Text:石井英男
会場:台北世界貿易センター展示場
台北国際コンベンションセンター
主催:TCA(台北市電脳商業同業公会)
CETRA(中華民国対外貿易発展協会)
メモリは、CPUやチップセットに比べると地味なパーツだが、いくらCPU性能が向上しても、メモリのパフォーマンスが低いままでは、マシン全体のパフォーマンスは向上しにくい。現在は、PC-100対応SDRAMが主流だが、ポストFSB100MHz時代を間近に控え、次世代メモリの覇権争いが熾烈になってきている。そこで、COMPUTEX TAIPEIで見た、最新メモリ事情を報告したい。
■DirectRDRAMは予定通り離陸するのか?
SAMSUNGブースで展示されていたRIMMとDirect RDRAMメモリチップ |
Direct RDRAMは、本来400MHzクロックの両エッジに同期して動作することで(800MHz動作)、1.6GB/秒という広いバンド幅を実現できることが利点であった。しかし、800MHz動作のDirect RDRAMは、タイミングのマージンが少ないため、安定動作させることはなかなか難しい(特に複数のメモリモジュールを挿したときなど)。インテルも、不安定なまま製品を出荷してDirect RDRAMの評判を下げることは避けたいと判断したのか、今年9月に投入する予定のIntel820チップセット(コードネーム:Camino)では、動作クロックを落としたDirect RDRAM(300MHzクロックの両エッジで動作するバージョン)もサポートすると言われている。
Direct RDRAMを搭載したメモリモジュールはRIMMと呼ばれ、現状のDIMMとは形状が異なる。COMPUTEX会場でもかなりの数のメーカーのブースで、RIMMが展示されていたが、肝心の出荷時期や価格について尋ねると、「インテルがチップセットを出せばすぐにでも出せます」とか「まだ、メモリチップ自体の値段がはっきり提示されていないので、なんとも言えません」というような返事が返ってくる。
800MHzで問題なく動作すると言っているメーカーが多いが、実際に動くかはどうかはやはりインテル待ちの部分が大きいようだ。価格も当初はかなり高価なものになると予想されるので、本格的に普及しはじめるのは、やはり来年からであろうという意見が多かった。
■Pentium III 533MHzってなんだ? PC133 SDRAMはもう標準に
PC133 SDRAMチップを展示していたMosel Vitelicのブース |
133MHz動作が保証されているDIMMは、すでに秋葉原などでも売られており、クロックアップマニアを中心に人気を集めているようだが、会場でも数多くのブースで、PC133 SDRAMを搭載したDIMMが展示されていた。RIMMの製造にはDIMMよりも高い技術が必要だが、PC133 SDRAMを搭載したDIMMなら従来の技術の延長で製造できるため、参入もしやすいのだろう。
PC133 SDRAM自体はもう珍しくもなんともないのだが、とあるブースで非常に面白いものを見つけた。そのブースでは、PC133 SDRAMの動作デモがむき出しのマザーボードで行なわれていたのだが、そのデモで使われているCPUを何気なく覗き込んだところ、クロック表記が「533」になっていることに気づいたのだ。
つまり、Pentium III 533MHzということなのだが、読者も御存知のように、現状で発表されているPentium IIIの動作クロックは450/500/550MHzの3種類しかなく、533MHz動作版は発表されていない。しかも、よく見ると「Intel Confidential」という文字も書かれている。つまり、まだ発表前のCPUなのである。もしかしてこれは、0.18ミクロンプロセスで製造され、256KBのL2キャッシュをダイに統合した次世代Pentium III(コードネーム:Coppermine)を発見したかと騒いだのだが、落ち着いて考えてみると、現状の0.25ミクロンプロセスのPentium III(コードネーム:Katmai)のFSB133MHz版であろうという結論に達した。つまり、133MHz×4=533MHzで動作しているわけだ。インテルは、FSB133MHz化を推進するために価格の高いCoppermineだけでなく、FSB133MHz版のKatmai(533MHz動作版)も同時期に投入するのではないかという噂があるが、それが裏付けられた恰好だ。
PC133 SDRAM DIMM自体はいたるところで見られた | PC133 SDRAMは、現状ではCL=3の製品が多いので、CL=2での動作保証がされている製品は珍しい | 写真では見にくいかもしれないが、右下の部分に「533」の文字が見える |
■高い実装技術を誇るメルコブース
メルコは、BUFFALOブランドで古くから有名なメーカーだが、COMPUTEXのメルコブースでも、興味深い製品が展示されていた。
メルコといえば、業界の先陣を切って、VC SDRAMを搭載したDIMMを発売したことがまだ記憶に新しいだろう(詳しくはHotHot REVIEW! 『期待の統合型チップセットMVP4搭載マザーボード登場』を参照)。もちろん、VC SDRAM搭載DIMMも展示されていたが、VC SDRAM一辺倒というわけではなく、RIMMやPC133 SDRAM搭載DIMM、PC100対応SO-DIMMといった、さまざまな製品が展示されていた。
PC100対応SO-DIMMはノートパソコン向けの製品であり、まだ参考出品であったが(FSB100MHzで動作するノートパソコンがまだ登場していないため)、安価な64Mbitチップを利用して256MBという大容量を実現したことが特徴だ。通常、SO-DIMMには裏表合わせて8個のメモリチップしか実装することができないが、メモリをベアチップ(パッケージに封入していない状態)のまま実装することで、従来の4倍にあたる32個のメモリチップをSO-DIMM上に実装することを可能にした。256Mbitチップを使うことで、256MBを従来の方法で実現した製品も一緒に展示されていたが、メモリチップの価格は64Mbitチップ4個よりも256Mbitチップ1個のほうが現状ではずっと高いので、コストパフォーマンス的には、ベアチップを使った製品のほうが有利だ。ベアチップのまま実装するには、高い技術力が要求される。古くからメモリモジュールの製造を行なってきたメルコならではの製品といえるだろう。
また、大規模サーバー向けの製品として、1枚で1GBもの容量を持つDIMM(PC100対応)も出品されていた。こちらは、基板を2階建てにすることで1GBという大容量を実現している。
メルコブースで展示されていた256MB SO-DIMM。上がベアチップを32個実装することで実現したもので、下にあるのが256Mbitチップ8個で256MBを実現したもの | メルコブースで展示されていた1GB DIMM(上)と512MB DIMM(下)。2階建て基板で大容量を実現している |
□COMPUTEX TAIPEI '99のホームページ(英文)
http://www.computex.com.tw/cpx99.asp
□TCAホームページ(和文)
http://www.ippc.com.tw/tca/tca.htm
□台北世界貿易センター展示場ホームページ(英文)
http://taipeitradeshows.cetra.org.tw/
□TAIPEI International Trade ShowsのCOMPUTEX TAIPEI '99ページ(英文)
http://taipeitradeshows.cetra.org.tw/computex/
('99年6月3日)
[Reported by 石井英男]