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塩田紳二のソフトウェアレビュー

第2回:Outlook 98:Outlookは、悔い改めたか?【後編】


■Outlook 98のメール機能

 Outlook 98では、電子メールの機能を2つの方式から選択できる。
 1つは、従来と同じくMAPI経由で電子メールを扱う方法で、これはExchageサーバーのある環境で利用する。もう1つは「インターネット電子メール」と呼ばれる方式で、MAPIを使わずに、直接インターネットの電子メール形式が扱える方式である。
 後者の方式では、メールの受信にpop以外にIMAP4にも対応しており、また、複数のメールサーバーにアクセス可能なマルチアカウント機能も装備されている。

 この2つの方式は、インストール時に選択し、他方へ切り替えるためには追加インストール(付属のsetupを使って、他方のモジュールをインストールする)が必要となり、両者を簡単に切り替えて使い分けることはできない。また、このため、インターネット電子メール方式で利用するための新しいFAXプログラムが追加されている。

 これらの機能追加は、インターネットの電子メールについては、Internet Explorer 4.0に付属のOutlook Expressと同等なものとなった。Outlook ExpressがOutlookの簡易版という意味だったのだが、Outlook Expressのほうがあとから登場し、またインターネット専用ということもあって、機能的には、簡易版のほうが機能が上という状態だったのが、ようやく、本家のOutlookも追いついたわけである。しかし、Outlook 98では、ビューの構造上、Outlook Expressで可能なスレッド表示(メッセージを応答関係によりまとめて表示する形式)ができず、複数の話題が交錯するメーリングリストなどで使い勝手が悪くなっている。

 電子メールの表示は、他の「フォルダ」同様にビューを使って行なうことができる。特に表形式での表示では、表示領域の下半分をメッセージ本文のプレビュー領域としたり、リスト中にメッセージの先頭部分を表示するプレビュー表示が可能である。

Outlook 98 Outlook 98
表示領域の下半分をメッセージ本文のプレビュー領域とした場合 リスト中にメッセージの先頭部分を表示するプレビュー表示の例

 また、Outlook 98には、自動仕分け機能があり、通常の電子メールソフト同様に、着信したメールを個別の「フォルダ」に振り分けることもできる。ただし、この自動仕分け機能は、着信時にしか動作せず、また、IMAP4サーバーを使っている場合には、機能しない。

 このビュー機能を活用するには、電子メールを細かく振り分けてしまうと、1つのビューとして見ることができなくなるので、メールが着信する「フォルダ」であるinboxにすべてのメールを残しておき、ビューの機能であるフィルタを使って不要なものを表示しないなどの使い方になる。あるいは、ビューで見る必要がない特定のメール(たとえばほとんどのメールが仕事関係という状態のときに、趣味で入っているメーリングリストなど)だけは、自動仕分け機能を使って、別フォルダにまとめてしまうという方法もある。

 この自動仕分け機能は、Outlookが持つ、会議出欠確認や後述のネットフォルダ機能などでも利用されており、Outlook 98同士が制御メッセージを電子メールでやり取りする場合にも使われている。



■その他のOutlook 98の強化点

Outlook Today
Outlook Today画面
 その他Outlook 98の主な強化点としては、以下のようなものが挙げられる。

1. Outlook Today
2. ネットフォルダによるスケジュール同期機能
3. Webサーバーを使った空き時間の公開機能

 Outlook Todayはその日の予定や仕事、到着メッセージの概要を表示するページで、デフォルトでは、Outlook 98を起動すると、このページが表示される。このページは、実際にはHTML(とスクリプト)で作成されており、別途ユーザーがページを作成することで、オリジナルのページを作ることも可能だ。ただし、その方法はオンラインヘルプには記述されていないが、MicrosoftのWebサイトに解説があった(ただし現在そのページは“404 not Found”エラーが出る。URLの変更があったのかもしれない)。

 ネットフォルダとは、2つのOutlook 98間で1つの「予定フォルダ」のアイテムを管理するための仕組みである。これは電子メール機能を使って行なわれ、一方のOutlook 98が主となり、他方は、そのコピーを管理する。コピーされたアイテムを編集できるかどうかのアクセス権は、以下のように4段階ある。

参照者アイテムの読み取りのみ可能
寄稿者新規アイテムの追加のみ可能。自分が追加したアイテムでも編集、削除は不可
作成者自分が追加したアイテムのみ編集、削除可能
編集者アイテムの追加と、すべてのアイテムの編集、削除が可能

 このほかに、Outlook以外の電子メールソフトを使うユーザーのために、単にフォルダ内容を電子メールとして送信することもできる。
 これは完全なフォルダの同期機能ではない。というのはコピーは、ローカルのフォルダとは別に管理されるために、アラームなどいくつかの機能がコピーされているアイテムでは動作しないからである。もともと、Outlookの前身になるSchedule+は、共有フォルダを使ったスケジュールの同期機能があり、たとえば、ノートマシンとデスクトップマシンで同じデータを共有することができた。これがOutlook 97ではExchage Serverが必要な機能となったため、単独利用での使い勝手は非常に悪いものになった(インポート、エクスポートによるデータの転送は可能だったが、アイテムの編集を判断してはいなかった)。

 このネットフォルダは、フォルダに加えられた変更が特殊な電子メールとして送信され、受信側では、仕訳機能により、これをフォルダの変更として処理しているものだ。このため、メインの電子メールアカウントとしてIMAP4サーバーを使っている場合には、ネットフォルダを利用することができない(ただし、複数アカウントが登録可能なので、標準のアカウントとして、popを使う別のメールアドレスを設定し、これをネットフォルダ専用とすれば共存は可能)。

 Webサーバーを使った空き時間の公開機能も、Schedule+にあった、共有フォルダによる空き時間検索を復活させたもの(Outlook 97ではExchage Serverが必要だった)。 これは、WWWサーバー内にあるディレクトリに、空き時間を記述したファイルを置き、httpでファイルを取得して、他のユーザーの空き時間(予定の入っていない時間)を調べ、会議の予定立案から案内メール送信、出欠確認などを行なうものだ。

 しかし、時間的制限から細かな原因追求まではしていないのだが、筆者が試した範囲ではどうもうまく動作しなかった。
 WWWサーバーとして、NT 4.0 Server上のIIS 3.0を使用。まず、空き時間を公開するためには、IISにFrontPage Extensionが組み込まれている必要がある。また、公開場所のURLとして、専用のディレクトリを作り、各Outlook 98の公開場所のURLには、ユーザー名を含めて指定する必要があった(このあたり、オンラインマニュアルの表現があいまいなため、実験で確認)。
 また、一旦設定が終了した後でも、ときどき空き時間の書き込み後にOutlookが異常終了したり、公開されているはずの空き時間が取得できないなどの問題が生じた。設定ミスでデータが取得できないならともかく、プログラムが異常終了するというのはどうにかならないものか。



■製品評価

Microsoft Outlook 98 for Windows
推定小売価格:11,800円
連絡先:マイクロソフト株式会社
    カスタマー インフォメーションセンター Tel. 03-5454-2300
    FAXBOX情報サービス Fax. 03-5454-8100
【今回の製品評価】
★★☆☆☆
☆☆☆☆☆たとえ家族が人質に取られても使うな
★☆☆☆☆使わねぇほうがいいんじゃないかなー
★★☆☆☆悪くもないが良くもない。個人の好みで決めて欲しい
★★★☆☆悪くはない
★★★★☆いいと思うよ
★★★★★使わないやつは死刑なのだ

 Outlook 98は、個人情報管理ツールとしてみるか、電子メールクライアントとしてみるかで評価が違ってくる。電子メール機能は、たしかにOutlook 97に比較して改善はされたものの、インターネットで電子メールをやりとりするための最低限の条件やマナーを満たした状態にすぎない。独自方式で受信メールが管理されてしまうこと、CSV形式でのエクスポート以外には外部に蓄積したメッセージを取り出す方法がないこと(これらはIMAPサーバーを使うことで解決はできる)、また、スレッド表示や着信したメールの仕分けができないなど、メールソフトとして使い勝手上の問題の解決はこれからである。

 個人情報ツールとして見た場合、各機能の連携性やビューによる情報の把握など、他のソフトの使い勝手を上回る部分は持っている。日本語の使える個人情報管理ツールの中ではかなり上位に位置づけられるソフトといっていいだろう(個人的には、システム手帳を模したLotusのオーガナイザーのようなオモチャっぽさがないところが気に入ってはいる)。

 全般的に見れば、細かいツメがいまいちといった部分や、バグらしき挙動があることを考えると、余り高い点は付けられない。電子メールで星1つ、個人情報管理で星3つというところだ(Exchangeクライアントとしての評価はまったく含まれていないが、Exchageを使う環境では、選択の余地はないと思われるので評価は無用だろう)。

 ということで、このOutlook 98の評価は、間をとって、星2つということにする。

[Text by 塩田紳二]


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