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IDFレポート 3:IntelがUSB 2.0と次々世代ATA規格のサポートを発表


 PCの中のストレージ機器はATA規格をさらに拡張して接続、PCの外のデバイスはUSBの拡張規格「USB 2.0」で接続する。Intelが、デスクトップPCのインターフェイスに関して、こんな将来像を開発者向けカンファレンス「Spring '99 Intel Developer Forum(IDF)」のパトリック・P・ゲルシンガー副社長兼ジェネラルマネージャ(Desktop Products Group)のキーノートスピーチの中で発表した。

 USB 2.0は、現行のUSB 1.1の10~20倍の帯域を実現する後継規格。USB 1.1とは下位互換性を保ち、USBだけでなくSCSIを含めた外部機器用インターフェイスを置き換える。ストレージ機器、スキャナ、プリンタ、カメラなどは、すべてこのUSB 2.0に接続するという。

 このように、PC外部の周辺機器との接続はUSB 2.0一本に絞る一方、PC内部は、ATA/66後継の次世代規格を推進する。Intelは、ATA/66への移行が'99年中盤から進み、2000年にはATA/66が浸透するとしているが、その後もATAPIプロトコルのインターフェイスのサポートを続ける。具体的には、周波数を向上させる一方ピン数を減らした、ATAベースの新規格を2000年の中盤から導入する。2005年まではATA系のインターフェイスでPC内部のハードディスクなどを接続するという。

 ここで当然浮かんでくる疑問は「IEEE-1394はどこへ行った?」だ。Intelは、1年前までは、IEEE-1394をPC内部外部のインターフェイスとしてある程度積極的に押していた。1年半前に開催されたFall '97 IDFの資料を見ると、将来のインターフェイスはIEEE-1394になるとなっている。1年前のSpring '98 IDFのキーノートスピーチでは、ATA/66のサポートを発表したが、その時も、ゲルシンガー副社長は、「将来を見ると、われわれのエンドゲームは1394bだ」と言っている。

 ところが、今回のIDFでは、PCの周辺機器とのインターフェイスには、IEEE-1394の名前は出てこない。IEEE-1394は、家電のオーディオやビジュアルとのコネクティビティを確保する「デジタルコンバージェンスパイプ」としてのみ位置づけられている。どう見ても、PCの標準インターフェイスとして積極的に推進するという姿勢ではない。IDFでの技術トラックでも、「1394インターフェイスは、少なくとも'99年中はチップセットに統合するプランはない」と説明した。

 IntelがIEEE-1394に冷めてしまった理由はいくつかあるが、とどめを刺したのはライセンス問題だ。業界関係者によると、IEEE-1394の基本部分の特許を握るApple Computerが、IEEE-1394のライセンス方針を変更。突然、1ポート当たり1ドルという、高額のライセンス料を取ると通告してきた。そのため、Intelは、IEEE-1394の積極的なサポートを、完全に取りやめたと言われている。

 では、IEEE-1394はIntelのチップセットには、これからも統合されないのだろうか。例えば、日本の家電メーカーが、Appleにライセンス条件を緩和するように働きかけているというウワサもある。Appleがライセンス料を引き下げたら、どうなるのか。それに対して、IntelのPaul Otelliniエグゼクティブ副社長兼ジェネラルマネージャ(Intel Architecture Business Group)は、次のように答えている。

「家電メーカーがAppleに働きかけているという話は私も聞いている。それはうれしく思っている」
「しかし、ライセンス料はたしかに一因だが、それだけではなく、コストや必要性、そうした要素を総合的に見て、チップセットへの統合は判断している。現実問題として、PCの周辺機器でIEEE-1394を備えるものはほとんどない。1394で接続できるのは、ビデオカメラなどの家電だ。そして、これらのデジタル家電の普及は、日本と米国で状況がぜんぜん違う。例えば、日本では、ビデオカメラにIEEE-1394インターフェイスがついている製品が多いが、米国ではそんなカメラはほとんど普及していない」

 じつは、IntelはIEEE-1394に関しては、この1年半、どんどん立場を後退させてきている。それは、ライセンス料だけが問題ではないというOtellini氏の言葉を裏付けている。

 Intelは、もともと440BXのサウスブリッジチップの拡張版でIEEE-1394をサポートする予定だったが、その計画を次のチップセットIntel 820(Camino)にまで後退させた。そして、最近ではチップセットのロードマップからIEEE-1394サポートという言葉は消えていると、OEMメーカーは口を揃える。つまり、ライセンス料問題が出る前から、IntelはIEEE 1394に対して冷めていたのだ。

 このあたりの事情に関しては、まだわからないことが多いので、取材を重ねてからコラムにしたい。いずれにせよ。このインターフェイス回りの状況は、今後もかなり動きがありそうなので、要チェックだろう。

 このほか、Intelは、サーバー向けインターフェイスのロードマップも発表。Intelが推進する次世代サーバー向けのI/O仕様「NGIO(Next Generation I/O)」をPCIの後継規格と位置づけ、2002年までに急速に浸透。PCI-Xは各種PCIとNGIOへの移行の間のニッチに止まるという流れを示した。

 また、メモリでは、Direct RDRAMへの移行の開始が後ろへずれ込んだことを公式に認めた。しかし、依然として2000年中盤までにDirect RDRAMへの移行がパフォーマンスデスクトップでは完了するというロードマップは崩していない。



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('99年2月24日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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