プロカメラマン山田久美夫の

CES展示会場 DV & 記録メディアレポート

会期:'99年1月7日~1月10日 開催(現地時間)
会場:ラスベガス LasVegas Convention Center、他

 今回のCESでは、開催初日にソニーが「Digital8」を発表。さらにDVDビデオカメラやMPEGカメラなど、数多くの新世代デジタルムービーが出揃った、記念すべきCESとなった。

 デジタルムービーの世界は、アナログビデオがきわめて安価な米国では、庶民にとってはまだまだ高嶺の花だが、今後急速な進化をみせ、HDTVやDTV、ホームサーバー、デジタルカメラなどとともに、デジタル家電の代表的な製品になる。さらに、今後、これらのデジタル家電システムとの連携を密にすることで、新たな市場が生まれる可能性が高く、その点でも注目すべきカテゴリーといえる。


●関心は高いが反応は今ひとつの「Digital8」

 今回のCESでのひとつの目玉となったのが、ソニーが発表した「Digital8」だ。これは従来の8mmビデオテープに動画をデジタル記録するもの。そのため、MiniDVテープよりも遙かに安価な8mmビデオテープにデジタル記録できるうえ、従来の8mmビデオユーザーも切り替えなしに再生できるため、買い換えがしやすいモデルといえる。


 もちろん、ソニーブースには数十台の「Digital8」ビデオカメラがずらりと並べられており、かなりの人だかりになっていた。とはいえ、外見はこれまでの8mmビデオと極端に違うわけではなく、言われないとわからないレベルだ。デジタルとはいえ、格別高級感があるわけでも、スタイリッシュでも、コンパクトでもない。

 まあ、ブースでのデモでデジタルだとわかるのは、数台に一台、iLink(IEEE-1394)でVAIOノートと接続していることくらい。さぞかし派手な演出で「Digital8」をアピールしているのだろうと思っていた私には、ちょっと意外なくらい自然な展示だった。

 来場者側も、会場で話題になっているモデルだけに、関心が高いものの、従来のDVカメラのように、細部をなめるように見る人やいじくり回す人もおらず、「ああ、これがDigital8かあ~」程度の反応にみえた。

 もちろん、技術面で言えば、さほど目新しいものではない。むしろ、遅すぎたという感じさえあるほどだ。また、この「Digital8」に関しては、いろいろな見方があり、他社がこの規格の商品を投入するのか興味深いところだが、会期中には他社からの具体的は発表はなかったようだ。

 では、なぜソニーが今回の、今年のCESをターゲットに「Digital8」の発表を行なったのか? おそらく、その答えは今後のソニーの展開で明らかになると思われるが、個人的には今年が最初で最後のチャンスだったようなが気がした。

 ここ数年、CESの中心になっているのはデジタル家電だが、いずれの製品も高価であり、発表当初いわれたようなドラスティックな低価格化と、それに伴う一般家庭への普及はなかった。これはDVも同じことだ。

 DVが大半になっている日本と違い、米国市場は、まだほとんどがアナログの8mmビデオ。それも1,000ドル以下のモデルが主流だ。この傾向はDV登場後も変わることなく続いており、デジタルへの移行を推進したい各社の思惑に反した結果になっている。

 つまり、その頑なな米国市場をデジタル化するための切り札が、アナログ8mmビデオ+αで購入できる、今回の「Digital8」というわけだ。さらに、その普及なくてしては、せっかくのDVD-Rも、大容量HDD内蔵のセットトップボックスも、HDTVもDTVといったあらゆるデジタル家電のスムーズなシステム展開ができなくなってしまう可能性が高い。そして、今回の「Digital 8」は、これらが開花する2000年を目前に痺れを切らしたソニーが仕掛けた、デジタル家電普及への切り札なのではないだろうか。

 もちろん、数年先にはDVDビデオカメラを初めとしたディスクメディアによるデジタルビデオが登場するわけだが、その時代になっても、やはりコストに厳しい米国という大国は、よほどのメリットがない限り、そう簡単に次の世代に移行しないだろう。ソニーはそう読んで今回の「Digital 8」を登場させたとすれば、それは米国市場の特殊性を熟知している同社ならではの戦略といえそうだ。

□関連記事
【1月7日】ソニー、Hi8テープにデジタル記録ができるビデオカメラ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990107/sony.htm


●DVDビデオカメラのプロトタイプを出品した松下



 昨年のCESでは、日立がコンセプトモデルとしてDVD採用のデジタルビデオを参考出品し、話題になった。そして今回は、松下がDVD搭載のカムコーダーのプロトタイプを参考出品していた。

 このモデルは、以前、「ビジネスシヨウ'97 TOKYO」で出品されたモデルの進化系であり、松下の考えるDVDカムコーダーのデザインスタイルはこのあたりに固まってきたようだ。同時にDVD-RAMを採用したDVDレコーダーのプロトタイプも出展されていた。

 これらはいずれも、DVD-RAMの説明スペースに出展されていたもので、すぐに商品化されるという種類のものではなく、あくまでもDVD-RAMの可能性の一端を現わす展示にとどまっている。そろそろ、他社に先駆けて、より具体的な動きを見せてもいい頃なのだが。

□関連記事
【'97年5月14日】「メーカーのDVDへの期待は大きく、将来はDVD-RAM搭載のデジタルビデオカメラも」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970514/dvd.htm


●日立は「microdrive」で次期MPEGカメラ開発!?


 日立は今回、日本ではかなり以前から発売されているMPEGカメラ「MP-EG10」の米国版「M2」を新製品として発表していた。

 さらに、ブースではIBMの340MB超小型HDD「microdrive」の単体デモまで行なわれており、搭載を真剣に考えているようだ。説明にあたっている同社の開発スタッフに聞くと、すでに「M2」では変換アダプターを介して「microdrive」での撮影ができるという。

 そうなると、このMPEGカメラはかなりの小型化ができそうだが、実際には消費電力と録画時間の関係もあって、バッテリーを小型化することが難しく、ドラスティックなコンパクト化は難しいという。Type3のHDDの部分がコンパクトになれば縦方向は縮まりそうだが、「米国では現状のサイズが大きいという声はない」という。


●「microdrive」のアプリケーションを一堂に展示したIBM

 今回のCESで、記録デバイス系でもっとも注目を集めていたのが、IBMの「microdrive」だ。とくにクラリオンがAuto PCに標準搭載のCFカードスロットルで「microdrive」をサポートすることを表明したことでも話題となっていた。



 展示会場とは別のミーティングルームにある小さなブースには、「microdrive」関連のものが一堂に集められており、CF Type2という規格の説明はもちろん、対応する各種カードリーダー、動作可能なアプリケーションも少ないとはいえ展示されていた。

 デジタルカメラでは「キヤノン Power-shot Pro70」があり、また「日立 M2」では「microdrive」を使って撮影されたMPEGムービーを見ることができた。

 なお、発売時期や価格についての詳細はまだ明かされておらず、発売は今年半ば、価格は半導体メモリー系よりもメガ単価は安くなる(半分程度?)という情報しかなかった。

□日本IBM、クラリオンのニュースリリース
http://www.ibmlink.japan.ibm.co.jp/cgi-bin/PREScgiDep.pl?docid=PRES1197&caps=N&perc=90&keywords=


●ノート用HiFDドライブを出品したソニー

 記録媒体系では、やはりようやく米国で販売が開始された「HiFD」を忘れるわけにはゆかない。すでに製品化されたせいか、ソニーブースでは比較的簡単な展示だったが、今回新たにノートPCに内蔵できるHiFDドライブが参考出品されていた。サイズ的には大きく見えるが、かなり薄型でスペースはさほど取らないようだ。残念ながら、端子形状を見ることはできなかったが、USBへの変換ケーブルも出展されており、このケーブルを使うことでUSBドライブとして利用することができるようだ。説明員はいずれもプロトタイプといっていたが、完成度が高そうで、発売間近を感じさせる仕上がりだった。


 また、昨秋のCOMDEX/FALLで大々的にアピールしていた「メモリースティック」だが、今回は意外なほど静かな出展だったのは意外。プロトタイプも数種類のみが展示されている程度で、近くで見られるのはメモリースティック対応のデジタル写真立てのみという寂しいもの。だが今回は、サポートメーカーが目立つようにアピールされており、そこには「CASIO」「OLYMPUS」「SHARP」「SANYO」「FUJITSU」「AIWA」などが名を連ねていた。




□1999 International Consumer Electronics Show
http://www.cesweb.org/

('99年1月11日)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp