一ヶ谷兼乃の「PCパーツ天国」

中・上級者向けパーツレビュー

一ヶ谷兼乃の「PCパーツ天国」 第11回

K6-III試用レポート2

K6-III対応最新マザーボードでのパフォーマンス


■前回のテストを振り返って

 前回のAMD K6-IIIの記事については多数の反響が寄せられた。ほとんどはK6-IIIのパフォーマンス測定方法についてのもので、要点としては次の3つになる。

 そこで、オンボードにK6-IIIの上限である2MBのキャッシュを搭載した「Freeway FW-TI5VGF」が入手できたのを機に、Pentium III 450MHzもまじえて追加レポートをお届けする。


■K6-IIIを重視したFreeway FW-TI5VGF

赤い基板と、ISAバスがないのが特徴

 FW-TI5VGFは、ATX仕様のSocket 7対応マザーボードで、チップセットはVIA MVP3を採用している。先に述べたように2MBのキャッシュモジュールを搭載しているのが最大の特徴だ。K6-III搭載時は三次キャッシュとして動作する。拡張スロットはAGP×1、PCI×6で、ISAバススロットは用意されていない。6つのPCIバススロットは、すべてマスタ動作可能になっているのも特徴だ。

 また、コア電圧は0.1V刻みに2.0Vから3.5Vまで、I/O電圧も2.1Vから3.6Vまで0.1V刻みに設定することができる。CPUはIntel、AMDをはじめ、Cyrix、IDTまで対応しており、ほとんどのSocket 7 CPUを動作させることが可能となっている。

 なお、今回は、それほど拡張カードを増設しなかったが、すべての作業においてトラブルは発生しなかった。

 このマザーボードの詳細は、フリーウェイの製品情報をご覧いただきたい。TWOTOPでの通販価格は現在14,800円である。



■同様の構成のPentium IIIシステムと比較

 FW-TI5VGFに400MHz動作のK6-IIIを搭載し、各種のベンチマークテストを動作させてみた。搭載された拡張カードやドライバによって、あまり影響を受けないように、テストしたPCには、メモリとしてPC-100仕様のSDRAMを128MB搭載、ネットワークカード「Intel EtherExpress PRO/100 Model B」、ビデオカード「ATI RAGE Fury」だけを搭載している。

 ベンチマークテストは、AKIBA PC HotLine!のHotHot REVIEWで使用されているZiff-DavisのWinstone 99とWinBench 99を使用した。また、国内でよく使われているHDBENCH 2.61も測定したので結果を示す。

 比較対象として、Pentium III(450MHz)のシステムを用意し、同様なベンチマークテストを実行した。Pentium III側の環境も、CPUとマザーボード以外は同一の仕様とした。具体的には、マザーボードにASUSTekのP2B-F、PC-100仕様のSDRAM 128MB、ネットワークカード「Intel EtherExpress PRO/100 Model B」、ビデオカード「ATI RAGE Fury」を搭載している。

 本来ならばK6-IIIとPentium IIIを同クロックで比較したいところだが、テストの時点ではK6-III/450が入手できなかった。参考のため、K6-III/400を450MHz動作させた場合も計測している。なおグラフ中では、K6-III/450と表記しているので注意されたい。

 なお、ベンチマークテストのうち、Winstone 99/WinBench 99は、英語版のWindonws NT Workstation(SP4)で結果をとった。その他のベンチマークテストは日本語版Windows 98上で、HDBENCHだけは双方の環境で動作させた。

Winstone 99 WinBench 99

 Business Winstone99は、ビジネスアプリケーションを実際に動作させ、その結果を数値化したもので、PCのシステム全体が総合的に評価される。CPUでは整数演算のパワーが重要なポイントとなる。ここでは、整数演算の得意なK6-IIIのほうが若干よい数値を残していることがわかっていただけるだろう。

 High-End Winstone99は、グラフィックアプリケーションやビデオ編集などの比較的処理の重いソフトなどを動作させたときの結果を数値化したもので、PCの総合的なパワーが評価される。CPUの評価では、整数演算に加え、浮動小数点演算のパワーも加味されて評価される。ここでは、浮動小数点演算の得意なPentium IIIが若干いい結果を残している。

HDBENCH Ver.2.61
Windows NT 4.0英語版上
HDBENCH Ver.2.61
Windows 98日本語版上
Multimedia mark99
Windows 98日本語版上


 次は、全体的な結果を見て欲しい。ここで目につくのが、K6-IIIの整数演算の速さと、浮動小数点演算の遅さである。具体的には、ワープロやスプレッドシートのようなビジネスアプリケーションには向いているが、3Dゲームなどのマルチメディアアプリケーションには、向いていないということになる。特にWindows 98上で動作させたMultimedia Mark99の結果をみると、K6-IIIとPentium IIIの結果に開きがあるのが判っていただけるだろう。現在、CPUパワーが必要になるシチュエーションは、3Dグラフィックを多用した3DゲームやDVDのソフトウェア再生であり、これらのソフトウェアを主に動作させる環境では、K6-IIIよりもPentium IIIがより適しているといえる。

 K6-IIIでは、3Dグラフィックなどに適した3DNow!機能を装備している。この機能を使えば、3Dゲームなどがより快適に動作するはずなのであるが、ソフトウェア側の対応の問題で、現時点では効果的に利用されている例が極めて少ない。ゲームなどの体感は、多少改善されるものの、Intel系CPUに対する浮動小数点演算の遅さをカバーするほどの効果は得られていないのが実情だ。

 ただし、Voodooのドライバは3DNow!対応によって効果を上げていることから、ソフトウェア側の対応を待たないと判断が難しい。これは、Pentium IIIのSSEも同様の事情で、すでにグラフィックドライバなどで対応している例もあるが、それほど効果はあらわれていない。

 ベンチマークの結果からわかるように、K6-III/400は、K6-IIIに対応したマザーボードとの組みあわせにより、クロックが一段高いPentium III 450MHzに近い性能を持つ。K6-IIIのパフォーマンスの高さは、これまで登場したSocket 7対応CPUの中でも突出している。


■K6-IIIはお勧めか?

 ここまででK6-IIIのパフォーマンスについては一段落とさせていただく。上記のベンチマークで、K6-IIIは、CPUのパフォーマンス的にはIntel製CPUと対等といえる。

 では、K6-IIIが万人に勧められるかというと、筆者にはためらいが残る。それは、K6-IIIをサポートするチップセットと価格の問題だ。

 Socket 7系のチップセットの成熟度は、まだIntel製のSlot 1系チップセットには及ばない。筆者自身もいくつかのビデオカードでの不調を経験しているし、いくつかの国産AGPビデオカードはSocket 7系マザーボードでの動作を保障していない。アイ・オー・データ機器のGA-VDB16の「AGP版のグラフィックボードで問題の多いSocket-7のマザーボード上でも安定動作!! 」というコピーが事実の一端を物語っている。事前の情報収集は必須で、トラブルを避けたい初心者や固いシステムを求める人には勧めにくい。

 また、連休前の秋葉原の実勢価格では、Pentium III 450MHzが49,500~58,500円なのに対し、登場したばかりK6-III/450は、ほぼ同じ57,800円。Pentium II 400MHzが29,700~36,800円に対し、K6-III/400は29,800~35,600円とこちらもほぼ同等である。一時AMDが堅持していた同クロックのIntel製CPUよりも25%以上安い価格設定という政策はすでにくずれている。

 さらに、5月中にもIntelのPentium III 550MHzの登場と全体の価格改定が予想され、AMD側もそれに価格面で対応すると考えられる。これから、K6-III/450を購入する場合は、それも頭に入れて置いた方がいいだろう。

[Text by 一ヶ谷兼乃]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp