●IntelとHPが、ついにIA-64アーキテクチャの詳細を発表
IntelとHewlett Packard(HP)は、ついにIA-64アーキテクチャの詳細を明らかにしたようだ。「Intel and Hewlett-Packard Unveil Merced Architecture Willhelp developers build 64-bit applications」(Computer Reseller News,5/25)によると、米国時間の火曜日に、両社はアーキテクチャのディテールを公開したという。命令セットやフィーチャ、プログラミングモデルに関する情報は、米国時間の今週水曜日にIntelとHewlett PackardのWebサイトにポストされるという。つまり、本日深夜だ。IA-64アーキテクチャの最初のプロセッサ「Merced」は、来年半ばに出荷される予定となっている。そこへ向けて、いよいよIntelとHPは助走態勢に入ったということか。
●東芝? NEC? 誰がCyrixを買う?
加速する一方のIntelに対して、売られてしまうことになったCyrixはどうなっているのだろう。「Nat Semi Shops Cyrix Around, But Will There Be a Buyer?」(The Wall Street Journal,5/21、有料サイト、 http://www.wsj.com/ から検索)によると、“Cyrixを買うかもしれない”とウワサされるリストには、IBM、Samsung、東芝、NEC、AMDなどの名前があるという。
ただし、この記事によると、IBMのガースナー会長はあるウォールストリートのアナリストに、もうIntelと争うつもりはないと明確に言ったという。また、AMDは今はそれだけの財政的な余裕がないという。記事によると、可能性が少しでもあるのはアジア系企業だが、それも難しそうだという。東芝とNECは、それぞれIntelのMPUでPCを作ってビジネスをしているのだから、それも当然だろう。ちなみに、Wall StreetJournalの取材に対して、東芝は提案を受けていないと返答したそうだ。
●ATIとNVIDIAもチップセットメーカーと組んで統合戦略へ
荒れ模様のプロセッサ市場だが、チップセット/グラフィックスチップ市場も、Intelの統合化戦略で荒れている。S3はすでにチップセット/グラフィックスチップ統合戦略とパートナーを明確にしているが、ATI TechnologiesとNVIDIAの状況をまとめた記事が出てきた。「ATI, NVIDIA adopt graphic-logic integration strategy」(Electronic Engineering Times,5/24、http://www.techweb.com/ から検索)によると、両社とも年内に統合製品を出すためにそれぞれのパートナーと作業を行なっているという。NVIDIAは、すでに伝えられている通りAcer Labsにグラフィックスコアをライセンスする。第1世代の製品は、NVIDIAブランドではないが、来年にはNVIDIAの名前でも統合チップをマーケットに出していくという。一方、ATI Technologiesのパートナーは、最近話題にのぼることが多い新興チップセットメーカーReliance Computerだという。みんなこぞって統合チップに走り始めたのは、Intel 810を見て危機感を募らせたからか、それとも、これなら自社の方がいいチップを作れると自信を持ったためか?
●アレン氏のCATV買収攻勢はますます激しく
以前、このコラムで、ゲイツ氏とともにMicrosoftを創設したポール・アレン氏が、昨年からケーブルTV会社を次々に買収していることを書いた。アレン氏は、現在、CATV業界で、加入者数第7位(MediaOneが買収されれば第6位)の勢力になっている。だが、アレン氏は、この程度の順位で満足する気はなさそうだ。
「Charter Communications to Buy Falcon Cable TV for Cash, Stock」(THEWALL STREET JOURNAL,5/26、有料サイト、 http://www.wsj.com/ から検索)によると、アレン氏傘下のCATVプロバイダCharterCommunicationsが、中堅のCATVプロバイダのFalcon Cable TVの買収を計画しているという。現金と株、債務の肩代わりで合計36億ドルで、米国時間の水曜の早い時間にアナウンスされそうだという。Charterは390万加入者、Falconの加入者数は100万人なので、買収が成功すれば、合計で500万人近くの加入者がアレン氏のものになることになる。また、この記事によると、Charterは今週遅くにも他の買収について発表する可能性もあり、その場合は加入者数の合計は550万人になるという。どうやら、アレン氏のケーブル王をめざす意志は固いようだ。
●MicrosoftからWebTVのスター創業者が離れる
アレン氏のCATV買収攻勢で、じわじわと進展しつつあるMicrosoftのデジタルCATV戦略だが、その技術的な中心となる予定のWebTV Networksで異変が起こった。「Microsoft's Perlman to Quit As Head of WebTV Networks」(THE WALL STREETJOURNAL,5/26、有料サイト、 http://www.wsj.com/ から検索)によると、WebTV Networksユニットを率いてきたスティーブ・パールマン氏が辞任するという。パールマン氏は、元Apple Computer/General Magicのエンジニアで、Magic TVプロジェクトが消えたあとに独立、TVをインターフェイスにした情報家電というコンセプトのもとにWebTV Networksを創設した。
WebTVにはアレン氏も多額の出資をし、その縁もあって、'97年にWebTVはMicrosoftに買収された。それ以来、パールマン氏はMicrosoftのデジタル家電戦略の最前線にあるWebTVを率いてきた。こうした経歴を持つパールマン氏は、たんにMicrosoftの幹部というだけでなく、Microsoftのデジタル家電/デジタルCATV戦略のヴィジョナリとしての役目も果たしてきた。そのパールマン氏がいなくなることで、さて、MicrosoftのデジタルCATV戦略はどう変わっていくだろう。
●OSウォーズ、Microsoft帝国の逆襲?
「帝国の逆襲:The Empire Strikes Back」といきなり切り出した記事は「UpstartLinux Draws Interest Of a Microsoft Attack Team」(The Wall Street Journal,5/21、有料サイト、 http://www.wsj.com/ から検索)。何のことかというと、Microsoftが対Linuxチームを編成したというのだ。このグループは、Microsoft本部のレッドモンドにあり、10名以下の小規模なチームだが、本格的な脅威に成長してきたLinuxに対抗するという重大な使命を帯びているという。グループの活動の詳細はこの記事ではわからないが、こうしたグループの存在自体がMicrosoftの場合は広報活動的に問題になりそうだ。これまた「Microsoft=悪の帝国」のイメージにいかにもピッタリなので、Microsoft叩きに油を注ぐ結果になるからだ。
Microsoft側にとっては、ライバルに対抗するチームを組むというのは通常の対応なのかもしれないが、まあ、今の状況でそうしたストーリーで受け入れてもらえるとは思えない。Microsoft自体のパブリックイメージがここまで落ちている上に、相手がオープンソースの理想を掲げるLinuxだからだ。この記事の記者でなくても、悪の帝国が正義の味方に逆襲するというたとえにしたくなるのは人情だろう。さて、Microsoftはこのパブリックイメージ地獄から抜け出すことができるのか?
('99年5月26日)
[Reported by 後藤 弘茂]