第4回:僕がふだん外出先で使っているモバイル



 30を過ぎるとグッと体の疲れが芯に響くようになる、なんて話をよく耳にしながら、自分にだけはそんなことはないと理由もなく信じてきたが、どうも僕にもそういう時期がやってきたようだ。2週間もホテル住まいを続けていると、体も疲れ果てて日本に帰るのが恋しくなる。それで終わりかと思えば、数日間は辛い日々が継続するという、なんとも情けない体になってしまった。

 先週はちょっと方に肩を入れすぎた話をしてしまったのも、あるいはそうした自分自身への情けなさへのささやかな反抗かな? などと思いつつ、今週も締切日がやってきてしまった。予告したとおりに新通信デバイスをテストしようと意気込んでいたのだが、端末の入手が遅れたこともあり、ここは少し肩の力を抜いて、僕がふだん外出先でどんなモバイル運用をしているのかを紹介してみたい。



■ PCからスモールオブジェクトにシフトしてきた電子メール環境

 発表会に内覧会、編集者との打ち合わせにインタビュー記事のアポと、すべてのフリーライターとは言わないが、ニュースや動向ウォッチを押さえたり、取材をベースに活動したいと思っている僕の場合、執筆の中心時間帯は夜中。昼間はなにかしら外出している機会が多い。

 発表会の会場を見回してみると、ほとんどの記者は紙とボールペンでメモを取っているようだが、僕はここ数年、ほとんどのメモをPCで取ってきた。PCでメモを取っておけば、それをもとに記事の一部を起こすことができるし、何らかの覚書をPIMソフトに転記するのも楽。さらに言えば、秀丸のGREP機能などを使うことで過去のメモを一括検索できるというメリットがあるからだ。

 PCさえ持ち歩いていれば、どこでもメールをチェックできる上、スケジュールの参照も完璧。普段からノートPCで情報管理しておけば、データの同期で頭を悩ます必要もない。実際にはデスクトップPCや他ユーザ(といっても我が家の場合は秘書役の妻しかいないのだが)との連携を考え、その時々の流行サイクルに合わせてマイクロソフトのExchange ServerやロータスのNotes/Dominoでサーバとの同期を行なっているのだが、もし僕が他ユーザーとの連携の必要がない個人ユーザーならば、情報をノートPCに一元化するだろう。

 だが、これではまずい場合もある。インタビューのメモをノートPCで取っているとキーノイズが会話のリズムを崩すし、肝心のところでオフレコの話をしにくい。ペンと紙なら、ペンを机の上に置くことでオフレコをはっきりと意思表示できるのだが。特にエグゼクティブへのインタビューでは気を使う。読者の皆さんでも、取引先のお偉いさんの話をノートPCでメモするのは気が引けるだろう。

 そこでPC Watchで塩田紳二氏も紹介していたCrossPad XPをTPOに合わせて併用するようにしている。メモした全文を検索できるわけではないが、それでも普通のメモ帳を使うよりははるかにマシ。1日のほとんどをPCの前で過ごすデジタル人間にとっては、最高のメモ帳である。

 などと書いていると、ひっじょーに理路整然と自分の使い方に合わせてモノを選んでいるように読めるかもしれないが、実際には買ってしまってから運用をこじつけている、というのが正解かもしれない。PC一筋だった僕も、あるとき堰を切ったようにスモールオブジェクト(小型の情報機器)をコレクションしはじめてしまった。やっぱり、小さくて特定の目的で作られた機器は、PCよりも手軽に使えてしまうからだ。これには初心者も上級者もない。モバイルの達人だって、簡単で素早く目的を達成できるモノがあるなら、そっちのほうがいいのだ。

 CrossPad XPも、実際のところはまったくの衝動買いだったのだ。衝動買いして気に入ってしまうと、それを回りの人間に伝染させるのも僕の得意技(?)で、CrossPad XPは海外出張中にポパイで原稿を書いているSさんと元朝日新聞社のNさんに、瞬く間に伝染させてしまった。

 とまぁ、はた迷惑なデジモノ親父な僕なわけだが、部屋の中を見渡すと現役で使っているスモールオブジェクトだけでも、ザウルス・アイゲッティ、文字電話テガッキー、モノクロ版モバイルギアII(MC-R300)、64Kbps対応PHS端末パルディオ611Sと、まぁなかなか無駄な構成(先週購入したことを宣言したWorkPadはお仕事ではほとんど持ち歩いていないのでここに含んでいない。これもあわせると本当に無駄が多いかも)。

 これにモバイルPCとして使っているLet's NOTE S/21(恥ずかしめのゴールドモデル)、電源アダプタ不要のCD-ROMドライブKX-808AN、バッテリ駆動可能な小型プリンタのBJC-50vが加わってくる。なぜにテガッキー、モバイルギアII、PC、ザウルス・アイゲッティと非常に多くの電子メールを読めるデバイスがあるかというと、体力の衰えとともに(?)少しづつ軽く、小さい機器でメールチェックをしたいと思うようになったからだ。

 最近はPalmシリーズがヒットしてくれたおかげで、メーカー側がデータの同期に積極的に対応するようになり、複数機器でのデータ共有が比較的簡単にできるようになった。そこで、複数の機器をTPOに合わせて組み合わせるようになった。
 たとえば、外出先で本格的なPC上の作業が必要なさそうならば、モバイルギアIIと611Sだけで済ませたり、PCが必須の時にはPC+611S+テガッキー(もしくはザウルス・アイゲッティ)などの組み合わせで使うわけだ。



■ メール転送をもっと活用しよう

 ところで、テガッキーと言えばフツーは手書きでメッセージを交換するための道具だが、筆者の場合は電話機よりは見やすいページャのようにして使っている。いや、最初はフツーに手書きメールで使おうと思ったのだが、なにかもったいない気がしてきて、PメールDXを使い不在時の電子メールを転送することでメール内容をチェックしようと思ったわけだ。

 ところが、よく考えなくてもわかると思うが、611Sでも文字数は少なくなるが漢字のメールを受けることもできる。各種携帯電話もおおむね同じだ。別に文字電話である必要性はまったくない。う~ん、ちょっと失敗したかな? と思う今日この頃だが、運用方法そのものは忙しい人、連絡が途切れると寂しくて仕方ない人などに有効だ。

 電子メールクライアントのOutlook ExpressやEudora Proには、メッセージルールを使用して不在時のメールを別のところに転送することができる。この機能を使って、不在時に携帯電話やPHSにメールを転送するわけだ。なお、転送だと送信者が自分自身になってしまうため、できればEudora Proの回送機能を使うほうがいい。

 ただし、そのまま転送するだけではエラーとなる場合もある。DDIポケットの文字電話で利用できるPメールDX(1,000文字までの電子メールを使える簡易メール機能)の場合、制限文字数を超えるメールは制限を越える文字数は無視されるが、一部のサービスでは長すぎるメールが返信されてしまう場合もあるようだ。

 そこでお勧めしたいのがNSJが提供するEmCmサービスだ。EmCmサービスは、Web上で検索した情報を携帯電話やPHSに転送してくれるサービスだが、EmCmサービスに転送したメールを制限文字数まで切り捨ててから転送したり、制限文字数内で複数のメールに分割して転送したり、マイナス記号などで罫線を表現している部分を自動的に1文字だけにして、文字数を削減するフィルタといった、非常に便利なメール転送機能を利用できる。

 転送のオン/オフが曜日や時間帯ごとに指定することができるので、会社に届いた電子メールを常にEmCmにフォワードしておき、週末の昼間だけとか、出張予定の日だけ携帯電話やPHSに転送するといった運用も可能になる。

 ダイヤルアップ接続を行なっているユーザーは、この運用方法を使いにくいかもしれないが、数時間に1回だけ自動接続させるといった使い方をすれば、それなりに使える方法ではないだろうか。



■ 来週以降の予告

 本当はPCでどんな道具を使ってモバイルしやすくしているとか、海外モバイルのノウハウなどを紹介したかったのだがここで字数が尽きてしまった。この続きは、また機会を見て、ご紹介させていただくことにしたい。

 もっとも、モバイルの運用は人それぞれ。「本田さん、プロなのにもっと工夫はできないの?」という声もあるかもしれない。こういった運用も便利だよ、といった皆さんの工夫や、この連載に対する苦情があれば、masakazu_honda@yahoo.co.jpまでメールを送っていただきたい。すべてのメールに返事をすることはできないかもしれないが、面白い話が集まれば、まとめて連載の中でも紹介していきたいと思う。

 で、次回(5月11日)だが、噂のシャープ製PHS&PDCデュアル端末「ドッチーモ」を徹底的に使ってみることにしたい。僕はPDCの音はキライな上、価格的にも納得できない部分を感じているため、これまで携帯電話を使ってこなかった。PDCのままでは音質改善まで望めないだろうが、PHSとのデュアル化で、果たして欠点は埋められるのだろうか?

[Text by 本田雅一]


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