいチョイスになるなら、チップセットのメモリインターフェイスの選択肢の1つとして考えると、答えたという。
IntelがPC133をかたくなに否定してきたのは、メモリベンダーがPC133をSDRAM系テクノロジを今後も推進するための突破口としてドライブしてきたからだ。つまり、メモリベンダーの一部は、PC133移行もPC1xxとかDDR SDRAMという方向で、少なくともあと1-2DRAM世代は、SDRAMテクノロジを継続したいと考えており、PC133をIntelに認知させることが、その突破口になると考えているフシがあるからだ。だから、Intel側もPC133は認めても、あくまでも長期的にはDirect RDRAM移行だとクギを刺す。バレット氏が、PC133サポートがありうるとしても、それは「contingency plan」、つまり不測事態への対応計画だと注意深く語っているのはそのためだろう。つまり、あくまでもDirect RDRAM移行の路線は変えないが、Direct RDRAM移行のハードルを低くするための緊急措置としては認めてもいいという姿勢だと思われる。
●Intel 820は最初は600MHz Direct Rambus DRAMだけをサポート?
しかし、Direct RDRAMとその周辺に関しては不安なニュースばかりが飛び込んでくる。Direct RDRAMは、800MHzと600MHzのほかに700MHz(実際には711MHz)の3グレードで供給されることになったが、デスクトップPCでは、最初は600MHzだけで立ち上がる可能性がある。「Intel staggers Camino roll out, move could delay high-speed Direct RDRAM」(Electronic Buyers' News,'99/6/11)の報道によると、Intelの次期チップセットIntel 820(Camino)の最初のバージョンでは、Direct Rambus DRAMのうち600MHzバージョンしかサポートされないという。これは、Intelの顧客からの情報で、700MHzと800MHzをサポートするIntel 820は、それより少なくとも数週間遅れて、最悪の場合は11月の出荷になるだろうという。そのため、最初はサーバー/ワークステーション用次期チップセットIntel 840(Carmel)で800MHz Direct RDRAMは使われることになるという。
●しかしPCメーカーは600MHzを欲しがらない
Electronic Buyers' Newsによると、これはPCメーカーをがっかりさせているらしい。というのは、PCメーカーは600MHzを欲しがっていないからだ。「Samsung wants Direct RDRAM at more than 600 MHz」(Electronic Buyer's News,'99/6/15/99)によると、韓国のSamsungからの情報として、PCメーカーは800MHzと700MHzは欲しがっているが、600MHzと言ってくるところはほとんどないという。だから、多くのPCメーカーは、Intel 820が800MHzまでのすべてのクロックをサポートするのを待つだろうと、Samsungは予測している。
これはよくわかる話だ。というのは、600MHz Direct RDRAMは、Intel 820では、100MHzのFSB(フロントサイドバス)でしかサポートされていないはずだからだ。PCメーカーにしてみると、当然Intel 820のマシンはFSB 133MHzのハイエンド機として出したいわけで、そうすると600MHzには乗り気ではなくなるわけだ。
もっとも、DRAMメーカー側にしてみると、600MHz以上では動かないチップがメーカーによってはかなり出るわけで、本音を言えば600MHzも買って欲しい。Direct RDRAMは高クロックがネックで歩留まりが上がらないという点が問題になっており、高クロック品しか出ないと価格が下げにくくなる。このあたりの状況は、Intel 820がもし800MHzまでのフルスピードサポートで登場しても変わらないだろう。
これを解決するには、DRAMメーカーが生産できるDirect RDRAMのほとんどを700MHz以上にできればいいわけだ。しかし、そうできない場合、IntelはIntel 820で133MHz FSBの時に600MHzをサポートできるようにするかもしれない。あるいは、Direct RDRAMに、さらに600MHzよりも下のDirect RDRAM仕様を付け加える可能性もある。Direct RDRAMは、当初は800MHzだったスペックに、じりじりと低いスペックを加えているので、これもありうるだろう。
●K7はPentium III Xeonを性能とクロックで上回る
一方、Intelと競り合うAMDは、K7の性能と出荷計画を公開した。「AMD says K7 outperforms Intel's Xeon」(Electronic Buyer's News,'99/6/11)によると、K7は500/550/600MHzで今月遅くに登場すると、AMDでK7のアーキテクトを務めるDirk Meyer氏が明かしたという。また、512KBのハーフスピードの2次キャッシュを搭載した550MHzと600MHzの性能も公表したそうだ。それによると、整数演算性能でPentium III Xeon 550MHz(512KB版)よりそれぞれ5%と15%高かったという。また、浮動小数点性能では、それぞれ35%と40%(他の記事では42%という記述もある)ほど高かったという。2次キャッシュ速度はXeonがCPUと同クロックなので有利にもかかわらず性能は上回ったわけだ。また、K7は、浮動小数点演算ユニットを非常に強化しているので、浮動小数点演算のこの高い数値に疑問はない。
だが、この性能では、Intelが年内にPentium III Xeonの733MHzを出してくると追いつかれることになる。また、この数値は、K7のプロセッサのアーキテクチャからは期待されるより低いように見える。それは、チップセットなどがK7の性能を出し切れていないのかもしれない。
もっとも、AMDはK7のパフォーマンスをIntelに対抗してまだまだアップするつもりではいるらしい。「AMD Is Preparing to Ship K7 Chips That Will Outperform Those of Intel」(The Wall Street Journal,'99/6/14、有料サイト、http://www.wsj.com/より検索)によると、動作クロックは2000年には1GHzになると言ったという。また、「K7 to feature expanded instruction set」(Electronic Engineering Times,'99/6/11)によると、IntelはK7では3D Now!にも25の新命令を加えるらしい。そのうち、19命令はSIMD整数演算命令で、5命令は新しい“DSPコントロールファンクション命令”だと記事は伝えている。とすると、Intelとは違う方向へも拡張を行なうわけだ。いずれにせよ、あと数週間で詳細がわかるはずだ。
●Windows 2000のRC1は7月第1週か
MicrosoftがWindows 2000のターゲットデイトを10月6日と設定しているという説は、以前にも伝えたが、この信憑性はますます高まってきた。正式リリースに先立つ「Release Candidate 1」のリリース日程が見えてきたからだ。「At Last - Microsoft Reveals Win2000 Date」(Computer Retail Week,'99/6/9)によると、Windows 2000 Release Candidate 1は、7月の第1週に出る予定だという。また、「Allchin: 'Reliable' Windows 2000 RC due this month」(InfoWorld,'99/6/14)によると、Release Candidate 2 (RC2)は、RC1のあとに6から8週間で出るという。8月中には出るわけだ。そして、そのあとは、いよいよファイナル版になる。このスケジュールで、Microsoftは10月6日という設定に、かなり自信を持っているらしいという。
これをもう少し整理すると、7月頭にRC1でホップ、8月後半にRC2でステップ、それで10月頭までにファイナルでジャンプ、それで正式発表が11月のCOMDEXに合わせて……と、たしかに美しいスケジュールだ。ただし、問題は、こう聞いてもみんなあんまり信じていないことだろう。Microsoftのスケジュールは、なかなか信用できないので、こう報道されたってみんな話半分にしか受け取らない。Microsoftがどこまで意地を見せてこのスケジュールを貫けるのか、なかなか見物だ。
('99年6月18日)
[Reported by 後藤 弘茂]