後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Windows 2000は2000年2月出荷に!?-入り乱れる各サイト報道



●Windows 2000は本当に2000年のWindowsになるのか?

 MicrosoftがWindows NT 5.0に「Windows 2000」という名前をつけた時から、業界雀たちは「これは、この次期OSの発売が2000年にずれ込んでも大丈夫なようにという布石ではないのか」とウワサしてきた。そして、先週末から今週にかけて、業界は、まさにこのジョークが現実になるのではというニュースで沸きかえった。Windows2000の出荷が、2000年2月にずれ込むのでは、という報道が流れてきたのだ。

 ことの起こりは、Windows 2000の“最終ベータ版”のはずの「Beta 3」の出荷がまた遅れ、4月に入ることが確実になったことだ。各ニュースサイトの報道によると、Beta 3の遅れはMicrosoftが公式に認めたもので、それを火元に、業界情報やアナリストの推測を交えて、さまざまなニュースが飛び交っている。では、本当に、Windows2000は、2000年のOSになってしまうのだろうか?

 この件に関しては、各ニュースサイトで、報道にかなりの違いがある。まず、新聞系のサイトは、非常にあっさりとしている。たとえば、「Microsoft Says Windows2000 Beta Will Be Shipped Two Weeks Late」(THE WALL STREET JOURNAL,'99/1/18、有料サイト http://www.wsj.com/ から検索)は、Microsoftが最終ベータテストの開始を2週間遅らせたと報道。また、Microsoftへの取材をもとに、Windows 2000は年末までに製品が出荷されるが、レイバーデイ(9月第1月曜日)より前ではないと伝えている。

 「Another delay for Windows 2000」(CNET NEWS.COM,'99/1/15)も、ほぼ同じ内容の記事だ。こちらは、Windows NT Serverのプロダクトマネージャからコメントを取り、Beta 3の目標は4月の第3週だと伝えている。


●Windows NT 4.5が中継ぎで登場する?

 ここまでの報道を額面通り受け取るなら、Windows 2000 Beta 3が4月後半、製品出荷は第3四半期の終わりか第4四半期のスケジュールで、Microsoftの言っている年内という約束は果たせることになる。しかし、そこはスケジュールが何度も遅れることで有名なMicrosoftのこと、懐疑的な見方をするニュースサイトも多い。  今回、その最右翼はInfoworldで、同誌のサイトの記事「Waiting for Windows 2000:Possible interim NT release may offset concerns」(InfoWorld,'99/1/15)は、Windows 2000の出荷は2000年2月になるという大スクープを載せている。これは、複数の情報筋が確認したスケジュールだという。さらに、同記事は、Microsoftがそれまで待ちきれないユーザーのために、Windows NT 4.0との中継ぎのバージョンを出すとまで言っている。しかも、そのバージョンの名前は、Windows NT 4.5あるいはNT 5.0という名前になるのではという、まことしやかな観測つきだ。

 この記事はなかなか強烈で、Windows 2000の今回の遅れ報道の中でもいちばん目立っている。また、この記事は、Windows 2000が遅れている原因はActive DirectoryとIntelliMirror、それと64ビットコードが徐々に加えられていることだと指摘している。これは、少しでもWindows 2000を知っている人には、さもありなんと思われる部分で、ここがネックだというのは信憑性が高い。

●まだ薄い大幅遅れ情報

 もっとも、ここまでの大胆な記事を作っているのはInfoWorldなどIDG系だけだ。この業界では、ひとつのニュースサイトがスクープを飛ばすと、すぐにそれを引用して追加取材をかけた記事を他サイトも載せるというパターンになる。ところが、今回はまだそれもないところを見ると、2月説に確信を持てる材料を他のサイトはまだ握っていないことになる。また、THE WALL STREET JOURNALも、今回の記事は、Microsoft関連で張り付いているMicrosoft番記者の署名記事ではない。これは、署名で書ける記者が、まだ材料を集め切れていないことを意味するのかも知れない。  また、表のマスコミにあまり出てこない部分でも、それほど確実な情報は流れていないようだ。たとえば、さまざまなソフトのベータテスト情報を集めて、このところ人気のBetaNews.COMでは「Windows 2000 Beta 3 To Ship Late March」('99/1/17)と、ヨーロッパ各国でMicrosoftがWindows 2000 Beta 3のプレビューを3月から開始するとアナウンスしたと報じているだけだ。
●Windows 2000に吹く逆風

 こうした不確かな状況にも関わらず、InfoWorldの今回のような記事がすかさず出てくるのは、理由がある。それは、かなり多くの業界の人間が、じつは、Windows2000がまだ遅れるのでは、と感じているということだ。この1年半、ソフト業界やマスコミの人間とWindows 2000について話をする際に必ず出てきたのは、「ぜったいスケジュールは遅れるよ」というセリフだった。これは、ベータ版の出来もあるだろうが、毎回ずるずると遅れるMicrosoftのスケジュールや、大げさなマーケティング戦略につきあわされていることに対する反感もあるだろう。

 そして、そんな業界人の気持ちを素直に表しているコラムが「Delayed! Windows 2000 Slips Again」(ZDNet AnchorDesk,'99/1/18)だ。このコラムを書いているJesse Berst氏は、これまでにも再三、Windows 2000が公約をすべて期日までに果たすことはできないと書いてきた。だから、今回はそれみたことかと意気込んでいるわけだ。

 ここに見えるのは、Microsoftのあいまいなスケジュールと大げさなマーケティング戦略が、マスコミや業界の中で、Microsoft不信やMicrosoftのつまずきへの期待を産んでいるという構図だ。Berst氏は、ユーザーがやるべきことはLinuxへ切り替えることだと述べているが、Linuxへの追い風はまさしくこうした方向から来ている。

 もし本当に、Windows 2000が2000年にずれ込むと、サーバーOSとしてのWindowsが、Linuxに打倒されるというシナリオも、現実味を帯びてくるかもしれない。


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('99年1月19日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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