写真と動画で見るエプソンダイレクト工場見学記


工場見学記ムービー版

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【工場見学記ムービー版】
 現在市場に出回っているデスクトップPCの大半は、まるごと海外製であったり、海外製の部品を組み立てたものである。まだ各社間のノウハウの差が大きく、自社開発の余地の大きいノートPCに対し、規格と部品の標準化が進んだデスクトップPCではマザーボードから自社で開発されるのはサーバーを中心とするごく一部の製品に限られている。

 また、組み立てについていえば、ビジネス市場向けおよび直販ルートでは、B.T.O.が通常の形態となっており、手作業を中心としたフレキシブルなラインによって組み立てられる。一方では、秋葉原を中心にPCを組み立てるのに必要な部品は個人が店頭で入手できる状況であり、部品を集めてPCを自作することは非常に手軽な作業となっている。

 では、個人が部品を買い集めて組み立てたPCと、メーカーが製品として出荷しているPCとはどこが違うのだろう。また、メーカーはどんな方法でPCを組み立てているのだろう。

 それが知りたくて、今回はB.T.O.メーカーのエプソンダイレクト株式会社の工場を見学させていただいた。またムービーの制作はW-VISIONの協力による。


●受注から部品寄せ

 実際に見学した工場は、デスクトップPCが主力ラインとなっている。写真を中心に紹介しよう。

プリントアウトされた受注票 バーコードのプリントアウト
 ラインは1本で、奥行き40メートルほどのフロアの約半分を占めている。顧客からの受注は、エプソンダイレクトの本社などで処理され、受注データはオンラインで工場へ送られる。

 受注データをもとに連続用紙に受注票がプリントアウトされ、以後の作業はこれにしたがって行なわれる。同時に専用プリンタからバーコード付きのシリアルナンバーシールが打ち出され、受注票に添付される。

棚に並ぶ部品 機種別に用意されたHDD

 各部品類は、4段ほどの棚にきれいに整理されており、受注票を元に浅い通用箱にピックアップされ、組み立てをしている人の後ろの棚に置かれていく。コスト削減の意味からも在庫管理は徹底しており、余分な在庫はほとんどない。CPUでもこのラインには数十個単位でしかおかれていなかった。

部品のバーコードを入力
 部品のシリアルナンバーも、バーコードリーダーで入力され、どのPCにどの部品が組み込まれたかが記録される。


●組み立て

組み立ては確実さを優先
 組立作業は、数名が並んだ作業台で立ち作業で行なわれる。組み立てには特殊な工具は使われておらず、電動式のトルクドライバが中心。現在組み立てられている機種の場合、マザーボードは前工程ですでにケースに取り付けられており、これにCPU、HDD、メモリなどの部品を組み込んでいく。

 組み立ては、スピードよりも確実性が重視されている。受注台数に応じて組み立て作業者数は変動する。組み立ても易しい機種と難しい機種があり、ノンリニアビデオ編集用カードなどが組み込まれた機種の場合は、熟練者が担当することが多いという。また、ノンリニアビデオ編集機などのチェック用には、モニタやDVカメラが置かれた専用台が用意されており、OSとアプリケーションのインストール後に検査が行なわれる。


●インストールと検査

パラレル経由で接続
 組み立てが終わったPCは、1台1台安全性試験が実施され、作業台の向こうのラインに押し出され、流れていく。

 安全性試験が終わったPCは、パラレルポート経由のイーサーネットアダプタが接続され、プリインストールされるソフトが流し込まれる。機種によってはOSやアプリケーションの部分はHDDにプリインストールされており、追加のアプリケーションのみがインストールされる。この過程で数時間程度の稼働が行なわれ、バーンイン(組み立て後の連続稼働)を兼ねる。
 

検査ライン Windowsの起動

 

 マザーボードによっては、BIOSのアップデートが行なわれるが、これはFDで行なわれる。また、アップデータやアプリケーションのインストールにはCD-ROMやMOも併用される。


●備品とマニュアル

マニュアルや備品を追加 出荷を待つ製品
 マウスやキーボードなどの部品と、パックされたマニュアル類が各PCの箱に入れられていく。もれがないか、再度のチェックを受け、箱が閉じられる。同時にオーダーを受けたディスプレイ、プリンタとともに出荷口へ並べられる。

 通常の状態であれば、オーダーを受けた翌日にはここまでたどりついてしまう。早ければ中1日で、注文した製品が手元に届く。これは国内で生産しているメリットだ。


●データの管理

部品不良時の管理伝票の一例
 各工程で問題があった部品は、個別に伝票が起こされ、チェック項目、故障原因などが管理される。単に交換して返品するだけではなく、データベース化し、メーカーへフィードバックすることで不良率の低減を図り、次回の部品選択にもデータを活かしているという。

 部品は個別にシリアルで管理され、どのPCにどの部品が組み込まれたかがすべて記録される。製造の初期の状態から、そのPCがどのユーザーへ届けられるかは確定しているため、万が一、特定ロットの部品に不良などが発生した際にはこのデータをもとに、ユーザーごとに対応される。逆に、ユーザーIDまたはPCのシリアルナンバーから検索できるシステムが構築され、受注時や、サポート部門で使用されている。



●見学を終えて

 あらかじめ予想していたことだが、組み立て工程は、特に特殊な作業も工具もなく、ごく普通の作業だった。小規模なショップブランドなどとの相違は、設備やパーツではなく、各製品ごとに確立された評価技術や部品の仕様変更などの管理をはじめとするデータの管理にある。これが行なわれているかどうかが、単なる作業場と工場との分岐点なのだろう。


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('98年11月18日)

[Reported by date@impress.co.jp/W-VISION]


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