後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Microsoftが司法省と来週和解?



●和解の話し合いが来週火曜日から

 Microsoftが、司法省との“和解”に向けて動き始めた。「Microsoft, Government to Begin Settlement Negotiations Next Week」(The Wall Street Journal,3/25、有料サイト、http://www.wsj.com/から検索)の報道では、Microsoftを司法省とともに訴えている19州のひとつ、ニューメキシコ州の検事総長が来週火曜日からMicrosoftとの和解の話し合いが始まると明かしたという。

 また、話し合いに先立ち、Microsoftは政府に和解の提案を4ページの文書にまとめて送ったとも報じられている。非公開のこの文書の内容については、「Microsoft Offers to Settle Suit」(Washington Post,3/25)などいくつかのニュースがレポートしている。それによると、Microsoftは提案書の中で、2つの点について譲歩しているという。ひとつは、インターネットプロバイダに対して、ユーザーに供給するソフトとして、Microsoft製品(Internet Explorerなど)だけをほとんど排他的に提供するように要求している契約を見直すこと。もうひとつは、PCメーカーに対して、Windowsの起動画面のアイコンなどを変更しないことを要求していたのを、もっと自由度を認めることだという。


●新味の薄い和解提案

 この2点は、Microsoftに対する反トラスト法裁判で、訴状の中で問題点として突かれたポイントだ。しかし、これに関しては、すでにプロバイダやメーカーに対して、一部でMicrosoftが譲歩をしており、和解の条件としては、明らかに弱い。「Microsoft Offers Settlement Script, in Rough Draft」(The New York Times,3/25、登録が必要)によると、提案書では、それ以上突っ込んだ内容、例えば、MicrosoftがOSに対してどんな技術を統合できるのかという点については触れられていないという。また、裁判で問題となった、Microsoft製品の実際のOEM価格リストの公開や、マーケットアグリメントの公開についても、提案にはないという。そのため、Microsoftの市場支配力を抑制する効果に薄いとして、政府側の反応は、かなり冷淡だ。

 New York Timesをはじめ、多くの記事がカリフォルニア州の検事総長のコメントを引用しているが、それによると、これはミニマリスト(最低限に抑える主義者)のオープニングオファーで、受け入れられる内容にはほど遠いのだという。つまり、Microsoftがかなり譲歩しないと、受け入れられないという姿勢でいるわけだ。政府側のこの強気の発言の背景、Microsoft側に対して、現在、裁判で有利に立っているという自信があるようだ。


●和解の話し合いは物別れに?

 Microsoft裁判では、報道を見る限り、とくに後半にMicrosoft側の証人のミスが目立ち、Microsoft不利に傾いたようにみえる。裁判を直接傍聴したわけではないのではっきりとした意見は言えないが、公判開始前にささやかれていた、「Microsoftは連邦地方裁判所で負けても控訴裁判所で勝てるのでは」という予測も、怪しくなった可能性が高い。つまり、裁判報道を見る限り、Microsoft側が譲歩しないと和解には至らない状況にあるようだ。

 ところが、そこへMicrosoft側が出してきたのは、また、かわりばえのしない和解提案だったわけだ。もちろん、来週からの話し合いで、もっとMicrosoft側が譲歩する可能性もあることはある。しかし、出だしがこれなら、それほど発展は期待できないだろう。司法省の提訴前にも話し合いが持たれたが、Microsoftが譲歩せずに物別れに終わった。今回も、同様に物別れになる可能性が高いのではないだろうか。

 そもそも、おおもとのMicrosoftのビル・ゲイツ会長兼CEOに、それほど和解への熱意が見えない。「Microsoft settlement offer falls short」(San Jose Mercury News,3/24)によると、今週、ゲイツ氏は和解に関して「いま話し合いが進展中だ。私は(和解の)確率について予測することはできないが、和解が成立するといいと思う」と語ったという。これを読む限り、それほど和解に熱が入っているようには聞こえない。また、「Microsoft Offers to Settle Suit」(Washington Post,3/25)によると、ゲイツ氏は「(Microsoftの)原理原則は変えない」と語り、企業にとって革新の自由は重要だと繰り返したという。

 では、あまり譲歩するつもりがないのなら、なぜ、今、和解提案をしたのか。このあたりは、裁判戦術ということもあるのだろうが、不鮮明だ。このあたりは、来週、もっと突っ込んだ記事が出てきてから、読み解いてみたい。


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('99年3月26日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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