後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Pentium IIIにクロックアップ阻止機能を入れる計画が?


●Pentium IIIにクロックアップ阻止機能を入れる計画が?

 Intel MPUのクロックアップは、ホビイストの間でますます盛り上がっている。しかし、これはIntelがクロックアップを許容するという決定をしたためだと解説するコラムが、MPU業界の専門誌に掲載された。少し前の記事だが、紹介し忘れていたのでここで取り上げたい。

「Overclockers Should Thank Intel CPU Maker Makes Remarking Tougher But Leaves Hobbyists Alone」(4/19, Microprocessor Report)によると、Intelはオーバークロッキングを完全に不可能にする技術を開発していたが、それを採用しなかったという。それは、Intelが問題視しているのはリマーク品が流通することであって、趣味のオーバークロッキングではないからだという。

 コラムによると、Intelは、Pentium IIIで、内部にクロックスピードの設定値を製造後に記録できる技術を開発した。これは、プロセッサシリアルナンバなどに採用されているのと同種の技術を使っているというので、製造後に一部のヒューズを飛ばすといった方式を取っているのだろう。ここまでは、すでにある程度しられていることだが、Intelは、さらにこの設定クロック値とチップが実際に動作しているクロックを比較するハードウェアをチップに搭載できたと同コラムは指摘する。そして、比較の結果、動作スピードが設定値を超えていた場合にはMPUをシャットダウンさせることができたというのだ。この機能は、すべてハードウェアで実現するわけで、もし、Intelが採用していたら、オーバークロッキングは不可能になっていた可能性が高い。

 著者であるMicroprocessor ReportのアナリストLinley Gwennap氏は、この情報がIntelからのものとだとは書いていない。しかし、MPU業界の専門誌だけに、ある程度確実な情報を得ていなければ、ここまで書くとは思えない。実際、Pentium IIIが登場する前は、Intelがオーバークロッキングを阻止する機能を入れるというウワサがずいぶん流れていた。火のないところに煙は立たないということだろうか。もしかすると、Intelのいつものパターンでチップ上にこうした機能ブロックは存在していて、ただ殺されているだけかもしれない。Intelがもしこの機能を開発していながら採用しなかったとすれば、それは、何を意味しているのだろう。オーバークロッカーたちが、Intelの一種のエバンジェリスト(伝道者)になっているという事実を、Intelも認識し始めたということなのだろうか。


●National Semiconductorに続きIDTもWinChipビジネスを再考?

 MPU業界は、先週はNational SemiconductorのPC向けMPU部門売却の発表で大揺れに揺れた。そして、その余波が広がる中で、WinChipを擁する米IDTもまた、MPUビジネスを再考し始めているという記事が出てきた。ただし、IDTの場合は、PC用MPUビジネスから撤退するという話ではなく、製造やマーケティングでのパートナーを探しているという話だ。

 「Chipmaker IDT also looking for help」(NEWS.COM,5/7)は、IDTが、財政的なバッキングやマーケティング影響力を提供してくれるパートナーを探しているという、IDTの副社長の発言を紹介している。同記事によると、IDTのMPUは現在小売り市場で26ドルから42ドルで売られており、これは製造コストとして見積もられる25ドル(かそれ以下)と非常に近い、つまりマージンがほとんどない状態だという。IDTのMPUの製造コストは、他のx86メーカーと較べるとかなり安いが、それでもこの価格ではビジネスとして成り立たないだろう。「IDT struggles to revive its microprocessor business」(Electronic Buyer's News,5/7)も同じような内容で、IDTはWinChipコアをライセンスすることも含めて検討していると報じている。

 興味深いのは、どちらの記事でもパートナー候補としてIBMの名前が挙がっていること。じつは、IBMは、ナショセミが売りに出したCyrix部門を買い取るメーカーの候補の筆頭にも挙がっている。この時期に、IDT側からパートナー探しの話が出てきて、その話にIBMが出てくるのは偶然ではないだろう。考えられるのは、x86コアを欲しがっているとウワサされるIBMの半導体部門が、Cyrixを買ってしまうのを阻止しようする牽制球である可能性だ。Cyrixを買うよりも、IDTのコアをライセンスした方がいいとアピールしているというのは、考えすぎだろうか。


●2005年には0.1ミクロン2GHzへ突入する半導体技術

 2005年には半導体の最先端プロセスは0.10ミクロンの設計ルールに達し、ハイパフォーマンスのロジックチップのクロックは2GHzに、DRAMチップの容量は16GB(サンプル品で)に達する。こんな見通しが、米国の半導体工業協会Semiconductor Industry Association (SIA)とSEMATECHの半導体技術ロードマップ「International Technology Roadmap for Semiconductors」の最新アップデイトで明らかにされた。それによると、今後15年間のプロセス技術の見通しは、次のようになる。

1999年 0.18ミクロン
2002年 0.13ミクロン
2005年 0.10ミクロン
2008年 0.07ミクロン
2011年 0.05ミクロン

 「0.15 technology dropped from semiconductor industry roadmap」(Electronic Buyer's News,5/5)によると、今回発表されたアップデイトの特徴は、昨年のロードマップにあった0.15ミクロンプロセスがなくなっていることだと。SIAのロードマップでは、これまで、2001年に0.18ミクロンから83%だけ縮小した0.15ミクロンを導入、72%に縮小した0.13ミクロンは2003年に持ち越すカタチになっていた。それを前倒ししてきたわけだ。しかし、実際には、Intelを始めとした最先端の半導体メーカーは、すでに2002年に0.13ミクロンを立ち上げる計画を昨年から明らかにしている。ロードマップのアップデートは、それを追いかけている雰囲気だ。


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('99年5月12日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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