これまで放送時刻に縛られていたTVの見方が、今後10年で「永遠に」変わる――米調査会社Forrester Researchがこんな予測を出した。同社によれば、それは「パーソナルビデオレコーダ(PVR)」が普及するためだ。
PVRは、TVやCATVのセットトップボックス(STB)などの内部にハードディスクなどの記憶装置を備え、デジタルで多量の番組を録画しておける機能。現在、主要な家電メーカーがみな開発に取り組んでおり、今年末から製品が出始めて、2001年には24時間分の番組を貯めておける500ドル以下のPVR機が出るだろうとForresterでは予測する。
というと、単に容量の大きなビデオデッキ(VCR)のように聞こえるかもしれないが、そうではない。PVRはよりインテリジェントな機能を備えるからだ。
たとえばこんなことも可能になるかもしれない。PVRではTV上のEPG(電子番組ガイド)で好きな番組名をクリックしておくだけで番組録画を予約できるが、そのうちユーザーが好む番組の傾向をPVRが学習し、見たがりそうな番組を自動的に録画し始める。すると、ユーザーはもう録画の手間をかけず、EPGをクリックするだけで、放送時刻に関係なく番組を見ることができるようになる……。
Forresterでは、このPVRが10年後には米国家庭の5軒のうち4軒に普及。TV番組は「自分の放送ライブラリーをサーフィンして」、好きな時間に見るようになるだろうと予測する。また、こうしたTVの見方の変化により、視聴者はネットワークTVから、CATVや衛星放送が提供する広告のないプレミアムチャンネルへ移行すると見る。10年後には、TVのCMを見る人は50%近く落ち込むとまで予測している。もしこの予想のとおりになれば、ネットワーク放送局はガタガタだ。本当にそこまで変化するのか――とにかく大胆な予想だ。
一方、別の調査会社Strategis Groupは、2005年までにデジタルCATVの加入者が4,780万人に達し、CATV全加入者の70%を占めるようになるだろうという予測を発表した。特に今年と来年の2年間はデジタルCATVの加入者が倍々に増加するだろうという。TVのデジタル化は、少しも目を離せない、大きなうねりになりつつあるようだ。
【2005年までの米国のデジタルCATV加入者数予測】
西暦 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
加入者 | 1,300 | 3,327 | 8,119 | 14,464 | 22,131 | 29,986 | 38,863 | 47,800 |
□Personal Video Recorders Will Bring Fundamental Changes To Television Networks(Forrester Research)
http://www.forrester.com/ER/Press/Releases/Standard/0,1358,134,FF.html
□Digital Cable Unleashes More Options; Digital Opens a Whole New World for Cable Operators But Confuses Customers(The Strategis Group)
http://www.strategisgroup.com/press/pubs/digbox.html
これまで米国では日本に比べてカラーインクジェットプリンタが普及していなかった。それが変わりつつあるようだ。米市場調査会社InfoTrends Research Groupは、北米で2002年までにプリンタが1,200万台売れ、その大半がローエンドのインクジェットプリンタだろうとの予測を発表した。
日本では、オフィスには文字がくっきり印刷できるレーザープリンタ、家庭には安価でカラーが印刷できるインクジェットプリンタという棲み分けがある。しかし米国ではこれまで、コンシューマ市場でもけっこうレーザープリンタが目立ち、日本ほどはっきりした棲み分けがなかった。SOHOが多く、コンシューマといってもホームユースというよりオフィス的な使い方をする場合が多いし、需要の大きさからレーザープリンタが安かったからだ。
InfoTrendsによれば、それが変わるのはスキャナとデジカメの浸透のせいだという。ユーザーの多くはデジカメやスキャナと同時にプリンタを買っており、スキャナ購入者の60%、デジカメ購入者の3分の1以上がキャプチャしたイメージを出力するためにプリンタを買うと答えている。
米国では先に書いたようにSOHOが多いので、デジカメ・スキャナとプリンタの用途も、写真をクリスマスカードに印刷したりするばかりではない。デジタル写真や他の紙媒体からスキャナで取り入れたイメージなどを、カラーのブローシャやパンフレットの作成などに使いたいというニーズもけっこうある。それが、安く使いやすいデジカメやスキャナが出てきたことで購入につながり、同時にインクジェットプリンタの人気上昇につながろうとしているわけだ。
デジカメは、400ドル程度の製品が出回り始めてから、人気に火がついている。PCとデジカメのセット販売をしているショップもある。またスキャナはWindows 98リリース以来、USBポートに接続できるスキャナが出てきたことで、やはり人気を集め始めている。
でもやっぱり、米国でも、今後は子どもの写真の載った手作りクリスマスカードが、市販のクリスマスカードを駆逐していくのかも。
□Scanners and Digital Cameras to Generate Over $20 Billion in Printer and Supplies Revenue by 2002(infoTrends Research Group)
http://www.infotrends-rgi.com/press/1999033045723.html
2000年問題に対する米企業のCIO(情報担当最高責任者)の自信が少し改善された。
3月はじめのこのコラムで、2000年問題で自社の対応が間に合うかどうかについて、64%ものCIOたちが自信がないと答えた(CIO Magazineの調査結果)と紹介した。CIOMagazineがその後再びアンケートしたところ、自信があると答えた人が51%に上昇。つまりわからない、あるいは自信がないという人は49%と半数以下に減ったわけだ。CIOといえば、2000年問題の一番の当事者なわけだから、その彼らの自信が増したというのは安心材料といえるだろう。
だが、手放しでは喜べない。彼らは今度は2000年問題で訴訟される可能性を心配しているからだ。米国では2000年問題による訴訟の賠償額などを制限する法案が出されているが、60%のCIOがそれを支持している。CIOたちというのは慎重な性格なのか、それともやはり2000年問題の解決は彼らの手に余るほどのものなのか。
□CIOs GRAPPLE WITH DOUBLE STANDARD ON INTERNET PRIVACY REGULATIONS(CIO)
http://www.cio.com/marketing/newsbureau.html
[Text by 後藤貴子]