元麻布春男の週刊PCホットライン

同時進行連載:リビングルームPCが欲しい・その2



■リビングルームPCは、要求仕様が家族によって違う

 前回、唐突に「リビングルームPCが欲しい」とブチ上げた?ところ、多くの読者から反響があった。大手メーカー製の同様なコンセプトのPCが売れているという話を聞いたことがなかったため、正直驚いている。こうした反響の多くには、それぞれの読者が実現したリビングルームPCの構成が書かれており、それぞれのニーズに基づいた工夫(もちろん、参考になるものも多く含まれていた。感謝)が見られた。それぞれの構成を見て、間違いなく言えることは、一口にリビングルームPCといっても、それぞれの家庭ごとに固有の嗜好がある上、家族構成(たとえばPCの操作が難しい幼児がいるか、など)によっても求められる機能が異なる、ということだ。

 たとえば、リビングルームPCにホームサーバ機能を求めるかどうかにしても、わが家のようにすでにサーバが別に存在する環境なら不要だが、一般的な家庭なら兼用するというのも1つの考えだ。ただ、この場合リビングルームのPCが24時間運転になり、常時騒音を撒き散らすことを我慢せねばならなくなるだろう(それを防ぐためにノートPCをリビングルームPCにすると、拡張性が犠牲になる)。また、リビングルームPCにメールサーバのような機能を持たせた場合、純粋なメールサーバ(あるいはメールゲートウェイ)として利用する(実際にメールの読み書きをするのは各人のクライアントPC)のならともかく、リビングルームPC上でみんながメールを読むというのは、おそらく難しい。

 もちろんここでいう「難しさ」とは技術的なことではない。年頃の子供がいたとして、家族が集まるリビングで友人からの(あるいは彼氏/彼女からの)メールを読むことなど、おおよそあり得ないだろう、ということだ。その点では、父親が管理者をつとめるメールサーバでは、メールのセキュリティという点で、信頼されない可能性もある(かといって、メールを暗号化すれば、家庭内によけいな心配のタネを増えすだけだろう)。仮に夫婦であっても、メールは別にしたい、相手に読まれたくないということもあるハズだ。小さな子供に電子メールをおぼえさせたい、というような場合を除いて、リビングルームPCは通信端末にはなれないのではなかろうか。通信といっても、Webなど限りなく放送に近いサービスの端末が限界ではないかと思う(このあたり、家族構成の影響が大きい)。

■ディスプレイで見るか、テレビで見るか

 また、別の読者からはTV受像機では、文字を読むのがどうしても辛いから、TVの代わりにPCディスプレイをリビングルームにおくことにした、という意見が寄せられた。実は、筆者もこのアイデアを検討したのだが、やはりTV受像機を使いたい、という結論に達した。最大の理由は、PCディスプレイでは小さすぎる、ということである。仕事柄筆者は、PC用の21インチクラスディスプレイだけで手元に3台持っている。そのうちの1台をリビングルームに置くことは可能だが、筆者がリビングルームに求めるのは最低でも25インチ(今使っているTV)の大きさであり、できれば29インチ(設置スペースさえ許せばそれ以上)にしたいと考えている。この大きさをPCディスプレイに求めることは、金額的に耐えられない。

 仮に画質の問題がなかったとしても、21インチではDVDの迫力が減少してしまう。また、PCディスプレイでみるDVDは、解像度に問題はないものの、色乗りや色のダイナミックレンジという点で、TV受像機に敵わないように思う(どうも平面的な画になる印象が強い)。結局、DVD-VideoタイトルがTV受像機を前提にマスタリング/オーサリングされている以上、おそらくこれはどうしようもない問題ではないかと考える。筆者の下した結論は、PCディスプレイは数10cmの距離で使うもの、1m以上の距離から使うのはTV受像機、ということである。

 TV受像機で文字を読むのが辛いのは分かっているが、それならVGAを入力可能なTVはどうか、という意見も寄せられた。実は、これも検討したのだが、現時点でVGA入力可能なのは、ハイビジョン対応機のみ、というのが気に入らない。ハイビジョン(MUSE)というフォーマットの将来性が危ぶまれているのに、高い金額を支出することには、かなり抵抗がある。しかも、ハイビジョン対応機がサポートするのは、640×480ドットの標準VGA解像度のみである。16:9の横長ディスプレイのくせに、4:3の解像度しかサポートしていないというのは、自己矛盾もはなはだしい。せめて、INFファイルを用意するなり、ハイビジョンTV受像機のオプションとしてPCIやAGPの専用ディスプレイカードを用意するくらいのことをしてくれないと悲しすぎる。

 ハイビジョンTV受像機が横長であることは、MUSEというフォーマットが横長であるため、その必然性は認める(フォーマットそのものの良し悪しは別にして)。理解できないのは、NTSCでありながら16:9のCRTを採用した、いわゆるワイドTVだ。上でリビングルームに望ましいディスプレイの大きさとして、25インチとか29インチと書いたのは、いわゆるワイドTVを買うつもりがない、ということを示している。そもそもNTSCのフォーマットが4:3なのに、なぜわざわざ左右に引き延ばさなくてはならないのか、筆者は理解に苦しむ。と、話が脱線してしまったが、4:3でもっと大きなTV受像機を買うことは、現在検討中であるものの、PCディスプレイ、ハイビジョンTV受像機等は考えていない。リビングルームPCで文字を読むことは、極力避けるつもりである。とはいえ結局は、これも嗜好や家族構成が影響する問題であり、筆者と異なる結論を下す人がいても、全く不思議ではない。こうしてみると、リビングルームPCこそ、BTOで各家庭ごとにチューニングしなければ売れない代物のように思われる。出来合いのリビングルームPCが売れないのも、もっともかもしれない。

■DVD-Videoはハードウェアデコード、CPUはCeleron 300Aに決定

 今回は、あまり話が前に進まなかったが、最後に1つだけ、CPUを何にするか、ということを決めて締めくくりたい。リビングルームPCが欲しいとブチ上げたものの、予算が無尽蔵にあるわけではない。極力、手持ちのパーツを流用したいのが本音だ。現時点で、手元にあるプロセッサのうち余っているもの(特定の用途から外れているもの)は、Celeron 300A MHzとPentium II 350MHzの2つ。どちらかを使うしかない。

 もし、筆者がリビングルームPCでゲームやビデオのキャプチャ/編集をしたいのなら、2つのうちでCPUパワーが高い方(Pentium II 350MHz)を選ぶのが必然だ。だが、筆者はリビングルームPCで、こうしたアプリケーションを利用するつもりがない。PCゲームの多くは、PCディスプレイを前提に作られたものがほとんどで、多かれ少なかれ文字を読まねばならない(ここでいう文字には、フライトシミュレータ等の計器盤やヘッドアップディスプレイも含まれる)。PCゲームは、仕事場のマシンでやるのが一番である。

 ビデオのキャプチャ/編集についても同様である。動画を扱うには、プロセッサ性能だけでなく、大容量で高速なハードディスク(うるさく発熱量が多い)が必要になる。そうしたハードディスクをリビングルームPCに入れたら、騒音の面で辛い。ここでいう騒音には、ハードディスクのノイズだけでなく、高速なハードディスクの冷却のためのファンのノイズも含まれる。結局、ビデオのキャプチャ/編集がやりたければ(あまりその必要を感じたことはないが)、仕事場に専用のマシン(AVワークステーション?)を用意するほうがベターだろう、というのが筆者の結論である(リビングルームPCでも、TV画面の静止画キャプチャくらいはできるようにしたいが)。もちろんこの結論には、筆者が仕事場とリビングが数メートルの距離にある在宅勤務者である、という事情も大きく影響している。

 もう1つ、CPU選びで考慮したのは、DVD-Videoの再生である。すでにリビングルームには、民生用のDVDプレーヤーがあるが、リビングルームPCにもDVD-Videoの再生機能を持たせるつもりだ。問題は、MPEG2のデコードをハードウェアでやるかソフトウェアでやるかによって、CPUに求められる能力が変わる、ということだ。つまりハードウェアデコーダならCeleron、ソフトウェアならPentium IIということになる。だが、ほとんどのハードウェアデコーダがNTSC出力を備えているのに対し、ソフトウェアデコーダの場合NTSC出力はグラフィックスカード依存になる。グラフィックスカードのNTSC出力の品質を考えると、ハードウェアデコーダを使いNTSC出力をグラフィックスカードから分離した方が、ベターという結論を下した(ドルビーデジタルの出力も、ハードウェアデコーダなら簡単に取り出せる)。

 と、以上のような経緯から、今回はとりあえずCeleron 300A MHzでシステムを組んでみることにした。次回は、その他のコンポーネントについて検討しよう。

[Text by 元麻布春男]


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