■年末特別企画■

AMUAMUのアキバの楽屋から

~'98 年末スペシャルバージョン~

1998年の秋葉原ショップ事情を振りかえって


秋葉原 ■ 市場の動きは激しく……

 '98年もわずかとなりましたが、日本だけでなく世界的にパソコンの市場は急激に変化し、秋葉原をはじめパソコン市場は大変な状況になってきました。数々の商品の開発ペースや新製品の発売ペースは、これまで見たことが無いほど急激なものです。ユーザーどころかショップも、そしてメーカーの開発・営業の方さえも付いていくのが大変ではないでしょうか? そういう筆者も付いていくのに必死です(これが長い休載の言い訳です[苦笑])。そんな1年をパーツ別に振りかえってみたいと思います。


■ CPU ■
AMD K6-2の大ブームとCeleronブーム

 かなり過去のように感じるのですが、今年は100MHzのバスクロックがはじめて登場した年です。CPUクロックとパフォーマンスは比例して劇的に上昇し、年初に333MHzが最大だったCPUクロックは450MHzまできました。CPUパフォーマンスの上昇と共に、価格は劇的と言えるぐらい下落の一途をたどっています。ユーザーの立場で見れば大きな利益なのかもしれませんが、ショップの立場で見ればちょっとつらいです。価格の大幅下落の大きな原因は、CPU業界において過去最大のトピックスになり歴史にも残るだろうAMD K6-2の登場ではないかと思われます。

 AMD K6-2 with 3DNow!テクノロジ……このCPUはその衝撃的なデビューと共に、秋葉原でも一気にブームを巻き起こしました。パソコン市場全体でみた場合は、NECや富士通などの大手メーカー製パソコンがあるため、まだまだシェアは低いですが、パーツショップだけで見た場合、一時期には半分近く、もしくはそれ以上の販売シェアを誇ったのではないかと思われます。その後、一時期のブームは去りましたが、安定した人気を誇り、Intelのシェアを食っているのは確かです。秋葉原のパーツショップにとって一番大きな出来事だと思います(Windows 98以上ではないかな?)。
 しかしこんな状況で、Intelが黙っているわけも無く、低価格なCPUであるCeleronを発売し、こちらも人気が出ました。人気の秘密はコストパフォーマンスの良さとオーバークロックではないかと思います。オーバークロック耐性の強さは、保証外のこととわかっていても、手を出す人は後をたたず、パソコン雑誌も挙って取り上げていました。そして、そのブームはいまだに続いており、この12月に一番売れたCPUではないかと思われます。

 世界的なCPUの市場でIntelとAMDが争うため、価格の下落はさらに加速度を増しました。Intelが予告無しの価格改定を行なうという、今までに無い事態まで発生しており、ショップは苦悩の嵐です。新製品等の発表時期も二転三転し、混迷を極めています。隠れたところではIDT WinChip2の人気が急上昇しているとかあるのですが、影が薄くなってしまいました。


■ メモリ ■
メモリ価格は下がるだけではない

 昨年の年末に筆者はこの誌面に下のように書きました。

「メモリの価格は急落しています。もっともメモリに関しては、値段が下がるのが当たり前という感覚になっているのかもしれません」
(AMUAMUの「アキバの楽屋から」 特別編 ~1997年の秋葉原売れ筋商品・話題の商品~)

 ところがどうした、今年は決して価格が下がるというわけではありませんでした。EDO等のSIMMに関しては今年の初めと今とではほとんど変わらないどころか、値上がりしています。年明け最初の話題はメモリの値上がりから始まったぐらいですから、振りかえってみると年明けから'98年を予感させる出来事があったわけです。

 SDRAMは100MHz対応のPC-100が出てきて、一気に主流となりました。ボリュームが大きくなった初夏の一時期に比べても価格はほとんど変わりません。たとえばSDRAM PC-100 128MBで見ると6月の中ごろの価格が2万円ぐらいでしたが、この年末もちょうど2万円ぐらいです。発売されたばかりの2月、3月ぐらいと比べるとSDRAMの価格は5分の1になっているので下落しているというのは確かですけど、一段落したあとは多少の上下はありますがあまり変わっていません。
 しかし、ショップにとっては多少の上下が非常に大変なことです。安い価格がつけられなければなんだかんだ言いながらもユーザーは離れていってしまいます。1,000円価格が動けばそこに、損や得が動きます。メモリ価格は株価や為替よりさらに予期が難しく、相場の様相をさらに深めてきました。ショップにとってもメモリの仕入れは、過去とは比べようもなく難しい状況となってきています。
 また、主流のメモリ容量は一気に128MBに移ってきました。これはWindows 98の発売が大きく起因していると思われます。メモリはショップにとって新製品の登場をはじめ価格の変動など頭が痛い商品です。


■ ビデオカード ■
発売の速さが勝負の分かれ目

 考えると今年の初めにヒットしていたのはVoodoo“1”とRIVA 128でした。そして、今やVoodoo“2”も人気が衰えてきています。相変わらずビデオカードの業界の変化は激しいです。ですが、人気のビデオチップを作っているメーカーは変わりません。ここらへんは安泰というところです。NVIDIAはRIVA 128→RIVA TNTと移り、1年間トップの座を守っています(途中にRIVA 128ZXという失敗はありましたが)。MatroxはMillennium II→Millennium G200と移り、安定した人気を博しています。3DfxもVoodoo1→Voodoo2→Voodoo Bansheeと順調に新製品を発売し、高い3D性能は1年間通してゲームユーザーを中心に人気を集めました。そういえば、Intel i740を搭載したビデオカードは春から夏にかけては大ブームが来ていたのですが、今やほとんど話題に出てきません。ビデオチップの流行り廃りは非常に激しいものです。
 ビデオカードのメモリ容量は高いもので8MB、安いもので4MBだったのが、安いものでも16MBクラスが当たり前どころか、逆に16MB搭載していないと売れないという現象が起きました。

 ビデオカードのメーカー別で見ると、今年に入って急激にシェアを伸ばしていると思われるのがサウンドカードで圧倒的シェアを誇るCreative Mediaです。ビデオチップメーカーと密なコネクションを作ったのか、新製品を最速レベルのタイミングで発売しています。Voodoo2、RIVA TNT、Voodoo Bansheeと今年発売されたビックタイトルのチップ全てにおいて秋葉原へ1番乗りを果たしています。さらに価格も安く、ユーザーにとって目が離せないメーカーに一躍踊り出ました。メーカーの方いわく「新製品の投入と販売シェアの両方のトップを奪い、維持する」と言っていました。この一年で一番注目度の高かったメーカーといえます。


秋葉原 ■ HDD ■
IBMの大躍進

 今年の後半、今まで決して人気が高くなかったIBMが大躍進を果たしました。昨年はSCSIタイプのHDDが価格攻勢で人気が高まり、今年はIDEのDTTAシリーズで発売した7,200回転のHDDが始まりで、その後5,400回転の普及モデルまで人気が爆発しました。これはその性能の良さと7,200回転というところが秋葉原のユーザーが求めているものと合致したと思われます。また、5,400回転もその性能の良さと品質の良さから年末には一気にトップセールスを記録するアイテムとなっています。人気が集中したことによりショップ間の価格競争は激化し、ショップは価格設定に四苦八苦する日々が続いています。

 また、容量の主流は今年の初めは4.3GBだったのが、この年末には8GB、そして10GBが主流となりつつあります。6GBはブームが来る前に飛び越えてしまった感もあります。ここらもWindows 98の発売が牽引材料となっているのかもしれません。逆に2GB前後のHDDは入手が困難になっています。SCSI HDDでは1万回転Seagate Cheetahシリーズの人気が高く、速さに関してのユーザーの嗅覚はすごいものを感じます。


■ マザーボード ■
オーバークロックへの対応と拡張性が重要

 CPUのところでも取り上げましたが、今年は昨年に増してオーバークロックの話題が増えました。マザーボードの人気はこのオーバークロックへの対応度で示されるといっても過言ではない状況になってきた年でした。外部クロックをどこまで設定できるかや、CPUの倍率固定を外すことが出来るかなど話題となる機能はたくさんあり、その機能がついてきたマザーボードが出るたびに、売れ筋のマザーボードが変わっていくという様相です(ちなみにオーバークロックは保証外ですのでお間違いないように!)。また、PCIバスが4本あるか5本あるかで売れ行きがかなり変わるなど、そのほかの拡張性も重視されてきています。ASUSのように安定した人気を誇るものもありますが、それでも市場の流れには左右される場面も見かけました。また、AMD K6-2への対応の速さやIntel 440BXの登場への対応など、数々の材料の中で人気メーカーが変わっていきます。そして年末最後にはSocket 370のマザーボードも登場してきました。

 価格の下落も激しく、新興の無名メーカーは必ずといって良いほど、異常に安い値段で秋葉原に殴り込みをかけてきます。そういうメーカーに一時は市場がかき混ぜられ、その後有名メーカーの価格が下がって落ち着くという流れが決まったような気がします。現れては消えていったメーカーも少なくありません。また、一時期よりメーカーの数も減ったような気がします。秋葉原で安定した人気を誇るのは難しいことだと感じるところです。ASUSが安定した人気を誇っているところを見ると、価格だけではない“何か”で人気が無いとメーカーとしては生き残れないのかもしれません。


■ CD-R/CD-ROM/DVD ■
CD-Rの快進撃続く、DVD-ROMが今年最後にヒット

 昨年、ブレイクしたCD-Rは今年に入ってもその快進撃はやむところを知りません。販売数も大きく伸びました。今年はバルク品(OEM品)が多く出回り市場を活性化させたのも原因ではないかと思われます。価格もさらに手ごろな値段に落ちてきています。CD-Rメディアも一時期は値上がりしましたが、また年末には下落をしてきています。市場はさらに膨らみつつあると言えるでしょう。

 CD-ROMのスピード競争はさらに激化していますが、結局人気が一番高いところは32倍速という今年の初めからあまり変わっていない状況です。そんな状況下でDVD-ROMの人気が急激に高まってきました。第二世代・第三世代と来たわけですが、ついに今年の最後になりヒットしました。CD-ROMの単なる高速化よりDVD-ROMにユーザーの視点が変わりはじめてきました。これはDVD再生ソフトの質が向上してきたことと、ハードウェアのDVD再生ボードが安価になったこと。レンタルDVDが始まってきたことなどいろいろな理由が考えられますが、とにかく売れています。来年はさらなるブームが来ることが予感できる様子です。

 人気のDVD-ROMに対し、DVD-RAMは価格が高いこともあり、まだまだの感があります。今年、まともに流通したのはPanasonic製品しかなく、値下がりしなかったこともあるのでしょう。

 CD-Rの人気に押されたのかMOは急激に人気が落ちています。所有者が非常に多い媒体のため、ある程度はコンスタントに売れますが全体的に見ると、一時期の勢いは全くありません。このまま衰退してしまうのか、それとも次世代MOで挽回されるのか現状ではユーザーも、ショップも、メーカーもわからない状況なのが一番問題なのかもしれません。


■ ショップにとっての'98年

 どのパーツも動きが激しいです。これだけ動きが激しければ本来秋葉原をはじめ日本のパソコン市場は好景気のはずなのですが、日本の不景気の波は非常に強く、秋葉原にも寒風が吹いた一年でした。Windows 98は期待以上の成果は出ず、次の大きなトピックスが来ないまま、1年が過ぎてしまいました。ショップやメーカー間の競争は激しくなり、どこも生き残ろうと気合を入れて臨んでいます。メーカー・ショップ共に勝ち組と負け組が出てきていて、この流れは来年にはさらに加速して動いていくと思います。
 唯一の救いは今年最後の12月商戦が全体的に比較的好調ということです。果たして来年はどうなるのか、期待と不安を抱えつつ来年のパソコン市場を考える筆者です。年明けには'99年の大予想を書きたいと思います。

□AMUAMUの「アキバの楽屋から」バックナンバーページ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/backno/akiba.htm

('98年12月24日)

[Text by AMUAMU]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp